
「重油の値段が上がり続けて、水揚げしても手元にお金が残らない」。
遠洋・沖合漁業を営む会社の社長や総務担当者から、こうした声を伺う機会が増えています。
マグロはえ縄漁船やカツオ一本釣り漁船を運航する会社では、燃料費が操業コストの大きな割合を占めます。重油価格の高騰と円安が同時に進めば、経費だけが膨らみ、利益は残りません。
そして厳しいのは、この赤字が長引くと決算書が債務超過に陥り、技能実習(育成就労)や特定技能の外国人材受入れ・更新の審査で「改善の見通しに関する評価書面(企業評価書)」の提出を求められる点です。
あなただけが悩んでいるわけではありません。同じように燃料費高騰に直面する漁業会社の多くが、この壁にぶつかっています。
この記事はこんな方におすすめです
- 重油高騰で燃料費がかさみ、資金繰りが苦しい方
- 決算が赤字・債務超過で、受入れ審査が不安な方
- 企業評価書を誰に頼めばいいか分からない方
- 特定技能の更新時期が近づき、準備を急ぎたい方
この記事では、重油高騰・円安で赤字や債務超過に陥った遠洋・沖合漁業会社が、特定技能の外国人材を受入れる(または更新する)ために押さえておきたい3つの基準を、中小企業診断士の実務視点から解説します。
この記事で分かること
- 重油高騰・円安が漁業経営を圧迫する構造的な理由
- 放置した場合に受入れ審査で起こり得ること
- 赤字・債務超過でも特定技能を受入れる3つの基準
- 企業評価書(改善の見通しに関する評価書面)の整え方
- 中小企業診断士に依頼する具体的なメリット
執筆は、法人支援実績150社以上・認定経営革新等支援機関のKICKコンサルティング株式会社(銀座本社)です。企業評価書の作成支援を通じて、漁業を含む多くの中小企業の受入れ審査をサポートしてきました。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
重油高騰が遠洋・沖合漁業を直撃する構造

漁業経営では、燃料費(A重油・C重油)が経費全体の中で大きな比重を占めます。とくに沖合や遠洋まで出漁する漁船は航行距離が長く、燃料の消費量そのものが多いためです。
なぜ漁業だけ価格転嫁が難しいのか
製造業や建設業であれば、原価上昇分を見積もりや契約単価に上乗せして交渉する余地があります。
しかし漁業の水揚げ価格は、産地市場の競り(せり)でその日ごとに決まります。燃料費が上がったからといって、漁獲物の価格を漁業会社側が一方的に決めることはできません。
つまり、コストは確実に上がる一方で、収入は市況次第という構造的な非対称性を抱えているのが、漁業経営の厳しさです。
水産庁は、この燃油価格の急騰リスクに備える仕組みとして「漁業経営セーフティーネット構築事業」を設けています。漁業者と国が資金を積み立て、燃油価格が一定の基準を超えて上昇した場合に補填金を交付する制度です。
制度があること自体が、燃油高騰が業界共通の構造的リスクとして公的に認識されている裏付けといえます。
水産庁の水産白書でも、燃油をはじめとする漁業用生産資材の価格上昇が、漁業経営に与える影響が繰り返し取り上げられています。燃料費は、経営者の努力だけでコントロールしきれない外部要因だという点は、公的機関の資料からも裏付けられる事実です。
だからこそ、審査の場でも「なぜ赤字になったのか」を感覚ではなく、公的な統計や自社の決算データと突き合わせて説明できるかどうかが問われます。
放置すると起きる悪化シナリオ
燃料費の圧迫を放置したまま決算を重ねると、次のような流れで経営の選択肢が狭まっていきます。
| 段階 | 起きること |
|---|---|
| 燃料費が経費を圧迫 | 営業利益が縮小し、単年度赤字に転じる |
| 赤字が複数期続く | 純資産が目減りし、債務超過リスクが高まる |
| 債務超過に陥る | 金融機関からの新規融資・借換えが難しくなる |
| 受入れ更新の時期を迎える | 企業評価書(改善の見通しに関する評価書面)の提出を求められる |
| 準備が間に合わない | 更新審査に必要な書類が揃わず、乗組員の受入れ継続が不透明になる |
このまま何もしなければ、次の更新時期に慌てて対応することになりかねません。決算が固まった時点から逆算して準備を始めることが、遠洋・沖合漁業会社にとっての現実的な打ち手です。
燃料費(重油)は市況によって短期間で大きく変動します。1期だけの赤字であっても、原因を客観的に説明できる資料を用意しておくことが、翌期以降の審査対応を楽にします。
円安が重ねる、もうひとつの負担
燃料費の高騰に、円安が追い打ちをかけています。
