「経営管理ビザの更新が不許可になったら、日本での事業はどうなるのか」「決算が債務超過だが、このまま申請して大丈夫か」「入管から追加資料を求められたが、何を出せばよいか分からない」。更新を控えた外国人経営者にとって、不許可は事業そのものを失いかねない重大なリスクです。
結論から申し上げると、更新が不許可になる理由の多くは、決算の数字、公的義務の履行、事業の実態のどこかを「書類で説明できなかった」ことに集約されます。裏を返せば、出入国在留管理庁が公表している審査上の考え方を押さえ、根拠のある資料を期限内に出せば、防げるリスクも少なくありません。この記事では、不許可につながる5つの理由と、その対策を整理します。
更新を取り巻く厳しい環境
経営管理ビザの更新が不許可になった件数を、出入国在留管理庁が理由別に公表しているデータは見当たりませんでした。ただ、環境が厳しくなっていることを示す数字はあります。報道によれば、再入国手続きをせずに出国した経営管理ビザの保有者は、2025年上半期の246人から2026年上半期には953人と約3.9倍に増えました。2025年10月の要件厳格化の影響が指摘されています。
さらに、2026年10月1日からは更新手数料が許可期間に応じて引き上げられ、オンライン申請で許可期間1年なら27,000円(決済手数料を除く)と、改定前の5,500円から大きく上がりました。一度の不許可で失う時間と費用は、以前より確実に重くなっています。
不許可の理由1 決算が事業の継続性を示せない
更新審査の中心は、事業を今後も続けられるかという「事業の継続性」です。出入国在留管理庁のガイドラインは、直近2期の決算で取扱いを分けており、次の2つの状態は原則として継続性が認められないとしています。
- 直近期末と前期末の2期連続で債務超過
- 直近期と前期の2期連続で売上総利益がない(売上高が売上原価を下回る)
例外は、設立5年以内の国内非上場企業(新興企業)が、独自の技術やサービスで事業を伸ばそうとしている場合です。このときは、第三者の評価書面に加え、投融資や補助金などの資金調達の取組、製品開発や顧客拡大の取組を示す書類をもとに、柔軟に判断されます。
直近期末のみ債務超過の場合は、1年以内に債務超過でなくなる見通しを、中小企業診断士や公認会計士などの第三者が評価した書面を出すことで、継続性が認められる余地があります。この評価書面がない、または根拠が書かれていないと、継続性を説明する手段がなくなります。
不許可の理由2 税・社会保険の未納
ガイドラインは、経営管理ビザの保有者に対し、自らが運営する会社が法令に沿って公的義務を果たすことを求めています。具体的には次のとおりです。
| 義務 | 審査での扱い |
|---|---|
| 国税・地方税の納付 | 高額・長期の未納は消極的な要素。重加算税の賦課決定などは、とくに消極的な要素 |
| 労働関係法令の遵守 | アルバイトを含む従業員の労働条件が法令に適合しているか |
| 労働保険・社会保険 | 適用事業所であれば、加入手続と保険料の納付ができているか |
実際の資料提出通知書でも、評価書とあわせて「労働保険料等納入証明書」や「納税証明書」の提出を求められた例があります。決算の数字が良くても、納付の証明が出せなければ、それだけで審査が不利に傾きます。未納がある場合は、申請前に顧問税理士と相談し、解消しておくことが先決です。
不許可の理由3 経営に実質的に関与していない
経営管理ビザに該当するには、事業の重要事項の決定や業務の執行に実質的に携わっていることが前提です。ガイドラインは、役員に就任しているだけでは該当しないと明記しています。複数の外国人が役員を務める場合は、事業規模に照らして複数で経営する合理的な理由があるか、各人の業務内容が明確か、報酬が支払われているかが確認されます。
また、行政書士法人の解説によれば、2025年7月10日から、更新・変更申請で直近の在留期間における活動内容を説明する文書の提出が求められています。名義だけの経営者や、実態の乏しい事業を見分けるための措置です。どのような取引先と交渉し、どのような意思決定をしてきたのかを、具体的に書ける準備をしておきましょう。
飲食店などでは、オーナー自身が調理や接客に立つ現業活動は、経営管理ビザの活動に当たらないとする行政書士の解説もあります。人手不足でオーナーが店に立ち続けている場合は、雇用体制の見直しが必要です。
不許可の理由4 事業所の実態がない
ガイドラインでは、月単位の短期賃貸スペースや、すぐに処分できる屋台などを使う場合は、事業所の要件に適合しないとしています。賃貸物件であれば、契約上の使用目的が事業用・店舗・事務所であることを明らかにし、契約者を法人名義にする必要があります。
更新のタイミングで事務所を移転した、家賃負担を減らすために自宅へ戻した、といった変化は、事業所の要件を満たさなくなるおそれがあります。移転を検討している場合は、更新申請の前に行政書士に確認してください。
不許可の理由5 追加資料の不備・期限切れ
見落とされがちなのが、申請後に届く「資料提出通知書」への対応です。通知書には、期限までに提出しなければ、特別な事情がある場合を除き、すでに提出された資料だけで許否を決めると記載されています。さらに、処分が出ないまま在留期限から2か月が過ぎると、日本に滞在できなくなるとも注意書きがあります。
