
漁業経営者が特定技能の受入れについて、出入国在留管理庁に相談したところ、「決算が赤字・債務超過に落ち込んだ状態では、受入れの審査を進められません。企業評価書がないと先に進められません」と言われた。
債務超過の原因は、燃料費(A重油)の高止まりと水揚げの伸び悩みにあります。出漁1回あたりのコストは年々重くなる一方、水揚げは思うように伸びません。
このまま企業評価書を用意できなければ、今いる特定技能人材・技能実習生の継続雇用すらできなくなります。継続雇用できなければ出漁の人手を確保できず、人手を確保できなければ水揚げを増やせず、売上は作れません。最悪の場合、経営そのものが立ち行かなくなります。
9月は多くの企業にとって上期末にあたり、上期の水揚げと燃料費の数字が固まって、下期の対策を考え始める時期ではないでしょうか。もし決算が赤字や債務超過であれば、特定技能や技能実習(育成就労)で外国人材を受け入れたいと思っても、審査で立ち止まってしまう不安があるはずです。その不安は、あなただけのものではありません。燃油高騰と不漁のダブルパンチは、業界に共通する構造的な課題です。
結論から言えば、赤字・債務超過があっても、改善の見通しを客観的に示す書面があれば受入れの道は開けます。この記事では、その書面(企業評価書)がなぜ必要になるのか、どう準備すればよいのかを、中小企業診断士としての実務視点から具体的に解説します。
- 燃油高騰で漁業の決算が赤字になっている方
- 水揚げ減少と燃油高騰で債務超過に不安がある方
- 特定技能の受入れ審査を控える漁業経営者の方
- 企業評価書を誰に頼めばよいか分からない方
- 育成就労・技能実習の受入れ準備を始めたい方
- 燃油高騰・不漁が漁業の赤字や債務超過につながる理由
- 特定技能・技能実習(育成就労)の受入れで企業評価書が必要になる場面
- 企業評価書の記載イメージとサンプルの考え方
- 中小企業診断士に依頼して受入れを目指す3つの条件
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漁業が燃油高騰と不漁で企業評価書を求められる理由

結論から言うと、燃油費の高騰と水揚げの不安定さが同時に起きると、漁業経営はほかの業種より赤字・債務超過に陥りやすい構造を持っています。ポイントは2つです。
出漁のたびに重くなる燃料コスト
沖合・沿岸で操業する漁船は、出漁のたびにA重油や軽油を大量に消費します。農林水産省の資料でも、燃料費は漁業経営コストの中で大きな割合を占める項目として位置づけられています。価格が上がっても、水揚げ金額をすぐに引き上げられるわけではないため、利益は真っ先に圧迫されます。
特に遠くの漁場まで出向くほど燃料の消費量は増え、価格が上がった分だけ、そのままコストとして積み上がります。乗組員の人件費や漁具の維持費は簡単には削れないため、経営者としてはまず燃料コストの管理に頭を悩ませることになります。
水揚げの不安定さという読めないリスク
海水温の変化や資源量の増減により、狙っていた魚種が獲れない年も珍しくありません。燃料を使って出漁しても、期待した水揚げに届かなければ、そのまま赤字が積み上がります。燃料費は上がる一方、売上は毎年同じようには読めない。この非対称さが、漁業特有の財務の悩みです。
| 要因 | 漁業経営への影響 |
|---|---|
| 燃油(A重油等)価格の高騰 | 出漁1回あたりのコストが増え、利益を圧迫する |
| 海水温の変化・資源量の増減 | 主要魚種の水揚げが不安定になり、売上が読みにくくなる |
| 両方が重なった場合 | コストは上がる一方で売上は増えず、赤字・債務超過に陥りやすい |
放置すると何が起きるか
燃料費の高騰が始まった当初は、「今期だけの一時的な赤字」と捉える経営者も多いものです。しかし水揚げの不安定さが重なると、赤字は単年で終わらず、2期・3期と積み重なっていきます。帝国データバンクの調査でも、原材料・エネルギー価格の上昇を理由とした中小企業の業績悪化が近年増えている傾向が指摘されています。漁業も例外ではなく、燃料コストという「動かせない支出」が重くのしかかる業種の一つです。
赤字が続けば、当然ながら金融機関からの見え方も変わります。新規の融資や既存借入の条件変更を相談したいときに、「なぜ赤字なのか」「今後どう改善するのか」を説明できなければ、話し合い自体が前に進みません。これは特定技能・技能実習の受入れ審査とまったく同じ構図です。数字の裏付けなしに「大丈夫です」と伝えても、相手は納得できません。
