
「今すぐ返済条件を変えるほどではないが、資金繰りに漠然とした不安がある」「コロナ関連融資の返済が本格化して、手元資金が細ってきた」――そのような中小企業の経営者に、いま国が用意している支援策が早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業、通称Vアップ事業)です。
結論からお伝えすると、この制度を活用すれば、認定経営革新等支援機関という国認定の専門家に支払う計画策定費用の3分の2を国が補助してくれます。中小企業庁の公表資料によれば、通常枠では計画策定支援費用が上限50万円、計画策定後の伴走支援費用が上限30万円まで補助対象となります。つまり、経営の健康診断と改善計画づくりを、実質3分の1の自己負担で専門家とともに進められる制度です。
本記事では、認定経営革新等支援機関として150社以上の経営改善を支援してきたKICKコンサルティング株式会社(銀座本社)が、制度の全体像、補助額、利用の流れ、よくある失敗例までを詳しく解説いたします。
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早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業)の全体像

制度の定義と目的
早期経営改善計画策定支援とは、資金繰りの管理や自社の経営状況の把握といった基本的な経営改善に取り組む中小企業・小規模事業者が、国の認定を受けた専門家(認定経営革新等支援機関)の支援を受けて経営改善計画を策定する際、その費用の3分の2を国が補助する制度です。実施主体は各都道府県の中小企業活性化協議会で、制度の詳細は中小企業庁のホームページで公表されています。
この制度の最大の特徴は、金融支援(返済条件の変更=リスケジュール等)を前提としない点にあります。つまり「経営が傾いてから使う制度」ではなく、傷が浅いうちに専門家と経営を見える化し、早期に手を打つための制度です。「早期」という名称には、この予防的な思想が込められています。
「ポスコロ事業」から「Vアップ事業」への名称変更
本制度は、かつて「ポストコロナ持続的発展計画事業(ポスコロ事業)」という通称で運用されていましたが、中小企業庁の公表のとおり、令和7年4月1日付で通称が「バリューアップ支援事業(Vアップ事業)」に変更されました。背景には、中小企業が直面する課題がコロナの影響だけでなく、人手不足や原材料高など多様化しているという認識があります。名称は変わりましたが、制度の骨格である「早期経営改善計画策定支援」であることに変わりはありません。
バリューアップ支援事業(早期経営改善計画策定支援)と、金融支援を伴う405事業(経営改善計画策定支援事業)は別の制度です。名称が似ているため混同されがちですが、対象企業も計画の内容も補助上限も異なります。両者の違いは後半で詳しく解説します。
活用が向いている企業の特徴

次のような状況に一つでも当てはまる企業は、本制度の活用を検討する価値があります。
コロナ関連融資の返済本格化による資金繰りへの不安
ゼロゼロ融資などの据置期間が終了し、元金返済が始まったことで月々のキャッシュアウトが増加している企業です。返済条件の変更(リスケ)までは必要ないものの、資金繰り表を作成しておらず、半年先・1年先の資金の見通しが立っていないケースが典型例です。
売上はあるのに利益や現金が残らない状態
原材料高・エネルギーコスト上昇・人件費増により、売上規模は維持できていても採算が悪化している企業です。どの商品・どの取引先で利益が出ているのかが見えていない場合、ビジネスモデル俯瞰図と損益計画の作成が大きな効果を発揮します。
金融機関との関係を強化したい企業
策定した計画は取引金融機関に提出します。自社の現状と改善の方向性を数値で共有することで、金融機関からの信頼が高まり、その後の資金調達を円滑に進める土台となります。
事業承継やM&Aを見据えた磨き上げ
数年内に事業承継を予定している企業にとって、本制度は「会社の健康診断と体質改善」を国の補助を受けながら進められる機会です。承継前に収益構造と財務を整えておくことは、後継者や譲受候補にとっての企業価値向上に直結します。
支援の担い手となる認定経営革新等支援機関

本制度で計画策定を支援できるのは、中小企業経営強化法に基づき国が認定した「認定経営革新等支援機関」に限られます。具体的には、税務・金融・企業財務に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上であると国が審査・認定した、中小企業診断士、税理士、公認会計士、弁護士、金融機関、コンサルティング会社などです。
ただし、認定を受けているだけでは十分ではありません。重要なのは、経営改善計画の策定実績と、計画策定後の伴走支援の実行力です。計画は「作ること」がゴールではなく、「実行して数値を改善すること」がゴールだからです。
KICKコンサルティング株式会社は、中小企業庁の認定経営革新等支援機関として、製造業・建設業・卸売業・小売業・サービス業など150社以上の経営改善・事業再生を支援してまいりました。代表自身が大手生命保険代理店時代に全国120店舗中110位の支店を2年で1位へ引き上げた経営改善の実務経験を持ち、机上の計画ではなく「実行される計画」の策定を信条としています。
早期経営改善計画に盛り込む5つの構成要素

