
食肉加工業の会社が特定技能の受入れについて、加入している厚生労働省所管の窓口に相談したところ、「決算が債務超過の状態だと、このままでは受入れの審査が通りません。企業評価書がないと先に進められません」と言われた。
債務超過の原因は、円安の長期化と輸入食肉の価格高騰にあります。ハム・ソーセージ・ベーコンや食肉処理加工の現場では、原価計算が追いつかないまま粗利益が薄くなる会社が増えています。
このまま企業評価書を用意できなければ、今いる特定技能・技能実習人材の継続雇用すらできなくなります。継続雇用できなければ加工ラインに必要な人手を確保できず、確保できなければ生産量を維持できず、売上は作れません。最悪の場合、会社の存続そのものが立ち行かなくなります。
あなただけではありません。原料高・円安・人手不足という共通の課題を抱える食肉加工業の経営者から、同じ相談が続いています。
結論から言えば、債務超過であっても「改善の見通しに関する評価書面(企業評価書)」を適切に用意すれば、受入れ審査は前に進みます。ただし、その中身には満たすべき条件があります。
- 輸入原料肉の高騰で粗利益が年々薄くなっている方
- 円安の長期化で原価計算が追いつかない方
- 直近決算が債務超過で受入れ審査に不安がある方
- 企業評価書を誰に頼めばいいか分からない方
- ハム・ソーセージ製造の人手不足を急ぎ解消したい方
- 食肉加工業が債務超過に陥りやすい構造的な理由
- 企業評価書(改善の見通しに関する評価書面)の役割と作成できる資格
- 受入れ審査を通すために満たすべき4つの条件
- 育成就労制度への移行を見据えた準備の進め方
この記事は、法人支援150社以上の実績を持つ中小企業診断士が、食肉加工業の財務改善と外国人材受入れの両面から実務目線で解説します。読み終える頃には、次に何を準備すればよいかが具体的に分かります。
「うちはまだ大丈夫」と思っていても、原料相場と為替は経営者の意思とは関係なく動きます。早めに準備を始めた会社ほど、選択肢を多く残したまま次の決算期を迎えられます。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
食肉加工業が債務超過に陥る構造と、放置したときに起きること

食肉加工業(牛豚食肉処理加工業、ハム・ソーセージ・ベーコン製造など)は、特定技能「飲食料品製造業分野」の対象職種にも含まれる、外国人材の受入れニーズが特に高い業種です。
その一方で、原料肉の相場変動と価格転嫁の遅れによって、利益が残りにくい構造を抱えています。
原因① 輸入原料肉の高騰と円安
帝国データバンクの業界分析によれば、食肉加工業は原材料の輸入依存度が高く、円安基調が調達コストを押し上げています。
牛肉・豚肉・鶏肉のいずれも、国際相場と為替の両方に仕入れ値が左右されるため、経営者が価格をコントロールしにくいのが実情です。
原因② 家畜伝染病による相場急変と供給不安
鳥インフルエンザをはじめとする家畜伝染病の流行は、特定の部位・品目の相場を短期間で急騰させます。
帝国データバンクも、こうした感染症リスクを食肉加工業界の経営リスクとして挙げています。仕入れ先の分散が進んでいない会社ほど、影響を直接受けやすくなります。
帝国データバンクの「食品主要195社」価格改定動向調査によれば、食品業界全体の値上げ要因は原材料費がほぼすべての品目に影響し、物流費・人件費の上昇も重なって、値上げが常態化しつつある局面が続いています。食肉加工業も例外ではなく、複数のコスト要因が同時に積み上がる構造になっています。
原因③ 価格転嫁の遅れと薄い粗利益率
加工賃・パート人件費・冷凍冷蔵の電気代も年々上がっていますが、取引先との価格交渉は簡単ではありません。
食品業界全体でも、値上げの主因は原材料費・物流費・人件費の複合要因になっており、「原料だけ」「人件費だけ」の値上げ交渉では取引先の理解を得にくいという声をよく聞きます。
結果として、売上は伸びていても手元に利益が残らず、気づいたときには純資産がマイナス、つまり債務超過という状態に陥ります。
在留資格制度の使い分けを整理する
食肉加工業で活用できる外国人材の在留資格には、技能実習・特定技能・育成就労(2027年4月施行予定)があります。いずれも直近期末が債務超過だと、追加で企業評価書の提出が求められる点は共通しています。
| 制度 | 位置づけ |
|---|---|
| 外国人技能実習 | 技能移転を目的とした制度。食肉加工業も対象職種に含まれる |
| 特定技能 | 人手不足分野での就労を目的とした制度。飲食料品製造業分野が対象 |
