
塗装工事会社が特定技能の受入れについて、出入国在留管理庁に相談したところ、「塗料や下地材の高騰に加えて受注サイクルが長引き、決算が赤字・債務超過のままでは受入れの手続きを進められません。企業評価書を用意してください」と言われた。
最悪の場合、会社そのものが立ち行かなくなります。会社が立ち行かなくなるのは、新しい現場を受けられなくなるからです。新しい現場を受けられなくなるのは、職人の人手を確保できないから。人手を確保できないのは、いま働いている特定技能人材・技能実習生を継続雇用できなくなるからです。そして継続雇用できなくなるのは、企業評価書を用意できないからにほかなりません。
その企業評価書が必要なほどの債務超過を招いているのは、工期が延びるほど資材の仕入れ値と請負代金の差が開いていくからです。差が開くのは、外壁・屋根の塗り替え周期が延びる一方で、塗料や下地材の価格が上がり続けているからにほかなりません。
下期に入り、資材価格の動向を踏まえて来期の原価計画を見直す時期でもあります。
とはいえ、債務超過の状態でも、特定技能や技能実習(育成就労)による外国人材の受入れをあきらめる必要はありません。
この記事では、塗料高騰と受注サイクルの長期化で赤字・債務超過に陥りやすい塗装工事会社が、審査を一発で通す企業評価書をどう準備するかを、3つの手順に整理して解説します。
中小企業診断士として法人支援150社以上に関わってきた立場から、実務でつまずきやすい点を中心にまとめました。読み終える頃には、自社の決算がなぜ赤字になったのかを説明する筋道と、企業評価書を誰にどう依頼すればよいかが分かります。
この記事はこんな方におすすめです
- 塗料や資材の値上がりで利益が薄くなった方
- 大規模修繕の受注サイクルが長期化して悩む方
- 決算が債務超過で受入れ審査が通るか不安な方
- 企業評価書を誰に頼めばいいか分からない方
この記事で分かること
- 塗装工事会社が債務超過に陥りやすい理由と放置したときのリスク
- 特定技能・外国人技能実習の受入れに企業評価書を用意する3つの手順
- 企業評価書に記載する項目のおおまかなイメージ
- 自社だけで対応する限界と中小企業診断士に依頼するメリット
- 企業評価書や税理士への依頼可否など、よくある質問への回答
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塗装工事会社が塗料高騰と受注減で債務超過になり企業評価書を求められる理由

塗装工事会社の原価構造には、他の建設業種とは違う難しさがあります。塗料や下地材、シンナーなどの資材は原油や化学製品の価格動向に連動しやすく、日本銀行の企業物価指数でも化学製品を含む品目の価格上昇が続いていると示されています。
資材高騰と受注サイクルの長期化が重なる構造
新築住宅の着工が伸び悩む一方、外壁・屋根の塗り替えサイクルは建材の耐久性向上によって以前より長くなっています。「次の塗り替えまでの期間が延びた分、1件あたりの受注機会そのものが減っている」と感じている経営者は少なくありません。
加えて、元請けや工務店からの下請け受注が中心の会社では、資材が値上がりしても見積りへの反映を求めにくい立場にあります。仕入れ値だけが上がり、受注額は据え置かれる状態が続けば、粗利は確実に削られていきます。
| 状況 | 何もしなかった場合の悪化シナリオ |
|---|---|
| 塗料・下地材の価格上昇 | 見積りに反映できず、粗利率が年々下がる |
| 大規模修繕の受注サイクル長期化 | 受注件数そのものが先細り、固定費を吸収しきれなくなる |
| 職人・従業員の人件費上昇 | 最低賃金改定のたびに負担が増し、資金繰りがさらに厳しくなる |
| 決算が債務超過のまま放置 | 特定技能・外国人技能実習の受入れ審査で説明を求められ、準備が整わず受入れが遅れる |
新築塗装中心か、改修・メンテナンス中心かで事情が異なる
新築住宅の塗装を主な受注先にしている会社は、住宅着工数そのものの減少をより直接に受けます。一方、改修・メンテナンスを主軸にしている会社は着工数の影響は小さいものの、前述のとおり塗り替えサイクルの長期化という別の壁に向き合っています。
どちらの型であっても、資材価格の上昇という共通の負担がのしかかっている点は変わりません。自社がどちらの型に近いかを整理しておくと、改善計画の説明にも説得力が増します。
債務超過だと外国人技能実習・特定技能の審査で問われること
厚生労働省の資料では、監理団体の財産的基礎について、直近期末に債務超過がある場合は「中小企業診断士、公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が改善の見通しについて評価を行った書面」の提出を求める旨が示されています。
