
「今年もまた収穫量が減っている」——そう感じている沿岸養殖業の経営者は、決して少なくありません。
ホタテやカキ、海苔の産地では、海水温の上昇や海洋環境の変化による不漁が相次いで報告されています。天候や漁協からの情報を見ながら、来期の見通しが立てられずにいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
下期に入り、最低賃金の改定が話題になる時期ですが、そもそも収穫量が減っていて人件費どころではない——そんな状況ではないでしょうか。
燃料費や資材費、稚貝・種苗の価格まで上がり続ける中、決算はいつの間にか赤字、そして債務超過に。
そこに追い打ちをかけるのが、外国人材(特定技能・技能実習/育成就労)を受け入れたいときに求められる「企業評価書(改善の見通しに関する評価書面)」の提出です。
債務超過のままでは審査が通らないのではないか、そう不安に感じている方も多いはずです。
結論からお伝えすると、赤字・債務超過の理由が明確で、改善の見通しを客観的に示せれば、特定技能人材の受入れは可能です。ただし、その「示し方」には押さえるべき型があります。
同じように環境要因で業績が揺れる経営者は、あなただけではありません。この記事では、沿岸養殖業の実情に沿って、企業評価書をどう準備すればよいかを具体的にお伝えします。
- 海水温の上昇で収穫量が減り続けている方
- 赤字・債務超過で受入れ審査が不安な方
- 企業評価書を誰に頼めばよいか分からない方
- 人手不足を特定技能で補いたい方
- 沿岸養殖業が赤字・債務超過に陥る本当の理由
- 企業評価書にどのような項目を書けばよいか
- 特定技能人材を受入れるまでの具体的な流れ
- 自社だけで進める場合に見落としやすいリスク
私たちKICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士として150社以上の法人支援に携わってきました。この記事を読み終えるころには、自社の状況を整理し、次の一歩が見えるはずです。
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沿岸養殖業が不漁による債務超過で企業評価書を求められる理由

沿岸養殖業が赤字・債務超過に陥る理由は、単純な経営努力不足ではありません。環境変化という自社ではコントロールできない要因が重なっていることがほとんどです。
| 原因 | 沿岸養殖業への影響 |
|---|---|
| 海水温の上昇・海洋環境の変化 | 貝類・海苔の斃死や生育不良による収穫量の減少 |
| 赤潮・魚病の発生 | 出荷制限や商品価値の低下 |
| 燃料費・資材費の高騰 | 船舶燃料や養殖用資材のコスト増 |
| 稚貝・種苗価格の上昇 | 仕込み段階からの原価上昇 |
水産庁の水産白書によれば、日本近海の海面水温は長期的に上昇傾向にあり、この100年で100年あたり約1.19度上昇しています。これは世界平均の上昇速度を上回る数字です。
特定の海域では、貝類の大量へい死や、海苔の色落ち(品質低下)が報告されたことも取り上げられています。「今年だけの特殊事情」ではなく、構造的に起こり得る問題だと捉えておく必要があります。
なぜ「不漁だから」では審査が通らないのか
特定技能や技能実習(育成就労)の受入れ審査では、監理団体・登録支援機関が「事業の継続性」と「賃金の支払能力」を確認します。
そのとき審査する側が知りたいのは、不漁という事実そのものではなく、その先にある見通しです。「来年も同じ状況が続くのか」「立て直す方法はあるのか」を、経営者自身の言葉だけでなく、客観的な資料で説明できるかが問われます。
決算書の数字だけを提出しても、この問いには答えられません。だからこそ、第三者による評価書面が求められるのです。
放置すると何が起きるか
収穫量の減少を「一時的な不漁」として放置すると、資金繰りはじわじわと悪化していきます。
燃料費や種苗費といった固定的な支出は、水揚げが減っても大きくは減りません。入ってくるお金が減り、出ていくお金は変わらないという状態が続けば、純資産の毀損は加速します。
純資産がマイナスの状態が続くと、金融機関からの追加融資も難しくなります。運転資金が細るなかで、特定技能人材の受入れ準備まで手が回らなくなるという悪循環に陥りかねません。
監理団体や登録支援機関、行政書士から「決算書だけでは説明が難しい」と言われて、初めて企業評価書の存在を知る経営者も少なくありません。