| 育成就労(2027年4月施行予定) | 技能実習に代わる新制度。人材育成と確保を目的とする |
特定技能「飲食料品製造業分野」の対象職種には、牛豚食肉処理加工業やハム・ソーセージ・ベーコン製造が含まれます。技能実習2号移行対象職種でも、食肉加工関連の職種は幅広く対象になっており、食肉加工業は制度上、外国人材の受入れがしやすい業種のひとつです。
だからこそ、財務要件さえクリアできれば、人手不足の解消に向けた選択肢が大きく広がります。
よくある失敗 決算直前に慌てて動く
現場でよく見かけるのが、決算が確定してから慌てて企業評価書の準備を始めるケースです。改善計画の数値に十分な根拠を持たせられず、審査官への説明も後手に回りがちになります。
債務超過に気づいた時点、あるいは決算の半年以上前から準備を始めた会社ほど、落ち着いて条件を整えられる傾向にあります。
このまま対策を取らずに決算期を迎えると、通常の決算書2期分だけでは外国人材の受入れ審査が進まず、人手不足が解消されないまま原価上昇だけが続く——という悪循環に陥りかねません。
債務超過は、それ自体が受入れを一律に妨げるものではありません。重要なのは、改善の見通しを客観的に示せるかどうかです。次の章で、その具体的な条件を解説します。
特定技能・技能実習を受入れるために満たすべき4つの条件

直近期末が債務超過の食肉加工会社が、特定技能・外国人技能実習(育成就労)の受入れ審査を通すには、次の4つの条件を満たすことがポイントになります。
大切なのは、売上ではなく利益と資金繰りを見ながら経営改善を進める視点です。売上を追うだけでは、原料高が続く限り粗利益は薄まり続けます。まず手元に残るお金を増やす構造に転換することが、審査を通すための土台にもなります。
条件1 原価と粗利益率を「見える化」した管理会計
まず必要なのは、部位別・取引先別に原価と粗利益率を把握できる管理会計の体制です。
どんぶり勘定のままでは、審査官にも金融機関にも「改善の見通し」を数字で説明できません。経営改善は精神論ではなく、数字を見える化する構造改善から始まります。
具体的には、豚肉・牛肉・鶏肉といった原料区分ごとに仕入れ値の推移を記録し、製品別(ハム・ソーセージ・ベーコン・精肉パックなど)に粗利益率を月次で把握できる状態を作ります。
加工賃・パート人件費・冷凍冷蔵の電気代などの固定費も切り分けて管理すると、どの工程でコストが膨らんでいるかが具体的に見えてきます。
条件2 価格転嫁を実行した記録があること
値上げ交渉の履歴、価格改定通知、取引先ごとの粗利益率の推移など、「価格転嫁に取り組んでいる事実」を示せる資料を残しておくことが重要です。
口頭での交渉だけでなく、書面や見積書の形で残しておくと、企業評価書の説得力が大きく変わります。
取引先によって交渉の進み具合に差が出るのは自然なことです。交渉が進んでいる取引先・停滞している取引先を分けて記録しておくと、改善計画の中で「次にどこへ手を打つか」を具体的に示せます。
条件3 中小企業診断士による「企業評価書」の提出
直近期末が債務超過の場合、外国人技能実習機構(OTIT)提出書類の別紙②-1・番号20にあたる「改善の見通しについて評価を行った書面」、いわゆる企業評価書が必要になります。
この書面を作成できるのは、企業評価を行う専門性を有すると認められる中小企業診断士または公認会計士に限られます。顧問税理士に依頼しても、税理士の資格だけでは作成できない点に注意してください。
企業評価書は、財務状況・改善計画・実行体制を客観的な視点で整理し、審査官が「この会社は立て直せる」と判断できる材料をそろえる書類です。
食肉加工業の企業評価書作成については、企業評価書作成支援サービスで、財務分析から書面作成まで伴走しています。
条件4 具体的な改善計画とその実行体制
企業評価書には、原材料調達先の複線化、エネルギーコストの削減、価格転嫁の継続実行など、数字と期限を伴う改善計画を盛り込む必要があります。
「頑張って改善します」という抽象的な宣言ではなく、いつまでに何を、どの数値まで改善するのかを具体的に示すことが、審査を通す上での分かれ目になります。
例えば、輸入原料肉に依存していた仕入れ先を国内複数業者へ分散する計画、光熱費の削減目標、粗利益率を何パーセントまで引き上げるかといった数値目標を、実行時期とあわせて明記します。
| 条件 | 具体的にやること |
|---|---|
| 1. 管理会計の整備 | 部位別・取引先別の原価と粗利益率を見える化する |
| 2. 価格転嫁の実行記録 | 値上げ交渉・改定通知を書面で残す |
