
とび・足場工事会社が特定技能の受入れについて、加入している一般社団法人建設技能人材機構(JAC)に相談したところ、「決算が債務超過のままでは、とび・足場工事の特定技能受入れを進めることができません。企業評価書を用意してください」と言われた。
債務超過の原因は、重層下請構造の中で受注単価を上げられないまま、資材費や安全対策費だけが増えていくことにあります。
このまま企業評価書を用意できなければ、今いる技能実習生・特定技能人材の継続雇用すらできなくなります。継続雇用できなければ現場の安全体制を維持できず、維持できなければ新しい受注を取れず、最悪の場合、会社そのものが立ち行かなくなります。
ちょうど10月は下期の始まりであり、最低賃金の改定が発効する時期でもあります。人件費の見直しを迫られるこの時期に、赤字決算や債務超過という現実と向き合わなければならない経営者も少なくありません。
あなただけではありません。同じ悩みを抱えるとび・足場工事会社の経営者は、決して少なくないのです。
- 足場工事会社で特定技能の受入れを検討している方
- 重層下請構造で受注単価が上がらず悩む方
- 赤字・債務超過で審査が通るか不安な方
- 企業評価書を誰に頼めばいいか分からない方
本記事では、とび・足場工事会社が債務超過に陥りやすい構造的な理由を整理したうえで、特定技能・外国人技能実習の受入れ審査に備える企業評価書のサンプル・記載イメージと、押さえておきたい3つの鉄則を、中小企業診断士の視点から具体的に解説します。
- とび・足場工事会社が債務超過に陥りやすい構造的な理由
- 企業評価書(改善の見通しについて評価を行った書面)とは何か
- 特定技能の企業評価書サンプルで分かる3つの鉄則
- 企業評価書を中小企業診断士に依頼する際の進め方
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士による法人支援実績150社以上、認定経営革新等支援機関(中小企業庁)として、債務超過企業の企業評価書作成を数多く手がけてきました。まずは現状をお聞かせください。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
\無料相談(30秒で予約)/
とび・足場工事会社が債務超過で企業評価書を求められる理由

建設業は、飲食料品製造業・製造3分野・介護業と並んで、特定技能・技能実習の外国人労働者の受入れが特に多い業種のひとつです。そのなかでも、とび・足場工事会社は現場の最前線を支える存在でありながら、経営体力の面では厳しい立場に置かれがちです。
工事が発注者から元請、一次下請、二次下請へと重なるほど、末端に近いとび・足場工事会社に残る利益は薄くなりやすいという重層下請構造の実態は、国土交通省の各種資料でも指摘されています。
この構造のなかで、次の3つの負担が同時に重くのしかかります。
- 鋼製足場材のリース料・資材価格の上昇分を、受注単価に転嫁しにくい
- 労働安全衛生法に基づき原則義務化された、フルハーネス型墨落制止用器具の導入・点検・交換の費用
- 高所作業を伴うための労災保険料率の高さと、熟練とび職人の高齢化に伴う賃金水準の上昇
受注単価は上がらないのに、資材費・安全対策費・人件費だけが先に増えていく。これが、とび・足場工事会社が赤字・債務超過に陥りやすい構造的な理由です。
資材価格と安全対策費の高止まりが追い打ちをかける
日本銀行が公表する企業物価指数を見ても、鋼材をはじめとする建設資材の価格は上昇基調が続いています。とび・足場工事会社が使う鋼製足場材(ビケ足場・くさび緊結式足場等)や仮設資材のリース料も、この流れと無縁ではありません。
加えて、労働安全衛生法に基づき、高さ2メートル以上で作業床を設けられない箇所などでの作業では、フルハーネス型墜落制止用器具の使用が原則義務化されています。器具の購入・特別教育の実施・定期的な点検交換には、当然ながら継続的な費用がかかります。こうした安全対策は法令上避けられない支出であり、削るという選択肢が現実的ではありません。
資材費・安全対策費という「削れない支出」が積み上がる一方、重層下請構造のなかで受注単価は据え置かれやすい。この板挟みが、単年度の赤字にとどまらず、数期にわたる債務超過へとつながっていきます。決算書を見て初めて事態の深刻さに気づき、慌てて対応を検討し始める経営者も少なくありません。
放置するとどうなるか
債務超過を放置したまま特定技能・技能実習(育成就労)の受入れや定期届出・更新の時期を迎えると、審査で立ち止まることになります。「一定の基準」を満たさない法人と判断されれば、定期報告の簡素化が受けられず、事務負担が増えたまま現場の人手不足が続くという悪循環に陥りかねません。
