経営管理ビザの事業計画書に、決まった様式はありません。出入国在留管理庁が見ているのは、計画に具体性と合理性があり、実現できるものかどうかという3点です。
経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)の事業計画書とは、日本で営む事業の中身と数字をまとめ、申請書に添える書類です。2025年10月16日施行の改正で、この計画書について中小企業診断士、公認会計士、税理士のいずれかによる確認が義務付けられました。
申請を任せている行政書士から、こう言われたとします。「事業計画書に、中小企業診断士か公認会計士か税理士の確認が必要になりました。計画書はご自身で用意してください」。出入国在留管理庁のサイトを探してもひな形は見つからず、顧問税理士に頼めば済むのかも分からない。
そこで手が止まったのは、あなただけではありません。止まる本当の原因は、日本語でも文章力でもなく、何をどこまで書けば確認する側が判断できるのかが、様式から読み取れないことにあります。
本当の相手は、入管でも専門家でもありません。断片的なまま広がった改正の情報と、事業を始められないまま過ぎていく時間です。
この記事では、出入国在留管理庁の公表資料にもとづき、何をどう書くかを架空の貿易会社の記入例つきで整理します。確認を行う側の中小企業診断士として、KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)が解説します。
この記事で分かること
- 様式がない理由と、確認で見られる3つの評価軸
- 3つの評価軸に答える書き方(架空の貿易会社の記入例つき)
- 誰に確認を頼めるのか。顧問税理士に頼めない場合がある理由
- 新規と更新の違いと、更新時に債務超過だった場合の3段階
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事業計画書で手が止まる理由と、あいまいなまま出したときに起きること

手が止まる理由は3つあります。ひな形が見つからない、誰の確認が要るのか分からない、改正後の情報が入り混じっている。まず切り分けたいのは、自分に事業計画書の提出が求められるのかどうかです。

計画書と専門家の確認が必要なのは、カテゴリー3と4
在留資格「経営・管理」の申請は、所属機関の規模などでカテゴリー1から4に区分されます。出入国在留管理庁の提出書類一覧で「専門的な知識を有する者による評価を受けた事業計画書の写し」が求められているのは、カテゴリー3と4です。上場企業などのカテゴリー1と2は「その他の資料は原則不要」とされています。
これから会社を立ち上げる方や個人事業主の多くはカテゴリー4です。日本で事業を始める人ほど、事業計画書と専門家の確認が必要になります。
よくある誤解と、公表資料の記載
| よくある誤解 | 公表資料に書かれていること |
|---|---|
| 経営管理ビザなら誰でも確認が要る | 必要なのはカテゴリー3と4。1と2は原則不要 |
| 全員が今すぐ3,000万円を用意する | すでに在留している方には令和10年10月16日までの経過措置 |
| 更新のたびに評価書が要る | 更新申請の書類一覧に評価書の項目はない |
| 顧問税理士に頼めばよい | 会社の役員や従業員は評価者になれない。外部の顧問なら差し支えない |
誤解の多くは、改正の見出しだけが切り取られて広がったことから生まれます。数字が誰に、いつから適用されるのかを確かめることが先です。
あいまいなまま出すと、何が起きるか
あいまいな計画書を出せば不許可になる、とは言えません。審査の結果は個別の事情で決まるからです。言えるのは、中身が薄いまま提出すると追加の資料を求められたり、申請をやり直したりすることがある、という事実です。
出入国在留管理庁が公表する在留審査処理期間には、不許可処分や申請取下げは含まれないという注記があります。やり直しになれば、審査に要する時間はそこから積み上がります。
さらに改正後は、自宅を事業所と兼ねることは原則として認められません。事務所を確保し続ける必要があり、事業を始められない間も賃料は出ていきます。
事業計画書の書き方。3つの評価軸に答える

公式に示されている評価の言葉は、3つだけです。具体性、合理性、実現可能性。裏を返せば、この3つに答える形で書けば、事業計画書の骨格は自分の手で作れます。

事業概要、市場と競合、販売計画、人員計画、収支計画、資金計画という項目立ては、公式の指定ではなく実務でよく使われる構成です。どの欄に書くかより、3つの評価軸に答えているかが大切です。記入例は架空の設定で統一します。日本の中古建設機械を母国へ輸出する貿易会社。東京都内に事務所を借り、常勤職員を1名雇用する設定です。
具体性 誰に、何を、いくらで、どれだけ売るのかを書く
具体性とは、読んだ人が同じ絵を描けることです。「建設機械の輸出を行う」では、誰も絵を描けません。仕入先、販売先、商品、単価、数量まで書いて、はじめて具体になります。
売上は、金額をそのまま置かずに単価と個数に分解します。分解しておけば、数字が動いたときに、単価が動いたのか台数が動いたのかを自分で追えます。