| 3. 企業評価書の提出 | 中小企業診断士または公認会計士に作成を依頼する |
| 4. 改善計画の具体化 | 調達複線化・コスト削減を数字と期限で示す |
4つの条件はどれか1つではなく、揃って初めて説得力を持ちます。特に条件1の管理会計が整っていないと、条件3・4の書面も数字の裏付けを欠いたものになりがちです。
お断りいただいても、費用は一切かかりません。まずは決算書と現状の課題をお聞かせいただくだけで構いません。
4つの条件を満たした先に手に入る未来

4つの条件を整え、企業評価書を提出できる体制を作ると、食肉加工業の経営には3つの変化が生まれます。
数字の変化 粗利益率が「見える」経営へ
部位別・取引先別に原価が見えるようになると、どの取引先の粗利益率が低いのかが一目で分かります。感覚ではなく数字で価格交渉に臨めるようになり、値上げ要請の根拠も明確になります。
時間の変化 審査対応に振り回されなくなる
企業評価書と改善計画を先に用意しておけば、決算期が来るたびに慌てて資料をかき集める必要がなくなります。育成就労制度への移行(2027年4月施行予定)にも、余裕を持って対応できます。
関係性の変化 金融機関・取引先からの信頼
管理会計が整い、改善計画を数字で語れる会社は、金融機関からの評価も変わります。取引先との価格交渉でも、根拠を示せる会社は交渉力を持ちやすくなります。
さらに、外国人材の受入れが安定すれば、加工ライン全体の人手不足が緩和され、既存社員の残業や休日出勤への依存も減らせます。現場の疲弊が続く状態から、計画的な人員配置ができる状態へ移行できるのは大きな変化です。
採用力の変化 選ばれる会社になる
財務体質が整い、外国人材の受入れ体制が安定している会社は、監理団体や登録支援機関からの紹介でも信頼を得やすくなります。人手不足が続く業界だからこそ、「きちんと準備している会社」であること自体が採用競争力になります。
原料高・円安という共通の敵を前にしても、数字で語れる経営体制と外国人材という戦力を、共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、KICKコンサルティングの支援

ここまでの4つの条件は、いずれも理屈としては理解できても、日々の製造・出荷業務と並行して自社だけで整えるのは簡単ではありません。
特に食肉加工業は、加工ラインの稼働と受発注の管理だけでも人手を取られやすい業種です。そこに財務改善と企業評価書の準備まで重なると、経営者一人で抱え込むには限界があります。
専門性の壁
企業評価書は中小企業診断士または公認会計士でなければ作成できません。社内に管理会計や財務改善の専門知識を持つ人材がいない会社がほとんどです。
顧問税理士がいても、決算書の作成・申告業務が本来の専門領域であり、企業評価そのものを行う資格までは持っていません。誰に何を頼めばよいのか分からず、動き出せないまま時間だけが過ぎてしまうケースも見られます。
時間コストの壁
原価管理の仕組みづくりから改善計画の策定まで、独学で進めようとすると数か月かかることも珍しくありません。その間も原料相場と受入れ審査の期限は待ってくれません。
製造・出荷・品質管理といった日々の業務に加えて、財務資料の整理まで経営者自身が抱え込むと、どちらも中途半端になりがちです。
判断ミスのリスク
改善計画の数値設定を誤ると、審査官に「見通しが甘い」と判断されるリスクがあります。客観性のある第三者の視点が入ることで、この判断ミスを防げます。
身内だけで作った改善計画は、どうしても希望的観測が混ざりやすくなります。第三者の専門家が数字を精査することで、審査官からの信頼度も変わってきます。
だからこそ、企業評価書の作成を中小企業診断士に任せる食肉加工業の経営者が増えています。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、法人支援150社以上・認定経営革新等支援機関として、財務の見える化から企業評価書の作成、育成就労制度への移行準備まで一気通貫で伴走します。「申請サポート」ではなく、利益が残る構造そのものを作るご支援です。
具体的には、次のような支援を行っています。
- 部位別・製品別の原価管理、管理会計の仕組みづくり
- 債務超過の状態から、改善の見通しについて評価を行った書面(企業評価書)の作成
- 価格転嫁・原材料調達の複線化を含む改善計画の策定支援
- 育成就労制度への移行を見据えた財務資料の整備
- 金融機関対応・資金繰り改善の伴走支援
