
大阪出入国在留管理局への申請の際、「直近の決算が債務超過となっているため、改善の見通しについて評価を行った書面(企業評価書)を提出していただかない限り、特定技能の受入れは認められません」と窓口で案内された。
そう言われても、中小企業診断士の知り合いはいない。企業評価書がどんな書類なのかも、誰に頼めばいいのかも分からない——そんなご相談が、訪問介護の事業所から数多く届いています。
下期がスタートするこの時期、来期の採用計画を見直し始めた訪問介護事業所の経営者様も多いのではないでしょうか。2025年4月に、特定技能「介護」の対象がようやく訪問系サービスにも広がりました。ヘルパーの有効求人倍率が15倍を超えるなか、外国人材の受入れに希望を見出した事業所は少なくありません。
ところが喜んだのも束の間、2024年度の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられ、収支が悪化して債務超過に陥る事業所が相次いでいます。企業評価書が無ければ受入れが認められない→人手不足が解消されない→サービス提供の枠を増やせず利用者を断らざるを得ない→売上が伸びず赤字が続く——この悪循環に、すでにお心当たりがあるかもしれません。
「うちだけがこんな状況なのか」と思われるかもしれませんが、決してそうではありません。同じ悩みを抱える訪問介護事業所は全国に数多くあります。
- 訪問介護で特定技能の受入れを検討している方
- 報酬改定の影響で債務超過が心配な方
- 企業評価書を誰に頼めばいいか分からない方
- ヘルパー不足で外国人材の受入れを急ぎたい方
- 訪問介護が債務超過に陥る2つの構造的な原因
- 企業評価書に何を書けばよいか、記載イメージ
- 特定技能の訪問介護で求められる受入れ要件
- 中小企業診断士に依頼する3つの条件と流れ
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企業評価書を求められる訪問介護の債務超過、2つの原因

訪問介護事業所が債務超過に陥る原因は、突き詰めると2つに絞られます。初めて企業評価書という言葉を聞いた方にも分かるよう、シンプルに整理します。
そもそも、なぜ債務超過だと受入れの審査で立ち止まるのでしょうか。厚生労働省の資料には、財産的基礎の要件を満たさない場合、中小企業診断士や公認会計士など公的資格を有する第三者が「改善の見通しについて評価を行った書面」の提出を求める旨が記載されています。制度としては珍しく、中小企業診断士の関与が名指しで想定されている領域です。
出入国在留管理庁の方針により、2025年4月から特定技能「介護」の対象に訪問系サービスが加わりました。介護職員初任者研修の修了、介護施設等での一定期間の実務経験、日本語でのコミュニケーション能力といった要件を満たす外国人材であれば、訪問介護の現場でも働けるようになっています。この解禁を機に受入れを検討し始めた事業所も多いはずです。
ところが、いざ申請の段階になって、直近決算の債務超過を理由に企業評価書の提出を求められ、初めて事態の重さに気づくケースが目立ちます。
原因1|介護報酬改定による基本報酬の引き下げ
厚生労働省の2024年度介護報酬改定では、全体の改定率はプラスだったものの、訪問介護の基本報酬だけは約2%引き下げられました。処遇改善加算の引き上げで補うとされていますが、現場の受け止めは厳しく、多くの訪問介護事業所が経営状態の悪化を訴えています。
原因2|ヘルパー不足による移動コスト・人件費の上昇
ヘルパー1人あたりの訪問件数を増やすために移動範囲が広がり、ガソリン代や移動時間の人件費が膨らむ事業所も増えています。採用がうまくいかず、既存スタッフへの依存度が上がることで、さらに離職が進むという流れも珍しくありません。
厚生労働省の統計でも、訪問介護員の有効求人倍率は15倍を超える水準が続いており、他業種と比べて採用の難易度が突出して高い状況です。求人を出しても応募が集まらず、既存のヘルパーに無理な訪問件数を割り振らざるを得ない事業所は少なくありません。
| 原因 | 内容 | 経営への影響 |
|---|---|---|
| 報酬改定 | 訪問介護の基本報酬が約2%引き下げ | 売上(収入)の減少 |
| 人手不足 | 移動コスト・採用コストの増加 | 支出(原価)の増加 |