厚生労働省の資料には、監理団体の財産的基礎について、直近期末に債務超過がある場合は「中小企業診断士、公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が改善の見通しについて評価を行った書面」の提出を求める旨が記載されています。監理団体だけでなく、受入れ企業側の実務でも、同様の考え方に基づいて企業評価書の提出を求められる場面が生じています。
つまり、赤字・債務超過そのものが即座に受入れを不可能にするわけではありません。客観的な第三者による企業評価書があれば、改善の見通しを示したうえで受入れを続けられる道が開けるということです。この事実を知らずに「もう外国人材の受入れは無理だ」とあきらめてしまう経営者が少なくありません。
企業評価書の基本を先に押さえたい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
特定技能の企業評価書サンプルで分かる3つの鉄則

企業評価書(改善の見通しについて評価を行った書面)は、外国人技能実習機構(OTIT)提出書類の別紙②-1・番号20に該当する書面です。難しく考える必要はありません。ポイントは次の3つです。
鉄則1.重層下請構造での「実態」を数字で示す
まず取り組みたいのが、自社の受注構造の可視化です。元請・一次下請・二次下請のどの位置での受注が多いか、その受注単価の推移はどうか。感覚ではなく数字で示すことで、赤字・債務超過の理由に説得力が生まれます。企業評価書には、この受注構造の分析結果を反映させます。
具体的には、直近数期の工事案件を、元請案件・一次下請案件・二次下請案件に分けて集計し、それぞれの粗利率を比較します。下請次数が深い案件ほど利益率が低いという傾向が数字で見えれば、改善の打ち手(元請比率を上げる、下請次数の浅い取引先を増やす等)も具体化しやすくなります。
鉄則2.安全対策投資を「コスト」ではなく「改善計画」として位置づける
フルハーネス型墨落制止用器具の導入や、足場材の更新は、一時的に利益を圧迫する支出です。しかし、これを単なるコストとしてではなく、労働災害を減らし、若手人材が定着しやすい職場をつくるための改善投資として企業評価書に位置づけることで、改善の見通しに説得力が加わります。
安全対策への投資は、労働災害の発生率を下げ、結果として労災保険料の負担軽減や、若年入職者の定着にもつながる可能性がある取組みです。企業評価書には、投資の内容だけでなく「なぜその投資が改善につながるのか」という理由づけまで書き込むことが望まれます。
鉄則3.改善の見通しを「時間軸」で具体的に示す
「いつまでに、何をして、どう改善するか」を時間軸で示すことが、審査を担当する第三者にとって最も重要な判断材料になります。単年度の業績だけでなく、複数年の見通しを示すことが求められます。
例えば「1年目は受注構造の見直しと原価管理の徹底、2年目は元請比率の引き上げ、3年目に債務超過の解消を見込む」といった形で、段階ごとの取組みと数値目標を対応させます。根拠のない楽観的な数値ではなく、実行可能な取組みに裏づけられた見通しであることが、評価者にも、金融機関にも伝わります。
企業評価書には、次のような項目を盛り込むのが一般的です。架空の数値や記載例をそのまま流用するのではなく、自社の実態に即して作成することが前提になります。
| 記載項目 | 記載イメージ |
|---|---|
| 企業概要 | 事業内容・沿革・受注構造(元請比率/下請次数) |
| 財務状況・債務超過の理由 | 直近決算の状況、赤字・債務超過に至った背景(資材高騰・安全対策投資等) |
| 改善に向けた取組み | 受注構造の見直し、資材調達の工夫、人材育成への投資 など |
| 改善の見通し | 今後数年間の売上・利益・自己資本の見通しと、その根拠 |
| 評価者の所見 | 中小企業診断士・公認会計士による客観的な評価コメント |
この企業評価書を作成できるのは、中小企業診断士または公認会計士です。「企業評価書 税理士」と検索する方もいますが、税理士がこの評価書を作成することはできません。決算書の作成を依頼している税理士とは別に、企業評価を専門とする中小企業診断士等への依頼が必要になる点は、押さえておきたいポイントです。
「顧問税理士に頼めばよいのでは」と考える経営者は少なくありませんが、資格の違いを知らないまま時間だけが過ぎてしまうと、受入れの審査時期に間に合わなくなるおそれもあります。早めに専門家を見極めることが、遠回りをしないための近道です。
企業評価書のサンプル・ひな形をそのまま流用しても、審査担当者に「自社の実態が反映されていない」と見抜かれてしまうことがあります。フォーマットは参考にしつつ、中身は自社の受注構造・改善計画に置き換える意識が欠かせません。詳しくは次のページにまとめています。
外国人技能実習・特定技能の企業評価書について 社長やご担当者の方へ。“あなた”は今、このようなお悩みを抱えていませんか。 外国人技能実習制度を活用したいが、企業評価書の作成方法が分からないという方 特定技能外国人の受入れにあたり、経営改善の見通しについて評価が必要だ...