これは監理団体側の話にとどまらず、受入れ企業自身が債務超過であるときにも、同じ考え方で「改善の見通し」を客観的に説明する材料が求められる場面につながります。感覚的な「大丈夫です」では、審査担当者を納得させられません。
特定技能の定期報告についても、令和7年度から年1回の報告へと運用が変わりました。報告のたびに決算内容が確認されることを踏まえると、債務超過の状態を一度きりの説明で終わらせず、継続して見通しを示せる形にしておくことが望ましいといえます。
塗装工事会社に特有の事情も併せて説明する
同じ建設業でも、型枠や鉄筋など躯体工事の会社とは資金の回り方が違います。塗装工事は工程の後半に入ることが多く、元請けの工期が延びればそのまま支払いも後ろにずれ込みます。「工事は終わっているのに、入金だけが遅れている」状態が続くと、帳簿上の債務超過とは別に、日々の資金繰りも同時に苦しくなります。
さらに、外壁・屋根の塗装は天候の影響を受けやすい工事です。雨天が続けば工期がずれ、繁忙期に受注をまとめて取り込めなかった年は、年間の売上全体が下振れします。改善の見通しについて評価を行った書面を作成する際は、こうした季節変動や工程上の特性まで踏み込んで説明できると、評価する側の理解も深まります。
数字で状況を裏付ける書面、それが企業評価書です。次の章で、塗装工事会社が用意すべき3つの手順を具体的に見ていきましょう。
企業評価書の基本を先に押さえたい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
塗装工事会社が特定技能・外国人技能実習を受入れる企業評価書づくり3つの手順

企業評価書は、思いつきで書ける書類ではありません。次の3つの手順で土台を整えることで、中小企業診断士や公認会計士による評価にもつながりやすくなります。
- 自社の財務状況と、債務超過になった理由を数字で洗い出す
- 資材高騰・受注サイクル長期化への対策を含めた改善計画を整理する
- 中小企業診断士または公認会計士に評価書面の作成を依頼する
手順1:財務状況と債務超過の理由を数字で洗い出す
直近数期の決算書から、資材費・外注費・人件費がそれぞれどれだけ伸びたかを確認します。「なんとなく苦しい」ではなく、どの費目がどれだけ利益を圧迫しているかを数字で示すことが第一歩です。
あわせて、元請けからの支払いサイトと下請けへの支払いサイトのずれも棚卸しします。帳簿上の利益と、実際に手元に残る資金の動きは別物です。この2つを分けて説明できると、債務超過の理由がより具体的に伝わります。
手順2:資材高騰・受注減への改善計画を整理する
見積り時の資材価格の見直しルール、大規模修繕以外の定期メンテナンス案件の開拓、固定費の圧縮など、実行できる対策を時期と数値目標つきで整理します。「いつまでに、何を、どれだけ改善するか」まで書き込めると、評価する側にも伝わりやすくなります。
ここでよくある失敗は、対策を並べるだけで終わってしまうことです。「見積りの見直しルールを導入する」だけでなく、「導入後、粗利率を何パーセント改善する見込みか」まで数値で結びつけて書くことが、説得力のある改善計画になります。
手順3:中小企業診断士・公認会計士に評価書面の作成を依頼する
企業評価書のサンプル的な記載項目としては、次のような内容が一般的です。架空の数値を当てはめるのではなく、自社の実情に沿って作成することが前提になります。
| 記載項目 | 内容のイメージ |
|---|---|
| 企業概要 | 事業内容・沿革・受注構造(元請け/下請けの比率など) |
| 財務状況・債務超過の理由 | 資材高騰・受注減など、債務超過に至った要因の分析 |
| 改善の見通し | 改善計画の実行状況と、今後の収益改善の見立て |
作成できる資格は、中小企業診断士または公認会計士です。税理士は改善の見通しについて評価を行う書面の作成者としては認められていないため、依頼先を選ぶ際は注意してください。
顧問の税理士がいる会社であっても、決算内容の把握や日々の税務相談は税理士に、企業評価書の作成は中小企業診断士または公認会計士にと役割を分けて考えると、依頼先選びで迷わずに済みます。
詳しくは次のページにまとめています。
外国人技能実習・特定技能の企業評価書について 社長やご担当者の方へ。“あなた”は今、このようなお悩みを抱えていませんか。 外国人技能実習制度を活用したいが、企業評価書の作成方法が分からないという方 特定技能外国人の受入れにあたり、経営改善の見通しについて評価が必要だ...