このまま何も手を打たなければ、赤字が数期続き、貸借対照表は債務超過に転じます。そして特定技能や技能実習(育成就労)で外国人材を受け入れようとしたとき、審査の入口でつまずくことになります。
厚生労働省の資料には、監理団体の財産的基礎について、直近期末に債務超過がある場合は「中小企業診断士、公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が改善の見通しについて評価を行った書面」の提出を求める旨が記載されています。これは外国人技能実習機構(OTIT)が定める提出書類の一つ(別紙②-1・番号20)にあたり、実務上は「企業評価書」と呼ばれています。債務超過のまま何も準備をしないと、受入れ計画そのものが止まってしまいます。
つまり企業評価書は、赤字・債務超過を理由に受入れを諦めるための書類ではなく、改善の見通しを客観的に示して受入れの道を開くための書類です。次の章で、その中身と作り方を具体的に見ていきましょう。
企業評価書の書き方とサンプル|特定技能を受入れる3つの条件

燃油高騰・不漁で赤字や債務超過になった漁業会社が、特定技能や技能実習(育成就労)の受入れを目指すには、次の3つの条件を整えることが土台になります。抽象論ではなく、実務でそのまま使える手順として整理しました。
条件1.赤字・債務超過に至った理由を数字で説明できる状態にする
燃料費が売上高に対してどれだけ増えたか、水揚げがどう変化したかを、決算書と一緒に整理します。「燃料代が上がったから」という感覚的な説明ではなく、数字で裏付けられた理由書があると、評価書全体の説得力が上がります。
具体的には、直近数期分の損益計算書から燃料費と売上高の比率を洗い出し、水揚げ金額の推移と並べて見ます。数字を並べるだけで「燃料費が先に上がり、水揚げが後から追いついていない」という構造が見えてくることが多く、これが理由書の骨格になります。感覚ではなく事実で語ることが、第一歩です。
条件2.改善の見通しを具体的な計画として示す
燃費の良い漁法への切り替え、漁獲物の販路の多角化、共同操業によるコスト分担など、実行可能な改善策を計画に落とし込みます。「今後どう黒字に戻すか」を数値目標と時間軸で示せると、評価する側も納得しやすくなります。
ここで大切なのは、計画を絵に描いた餅にしないことです。いつまでに・誰が・何を実行するのかを一つひとつ書き出し、実現可能性の低い計画に終わらせない工夫が必要です。過大な目標を掲げるより、堅実に達成できる計画を積み重ねるほうが、評価書としての信頼性は高まります。
条件3.中小企業診断士による客観的な企業評価書を用意する
1と2を自社だけで整理しても、それは自己申告にとどまります。制度が求めているのは、企業評価を行う能力を有する公的資格者による第三者評価です。改善の見通しについて評価を行った書面(企業評価書)を作成できるのは、中小企業診断士または公認会計士であり、税理士は対象に含まれません。この点を誤って理解している経営者の方も少なくないため、依頼先を決める前に必ず確認してください。
顧問税理士に決算や税務を任せている会社は多いはずですが、企業評価書に関しては役割が異なります。日頃の数字の相談は税理士に、改善の見通しの第三者評価は中小企業診断士に、と役割を分けて考えると迷わずに進められます。
企業評価書には決まった様式はありませんが、実務上はおおよそ次のような構成で作成します。外国人技能実習 企業評価書のサンプルや特定技能 企業評価書のサンプルを探している方にも、まずこの全体像をつかんでいただくのが近道です。
| 項目 | 記載内容の考え方 |
|---|---|
| 企業概要 | 事業内容・沿革・保有する漁船や許可の概要など、会社の基本情報 |
| 財務状況(債務超過の理由) | 燃油費の高騰や水揚げ減少など、赤字・債務超過に至った経緯の整理 |
| 改善の見通し | 漁法の見直し・販路の多角化など、今後の改善計画と実行可能性 |
| 評価者の所見 | 中小企業診断士など第三者による、改善見通しの妥当性についての客観的な評価 |
この記載イメージをたたき台にすれば、白紙の状態から作り始めるより、社内の準備がぐっと進めやすくなります。より詳しい内容とサービスの流れは、次のページにまとめています。
外国人技能実習・特定技能の企業評価書について 社長やご担当者の方へ。“あなた”は今、このようなお悩みを抱えていませんか。 外国人技能実習制度を活用したいが、企業評価書の作成方法が分からないという方 特定技能外国人の受入れにあたり、経営改善の見通しについて評価が必要だと言われた方 ...