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
\無料相談(30秒で予約)/
労務単価と安全投資を整え、特定技能の受入れで手に入る未来

企業評価書を整え、改善の見通しを客観的に示せるようになると、経営に3つの変化が生まれます。
人手不足に左右されない現場体制を築く
特定技能・技能実習(育成就労)の受入れが継続できれば、熟練とび職人の高齢化・若年入職者不足という課題に、外国人材という選択肢を加えられます。現場の担い手を安定して確保できることは、受注機会を逃さないことに直結します。若手の日本人採用が難しい状況が続くなかで、この選択肢を手放さずに済むことの意味は小さくありません。
重層下請構造のなかでの交渉力を高める
受注構造と原価を数字で把握できていると、元請・上位下請との単価交渉でも根拠を持って臨めます。「なんとなく赤字」から「どこで利益が失われているか分かる経営」への転換が、交渉の土台になります。感覚で「単価を上げてほしい」と伝えるのと、粗利率の推移という数字を示しながら伝えるのとでは、相手の受け止め方も変わってきます。
金融機関からの信頼を積み上げる
債務超過の状態であっても、改善の見通しを客観的な第三者評価とともに示せる会社は、金融機関からの見え方が変わります。場当たり的な対応ではなく、計画に基づいた経営をしている会社だと伝わるからです。運転資金の相談や借換えの場面でも、企業評価書で整理した内容がそのまま説明資料として役立ちます。
資材価格の高騰も、重層下請構造も、一社の努力だけで一朝一夕に解決できるものではありません。しかし、自社の実態を正しく把握し、改善の見通しを描くことはできます。それは、決算書の数字を眺めるだけでは見えてこない、自社の「勝ち筋」を見つける作業でもあります。人手不足に振り回されない現場体制と、交渉力のある経営を、共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

ここまで見てきたとおり、企業評価書には財務分析・受注構造の可視化・改善計画の策定という、専門性の異なる要素が同時に求められます。日々の現場管理や資金繰りに追われながら、経営者自身がこれらをゼロから整理するのは容易ではありません。
さらに、企業評価書は「誰が評価したか」という客観性そのものが審査上の意味を持つ書面です。自社の担当者や顧問税理士が作成しても、要件を満たす評価書としては認められません。中小企業診断士等の公的資格を持つ第三者による評価が必要になる理由がここにあります。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、代表の松本昌史が中小企業診断士として、法人支援実績150社以上、認定経営革新等支援機関(中小企業庁)の認定のもと、債務超過企業の企業評価書作成に伴走してきました。とび・足場工事会社特有の重層下請構造や安全対策投資の負担も踏まえたうえで、実態に即した企業評価書を一緒に組み立てます。
具体的には、決算書と工事案件の一覧をもとにした受注構造・原価の分析、改善計画の策定支援、そして中小企業診断士としての評価コメントの作成までを一貫して担います。「何を、どこまで自社で準備すればよいか」から一緒に整理するため、初めて企業評価書を依頼する方でも、迷わず相談を進められます。
「決算書はあるが、受注構造まで整理したことはない」という会社がほとんどです。まずは今ある決算書だけで構いません。そこから一緒に、改善の見通しを描いていきます。
企業評価書をまとめて確認したい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
\無料相談(30秒で予約)/
企業評価書のよくある質問|特定技能・債務超過の疑問を解消

Q. 企業評価書とは何ですか。
A. 正式には「改善の見通しについて評価を行った書面」と呼ばれる書面で、外国人技能実習機構(OTIT)提出書類の別紙②-1・番号20に該当します。決算が債務超過にある法人が、特定技能・技能実習(育成就労)の受入れや更新の審査を受ける際に、改善の見通しを客観的に示すために用いられます。財務諸表だけでは伝わらない「これからどう改善していくか」を、第三者の視点から補う役割を持つ書面だと考えると分かりやすいでしょう。