自社の数字を洗い出し、改善計画を整理したうえで、専門家に評価してもらう。この3つの手順を踏むことが、審査に耐えられる企業評価書づくりの近道です。
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特定技能の受入れで塗装工事会社が手に入る未来

企業評価書を整え、債務超過への向き合い方を数字で説明できるようになると、塗装工事会社の日常はどう変わるのでしょうか。抽象的な話ではなく、3つの軸で具体的に描いてみます。
数字の軸:受注できる工事の量が変わる
特定技能・外国人技能実習の人材が加わることで、これまで人手不足を理由に断っていた大規模修繕の同時受注が可能になります。1件あたりの粗利が薄くても、受注件数を積み上げられる体制が整います。
複数現場を同時に動かせるようになれば、繁忙期に受注を断らずに済む分だけ、年間の売上の下振れも抑えやすくなります。天候による工期の遅れを、人員の余裕でカバーできる場面も増えていきます。
時間の軸:経営者自身が現場から離れられる
職人としての現場作業に社長自身が入り続けなければ回らない体制から、少しずつ抜け出せます。原価管理や見積り改善、次の改善計画づくりに時間を使えるようになります。
関係性の軸:金融機関・元請けとの向き合い方が変わる
企業評価書という客観的な材料を持って説明できることは、金融機関や元請けとの関係にも影響します。「見通しを説明できる会社」という印象は、次の取引にもつながっていきます。
資金繰りの相談を金融機関にするときも、感覚的な説明と、改善の見通しを数字で示した説明とでは、受け止められ方が変わります。元請けに対しても、体制が整っている会社だと伝わることで、次の工事の相談が先に回ってくることもあります。
塗料高騰にも受注サイクルの長期化にも振り回されない体制を、特定技能・外国人技能実習の受入れとともに共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

ここまでの3つの手順は、決して簡単ではありません。日々の現場管理と経理を兼務している総務担当者が、慣れない書面づくりに時間を割くのは大きな負担です。
自社だけで進める場合の壁
債務超過の理由を数字で説明する専門知識、改善計画を評価者が納得する形にまとめるノウハウ、そして何より時間。どれか一つでも欠けると、審査の場面で説明不足のまま突っ返されるリスクがあります。
特に、現場管理と経理を兼務している総務担当者にとっては、決算書を読み解く作業自体が初めての経験になることも多いはずです。慣れない作業に時間をかけているあいだに、受入れのスケジュールが後ろにずれてしまうケースも見られます。
だからこそ、企業評価書の作成に強い中小企業診断士に相談する経営者が増えています。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)の支援内容
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)では、認定経営革新等支援機関として、決算書の読み解きから改善計画の整理、企業評価書の作成まで一貫して伴走します。塗装工事会社を含む建設業の資材高騰・受注構造の相談にも対応してきました。
企業評価書 中小企業診断士という組み合わせだからこそ、財務の数字と現場の実情の両方を踏まえた書面に仕立てられます。丸投げできない領域だからこそ、隣で一緒に整理する存在が必要です。
| 支援の場面 | 伴走する内容 |
|---|---|
| 決算書の読み解き | 資材費・外注費・人件費の伸びを整理し、債務超過の理由を数字で言語化する |
| 改善計画づくり | 見積り改善・受注構造の見直しなど、実行できる対策を時期と数値目標で整理する |
| 企業評価書の作成 | 中小企業診断士として、改善の見通しについて評価を行った書面を作成する |
自社の総務担当者だけで最初から最後まで抱え込むのではなく、専門家が入ることで、経営者自身は現場と受注管理に時間を使い続けられます。
2027年施行予定の育成就労制度も見据えて備える
技能実習制度は2027年4月に育成就労制度へ移行する予定です。監理団体は監理支援機関という名称に変わりますが、財産的基礎に関する考え方は引き継がれるとみられています。今のうちに企業評価書づくりの土台となる財務の整理に慣れておくことは、制度移行後の対応にもつながります。
企業評価書をまとめて確認したい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