このまま何も手を打たなければ、収入は減り、支出は増え続けます。東京商工リサーチの調査では、2025年の「訪問介護」の倒産は91件と、3年連続で過去最多を更新しました。倒産した事業所の8割は負債1億円未満、8割は従業員10人未満と、小規模な事業所ほど影響を受けやすい実態が読み取れます。
企業評価書が無ければ特定技能の受入れが認められません。受入れが進まなければ人手不足は解消されず、サービス提供の枠を増やせないまま、利用者からの依頼を断らざるを得ない場面も出てきます。断り続ければ紹介や口コミが減り、売上はさらに伸び悩み、赤字と債務超過が深刻化する——この連鎖を、早い段階で断ち切ることが重要です。
決算が確定してから企業評価書の準備に着手すると、申請のタイミングに間に合わないおそれもあります。「求められてから動く」のではなく「求められる前に備える」ことが、この連鎖を断ち切る第一歩になります。
企業評価書の基本を先に押さえたい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
企業評価書の書き方|特定技能の訪問介護を守る3つの条件

債務超過の状態でも、特定技能の受入れを続けている訪問介護事業所は実際にあります。共通しているのは、次の3つの条件を満たしていることです。抽象論ではなく、実務レベルで手順化して説明します。
条件1|経営状況を数字で可視化する
直近3期分の決算書をもとに、債務超過に至った経緯を数字で説明できる状態にします。「報酬改定で売上が落ちた」だけでなく、どの費目がどれだけ増減したかを分解して把握することが、次の改善計画の土台になります。
訪問件数・利用者数・稼働率といった現場の数字と、損益計算書の勘定科目を突き合わせる作業は、経営者おひとりで抱えると時間がかかります。まずは「何にいくら使い、いくら入ってきているか」を一覧化するところから始めましょう。
特に訪問介護は、事業所ごとの移動距離やサービス提供時間の内訳によって原価構造が大きく異なります。同業他社の数字をそのまま参考にするのではなく、自社の実績データに基づいて可視化することが欠かせません。
条件2|改善計画を明文化する
可視化した数字をもとに、いつまでに、何をして、どう黒字化するのかを文書にします。訪問件数あたりの単価改善、加算の取得状況の見直し、移動効率の改善など、実行可能な計画に落とし込みます。
計画は「頑張ります」といった精神論ではなく、具体的な数値目標と実行時期を伴うものにする必要があります。曖昧な計画は、次の条件3で評価を受ける際にも説得力を欠いてしまいます。
例えば「半年後までに稼働率を〇ポイント改善する」「加算の算定要件を満たすために体制を整える」といった、実行できたかどうかを後から確認できる形で書くことがポイントです。数字で書けない計画は、実行段階で曖昧になりやすいためです。
なお、債務超過が続いている事業所には、企業評価書とは別に「経営改善計画策定支援(405事業)」という制度もあります。金融機関と共有する本格的な経営改善計画を、専門家費用の3分の2を国が補助する形で作れる仕組みで、既存融資の返済条件の変更(リスケジュール)と組み合わせて資金繰りを立て直すことも可能です。倒産の可能性を下げる選択肢として、気になる方は次のページをご覧ください。
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条件3|中小企業診断士による企業評価書を用意する
改善計画ができたら、その見通しが客観的に妥当であることを、中小企業診断士または公認会計士に評価してもらいます。これが「改善の見通しについて評価を行った書面(企業評価書)」です。記載イメージは次の通りです(架空の数値ではなく、一般的な構成項目の一覧です)。
| 記載項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 企業概要 | 事業内容、訪問介護としての受入れ実績、組織体制 |
| 財務状況・債務超過の理由 | 債務超過に至った経緯(報酬改定・人件費増等)の分析 |
| 改善の見通し | 改善計画の実行可能性と、黒字化・純資産回復の見通し |
詳しくは次のページにまとめています。
外国人技能実習・特定技能の企業評価書について 社長やご担当者の方へ。“あなた”は今、このようなお悩みを抱えていませんか。 外国人技能実習制度を活用したいが、企業評価書の作成方法が分からないという方 特定技能外国人の受入れにあたり、経営改善の見通しについて評価が必要だと言...