Q. 企業評価書は誰が作成できますか。
A. 中小企業診断士または公認会計士です。決算書を作成する税理士とは別の資格であり、税理士は企業評価書を作成できません。
Q. 特定技能の企業評価書サンプルはどこで見られますか。
A. 一般的な記載項目は前章の表で紹介したとおりですが、そのまま流用できる汎用サンプルは存在しません。自社の受注構造・財務状況に即した内容を、専門家と一緒に作成する必要があります。
Q. 外国人技能実習と特定技能で、企業評価書の扱いは違いますか。
A. どちらも債務超過の状態にある法人が受入れ・更新の審査を受ける際に、改善の見通しを示す書面として求められる考え方は共通しています。制度ごとの提出先・様式の細部は異なるため、個別の状況に応じた確認が必要です。
Q. 2027年施行予定の育成就労制度でも、企業評価書は必要になりますか。
A. 育成就労制度は技能実習に代わる新制度として2027年4月の施行が予定されています。財産的基礎に関する考え方は技能実習制度から引き継がれる見込みのため、債務超過にある法人には、引き続き同様の評価書面が求められると見込まれます。
Q. 債務超過の理由書と企業評価書は同じものですか。
A. 別の書面です。債務超過の理由書は、なぜ債務超過に至ったかを説明する書面であるのに対し、企業評価書は中小企業診断士等の第三者が改善の見通しを評価する書面です。両方の提出を求められる場合もあります。
Q. 重層下請構造そのものを変えることはできますか。
A. 発注構造を一社の努力だけで変えることは容易ではありません。ただし、自社がどの位置で受注し、どこで利益が失われているかを可視化することは、単価交渉や元請の選定を見直す材料になります。少しずつでも元請比率を高めていく取組みは、企業評価書の改善計画としても示しやすいポイントです。
Q. フルハーネス型墨落制止用器具の導入費用は、企業評価書にどう反映させますか。
A. 単なる支出としてではなく、労働災害の防止と人材定着につながる改善投資として、改善計画の一部に位置づけて記載します。
Q. 相談から企業評価書の完成まで、どのくらいの期間がかかりますか。
A. 財務状況や受注構造の把握状況によって異なります。まずは無料相談で現状をお聞かせいただき、必要な資料と大まかな進め方をお伝えします。
Q. 顧問税理士には何を相談すればよいですか。
A. 決算書の作成や日々の税務は、引き続き顧問税理士に相談するのが基本です。企業評価書の作成は、それとは別に中小企業診断士等へ依頼する形になります。両者が連携できると、財務データのやり取りもスムーズです。
まとめ
とび・足場工事会社が赤字・債務超過に陥りやすい背景には、重層下請構造のなかで受注単価が上がりにくい一方、資材費・安全対策費・人件費だけが先に増えていくという構造的な理由があります。この現実から目をそらさず、改善の見通しを客観的な企業評価書として示すことが、特定技能・技能実習(育成就労)の受入れを続けるための現実的な一歩になります。
受注構造を数字で把握する、安全対策投資を改善計画に位置づける、改善の見通しを時間軸で示す——本記事で紹介した3つの鉄則を、自社だけで完璧にこなす必要はありません。中小企業診断士という第三者の視点を借りることで、審査に耐えうる企業評価書に仕上げることができます。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
\無料相談(30秒で予約)/
関連記事
有限会社D様(群馬県藤岡市、建設業、従業員6名)は、外国人技能実習生の受け入れにあたり、「企業評価書」の提出が求められ、どこに依頼すべきか迷われていました。 企業評価書は、中小企業診断士が作成できる独占業務であり、財務状況や経営計画に関する専門的な分析が必要です。 KICKコンサルテ...
企業評価書は、中小企業診断士にしか作成できない独占業務であり、財務状況や経営計画、労務体制に関する高度な分析が求められます。 群馬県高崎市で建設業を営む株式会社E様(従業員4名)では、外国人技能実習生の受け入れにあたり、短期間での企業評価書の提出が必要となっていました。しかし、「本業で手が回ら...









コメント