中小企業庁が示す早期経営改善計画の標準的な構成要素は、次の5つです。金融支援を盛り込まない簡潔な計画であるため、本格的な経営改善計画(405事業)と比べて策定のハードルは低く設定されています。
ビジネスモデル俯瞰図
自社の収益の仕組みや商流を1枚の図に「見える化」したものです。仕入先・外注先・販売先・エンドユーザーの流れを俯瞰することで、どこに強みがあり、どこにリスクが潜んでいるかが一目で分かります。経済産業省の「ローカルベンチマーク」の商流・業務フローシートを活用することも認められています。
経営課題の内容と解決に向けた基本方針
現状分析を踏まえ、自社が抱える経営課題を特定し、その解決に向けた基本方針を整理します。「売上が落ちている」という漠然とした認識を、「主力商品Aの粗利率低下」「特定取引先への依存度の高さ」といった具体的な課題に分解する工程です。
アクションプラン
見える化された課題を、「誰が・いつまでに・何をするか」という行動計画に落とし込みます。実行可能性が命であり、絵に描いた餅にしないための最重要パートです。
損益計画
アクションプランの改善効果を数値化し、計画期間の売上・利益の見通しを作成します。希望的観測ではなく、施策と数値が紐づいた根拠ある計画であることが求められます。
資金繰表(実績・計画)
過去の資金繰り実績を分析したうえで、将来の資金計画を作成します。「いつ・いくら現金が必要になるか」が月次で見えるようになることは、経営者にとって本制度の最も実感しやすい成果の一つです。中小企業庁は「資金予定表かんたん作成ツール」も公開しており、事前の自己診断に活用できます。
補助対象費用と補助上限額

中小企業庁が公表している補助内容は、次のとおりです。
| 支援枠 | 補助対象経費 | 補助率・上限額 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 計画策定支援費用 | 3分の2(上限50万円) |
| 伴走支援費用(モニタリング) | 3分の2(上限30万円) |
たとえば計画策定支援費用が60万円(税抜)の場合、3分の2にあたる40万円が補助され、自己負担は20万円という計算になります。計画策定後の伴走支援(モニタリング)についても3分の2が補助されるため、「作って終わり」ではなく「実行の確認まで」を低負担で専門家に依頼できる設計です。
なお、補助を受けるには中小企業活性化協議会への利用申請と審査が必要であり、申請すれば必ず補助されることを保証するものではない点にはご留意ください。また、最新の補助上限額や要件は改定される場合があるため、申請前に中小企業庁の「早期経営改善計画策定支援」ページおよび最新の手引き(2026年3月31日改訂版)をご確認ください。
2つの申請類型
本事業には、メイン金融機関(または準メイン金融機関)が支援機関となる「金融機関によるVアップ事業」と、中小企業診断士などが支援機関となる「金融機関以外によるVアップ事業」の2類型があります。中小企業活性化協議会の案内によれば、金融機関によるVアップ事業の受付は令和10年1月末までとされています。どちらの類型が適しているかは、金融機関との関係性や求める支援の深さによって異なるため、事前相談の段階で見極めることをおすすめします。
利用の流れとスケジュール

一般的な流れは次のとおりです。
Step 1 事前相談と支援機関の選定
まずは認定経営革新等支援機関に相談し、自社の状況を共有します。この段階で、本制度が適しているか、それとも405事業など別の支援策が適しているかの見立てを行います。直近2〜3期分の決算書があると、初回相談の精度が大きく上がります。
Step 2 利用申請
支援機関と連名で、本社所在地の都道府県にある中小企業活性化協議会へ利用申請を行います。利用申請の前に計画策定に着手すると補助対象外となるおそれがあるため、必ず申請手続きを先行させることが重要です。
Step 3 現状分析と計画策定
経営者へのヒアリング、決算書・試算表の分析を通じて、ビジネスモデル俯瞰図から資金繰表までの計画一式を策定します。オンライン面談に対応している支援機関であれば、全国どこからでも進められます。
Step 4 取引金融機関への計画提出
完成した計画を取引金融機関に提出し、自社の現状と改善方針を共有します。この工程こそが、金融機関との信頼関係を築く本制度の核心部分です。
Step 5 支払申請
計画策定完了後、協議会へ支払申請を行い、補助分を除いた自己負担分(3分の1)を支援機関へ支払います。
Step 6 伴走支援(モニタリング)
計画策定後は、数値計画と実績の差異確認、アクションプランの取組状況の確認、差異がある場合の対応策の検討、金融機関等への進捗報告を行います。この伴走支援費用にも3分の2の補助が適用されます。
405事業(経営改善計画策定支援事業)との違い

