
ビル清掃業者が特定技能の受入れについて、加入している監理団体に相談したところ、「決算が債務超過のままでは受入れの手続きを進められません。企業評価書を用意してください」と言われた。
債務超過の原因は、人件費の上昇にあります。人件費が原価の大半を占めるビル清掃業では、最低賃金の改定のたびに利益が圧迫されます。
このまま企業評価書を用意できなければ、今いる特定技能人材の継続雇用すらできなくなります。継続雇用できなければ清掃現場の人員体制を維持できず、体制を維持できなければ新しい契約を受託できず、売上は作れません。最悪の場合、会社そのものが立ち行かなくなります。
上期の数字が固まり、下期の巻き返し策を考え始める時期ではないでしょうか。10月には最低賃金の改定も控えており、「また人件費が上がるのか」と頭を悩ませている経営者の方も多いはずです。
結論から言うと、赤字・債務超過のビル清掃業でも、特定技能の受入れは十分に可能です。ただし、その際に多くの企業で必要になるのが、中小企業診断士等が「改善の見通し」を評価した書面、いわゆる企業評価書です。この記事では、審査を一発で通す企業評価書の役割と準備の進め方を、現場感を持ってお伝えします。
売上ではなく利益が残るかどうかは、業種を問わず経営の本丸です。とりわけ人件費が原価の大半を占めるビル清掃業では、この視点を欠いたまま人材確保だけを急いでも、根本的な解決にはなりません。
- 最低賃金の上昇で人件費が重くなっている清掃業の社長
- 委託単価が上がらず、赤字続きで悩む総務・経営管理担当
- 特定技能の受入れ審査が通るか不安な経営層
- 企業評価書を誰に頼めばよいか分からない方
- 債務超過のまま外国人材を受入れたいオフィスビル管理会社
- ビル清掃業が赤字・債務超過に陥る3つの根本原因
- 企業評価書とは何か、誰が作成できるのか
- 特定技能を受入れるための3つの秘訣
- 企業評価書に記載する項目のサンプルイメージ
- 自社だけで進めることの限界と、専門家に頼る意味
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ビル清掃業が最低賃金上昇で企業評価書を求められる理由

商業施設清掃会社、オフィスビルメンテナンス会社、ホテル客室清掃(ハウスキーピング)受託会社に共通するのは、売上に占める人件費の割合が非常に高いことです。清掃という仕事そのものが人の手に頼る労働集約型の事業だからです。
厚生労働省が公表する地域別最低賃金は、近年、毎年10月に引き上げが続いています。人件費の割合が高いビル清掃業ほど、この引き上げが利益を直接圧迫します。「毎年、賃上げのたびに利益が削られていく」という感覚を持つ経営者は少なくありません。
本質的な問題は、単なる「人件費が高い」ということではなく、人件費の上昇スピードに、委託契約の見直しが追いついていないことにあります。ここを放置すると、次のような悪化シナリオが現実になります。
| 原因 | 内容 | 放置した場合のリスク |
|---|---|---|
| 最低賃金の毎年引き上げ | 清掃スタッフの時給を毎年引き上げざるを得ない | 粗利益率が年々じわじわと低下する |
| 委託単価の据え置き | 発注元(管理会社・元請)との単価交渉が進まない | コストだけが上がり、利益が残らない構造が固定化する |
| 人手不足による補完コスト | 欠員を派遣・外注でしのぎ、残業代もかさむ | 現場が疲弊し、離職が離職を呼ぶ悪循環に陥る |
原因1.最低賃金の毎年引き上げが人件費に直接効く構造
清掃業務は原価のほとんどが人件費です。最低賃金が1円上がるだけでも、清掃スタッフを多数抱える企業にとっては年間の負担増が積み上がります。しかも一度上げた時給は簡単には下げられません。
原因2.委託単価が据え置かれ、価格転嫁が進まないこと
中小企業庁の中小企業白書でも、下請的な立場にある業種では価格転嫁が進みにくい傾向が指摘されています。ビル清掃業も、発注元との力関係から「値上げを切り出しにくい」という声をよく耳にします。
原因3.人手不足による欠員補充コスト・残業代の増加
清掃スタッフの採用難は年々厳しくなっています。欠員が出ると、既存スタッフの残業や派遣スタッフの活用でしのぐことになり、これがさらにコストを押し上げます。