重油をはじめとする燃料は国際市況と為替の両方に価格が連動するため、原油価格が横ばいでも、円安が進むだけで仕入れコストは上がります。漁船の部品や漁具など、輸入に頼る資材も同様です。
帝国データバンクの調査によると、2026年上半期の「物価高倒産」は556件で、統計を開始した2018年以降で半期として過去最多となりました。前年同期比で23.8%の増加です。円安を主因とする「円安倒産」も上半期で40件発生しており、輸入コストの上昇が中小企業の経営を圧迫している実態が数字にも表れています。
漁業は輸出産業としての側面もある一方、燃料や資材の多くを輸入に頼る構造があるため、円安のメリットとデメリットの両方を同時に受けやすい業種です。水揚げ単価が多少上がっても、燃料費の増加分がそれを上回ってしまえば、利益は残りません。
このダブルパンチを「一時的な運の悪さ」で片付けず、決算書の数字として説明できる形に整理しておくことが、次の一手につながります。
燃料費と為替、それぞれの影響を切り分けて把握しておくことは、審査対応だけでなく、来期以降の出漁計画や漁法の見直しを検討するうえでも欠かせない基礎データになります。
赤字・債務超過でも特定技能を受入れる3つの基準

特定技能「漁業」は、沖合漁業(まき網・底びき網・いか釣り等)と遠洋漁業(まぐろはえ縄・かつお一本釣り等)が対象業務です。人材側は漁業技能測定試験と日本語試験の合格、または技能実習2号の良好な修了が要件になります。
受入れ側の企業に赤字や債務超過があっても、それだけで審査が通らないと決まるわけではありません。ポイントは「改善の見通し」を客観的な書面で示せるかどうかです。ここでは押さえておきたい3つの基準を解説します。
基準1 決算の実態を数字で正確に把握する
まず必要なのは、直近事業年度の決算書を基に、赤字や債務超過の実態を正確に数字で把握することです。
「燃料費がどれだけ利益を圧迫したのか」「他の経費と比べてどの程度の影響か」を整理しないまま審査に臨むと、担当者に状況が伝わらず、印象だけで不利に判断されかねません。
特定技能の更新時には決算書の提出も求められます。数字の裏付けが曖昧なままでは、改善計画の説得力も弱くなります。
基準2 改善の見通しについて評価を行った書面を用意する
2つ目の基準が、出入国在留管理庁の書式でいう「改善の見通しについて評価を行った書面」、いわゆる企業評価書の準備です。
これは、赤字や債務超過の原因(この場合は重油高騰・円安という外部要因)と、今後の改善計画を、第三者の専門家が客観的に評価した書面です。自社の言葉だけで「大丈夫です」と説明するより、はるかに説得力が増します。
債務超過理由書だけを自作して提出する会社もありますが、根拠となる分析や将来の見通しまで踏み込めていないケースが目立ちます。理由書と企業評価書は役割が異なる書類だと理解しておくことが大切です。
基準3 中小企業診断士に依頼し、専門家の評価を得る
3つ目は、その企業評価書を誰が作成するかという基準です。
改善の見通しに関する評価書面を作成できるのは、中小企業診断士または公認会計士です。税理士は決算書の作成・税務には強い専門家ですが、この評価書面の作成者としては認められていません。依頼先を誤ると、審査の入口で書類が受理されない事態にもなりかねません。
企業評価書のサンプルやフォーマットをそのまま自社の数字に当てはめるだけでは、審査官が知りたい「なぜ改善できると言えるのか」という根拠までは示せません。中小企業診断士が財務分析と現場のヒアリングをもとに、実態に即した内容へ落とし込む必要があります。
具体的には、次のような項目を数字で裏付けながら整理していきます。
- 燃料費が売上原価・営業利益に与えた影響額の推移
- 直近数期の自己資本比率・純資産の推移
- 燃費改善や漁法の見直しなど、現実的な改善策の実行状況
- 今後の資金繰り計画と、金融機関への説明方針
これらを一つずつ積み上げることで、「赤字だから不安」ではなく「赤字の理由が明確で、改善の道筋も見えている」という評価に変わっていきます。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)では、外国人技能実習・特定技能向け企業評価書の作成支援を行っています。決算書と操業状況をもとに、燃料費高騰という外部要因を踏まえた改善計画を、書面として整理します。
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 基準1 | 決算の実態(赤字・債務超過)を数字で正確に把握する |