記入例では、販売単価を1台400万円、販売台数を月3台と置きました。月商は1,200万円、12か月で1億4,400万円です。粗利率を15%とすれば、月の売上総利益は180万円になります。
事業所と人員も同じです。「東京都内に事務所」ではなく、所在地、床面積、賃料、契約期間まで書きます。改正後は1人以上の常勤職員の雇用が求められ、対象は日本人、特別永住者、永住者や定住者などに限られます。
合理性 数字に「実績」と「仮説」の区別を付ける
合理性は、数字の大きさではなく、その数字がどこから来たのかで決まります。おすすめは、すべての数字に「実績」か「仮説」かの札を付け、仮説には根拠と確かめ方を添えることです。

| 項目 | 記入例(架空の貿易会社) | 区分 | 添える資料と確かめ方 |
|---|---|---|---|
| 販売先 | 母国の建設機械販売店2社 | 実績 | 取引の基本合意書 |
| 事務所 | 東京都内、賃料 月20万円 | 実績 | 賃貸借契約書と間取り図 |
| 販売単価 | 1台あたり400万円 | 仮説 | 直近の仕入価格と現地の販売価格 |
| 販売台数 | 月3台 | 仮説 | 引き合い10件に成約率30%を掛ける |
| 粗利率 | 15% | 仮説 | 仕入、輸送、通関の見積書 |
実績は、資料を添えれば伝わります。仮説は、確かめ方まで書いてはじめて読み手が検証できる数字になります。月3台という数字も、引き合い10件に成約率30%を掛けたものだと書けば、確かめられる数字に変わります。
実現可能性 目標ではなく、そこへ至る行動を書く
実現可能性を分けるのは、目標と行動がつながっているかどうかです。売上目標だけを並べたものは、計画ではありません。施策の回数と率で、行動から売上までを一本の線にします。

記入例なら、母国の販売店2社へ月4回、在庫リストを送ります。そこから月10件の引き合いが生まれ、成約率30%で3台が売れる。回数と率で書いておけば、事業を始めたあとに、どこがずれたのかを自分で追えます。
収支計画も、売上から営業利益まで一続きで示します。
| 区分 | 月あたり | 年換算(12か月) |
|---|---|---|
| 売上高(400万円×3台) | 1,200万円 | 1億4,400万円 |
| 売上原価(仕入、輸送、通関) | 1,020万円 | 1億2,240万円 |
| 売上総利益(粗利率15%) | 180万円 | 2,160万円 |
| 人件費(役員報酬40、給与25、法定福利費10) | 75万円 | 900万円 |
| 事務所の賃料 | 20万円 | 240万円 |
| その他の経費(通信、旅費、専門家報酬) | 20万円 | 240万円 |
| 営業利益 | 65万円 | 780万円 |
この表は架空の設定にもとづく試算です。それでも、営業利益まで自分の手で通すと、資本金をどう使い、いつから利益が出るのかを自分の言葉で説明できるようになります。
資金計画では、資本金等の額と出どころを書きます。改正後は3,000万円以上の資本金等が求められ、法人なら払込済みの資本金の額、または合同会社などの出資の総額が対象です。資本準備金や利益剰余金は含まれません。複数の会社を経営していても合算はできません。個人事業主の場合は、事業を営むために投下されている総額で判断されます。
「日本で会社を立ち上げて事業をしたい」「経営管理ビザを取りたいが、2025年から要件が厳しくなったと聞いた」。外国人が日本で経営者として活動するために欠かせないのが、在留資格「経営・管理」、いわゆる経営管理ビザです。2025年10月の制度改正で要件が大きく変わり、事業計画書に専門家の評価が求...
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確認を受けた計画書の先に手に入る未来

確認を受けた計画書が手元に残ると、変わるものが3つあります。数字、時間、関係性です。

数字 資金の使い道に、自分で納得できる
3,000万円以上の資本金等は、用意すれば終わりではありません。仕入に、事務所に、人件費にどう配分し、何か月目から利益が出るのか。分解した計画を一度通しておけば、自分のお金の行き先を自分で説明できます。
時間 追加の資料を求められても慌てない
数字の根拠と確かめ方を先に書いてあれば、追加の資料を求められたときに、どこを出せばよいかがすぐ分かります。契約書や合意書を計画書の各行にひもづけておけば、それがそのまま備えです。
関係性 同じ計画で、誰にでも同じ話ができる
手元に残る計画書は、申請のためだけのものではありません。行政書士への説明、取引先との交渉、金融機関への相談で、同じ数字を使って話せます。更新のときには、この計画が土台になります。更新では直近の在留期間の活動内容を説明する文書が求められるため、計画と実績を並べられれば説明に困りません。
数字への納得と、備えのある時間と、同じ言葉で話せる関係性を、共に手に入れましょう。
専門家の確認と、更新のときに見られること