この3つの原因が重なると、決算は赤字となり、それが数期続けば債務超過に至ります。そして、外国人材(技能実習・育成就労・特定技能)の受入れを検討する段階で、この債務超過が審査上の論点として浮上します。
実務でよく見かける失敗が、「時給を上げた分だけ、いつか委託料も上がるはずだ」と考えて、単価交渉を先送りにしてしまうケースです。発注元が自ら値上げを申し出てくれることはほとんどなく、待っているだけでは粗利益率は下がり続けます。帝国データバンクの倒産動向調査でも、人手不足を背景とした労働集約型サービス業の倒産が増加傾向にあることが指摘されており、ビル清掃業も無縁ではありません。
もう一つよくある誤解が、「決算書が赤字なら、経営改善が終わるまで外国人材の受入れは諦めるしかない」という思い込みです。実際には、経営改善に着手しながら、その見通しを専門家に評価してもらうことで、受入れの道は開けます。経営改善と人材確保を「どちらが先か」と切り離して考えてしまうことこそが、時間を無駄にする一番の原因です。
実は、特定技能の受入れ機関には「一定の基準」と呼ばれる要件があり、その一つに「過去3年間に債務超過となっていない法人であること」という趣旨の条件があります。この基準を満たさない場合に、改善の見通しを客観的に示す書面が求められる、という流れです。要するに、赤字・債務超過だから受入れが即座に不可能になるわけではなく、「改善の見通し」を専門家の目で示せるかどうかが問われるのです。
特定技能を受入れる3つの秘訣|企業評価書のサンプルと書き方

赤字・債務超過のビル清掃業が特定技能を受入れるためには、抽象的な精神論ではなく、次の3つの実務的なステップを踏むことが近道です。
秘訣1.管理会計で人件費率を可視化し、原価計算を制度化する
まず取り組みたいのが、案件(現場)ごとの人件費率を数字で見える化することです。どんぶり勘定のまま値上げ交渉に臨んでも、説得力のある根拠は示せません。現場ごとの人時(作業時間)と実際の人件費を突き合わせ、どの現場が赤字なのかをまず特定します。
- 現場ごとの売上・人件費・粗利益率を月次で一覧化する
- 最低賃金の改定タイミングごとに、原価がどれだけ動くかを試算する
- 赤字現場・低採算現場に優先順位をつけ、交渉対象を絞り込む
ここで大切なのは、完璧な会計システムを新規導入することではありません。今ある試算表・現場日報の数字を、現場単位に組み替えるだけでも、交渉の説得力は大きく変わります。
秘訣2.委託単価の見直し交渉に、数字の根拠を添えて臨む
秘訣1で可視化した数字をもとに、発注元との単価交渉に臨みます。「賃上げがつらいから」ではなく、「最低賃金の引き上げにより、この現場の原価はここまで上昇しました」という具体的な数字での説明が、価格転嫁の交渉力を高めます。
交渉が一度で通らないことも珍しくありません。その場合も、「次の見直し時期はいつか」を発注元とすり合わせておくだけで、赤字が無期限に続く事態は避けられます。交渉のたびに、数字の根拠を積み上げていく姿勢が、長期的な取引関係の信頼にもつながります。
秘訣3.中小企業診断士による企業評価書で、改善の見通しを客観的に示す
秘訣1・秘訣2で経営改善に着手したうえで、その改善の見通しを第三者の専門家の目で評価してもらうのが企業評価書です。厚生労働省の資料には、直近期末に債務超過がある場合、「中小企業診断士、公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が改善の見通しについて評価を行った書面」の提出を求める旨が記載されています。中小企業診断士が名指しされている数少ない領域であり、自社で作文するよりも、専門家に依頼したほうが審査上の説得力が高まります。
企業評価書には、決まった様式があるわけではありませんが、一般的に次のような項目で構成されます。具体的な記載イメージのサンプルは、次の表の通りです。
| 記載項目 | 記載内容の例 |
|---|---|
| 企業概要 | 事業内容、沿革、主要な取引先、従業員数などの基本情報 |
| 財務状況・債務超過に至った理由 | 最低賃金上昇や委託単価据え置きなど、赤字・債務超過に至った具体的な経緯 |
| 改善計画・改善の見通し | 単価交渉、管理会計の導入、原価改善など、実行中・実行予定の取り組み |
| 評価者の所見 | 中小企業診断士等の専門家による、改善の実現可能性についての客観的な評価 |