| 基準2 | 改善の見通しについて評価を行った書面(企業評価書)を用意する |
| 基準3 | 作成者要件を満たす中小企業診断士・公認会計士に依頼する |
企業評価書ができあがるまでの流れ
「専門家に依頼する」といっても、何から始まり、どのくらいの期間がかかるのか分からず不安な方も多いはずです。一般的な流れは、次のとおりです。
- 直近数期分の決算書・試算表をもとに、燃料費や人件費など赤字要因をヒアリング
- 財務分析で、赤字・債務超過の原因を数字で切り分ける
- 操業計画や燃料費の見通しを踏まえ、改善計画を整理する
- 中小企業診断士が改善の見通しについて評価を行い、企業評価書として書面化する
- 受入れ機関・監理団体・登録支援機関へ提出できる形に整える
船の運航スケジュールがある中でも対応できるよう、ヒアリングはオンラインや電話でも可能です。決算書一式さえあれば、現地に何度も足を運ぶ必要はありません。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。まずは決算書の状況だけでも、お気軽にお聞かせください。
企業評価書を整えた漁業会社が手に入れる未来

企業評価書を整えることで変わるのは、審査対応だけではありません。3つの軸で、経営そのものが前向きに変わります。
数字 燃料費の影響が可視化される
燃料費が利益に与える影響を数字で分解すると、どの航海・どの魚種が採算に合っているかが見えてきます。感覚ではなく数字で経営判断できる状態になることが、最初の変化です。
「今期は重油代でどれだけ利益が削られたのか」を即座に説明できる社長は、金融機関との交渉でも、外国人材の受入れ審査でも、圧倒的に有利に立てます。
時間 更新審査への対応時間が大きく減る
企業評価書と改善計画を事前に整えておけば、次の更新時期に慌てて資料をかき集める必要がなくなります。審査対応にかかる時間と精神的な負担が、大きく軽減されます。
浮いた時間は、本業である操業計画や乗組員のマネジメントに充てられます。書類対応に追われて出漁計画が後回しになる、という本末転倒な状態から抜け出せます。
限られた時間を、本来向き合うべき経営判断に使えるようになることこそ、企業評価書を早めに整えておく最大の価値です。
関係性 乗組員との信頼関係が続く
受入れが継続できれば、せっかく育ってきた技能実習生・特定技能人材との関係を途切れさせずに済みます。船の現場を知る人材が定着することは、遠洋・沖合漁業にとって何より大きな財産です。
人材の入れ替わりが少ない会社は、技術の継承もスムーズです。燃料費という逆風の中でも、人が定着する会社であり続けることが、長期的な競争力につながります。
燃料費高騰という逆風の中でも、数字・時間・関係性という3つの安心を共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、KICKコンサルティングの支援

「決算書はあるのだから、自分たちで理由書を書けばいいのでは」と考える社長も少なくありません。
ただ、実際に審査を通すためには、次のような専門性の壁があります。
- 財務分析の専門知識がないと、赤字の原因を数字で説明しきれない
- 改善計画に説得力を持たせる書き方には、一定の型と経験が必要
- 本業の操業管理と並行して書面を仕上げる時間が確保しづらい
- 作成者要件(中小企業診断士・公認会計士)を満たさないと受理されない
だからこそ、企業評価書の作成を専門家に任せる漁業会社が増えています。餌代・燃料費・人件費といった外部要因による赤字は、正しく説明さえできれば、決して不利な材料ではありません。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・MBA(経営管理修士)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)を持つ代表・松本昌史のもと、法人支援実績150社以上、認定経営革新等支援機関(中小企業庁)として、決算分析から企業評価書の作成まで一気通貫で支援しています。
単なる書類作成にとどまらず、燃料費が経営を圧迫する構造そのものに向き合い、次の決算に向けた改善の道筋まで一緒に整理します。
燃料費の高騰は漁業会社1社の努力だけで解決できる問題ではありません。だからこそ、外部要因である事実を客観的な書面で示し、堂々と改善計画を提示することが、受入れ審査を通過する近道になります。
「うちのような小さな漁業会社でも相談していいのか」と迷う社長もいますが、船数や従業員数の規模は問いません。決算書と操業の状況さえ分かれば、現状の診断から始められます。