企業評価書が完成したら、出入国在留管理局や監理団体など、提出を求めてきた窓口に添付して提出します。改善計画と評価書がそろっていれば、審査担当者も状況を客観的に把握しやすくなり、やり取りがスムーズに進みやすくなります。
提出後に決算内容が大きく動いた場合は、その都度、最新の数字で評価を更新しておくと安心です。一度作って終わりではなく、経営状況の変化に合わせて見直していくものだと捉えておくとよいでしょう。
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特定技能の訪問介護で手に入る未来

企業評価書を整え、特定技能の受入れが認められると、訪問介護事業所には次の3つの変化が生まれます。数字だけでなく、現場の実感としてどう変わるのかを具体的にイメージしてみてください。
数字の変化|断らずに済む依頼が増える
人手が足りず断っていた依頼を受けられるようになれば、訪問件数と売上の両方が増えます。改善計画どおりに黒字化が進めば、純資産のマイナスも段階的に縮小していきます。
収支が安定すれば、次の設備投資や処遇改善にも資金を回せるようになります。守りの経営から、少しずつ攻めの経営へ切り替えていける状態です。
時間の変化|採用と教育に割ける余裕が生まれる
既存スタッフの移動負担が分散され、新人の同行研修や教育に時間を割けるようになります。急な欠員が出ても、シフトに余裕が生まれます。
経営者自身も、資金繰りの心配に追われる時間が減り、サービスの質を高めるための時間を確保しやすくなります。
関係性の変化|利用者・ケアマネジャーからの信頼が積み上がる
依頼を安定して受けられる事業所は、ケアマネジャーからの紹介が増えやすくなります。利用者・ご家族からの信頼も積み上がり、地域での立ち位置が強くなっていきます。
外国人材のスタッフが定着すれば、多様な人材が働ける職場として、次の採用でも選ばれやすくなるという好循環も期待できます。地域のケアマネジャーや医療機関からも「人手が安定している事業所」として認識されやすくなり、新規の依頼を紹介してもらえる機会も増えていきます。
数字・時間・関係性、この3つの変化を共に手に入れましょう。
自社だけの限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

普通の訪問介護事業所(自社だけ)では、そもそも企業評価書を作成できません。企業評価書の作成は中小企業診断士または公認会計士が担う専門領域であり、自己流の書面を提出しても、審査に通らないリスクがあります。
専門性の壁に加えて、改善計画の作り込みには時間もかかります。現場の人手不足で手一杯のなか、経営分析と計画策定を並行して進めるのは容易ではありません。判断を誤れば、受入れの遅れがそのまま経営の悪化につながります。
顧問税理士がいる場合でも、企業評価書そのものの作成は税理士の業務範囲外です。税理士から中小企業診断士を紹介してもらえないケースもあり、結局どこに相談すればよいか分からないまま時間だけが過ぎてしまう事業所も少なくありません。
企業評価が拒否されないように、要点を理解している経験豊富な中小企業診断士を紹介します。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、法人支援実績150社以上、中小企業庁の認定経営革新等支援機関として、債務超過企業の改善計画づくりと企業評価書の作成を数多く支援してきました。代表の松本昌史はMBA(経営管理修士)・中小企業診断士の資格を持ち、訪問介護を含む介護業の相談にも対応しています。東京・銀座本社を拠点としていますが、全国どこからでもオンラインで対応可能なため、近くに頼める専門家がいない地方の事業所様も安心してご相談いただけます。
決算書や資金繰りの相談だけでなく、外国人材の受入れを見据えた経営体制づくりまで、幅広く相談いただけるのが強みです。介護報酬改定のような制度変更の影響を数字に落とし込む作業は、経験のある専門家と一緒に進めるほうが、結果的に近道になります。
決算書の読み解きから改善計画の作成、企業評価書の発行まで、一貫して伴走します。初回のヒアリングで現状の数字を整理し、どこから着手すべきかを一緒に見極めるところから始めます。
「何から手をつければいいか分からない」という段階でも問題ありません。専門用語が分からなくても、経営者の言葉で状況を教えていただければ、そこから必要な資料と進め方を整理します。
オンライン面談を中心に進められるため、訪問介護の現場を離れられる時間が限られている経営者様でも、無理のないペースで相談を重ねられます。決算書や試算表など、手元にある資料をお見せいただければ、初回の面談だけでもおおよその見通しをお伝えできます。
企業評価書をまとめて確認したい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
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企業評価書のよくある質問|特定技能・訪問介護の疑問を解消