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燃油高騰を乗り越え特定技能の受入れで手に入る未来

企業評価書を整え、赤字・債務超過という壁を乗り越えた先には、抽象的な「安心」ではなく、具体的に変わる3つの軸があります。
人手という軸:出漁の判断が広がる
人手不足で出漁を見送っていた日でも、乗組員を確保できていれば水揚げの機会を逃さずに済みます。特定技能・技能実習(育成就労)の外国人材が加わることで、限られた好漁日を取りこぼさない体制に近づきます。
時間という軸:経営者が現場から経営に戻れる
人手が足りない間は、社長自らが乗船して穴を埋めているケースも珍しくありません。人員体制が整えば、経営者は燃費対策や販路開拓など、経営そのものに使える時間を取り戻せます。
関係という軸:金融機関・取引先からの見方が変わる
債務超過を放置せず、客観的な企業評価書とともに改善計画を進めている会社は、金融機関や取引先から見ても「先の見える会社」として映ります。これは資金繰りの相談のしやすさにもつながっていきます。
燃料の仕入れ先や漁協との関係でも同じことが言えます。「今は苦しいが、改善に向けて動いている」ことを数字と計画で説明できる会社と、そうでない会社とでは、相手の対応も変わってくるものです。企業評価書づくりは、社外に向けた説明力を底上げする作業でもあります。
目に見える成果がすぐに出るわけではありませんが、外国人材が加わり、経営者が現場に張り付かずに済む体制が整えば、次の投資判断や販路開拓にも動きやすくなります。小さな変化の積み重ねが、数年後の経営の安定につながっていきます。
これら3つの軸は、それぞれ独立しているわけではありません。人手が整えば経営者の時間が生まれ、時間が生まれれば改善計画を丁寧に進められ、それが金融機関や取引先との関係にも良い影響を与えます。1つが動き出せば、残り2つも連動して動き始めます。燃油高騰という向かい風の中でも、人・時間・関係という3つの軸で足場を立て直す道はあります。その未来を、私たちと共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

ここまで読んで「自社だけでも、なんとか整理できるかもしれない」と感じた方もいるはずです。ただ実際には、次の3つの壁が立ちはだかります。
専門性の壁
企業評価書は、決算書の数字を並べるだけでは完成しません。改善の見通しに説得力を持たせるには、財務分析と実務のどちらも理解した第三者の視点が欠かせません。
時間の壁
操業と乗組員の管理で手一杯の中、慣れない書面づくりに何日もかけるのは現実的ではありません。準備に時間をかけすぎて、受入れの計画自体が後ろ倒しになる会社も見てきました。
判断ミスのリスク
自己流で作った書面が、審査の意図とずれていて差し戻しになるケースもあります。だからこそ、企業評価書の作成経験がある専門家に任せる経営者が増えています。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、代表・松本昌史(中小企業診断士/MBA)を中心に、150社以上の中小企業支援を行ってきました。決算の数字を見える化し、燃油高騰や水揚げ減少で赤字・債務超過に陥った漁業会社の改善計画づくりから、企業評価書の作成まで一気通貫で伴走します。
具体的なサポートの流れ
まず決算書と直近の水揚げ状況をお伺いし、赤字・債務超過に至った理由を一緒に整理します。次に、燃費対策や販路の多角化など、実行可能な改善策を洗い出し、数値目標と時間軸に落とし込みます。そのうえで、中小企業診断士としての客観的な評価を加え、企業評価書としてまとめます。「何から手を付ければいいか分からない」状態から、段階ごとに一緒に整理していく進め方です。
申請サポートだけを行う専門家とは異なり、私たちは経営改善そのものに伴走する立場です。企業評価書を作って終わりではなく、そのあとの資金繰りや利益改善まで見据えて支援している点が、KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)の特徴です。
お断りいただいても構いません。無理に契約をお願いすることは一切ありません。まずは現状の決算をお見せいただければ、そこから一緒に考えます。
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企業評価書のよくある質問|特定技能・債務超過の疑問を解消