債務超過という数字だけを見せられても、審査する側は「今後も悪化し続けるのか」「立て直せる見込みがあるのか」を判断できません。だからこそ、客観的な評価書面が必要になるのです。
OTIT(外国人技能実習機構)の提出書類の中でも、この評価書面は「改善の見通しに関する評価」として位置づけられており、中小企業診断士が名指しされている数少ない領域のひとつです。
「うちだけではない」と知っておく
沿岸養殖業に限らず、遠洋・沖合漁業でも燃油費の高騰、農業でも天候不順による収穫量の減少など、一次産業では自然環境が業績を左右する場面が珍しくありません。
「自社の経営が甘かったから赤字になった」と抱え込みすぎず、外部要因を客観的に説明できる材料をそろえることに意識を向けることが、最初の一歩になります。
企業評価書の基本を先に押さえたい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
特定技能の受入れに向けた企業評価書の書き方3つの対策

厚生労働省の資料では、監理団体の財産的基礎について、直近期末に債務超過がある場合は「中小企業診断士、公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が改善の見通しについて評価を行った書面」の提出を求める旨が示されています。
沿岸養殖業のように環境要因で赤字・債務超過に陥った企業が、この書面をどう用意すればよいか。押さえるべき対策は次の3つです。
対策1.不漁の原因を客観的な資料で整理する
「不漁だった」という一言で済ませず、何が原因で、どの程度収穫量が減ったのかを資料として残すことが第一歩です。
地元漁協の共有情報や気象・海況に関する公表資料、自社の水揚げ記録などを時系列で並べるだけでも、説明力は大きく変わります。
- 過去3〜5期分の水揚げ量・単価の推移
- 海況・水温に関する公的機関の公表資料
- 燃料費・資材費・種苗費など原価の内訳
- 他の収入源(加工品販売・観光等)の有無
これらを整理するだけでも、「経営努力を怠った赤字」ではなく「外部要因による一時的な業績悪化」であることが伝わりやすくなります。
対策2.中小企業診断士の企業評価書で「改善の見通し」を数値で示す
企業評価書には、企業概要・財務状況と債務超過の理由・改善の見通しという3つの柱があります。中小企業診断士が客観的な立場から評価し、記載する一般的なイメージは次の通りです。
| 記載項目 | 記載する内容の例 |
|---|---|
| 企業概要 | 事業内容・養殖種目(ホタテ・カキ・海苔等)・従業員数 |
| 財務状況・債務超過の理由 | 海水温上昇による収穫量減少など、赤字に至った客観的な理由 |
| 改善の見通し | 数値目標を伴う収益改善計画、特定技能人材の活用方針 |
架空の数値を並べても、審査する側には見抜かれます。実際の水揚げ計画や販路の見通しに基づいた、根拠のある数字で組み立てることが欠かせません。
改善の見通しに盛り込む具体策は、業種によってさまざまです。沿岸養殖業であれば、次のような選択肢が考えられます。
- 養殖する貝種・海苔の品種を、水温変化に強いものへ見直す
- 陸上養殖など、環境変化の影響を受けにくい方式を一部に取り入れる
- 加工品化・直販によって、原料価格の変動に左右されにくい収益源をつくる
- 特定技能人材の計画的な受入れで、収穫・選別作業の人手不足を解消する
すべてを一度に実行する必要はありません。「何を」「いつまでに」「どの程度」改善するのかを数値で示すことが、企業評価書の説得力を左右します。
改善の見通しを書くときは、単年度の黒字化だけを目標にしないことも大切です。3〜5年程度の中期的な視点で、純資産がどう回復していくかを描くと、審査する側にも計画性が伝わりやすくなります。
短期的な資金繰り対策(在庫の圧縮・支払条件の見直し等)と、中長期的な収益構造の改善(養殖品種の見直し・加工品化等)を分けて整理すると、読み手にとっても分かりやすい書面になります。
この企業評価書がどのような役割を果たすものか、詳しくは次のページにまとめています。
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対策3.特定技能人材の受入れ計画と改善計画を連動させる
企業評価書は「赤字の言い訳」を書く書類ではありません。特定技能人材を迎え入れることで、どう収益を立て直すのかまでを一体で描く必要があります。
人手不足で収穫・出荷の作業が回らず機会損失が出ているなら、それも赤字要因の一つとして整理できます。特定技能人材の受入れそのものが、改善計画の一部になり得るのです。