この構成は、外国人技能実習(育成就労)の企業評価書サンプルにも、特定技能の企業評価書サンプルにも、おおむね共通しています。制度の名称が違っても、「なぜ債務超過になり、どう改善するのか」を客観的に示すという本質は変わりません。
企業評価書の作成をご検討の方は、サービス内容を次のページにまとめていますので、詳しくはこちらをご確認ください。
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最低賃金上昇を乗り越え特定技能の受入れで手に入る未来

企業評価書を整え、特定技能の受入れ審査を通過した先には、どのような未来が待っているのでしょうか。抽象的な言葉ではなく、3つの軸で具体的に描いてみます。
数字の軸|人手不足による機会損失が減る
清掃スタッフが不足していると、新規案件を受注できても現場を回せず、断らざるを得ないことがあります。特定技能で安定的に人材を確保できれば、この機会損失を防ぎ、売上の底上げにつながります。派遣スタッフへの依存が減ることで、変動費として重くのしかかっていた外部委託費も抑えられます。
時間の軸|経営者が採用対応に追われる時間が減る
日々の欠員補充や急な派遣手配に追われる時間が減れば、経営者・総務担当者は本来の仕事である単価交渉や新規開拓に時間を使えるようになります。採用広告への応募が集まらず、同じ求人を出し続ける状態からも解放されます。
関係性の軸|発注元・従業員からの信頼が厚くなる
人員体制が安定し、サービス品質が維持できれば、発注元との契約更新もスムーズになります。「この会社なら安心して任せられる」という信頼は、次の値上げ交渉の土台にもなります。既存の日本人スタッフにとっても、慢性的な人手不足による過重労働が緩和され、定着率の向上が期待できます。
最低賃金上昇という外部環境は、一社の努力だけでは変えられません。しかし、そこにどう向き合うかは自社で選べます。数字を可視化し、企業評価書で改善の見通しを示し、人材の確保で現場を安定させる。この3つを、共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

ここまで読んで、「言っていることは分かるが、実際に自社だけでできるだろうか」と感じた方も多いはずです。実際、企業評価書の作成には専門性の壁があります。
まず、企業評価書を作成できるのは中小企業診断士または公認会計士であり、税理士は作成できません。「顧問税理士に相談すればよい」と考えがちですが、この点は正しく理解しておく必要があります。
また、管理会計の導入や現場ごとの人件費率の可視化には、経理の知識だけでなく、労働集約型サービス業特有の原価構造への理解も欠かせません。自己流で進めると、審査担当者が納得できる水準の書面に仕上がらず、審査のやり直しで時間を失うリスクもあります。日々の現場対応に追われながら、慣れない書面作成にも時間を割くのは、経営者にとって大きな負担です。
だからこそ、企業評価書の作成を専門家に任せる経営者が増えています。KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・MBA(経営管理修士)である代表・松本昌史が、法人支援実績150社以上(認定経営革新等支援機関)の知見をもとに、企業評価書の作成から経営改善の伴走支援までを一気通貫で行っています。
単なる書面作成にとどまらず、管理会計を軸にした利益改善の構造づくりまで踏み込んで支援する点が特長です。「申請書類だけ整えて終わり」ではなく、実際に利益が残る会社へ体質を変えていくことを目的にしています。
具体的には、次のような支援内容を組み合わせます。
- 決算書・試算表の読み解きと、債務超過に至った要因の整理
- 現場別の人件費率・粗利益率を見える化する管理会計の設計
- 改善計画の策定と、その見通しを評価した企業評価書の作成
- 特定技能・技能実習(育成就労)の受入れに向けた実務面での伴走
「忙しいのに儲からない」状態から抜け出すには、精神論ではなく、数字に基づいた構造改善が欠かせません。売上を追いかけるだけでなく、利益が残る構造そのものを作り直すという視点が、経営改善の出発点になります。