代表の松本昌史は、中小企業診断士(MBA)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士として、建設業・製造業を中心に150社以上の経営改善を支援してきました。「丸投げしたいほど頼りたい」という不安な気持ちに、安心感を持って寄り添うことを大切にしています。
ご相談いただいても、しつこい営業は一切ありません。1社ごとに時間をかけてお話を伺うため、月あたりのご相談枠には限りがあります。
よくある質問

Q. 企業評価書とは、どんな書類ですか
A. 正式には「改善の見通しについて評価を行った書面」といい、直近期末が債務超過の企業が、特定技能・外国人技能実習(育成就労)を受入れる際に追加で求められる書類です。財務状況と改善計画を第三者の専門家が客観的に評価します。通常求められる決算書2期分に加えて提出する位置づけの書類です。
Q. 企業評価書のサンプルやひな形はありますか
A. 定型の公開ひな形はなく、各社の財務状況に合わせて個別に作成します。粗利益率の推移や改善計画の内容は会社ごとに異なるため、既製のフォーマットをそのまま流用することはおすすめできません。他社の書面を参考にしても、自社の数字に置き換える作業は結局専門家の判断が必要になります。
Q. 企業評価書は税理士に依頼できますか
A. 作成できるのは中小企業診断士または公認会計士に限られます。税理士は決算書の作成には強い専門家ですが、企業評価を行う専門性を有すると認められる資格には該当せず、企業評価書そのものの作成資格は持っていません。顧問税理士とは連携しながら進める形になります。
Q. 債務超過でも特定技能の受入れは可能ですか
A. 可能です。債務超過であること自体が一律に受入れを妨げるわけではなく、改善の見通しを客観的に示せるかどうかが判断のポイントになります。財務状況が厳しいことよりも、改善に向けた具体的な行動があるかどうかが重視されます。
Q. 債務超過の理由書は自社で作成してもよいですか
A. 決算書に添える簡単な事情説明であれば自社作成も可能ですが、企業評価書として認められる「改善の見通しについて評価を行った書面」は、資格を持つ第三者による作成が求められます。自社作成の書面だけでは、審査で求められる客観性を満たせない場合があります。
Q. 育成就労制度になると、企業評価書の扱いは変わりますか
A. 2027年4月施行予定の育成就労制度でも、財務要件の考え方は技能実習・特定技能と大きくは変わらない見込みです。今のうちから管理会計と改善計画を整えておくと、移行後も慌てずに対応できます。制度の詳細が固まる前に土台を作っておく会社ほど、移行期の混乱に振り回されずに済みます。
Q. 食肉加工業の中でも、特にどんな会社が該当しますか
A. 牛豚食肉処理加工業、ハム・ソーセージ・ベーコン製造など、特定技能「飲食料品製造業分野」の対象職種にあたる会社が該当しやすい傾向にあります。技能実習2号移行対象職種でも食肉加工関連の職種は幅広く含まれています。
Q. 企業評価書の作成には、どれくらいの期間がかかりますか
A. 財務資料の整理状況によって異なりますが、決算書・試算表などの資料がそろっていれば、比較的短期間での対応も可能です。逆に管理会計が整っていない場合は、原価の整理から着手するため、多少時間に余裕を持って準備を始めることをおすすめします。
Q. 相談したら、契約を迫られませんか
A. ご相談いただいても、売り込みや契約の強要は一切行いません。現状をお聞きした上で、必要な対応をお伝えするだけです。お断りいただいても費用はかかりません。1社ごとに時間をかけてお話を伺う方針のため、ご不安な点は遠慮なくお尋ねください。
まとめ
食肉加工業の債務超過は、輸入原料肉の高騰・円安・価格転嫁の遅れという構造的な要因から生まれます。特別な事情ではなく、多くの食肉加工会社に共通する課題です。
大切なのは、赤字や債務超過を隠すことではなく、管理会計・価格転嫁・企業評価書・改善計画という4つの条件を整え、改善の見通しを客観的に示すことです。
4つの条件は、どれも今日から着手できるものばかりです。原価の見える化は明日の会議からでも始められますし、価格改定の記録も次の取引先訪問から残せます。
一方で、企業評価書の作成という専門性が求められる部分は、資格を持つ第三者に任せることで、時間とリスクの両方を抑えられます。
原料高と人手不足という共通の課題に、数字で立ち向かう準備を、今日から始めませんか。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
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