外国人技能実習(育成就労への移行が2027年4月に予定されています)や特定技能では、漁業分野の技能評価試験・日本語試験に合格した人材を受け入れる仕組みが用意されています。
採用計画・配置計画・教育計画を、企業評価書の「改善の見通し」と同じ数値目標に紐づけておくと、審査する側にも一貫したストーリーとして伝わります。
逆に、決算の数字と受入れ計画がばらばらなまま提出すると、「思いつきの計画ではないか」と見なされるリスクがあります。
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不漁を乗り越え特定技能の受入れで手に入る未来

企業評価書を整え、特定技能人材の受入れが実現すると、経営はどう変わるのでしょうか。3つの軸で具体的に見ていきます。
数字の軸
収穫・選別・出荷といった現場の作業量に、必要な人員をようやく確保できます。人手不足による機会損失が減り、出荷できるはずだった水揚げを取りこぼさずに済むようになります。
加工品化や直販といった新しい収益源を組み合わせれば、水温変化に左右されにくい経営基盤に近づいていきます。
時間の軸
経営者が現場作業に追われる時間が減り、販路開拓や次の設備投資の検討に時間を割けるようになります。
特定技能人材が現場を支えることで、家族経営や少人数体制でも、繁忙期に無理なく対応できる余力が生まれます。
関係性の軸
企業評価書を整え、金融機関へ改善の見通しを説明できるようになると、融資や条件変更の相談がしやすくなります。監理団体・登録支援機関との関係も築きやすくなります。
地元漁協や取引先に対しても、「なんとなく苦しそう」ではなく「見通しを持って立て直しを進めている」という印象を与えられます。数字に裏付けられた説明は、取引先との信頼関係そのものを支えます。
不漁という自社だけでは動かせない環境を、人材と体制の見直しで乗り越える。この道筋を、共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

「自社の決算書に一番詳しいのは自分たちだから」と、経営者や総務担当者が自力で評価書面を作成しようとするケースがあります。
ただし、企業評価書を作成できるのは、中小企業診断士または公認会計士に限られます。顧問の税理士であっても、この書面を作成する立場にはありません。
専門的な立場からの評価でなければ、審査する側に「客観性のない自己申告」と受け取られかねません。
自社だけで進めようとすると、次のような壁にぶつかりがちです。
- 専門性の壁:どの資料をどう整理すれば「改善の見通し」として認められるか分からない
- 時間コスト:日々の漁場管理・出荷対応の合間に、書類作成の時間を確保しづらい
- 判断ミスのリスク:数値の根拠が弱いまま提出し、差し戻しや審査の長期化を招く
だからこそ、企業評価書の作成に精通した専門家へ相談する経営者が増えています。自己流で仕上げてから相談するより、早い段階で伴走してもらうほうが、結果的に近道になることが多いのです。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士として法人支援150社以上、認定経営革新等支援機関(中小企業庁)としての実績があります。
水産業・農業をはじめとする一次産業特有の「環境要因による業績変動」も踏まえ、決算書の数字だけでは伝わらない事情を、審査で通用する形に整理します。
ご支援の流れは、次のようなイメージです。
- 無料相談で、決算状況と受入れたい人材の人数・時期をお聞きします
- 水揚げ記録や海況資料など、必要な情報を一緒に洗い出します
- 企業評価書(改善の見通しに関する評価書面)を作成します
- 監理団体・登録支援機関・行政書士とのやり取りをサポートします
企業評価書の作成だけでなく、特定技能人材の受入れ計画づくりまで、伴走してご支援します。
「まずは話を聞いてほしい」という段階でも構いません。決算の数字を見られることに抵抗がある経営者もいらっしゃいますが、早めに相談いただくほど、選べる改善策の幅は広がります。
資金繰りが厳しくなってから慌てて準備を始めるより、収穫量の落ち込みを感じた時点で相談を始めるほうが、選択肢は多く残ります。
企業評価書をまとめて確認したい方へ
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企業評価書のよくある質問|特定技能・債務超過の疑問を解消