Q. 企業評価書とは何ですか?
A. 正式には「改善の見通しについて評価を行った書面」といいます。直近期末が債務超過の場合に、中小企業診断士や公認会計士など公的資格を持つ第三者が、改善の見通しを客観的に評価する書面です。自社の担当者が自己評価する書面ではない点がポイントです。
Q. 訪問介護でも特定技能の受入れはできますか?
A. 出入国在留管理庁の方針により、2025年4月から訪問系サービスも特定技能「介護」の対象になりました。介護職員初任者研修の修了、介護施設等での一定の実務経験、日本語でのコミュニケーション能力などの要件があります。
Q. 企業評価書は誰が作成できますか?
A. 中小企業診断士または公認会計士です。税理士は作成できません。「企業評価書 税理士」で検索して探している方は、依頼先を間違えないようご注意ください。
Q. 企業評価書のサンプルはありますか?
A. 決まった書式があるわけではなく、企業概要・財務状況と債務超過の理由・改善の見通しといった記載項目を、中小企業診断士が事業所ごとの実情に合わせてまとめます。事業所ごとに数字も文言も異なるため、汎用のひな形をそのまま使い回すことはできません。記載イメージは本文の表を参考にしてください。
Q. 債務超過だと特定技能の受入れは絶対に無理ですか?
A. いいえ。債務超過そのものが即座に不可というわけではなく、改善の見通しを客観的に示す企業評価書があれば、受入れが認められる可能性があります。数字上は債務超過でも、改善計画の実行可能性が評価されれば道は開けます。
Q. 企業評価書の作成にはどれくらい時間がかかりますか?
A. 決算内容の複雑さや改善計画の作り込み具合によって変わります。決算が固まってから慌てて動くよりも、数字が見え始めた段階で早めに相談を始めるほうが、改善計画の作り込みに余裕を持てます。申請の直前になって初めて必要性に気づき、時間が足りなくなるケースは少なくありません。
Q. 技能実習でも同じ書面が必要ですか?
A. はい。外国人技能実習機構が定める運用要領でも、監理団体の財産的基礎に関連して同様の評価書面の提出が求められる場合があります。制度は異なりますが、考え方は共通しています。
Q. 特定技能の定期報告でも債務超過は関係しますか?
A. 関係します。特定技能の定期届出には「一定の基準」という考え方があり、過去3年間に債務超過となっていない法人であるかが確認される場面があります。令和7年度からはこの定期報告が年1回化されており、該当する場合は早めに企業評価書の準備を進めることをおすすめします。
Q. 改善報告書と企業評価書は同じものですか?
A. 名称が似ていますが、異同は確認できておりません。求められた書面の名称を、担当窓口に必ずご確認ください。
Q. 訪問介護以外の介護施設でも同じ考え方は使えますか?
A. はい。特別養護老人ホームやグループホームなど、施設系の介護事業所が債務超過で受入れ審査に不安を抱えるケースでも、基本的な考え方は同じです。原因分析の中身が人員配置や光熱費など施設特有の事情に置き換わるだけで、数字の可視化・改善計画・企業評価書という3つの条件に変わりはありません。
まとめ
訪問介護の債務超過は、介護報酬改定による収入減と、人手不足によるコスト増という2つの原因が重なって起きています。企業評価書が無ければ特定技能の受入れが進まず、人手不足がさらに悪化するという悪循環を断ち切るには、数字の可視化、改善計画の明文化、そして中小企業診断士による客観的な評価書面という3つの条件をそろえることが近道です。
ようやく解禁された訪問介護の特定技能受入れを、報酬改定による赤字で諦める必要はありません。正しい手順を踏めば、債務超過の状態からでも受入れの道は開けます。
一人で抱え込まず、経験のある専門家と一緒に数字と向き合うことが、遠回りに見えて最も早い解決策です。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
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