確認を頼む相手には、資格の要件と立場の要件があります。資格を満たしていても、立場で外れる人がいます。

確認できるのは、日本の中小企業診断士、公認会計士、税理士
出入国在留管理庁のQ&Aでは、確認を行えるのは企業評価の能力があると認められる公的資格を持つ方とされ、施行日の時点で該当するのは中小企業診断士、公認会計士、税理士の3つです。日本の資格であることが必要で、海外の同種の資格は対象外です。
顧問税理士に頼めるかどうかは、立場で決まる
同じQ&Aでは、評価を行う専門家が申請人の経営する会社の役員や従業員である場合、客観性を確保する観点から評価者として認められないとされています。外部の顧問である公認会計士や税理士は差し支えありません。顧問税理士でも、役員として登記されていれば頼めません。
確認の書面には、評価の根拠が書かれる
統一の様式は公表されていません。ただし更新時の取扱いを示したガイドラインには、「評価の根拠となる理由が記載されているものに限る」という条件が明記されています。名前と押印だけの一筆では足りません。
新規と更新で、事業計画書の扱いは違う
事業計画書と専門家の確認が求められるのは、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留資格取得許可申請の3つです。在留期間更新許可申請の提出書類一覧には、この項目がありません。代わりに直近の在留期間の活動内容を説明する文書が求められます。
なお令和8年4月15日以降の申請からは、カテゴリー3と4で申請人が事業の管理に従事する場合に「所属機関の代表者に関する申告書」が追加されます。一律で必要になるものではありません。
更新のときに債務超過だと、扱いは3段階に分かれる

更新で見られるのは単年度の決算ではありません。ガイドラインでは、事業の継続性を直近二期の決算状況から総合的に判断するとされ、売上総利益があり直近期末に欠損金がなければ継続性は認められます。
1つ目は、欠損金があっても直近期末が債務超過ではない場合です。今後1年間の事業計画書と予想収益を示した資料の提出が求められ、原則として継続性は認められます。内容によっては第三者の評価書をさらに求められることもあります。
2つ目は、直近期末のみが債務超過の場合です。1年以内に債務超過でなくなる見通しを含めて、中小企業診断士や公認会計士等が改善の見通しを評価した書面の提出が求められます。
3つ目は、二期ともに債務超過の場合です。原則として継続性は認められません。ただし設立5年以内の国内非上場企業が独自の技術やサービスで成長を図る場合は、改善見通しの評価書や資金調達の取り組みを示す書類を踏まえ、柔軟に判断するとされています。
決算が固まってから慌てて専門家を探すと、評価書の作成が間に合わないことがあります。ここまでの取扱いは2026年9月時点です。申請の前に最新の案内で確かめてください。
自分だけで進める限界と、KICKコンサルティングの支援

ここまで読んで「自分で書けそうだ」と感じた方は、ぜひご自身で書いてください。事業計画書は、事業を営む本人が書くものです。専門家は書く人の代わりではなく、支える立場にいます。
| 状況 | 自力で進めやすい | 専門家と進めたほうがよい |
|---|---|---|
| 数字の整理 | 単価と個数に分解できている | 売上を総額でしか置けていない |
| 裏付けの資料 | 契約書や見積書がそろっている | 口頭の合意しかない |
| 確認する人 | 外部顧問の会計士や税理士がいる | 身近にいるのは会社の役員だけ |
| 更新の状況 | 直近期末に欠損金がない | 債務超過で改善の見通しが要る |
KICKコンサルティングが横で行うこと

KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は認定経営革新等支援機関です。代表は中小企業診断士で、支援実績は167社になります。
- ヒアリングで、事業の中身と数字を言葉に起こす
- 数字を実績と仮説に仕分け、仮説に根拠と確かめ方を付ける
- 売上を単価と個数に分解し、行動を回数と率でつなぐ
- 収支計画を営業利益まで検算し、資金の使い道と突き合わせる
- 中小企業診断士として、評価の根拠を書いた確認の書面を作成する
役割は分けています。入管への申請手続きそのものは、行政書士や弁護士が担う領域です。KICKは計画書の中身と確認に専念します。すでに申請を依頼している方の、計画書の部分だけのご相談も承ります。
費用の相場と、回収の考え方