Q. 企業評価書とは何ですか?
A. 直近期末に債務超過がある企業が、外国人材(特定技能・技能実習/育成就労)を受け入れる際に求められる評価書面です。企業概要・財務状況と債務超過の理由・改善の見通しの3点を、中小企業診断士または公認会計士が客観的に評価して記載します。決算書の提出だけでは説明が難しい部分を補う位置づけの書類です。
Q. 沿岸養殖業でも特定技能を受入れできますか?
A. 漁業(養殖業を含む)は特定技能の対象分野に含まれています。海水温上昇による収穫量の減少が原因の赤字・債務超過であっても、その理由と改善の見通しを客観的に示せれば、受入れは可能です。業歴の長さや規模の大小は、審査可否を直接左右する要素ではありません。
Q. 赤字や債務超過があると受入れは認められませんか?
A. 債務超過があるだけで一律に不可になるわけではありません。原因が明確で、改善の見通しに数値の裏付けがあれば、審査の対象として検討されます。逆に、原因があいまいなまま数字だけを提出すると、説明不足と受け取られやすくなります。
Q. 企業評価書は税理士に依頼できますか?
A. できません。企業評価書を作成できるのは中小企業診断士または公認会計士に限られます。顧問税理士に相談する場合も、作成自体は別の専門家に依頼する必要があります。決算業務と評価書面の作成は、担う専門家が異なる点に注意が必要です。
Q. 海水温上昇や不漁が原因でも「改善の見通し」を示せますか?
A. 示せます。水揚げ記録や海況の公表資料などで原因を整理したうえで、特定技能人材の活用や作業体制の見直しによる収益改善計画を数値で示すことがポイントです。原因の分析と改善策を切り離さず、一体のストーリーとして描くことが重要です。
Q. 企業評価書にはどのような項目を記載しますか?
A. 一般的には企業概要、財務状況と債務超過に至った理由、改善の見通しという3つの柱で構成されます。業種や状況に応じて、記載する具体的な内容は変わります。沿岸養殖業であれば、養殖種目や漁場の状況に触れることもあります。
Q. 育成就労制度に変わると企業評価書の扱いはどうなりますか?
A. 育成就労制度は2027年4月の施行が予定されています。監理支援機関(現在の監理団体に相当)の財産的基礎の考え方は現行制度と近く、債務超過がある場合の評価書面という位置づけも引き継がれる見込みです。制度の詳細は今後の運用要領で確定していくため、最新情報を確認しながら準備を進めることをおすすめします。
Q. 企業評価書の作成にはどのような資料が必要ですか?
A. 直近数期分の決算書に加え、赤字・債務超過の原因を裏付ける資料が必要です。沿岸養殖業であれば、水揚げ記録や海況に関する公表資料、燃料費・資材費の推移などが該当します。手元にある資料から棚卸しを始めるとよいでしょう。
Q. 中小企業診断士に依頼するとどのようなメリットがありますか?
A. 決算書の数字だけでは伝わりにくい業績変動の背景を、審査で通用する客観的な資料として整理できます。特定技能人材の受入れ計画づくりまで一体で相談できる点も強みです。第三者の視点が入ることで、経営課題そのものの整理にもつながります。
まとめ
沿岸養殖業の赤字・債務超過は、経営努力だけでは避けられない海水温上昇や不漁が背景にあることが少なくありません。
大切なのは、その事実から目をそらさず、客観的な企業評価書で「改善の見通し」を数字で示すことです。
今回お伝えした3つの対策をあらためて振り返ります。
- 不漁の原因を客観的な資料で整理する
- 中小企業診断士の企業評価書で「改善の見通し」を数値で示す
- 特定技能人材の受入れ計画と改善計画を連動させる
企業評価書は、中小企業診断士または公認会計士だけが作成できる書面です。自社だけで抱え込まず、専門家と一緒に、次の一歩を踏み出しませんか。
海水温という自社では変えられない環境と向き合いながらも、変えられる部分に手を打つ経営者から、特定技能人材という新しい戦力を迎え入れています。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
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