名称が似ているため混同されやすいのが、405事業(経営改善計画策定支援事業)です。両者は別の制度であり、対象となる企業の状況がまったく異なります。
| 比較項目 | バリューアップ支援事業 (早期経営改善計画策定支援) | 405事業 (経営改善計画策定支援事業) |
|---|---|---|
| 想定される企業 | 資金繰りに不安はあるが、返済条件の変更までは不要な企業 | 借入金の条件変更(リスケ)や借換・新規融資などの金融支援が必要な企業 |
| 金融支援 | 計画に盛り込まない(簡潔な計画) | 計画に盛り込む(本格的な計画) |
| 計画の内容 | ビジネスモデル俯瞰図、アクションプラン、損益計画、資金繰表など | 財務・事業の詳細分析(DD)を含む本格的な経営改善計画 |
| 補助上限の目安 | 計画策定50万円+伴走支援30万円(いずれも補助率3分の2) | 通常枠で計画策定・伴走支援合計最大300万円程度(中小版GL枠は最大700万円、いずれも補助率3分の2) |
ポイントは、「金融支援が必要か否か」が制度選択の分岐点だということです。すでに返済が厳しく条件変更が視野に入っている場合は405事業、その手前の予防段階であればバリューアップ支援事業が候補となります。自社がどちらに該当するか判断がつかない場合こそ、認定支援機関への事前相談が有効です。KICKコンサルティングでは、初回相談時に両制度を含む支援策の中から最適な選択肢をご提案しています。
本制度を活用する5つのメリット

資金繰りの見える化による経営の安心感
月次の資金繰表が整備されることで、「なんとなく不安」という状態から「いつ・いくら必要か分かっている」状態に変わります。これは経営判断のスピードと質を直接高めます。
金融機関からの信頼向上
計画を金融機関と共有することで、経営の透明性が伝わり、その後の融資交渉や条件面での対話が格段にスムーズになります。
実質3分の1の費用負担で専門家を活用可能
本来なら全額自己負担となる専門家費用の3分の2が補助されるため、これまで専門家の活用をためらってきた小規模事業者でも取り組みやすい設計です。
早期着手による経営の選択肢の確保
経営改善は、着手が早いほど打てる手が多く、傷も浅く済みます。資金に余力があるうちに計画を作ることで、リスケや事業再生といった重い局面を未然に回避できる可能性が高まります。
伴走支援による計画の実行力担保
計画倒れを防ぐモニタリングまで補助対象となっている点は、他の多くの支援策にはない本制度の強みです。
よくある失敗例と注意点

利用申請前に計画策定へ着手してしまう
手続きの順序を誤ると、費用が補助対象外となるおそれがあります。必ず利用申請を先に行い、協議会の手続きに沿って進めてください。
計画を「作って終わり」にしてしまう
金融機関への提出だけを目的に形式的な計画を作ると、実行が伴わず、かえって金融機関の信頼を損ねる結果になりかねません。アクションプランの実行と伴走支援までを一体で捉えることが重要です。
実現可能性の低い楽観的な数値計画
根拠のない売上増加を前提とした計画は、モニタリングの段階で計画と実績の乖離が露呈します。保守的で根拠のある数値計画こそが、結果的に信頼を生みます。
計画策定の実績が乏しい支援機関への依頼
認定支援機関であっても、経営改善計画の策定経験や業種理解には大きな差があります。自社の業種での支援実績、伴走支援の体制、金融機関対応の経験を確認したうえで依頼先を選ぶことをおすすめします。
まとめ 傷が浅いうちの一手が会社の未来を変える

早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業)は、金融支援を必要としない予防段階の企業が、国の補助を受けながら専門家と経営を見える化できる制度です。重要なポイントは次の3点です。
- 費用の3分の2を国が補助(通常枠で計画策定上限50万円+伴走支援上限30万円)
- 405事業とは別制度であり、金融支援の要否が制度選択の分岐点
- 利用申請が先、計画策定が後という手続き順序の厳守が必須
経営改善は「まだ大丈夫」なうちに始めるのが最も効果的です。資金繰りに少しでも不安を感じている経営者の方は、認定経営革新等支援機関として150社以上を支援してきたKICKコンサルティング株式会社へ、まずはお気軽にご相談ください。貴社の状況を丁寧に伺ったうえで、バリューアップ支援事業の活用可否を含めた最適な改善の道筋をご提案いたします。
よくあるご質問

どのような会社が対象になりますか
中小企業・小規模事業者が対象です。業種の制限は基本的になく、製造業・建設業・卸売業・小売業・サービス業など幅広い業種で活用されています。返済条件の変更(リスケ)を必要としない、予防段階の企業が主な想定対象です。
補助額はいくらですか
中小企業庁の公表によれば、通常枠で計画策定支援費用の3分の2(上限50万円)、伴走支援費用の3分の2(上限30万円)が補助対象です。最新の内容は申請前に中小企業庁の手引きをご確認ください。
すでにリスケ中の場合も利用できますか
返済条件の変更などの金融支援を必要とする場合は、本制度ではなく405事業(経営改善計画策定支援事業)の検討が適している可能性があります。どちらが適切かは状況により異なるため、認定支援機関への事前相談をおすすめします。
どこに申請すればよいですか
本社・事業所のある都道府県の中小企業活性化協議会へ、認定経営革新等支援機関と連名で利用申請を行います。申請手続きは支援機関がサポートいたします。
費用はいつ支払いますか
計画策定完了後の支払申請を経て、補助分を除いた自己負担分(3分の1)を支援機関に支払う流れが一般的です。詳細な支払時期は利用申請時にご案内いたします。








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