専門家に相談したからといって、必ず契約しなければならないわけではありません。お話をお聞かせいただいたうえで、合わないと感じればお断りいただいて構いません。しつこい営業も一切ありません。
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企業評価書のよくある質問|特定技能・債務超過の疑問を解消

Q.企業評価書とは何ですか。
A.外国人技能実習(育成就労)・特定技能の受入れにあたり、直近期末に債務超過がある企業に求められる書面です。正式には「改善の見通しについて評価を行った書面」と呼ばれ、中小企業診断士等の専門家が改善の見通しを評価します。OTIT(外国人技能実習機構)提出書類の別紙②-1・番号20にも該当する書類です。決算書だけでは伝わらない「これから改善していく道筋」を、第三者の目で裏付ける役割を持ちます。
Q.ビル清掃業でも、赤字や債務超過のまま特定技能を受入れられますか。
A.はい、受入れは可能です。赤字・債務超過があること自体で一律に不可となるわけではなく、改善の見通しを企業評価書で客観的に示せるかどうかが実務上のポイントになります。委託単価の交渉や管理会計の導入といった改善への着手状況も、評価の材料になります。
Q.企業評価書は誰に依頼すればよいですか。
A.作成できるのは中小企業診断士または公認会計士です。顧問税理士に依頼したいという声もありますが、税理士は企業評価書を作成できません。この点を誤解したまま準備を進めると、審査直前でやり直しになるおそれがあります。早い段階で、対応できる専門家に相談しておくと安心です。
Q.企業評価書と債務超過の理由書は同じものですか。
A.役割が異なります。債務超過の理由書は「なぜ債務超過になったのか」という経緯の説明に重点があり、企業評価書は専門家がその経緯を踏まえて「改善の見通し」を評価する書面です。あわせて準備するとよいでしょう。
Q.外国人技能実習と特定技能で、企業評価書のサンプルは違いますか。
A.提出先の制度は異なりますが、記載する項目(企業概要・財務状況・改善の見通し・評価者の所見)の基本構成は共通しています。まずは自社の状況を整理し、提出先の制度に合わせて調整するのが実務的な進め方です。
Q.企業評価書の作成にはどのくらいの期間がかかりますか。
A.財務状況の把握状況や改善計画の準備度合いによって変わるため、一概には言えません。決算書・試算表など必要な資料がそろっていれば、比較的スムーズに進められる傾向にあります。逆に、現場ごとの数字が整理されていない状態から始める場合は、管理会計の設計に一定の時間がかかることもあります。まずは現状をご相談ください。
Q.育成就労(技能実習の新制度)でも企業評価書は必要になりますか。
A.育成就労制度は2027年4月の施行が予定されており、詳細な運用は今後明らかになっていきます。技能実習制度における債務超過企業への評価書面の考え方は、育成就労にも引き継がれると見込まれるため、早めの備えが安心です。制度が変わっても「改善の見通しを客観的に示す」という本質は変わらないと考えられます。
Q.監理団体や監理支援機関が債務超過の場合も、同じ書面が必要ですか。
A.監理団体・監理支援機関にも財産的基礎の要件があり、直近期末に債務超過がある場合は、同様に専門家による評価書面の提出が求められます。受入れ企業側の債務超過とは論点が異なるため、立場を整理したうえでご相談いただくのが確実です。監理団体側の相談は、顧問先を支える立場の税理士・行政書士の先生からも寄せられます。
まとめ

最低賃金の毎年の引き上げと、委託単価の据え置き。この2つが重なり、ビル清掃業の利益を静かに削っていきます。放置すれば赤字が積み重なり、債務超過となり、特定技能の受入れ審査でつまずく。そんな悪循環に陥りかねません。
しかし、人件費率を可視化し、単価交渉に数字の根拠を持ち、企業評価書で改善の見通しを客観的に示す。この3つの秘訣を押さえれば、赤字・債務超過のビル清掃業でも、特定技能の受入れという選択肢は十分に開かれています。決算書の数字に不安を感じている今こそ、次の一歩を考えるタイミングです。
まずは現状の数字をお聞かせください。その場での契約やしつこい営業は一切ありません。お断りいただいても、費用は一切かかりません。
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