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企業評価書のよくある質問|特定技能・債務超過の疑問を解消

Q. 企業評価書とは、どのような書類ですか。
A. 正式には「改善の見通しについて評価を行った書面」と呼ばれ、債務超過の企業が外国人技能実習(育成就労)・特定技能の受入れにあたり、財務状況の改善見通しを客観的に説明するために提出する書面です。
Q. 企業評価書は税理士に依頼できますか。
A. 依頼できません。作成できるのは中小企業診断士または公認会計士など、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を持つ第三者に限られます。税理士への依頼先選定では誤解が生じやすい点なので、注意してください。
Q. 企業評価書のサンプルはありますか。
A. 会社ごとに事情が異なるため、そのまま使える定型サンプルはありません。ただし記載する項目は「企業概要」「財務状況・債務超過の理由」「改善の見通し」の3つに整理でき、この記事のH2-2で紹介した項目イメージが目安になります。
Q. 特定技能と外国人技能実習で、企業評価書の扱いは変わりますか。
A. どちらの制度でも、債務超過がある場合に改善の見通しを客観的に示す考え方は共通しています。2027年4月施行予定の育成就労制度でも、財産的基礎に関する同様の考え方が引き継がれるとみられています。
Q. 監理団体や監理支援機関も企業評価書の対象になりますか。
A. 厚生労働省の資料では、監理団体の財産的基礎について、直近期末に債務超過がある場合に同様の評価書面の提出を求める旨が示されています。育成就労制度では監理支援機関という名称に変わりますが、考え方は近いものになる見込みです。
Q. 企業評価書はどのくらいの期間で用意できますか。
A. 決算書の読み解きから改善計画の整理、専門家による評価まで含めると、数週間単位の時間がかかることが一般的です。受入れ申請のスケジュールから逆算して、早めに動き始めることをお勧めします。
Q. 塗装工事会社ならではの注意点はありますか。
A. 資材高騰の影響を受けやすい原価構造と、大規模修繕の受注サイクルの長期化という2つの要因を、改善計画の中でどう説明するかが重要になります。単に「景気が悪い」ではなく、自社の受注構造まで踏み込んで整理することが評価につながります。
Q. 特定技能の定期報告でも債務超過は問われますか。
A. 特定技能の定期報告に関する告示要件では、過去一定期間に債務超過となっていない法人であることが「一定の基準」の一つとして挙げられています。債務超過がある場合は、報告の場面でも改善の見通しを説明できる状態にしておく必要があります。
Q. 企業評価書の作成にかかる料金はどのくらいですか。
A. 会社の規模や決算内容によって作業量が変わるため、具体的な料金はこの記事では示していません。まずは無料相談で状況をお伝えいただき、お見積りをご確認ください。
Q. 決算書以外に、どのような資料を準備すればよいですか。
A. 直近数期の決算書に加えて、受注案件の一覧や見積書、資材の仕入れ価格の変化が分かる資料があると、債務超過の理由をより具体的に説明できます。工事の受注サイクルや元請けとの取引条件が分かるメモも役立ちます。
Q. すでに特定技能人材を受け入れている場合でも企業評価書は必要ですか。
A. 受入れ後の定期報告や更新の場面でも、決算が債務超過であれば改善の見通しを説明する必要が出てきます。受入れ時点だけでなく、その後の決算状況によって都度確認が必要になる点に注意してください。
まとめ
塗装工事会社が塗料高騰と受注サイクルの長期化を乗り切るために必要なのは、感覚ではなく数字で語れる材料です。企業評価書は、その材料を客観的な形にする書面にほかなりません。
財務状況と債務超過の理由を洗い出し、改善計画を数値で整理し、中小企業診断士または公認会計士に評価してもらう。この3つの手順を踏めば、特定技能・外国人技能実習の受入れ審査にも、落ち着いて向き合えるようになります。
資材高騰と受注サイクルの長期化は、塗装工事会社にとって一時的な逆風ではなく、しばらく続く前提として向き合うべき環境です。早めに企業評価書づくりの土台を整えた会社ほど、次の受入れの機会を逃さずに済みます。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
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