専門家に頼む場合の一般的な相場は、確認だけなら5万円〜、作成支援から確認まで通して依頼すると15万円〜(いずれも税抜)です。更新時の債務超過への対応のように財務の分析が加わると、費用は上がりやすい傾向があります。
この費用は、金銭的な利益で取り戻す性質のものではありません。比べる相手は、計画があいまいなまま時間を失ったときに出ていき続ける固定費です。事務所の賃料は、事業を始められない間も発生します。仮に賃料が月20万円なら、3か月で60万円、半年で120万円です。これは前提を置いた仮の試算で、金額も期間も会社ごとに違います。
資本金等として3,000万円以上を用意し、常勤職員を雇い、事務所を借りて動き出すことを考えれば、計画書にかける費用の位置づけは見えてきます。回収するのは金額ではなく時間です。
経営・管理ビザ要件の厳格化でビザ取得が難化する背景と課題 経営・管理ビザの要件が大幅に厳格化し、専門家による事業計画の確認が必須へ 2025年10月実施予定の制度改正により、外国人が日本で起業する際のビザ取得は、従来と比較にならないほど難易度が上がります。 主な改正点 ...
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よくある質問

Q. 経営管理ビザの事業計画書に、決まった様式はありますか
A. ありません。出入国在留管理庁は様式(雛形)を公表しておらず、任意の形式で作ります。公式に示されているのは、計画に具体性と合理性が認められ、かつ実現可能なものであるかという評価の観点だけです。
Q. 事業計画書と専門家の確認は、どの申請で必要ですか
A. 在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留資格取得許可申請のうち、カテゴリー3と4に該当する場合です。上場企業などのカテゴリー1と2は原則不要です。新しく設立した会社や個人事業主の多くはカテゴリー4です。
Q. 顧問税理士に事業計画書の確認をお願いできますか
A. 立場によります。出入国在留管理庁のQ&Aでは、申請人が経営する会社の役員や従業員である場合、客観性を確保する観点から評価者として認められないとされています。外部の顧問である公認会計士や税理士は差し支えありません。
Q. 更新のときにも事業計画書と評価書は必要ですか
A. 原則として不要です。在留期間更新許可申請の提出書類一覧に、専門家の評価を受けた事業計画書の項目はありません。代わりに直近の在留期間の活動内容を説明する文書が求められます。赤字や債務超過の場合は評価書を求められることがあります。
Q. 直近期末が債務超過です。更新ではどう扱われますか
A. 直近二期の決算状況で3段階に分かれます。直近期末のみ債務超過なら、1年以内に債務超過でなくなる見通しを含め、中小企業診断士や公認会計士等が改善の見通しを評価した書面が求められます。二期ともに債務超過なら原則として継続性は認められませんが、設立5年以内の国内非上場企業には柔軟な判断の余地があります。
Q. 資本金は今すぐ3,000万円を用意しないといけませんか
A. 新しく申請する場合は3,000万円以上の資本金等が要件です。2025年10月16日の施行前からすでに在留している方には、令和10年10月16日までの経過措置があります。その間は経営状況や改正後の基準への適合見込みを踏まえて許否が判断されます。
Q. 専門家の確認にかかる費用はどのくらいですか
A. 一般的な相場は、確認だけなら5万円〜、作成支援から確認まで通して依頼すると15万円〜(いずれも税抜)です。更新時の債務超過への対応は財務の分析が加わるため、費用は上がりやすい傾向があります。
Q. 海外の会計士の資格でも確認できますか
A. できません。出入国在留管理庁のQ&Aでは、海外で同種の資格を持っていても対象外とされ、日本の資格の保有が必要とされています。施行日の時点で該当するのは中小企業診断士、公認会計士、税理士の3つです。
まとめ

様式がないということは、書く自由があるということです。自由な分だけ、何を書けば読み手が判断できるのかを自分で決める必要があります。手がかりは、具体性、合理性、実現可能性の3つだけです。
誰に何をいくらで売るのかを数字で書き、その数字を実績と仮説に分け、仮説には根拠と確かめ方を添える。そして目標に至る行動を、回数と率で書く。この順番で通せば、事業計画書は申請のための書類から、事業を動かすための計画に変わります。
お断りいただいて構いません。初回のご相談に費用はいただきません。
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国家資格
<中小企業診断士>
「売上アップ」から「資金調達」「事業再生」「許認可(中小企業診断士)」まで、中小企業様の経営全般をサポート! 中小企業診断士として、経営管理ビザの事業計画書づくりと確認の書面の作成を支援しています(認定経営革新等支援機関、支援実績167社)。
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