KICKコンサルティングに依頼する3つの理由
- 中小企業診断士による分析 感覚論ではなく、決算書に基づいた財務分析から改善計画を組み立てます
- 外国人材受入れの実務理解 特定技能・技能実習の審査で何が問われるかを踏まえた書面を作成します
- 経営改善の伴走支援 書面の提出で終わらせず、次の決算に向けた利益改善までサポートします
企業評価書は、いわば「今の赤字は一時的で、改善の道筋がある」ということを、専門家の視点で裏付ける書類です。申請のための形式的な書類ではなく、経営を立て直すきっかけとして活用するという発想が、遠回りに見えて最も確実な近道になります。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいても費用は一切かかりません。
よくある質問

Q. 企業評価書とは何ですか
A. 出入国在留管理庁の書式でいう「改善の見通しについて評価を行った書面」のことです。赤字・債務超過の原因と、今後の改善計画を、中小企業診断士等の第三者が客観的に評価した書面を指します。
Q. 企業評価書は誰に依頼すればいいですか
A. 作成できるのは中小企業診断士または公認会計士です。決算書の作成に強い税理士であっても、この評価書面の作成者としては認められていない点に注意が必要です。
Q. 重油高騰による赤字でも特定技能を受入れられますか
A. 赤字・債務超過の事実だけで一律に不可となるわけではありません。燃料費高騰という外部要因を客観的に説明し、改善の見通しを企業評価書で示せるかが判断のポイントです。
Q. 企業評価書のサンプルやフォーマットはありますか
A. 一般的な構成の型はありますが、そのまま数字を当てはめるだけでは不十分です。自社の操業状況や燃料費の影響を反映した内容に、専門家が仕上げる必要があります。
Q. 債務超過理由書と企業評価書は同じものですか
A. 役割が異なります。理由書は自社が状況を説明する書類、企業評価書は第三者の専門家が改善の見通しを客観的に評価する書面です。両方の性質を理解して準備することが大切です。
Q. 特定技能の更新で決算書の何を見られますか
A. 直近事業年度の損益や純資産の状況が主に確認されます。赤字や債務超過があっても、原因と改善の見通しを客観的な書面で示せれば、審査の土俵に立つことができます。
Q. 改善の見通しについて評価を行った書面は、いつまでに準備すればいいですか
A. 決算が固まった時点から準備を始めるのが理想です。更新時期の直前になって慌てると、分析や書面作成にかけられる時間が足りなくなります。
Q. 監理団体や登録支援機関からも企業評価書を求められますか
A. 受入れ企業の財務状況によっては、監理団体や登録支援機関から早めの準備を促されることがあります。求められてから動くのではなく、決算のタイミングで先回りして整えておくと安心です。
Q. 沖合漁業と遠洋漁業で、審査の考え方に違いはありますか
A. 対象業務は異なりますが(沖合漁業はまき網・底びき網・いか釣り等、遠洋漁業はまぐろはえ縄・かつお一本釣り等)、財務状況の審査で見られる観点は共通しています。赤字・債務超過の原因と改善の見通しを客観的に示せるかがポイントです。
Q. 相談してから企業評価書が完成するまで、どのくらいかかりますか
A. 決算書等の資料が揃っている場合、ヒアリングから書面化まで一定の期間で対応できます。更新時期が迫っている場合は、早めに相談するほど選択肢が広がります。
まとめ
重油価格の高騰と円安は、遠洋・沖合漁業会社の経営努力だけでは避けられない構造的な逆風です。
大切なのは、赤字や債務超過そのものを隠すことではなく、原因を数字で説明し、改善の見通しを客観的な書面で示すことです。
決算の実態を正確に把握する、改善の見通しについて評価を行った書面を用意する、作成者要件を満たす中小企業診断士に依頼する。この3つの基準を押さえておけば、燃料費高騰という逆風の中でも、特定技能人材の受入れという選択肢を手放さずに済みます。
燃料費という外部要因を言い訳にせず、かといって一人で抱え込む必要もありません。数字を整理し、専門家の評価を添えることで、赤字や債務超過は「乗り越えられる課題」に変わります。
次の更新時期を待たずに、決算が固まったタイミングで動き始めることが、遠洋・沖合漁業会社にとって最も負担の少ない選択です。
まずは決算の状況だけでも、専門家に話してみることから始めてみませんか。
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