当社が相談を受けた事例では、通知書の日付から提出期限まで15日しかなく、しかも2回目の通知で、求められた書類の中に中小企業診断士などによる評価書が含まれていました。評価書面は、債務超過の原因を分析し、1年間の改善計画を数字で組み立てたうえで評価するため、通知が届いてから専門家を探し始めると、期限に間に合わないおそれがあります。
決算パターン別のリスクと備え
| 直近2期の決算 | 不許可リスク | 申請前の備え |
|---|---|---|
| 剰余金あり | 低い | 納税・社会保険の証明と活動内容の説明を準備 |
| 欠損金あり(債務超過ではない) | 中程度 | 今後1年間の事業計画書と予想収益の資料を準備 |
| 直近期末のみ債務超過 | 高い | 第三者による改善見通しの評価書面を早めに準備 |
| 2期連続で債務超過 | 非常に高い | 設立5年以内か確認し、評価書面と資金調達・顧客拡大の取組資料を準備 |
不許可を防ぐための準備スケジュール
- 決算確定時 純資産の部がマイナス(債務超過)になっていないか、売上総利益が出ているかを確認
- 在留期間満了の3か月前 更新申請の受付開始。納税証明書や社会保険の納付証明を取得
- 申請前 債務超過であれば、月次の損益計画と解消シミュレーションを作成し、評価書面を準備
- 申請後 資料提出通知書が届いたら、当日中に期限日と必要書類を確認し、専門家へ連絡
不許可になったときの考え方
行政書士法人の解説では、不許可になっても再申請は可能であり、不許可を通知された際に示される理由を確認し、それを解消することが必要だとされています。不許可の理由が決算の継続性にあるなら、改善の見通しを根拠とともに示す書面を、納付の問題にあるなら未納の解消を示す書類を、というように、理由に正面から応える資料を用意することが再申請の前提です。在留期限との関係など手続上の判断は、申請取次を行う行政書士の先生に必ずご相談ください。
中小企業診断士から見た不許可の分かれ目
当社は外国人技能実習・特定技能の受入れ審査で求められる企業評価書を数多く作成し、債務超過企業の分析に携わってきました。審査で厳しく見られるのは、数字そのものより、数字の裏付けがない計画です。売上を伸ばすと書くだけでなく、どの取引先から、どの単価で、何件の受注を見込むのかまで分解されていれば、改善の見通しに説得力が生まれます。債務超過は「4文字」で更新を諦める理由にはなりません。原因を特定し、1年以内に純資産を回復する道筋を描けるかどうかが分かれ目です。
経営管理ビザ更新の不許可に関するよくある質問
Q. 赤字だと更新は不許可になりますか
赤字だけで不許可になるわけではありません。剰余金が残っていれば継続性に問題はないとされ、債務超過でなければ今後1年間の事業計画書と予想収益の資料で判断されます。
Q. 評価書面を出せば必ず許可されますか
許可の判断は入管が総合的に行うため、評価書面を出せば必ず許可されるわけではありません。評価書面は、改善見通しを第三者が根拠とともに示すための書類です。
Q. 2期連続で債務超過ですが、まだ可能性はありますか
原則として継続性は認められません。設立5年以内の新興企業であれば、評価書面に加えて資金調達や顧客拡大の取組を示す書類で、柔軟に判断される余地があります。
Q. 追加資料の期限に間に合いそうにありません
通知書には、特別な事情がある場合を除き期限までに提出がなければ、提出済みの資料で許否を決めるとあります。期限の扱いは管轄の入管か行政書士の先生に確認し、並行して書類の準備を急いでください。
まとめ
経営管理ビザの更新が不許可になる主な理由は、決算が事業の継続性を示せないこと、税・社会保険の未納、経営への実質的な関与の不足、事業所の実態の欠如、追加資料の不備や期限切れの5つです。とくに直近期末が債務超過の会社は、中小企業診断士などの第三者による改善見通しの評価書面が欠かせません。決算が確定した段階で純資産を確認し、資料提出通知書が届く前から準備を始めることが、不許可を防ぐいちばんの対策です。
税理士・公認会計士の先生へ
顧問先の外国人経営者に、入管から「評価書」を求める資料提出通知書が届いていませんか。顧問先の評価を先生ご自身が書くと、第三者性が問われるおそれがあります。
決算と税務は先生、評価書面は中小企業診断士。顧問関係はそのままに、期限内の提出を後押しする協業のかたちをご案内しています。
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執筆・監修|KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)代表 松本昌史
中小企業診断士(経済産業大臣登録)、MBA(法政大学経営大学院)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、事業承継士、事業再生マネージャー。認定経営革新等支援機関/M&A支援機関登録。法人の支援実績は150社以上。
参考資料:出入国在留管理庁「『経営・管理』の在留資格の明確化等について」「オンライン申請における手数料額及び手数料納付方法について(2026年10月1日以降の申請分のみに適用)」、共同通信配信記事(2026年10月15日)
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