企業評価書や特定技能・技能実習(育成就労)の受入れについて、経営者の方からよくいただく質問をまとめました。
Q. 企業評価書とは何ですか?
A. 直近期末に債務超過がある場合に提出を求められる「改善の見通しについて評価を行った書面」の通称です。中小企業診断士や公認会計士など、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格者が、財務状況と改善計画を客観的に評価して作成します。
Q. 漁業でも特定技能や技能実習の受入れに企業評価書は必要ですか?
A. 直近の決算が債務超過であれば、業種を問わず必要になります。漁業は燃油高騰や水揚げ減少で赤字化しやすいため、この書面が必要になる場面は決して珍しくありません。
Q. 企業評価書は誰が作成できますか。税理士に頼めますか。
A. 作成できるのは中小企業診断士または公認会計士です。税理士は、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格者には含まれていないため、企業評価書を作成することはできません。依頼先を選ぶときは、この点を最初に確認してください。
Q. 外国人技能実習の企業評価書のサンプルはありますか?
A. 決まった統一様式はありませんが、企業概要・財務状況(債務超過の理由)・改善の見通し・評価者の所見という記載イメージを押さえておけば、実務上求められる内容を大きく外すことはありません。
Q. 特定技能の企業評価書サンプルと技能実習のサンプルは違いますか?
A. 呼び方や提出先の書類番号が異なる場合はありますが、求められている中身(財務状況の説明と改善の見通し)は共通しています。まずは特定技能・技能実習のどちらで受入れを予定しているかを整理してから準備を進めましょう。
Q. 債務超過の理由書はどう書けばよいですか?
A. 「なぜ債務超過になったか」を、燃油費の推移や水揚げの変化など、決算書と対応する数字で説明します。感覚的な言葉だけで終わらせず、事実を積み上げる形で書くことが評価書全体の説得力につながります。
Q. 改善の見通しについて評価を行った書面とは何ですか?
A. 企業評価書の正式な呼び方にあたる書面です。外国人技能実習機構(OTIT)が定める提出書類の一つで、赤字・債務超過の会社が受入れを続けるために、改善計画の妥当性を第三者が評価する書面です。
Q. 特定技能は定期報告でも債務超過が問題になりますか?
A. はい。特定技能の定期報告でも、財産的基礎に関する基準の中で、直近期末に債務超過がないことが確認されます。債務超過が続いている場合は、更新や定期報告のタイミングで改めて説明を求められることがあります。
Q. 育成就労制度でも同じ書面が必要ですか?
A. 育成就労は現在の技能実習制度に代わる新しい制度として準備が進んでいます。監理支援機関や受入れ企業の財産的基礎に関する考え方は技能実習と地続きであるため、債務超過がある場合の第三者評価という考え方は今後も引き継がれる見込みです。
Q. 監理団体自体が債務超過の場合はどうなりますか?
A. 監理団体(育成就労では監理支援機関)についても、財産的基礎の要件として同様の考え方が適用されます。受入れ企業だけでなく監理団体側も、債務超過があれば改善の見通しを説明する準備が必要です。
Q. 企業評価書の作成にはどれくらいの期間がかかりますか?
A. 決算書や水揚げの資料がそろっている状態であれば、数週間程度で作成できるケースが多くなります。ただし、赤字の理由の整理や改善計画の検討に時間がかかる場合はもう少し余裕を見る必要があるため、受入れを予定している時期から逆算して早めに準備を始めることをおすすめします。
まとめ

燃油高騰と不漁が重なる漁業経営では、赤字や債務超過は特別な失敗ではなく、業界に共通する構造的な悩みです。大切なのは、その事実を隠さず、改善の見通しを数字と計画で示すことです。
そのために欠かせないのが、中小企業診断士による客観的な企業評価書です。準備を後回しにするほど、特定技能・技能実習(育成就労)の受入れ計画は遅れます。この記事で紹介した3つの条件を土台に、まずは自社の決算の数字を整理するところから始めてみてください。
燃油高騰も水揚げの変動も、一社の努力だけでコントロールするのは容易ではありません。だからこそ、財務の現状を客観的に見える化し、改善の見通しを第三者の目で確認してもらうことに意味があります。人手を確保できた会社から、次の一手を打ち始めています。
ご相談いただいても、しつこい営業や無理な契約のお願いは一切ありません。お断りいただいても構いません。まずは今の状況をお聞かせください。
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