
「受注は途切れていないのに、決算書はずっと赤字のまま」。樹脂成形・プラスチック加工を営む経営者から、こうした声をよく聞きます。自動車部品や電子部品の下請けとして品質は高く評価されているのに、樹脂原料(ナフサ由来のペレット等)の価格が上がるたびに利益が削られ、気づけば債務超過に近づいている。そんな会社は、決してあなただけではありません。
公正取引委員会の調査でも、原材料価格が高騰した下請事業者が単価の引上げを求めたにもかかわらず、発注元が十分な協議をせずに従来どおりの単価を据え置いていた事例が報告されています。中小企業庁「2025年版中小企業白書」では、倒産企業の約7割が最終赤字であり、倒産直前には約7割が債務超過に陥っていたと分析されています。つまり、価格転嫁ができない構造は、あなたの会社固有の弱さではなく、樹脂成形・プラスチック加工業界に共通する構造的な問題なのです。
敵は、原材料高騰でも人手不足でもなく、「単価が据え置かれたまま声を上げられない取引構造」そのものです。この構造を変えないまま外国人材の受入れだけを急ぐと、審査の入り口で足止めされます。実は、債務超過であっても、中小企業診断士等が作成する「改善見通しに関する評価書面(通称・企業評価書)」を提出すれば、特定技能・育成就労(技能実習の新制度、2027年4月施行予定)の受入れは可能です。この記事では、樹脂成形・プラスチック加工業の社長・総務担当者に向けて、企業評価書に欠かせない4つの条件を、実務の視点から解説します。
一般社団法人日本自動車部品工業会が公表している価格転嫁ツールの背景資料でも、石油由来の樹脂原料や合成ゴムの値上げが自動車産業のサプライチェーン全体に波及し、収益力の低下が避けられないと指摘されています。樹脂成形・プラスチック加工業は、この波を最も直接受ける立場にあります。原料を仕入れる立場としては値上げの影響をそのまま受け止め、製品を納める立場としては単価交渉力が弱い。この「板挟み構造」こそが、業界全体で赤字・債務超過が増えている根本原因です。
この記事で分かること
- 樹脂成形業が債務超過に陥る3つの根本原因
- 特定技能の受入れ審査で企業評価書が必要になる場面
- 企業評価書に欠かせない4つの条件
- 中小企業診断士に評価書を依頼する具体的な流れ
- 放置した場合に起こりうる悪化シナリオ
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樹脂成形業が債務超過に陥る構造と、放置したときに起きること

樹脂成形・プラスチック加工業の赤字は、単一の原因ではなく、次の3つが絡み合って起きています。
| 原因 | 現場で起きていること | 財務への影響 |
|---|---|---|
| 樹脂原料の価格高騰 | ナフサ由来のペレット価格が数年で大きく変動し、仕入原価が予測できない | 粗利率が数ポイント単位で削られる |
| 下請け単価の据え置き | 発注元との交渉力が弱く、原価上昇分を製品価格に転嫁できない | 増収でも利益が残らない「増収減益」構造 |
| 設備の維持・更新負担 | 射出成形機など大型設備の老朽化が進み、更新投資が重くのしかかる | 減価償却費・修繕費がキャッシュフローを圧迫 |
この3つを放置すると、何が起きるでしょうか。仮に年商4億円、粗利率18%の樹脂成形会社で、樹脂原料価格が3年連続で上昇し、単価転嫁が半分しか進まなかったケースを考えます。粗利率が18%から13%まで低下すると、年間で約2,000万円の利益が消える計算になります。この状態が2〜3期続けば、内部留保は食いつぶされ、純資産がマイナス、つまり債務超過へと転落します。
東京商工リサーチのデータインサイトでも、倒産企業のうち直近決算が最終赤字だった割合、倒産直前に債務超過だった割合がいずれも約7割に達し、2年間で3割以上増加したと報告されています。円安と原材料・資材価格の高騰に、人手不足による人件費上昇が重なり、価格転嫁が急務であるにもかかわらず交渉力の弱い中小企業ほど直撃を受けている実態が示されています。樹脂成形・プラスチック加工業も、この傾向から外れてはいません。
そして債務超過のまま外国人材の受入れ・更新の時期を迎えると、出入国在留管理庁の審査で「事業の継続性に疑義がある」と判断され、在留資格の許可・更新が止まるリスクが生じます。人手不足を補うために特定技能人材を頼りにしていた会社ほど、この足止めのダメージは深刻です。成形機を動かせる人材が1人減るだけで、生産ラインが止まり、納期遅延から取引先の信頼を失うという二次的な損失にもつながりかねません。売上ではなく、利益と資本の構造こそが、外国人材受入れの生命線だと理解しておく必要があります。
価格転嫁が進まない会社に共通する現場の失敗パターン
価格転嫁の交渉がうまくいかない会社には、共通する失敗パターンがあります。原価上昇分を「感覚」で伝え、根拠となる数値資料を示さないまま交渉に臨んでいるケースです。発注元の担当者は、樹脂原料の値上がり幅や自社の原価に占める比率を具体的な数字で示されなければ、社内稟議を通せません。感覚的な値上げ要請は、交渉のテーブルにすら乗らないまま据え置かれてしまいます。
もう一つの失敗パターンは、交渉のタイミングを決算期末まで先延ばしにしてしまうことです。原材料価格が上昇した直後に協議を申し入れず、数か月分の逆ざやを抱え込んだまま放置すると、その期の赤字幅がそのまま拡大します。価格転嫁の協議は、価格変動が起きたタイミングで速やかに申し入れることが、公正取引委員会の報告書でも望ましい対応として位置づけられています。
企業評価書で審査を通過するための4つの条件

債務超過だからといって、特定技能・育成就労の受入れが一律に不可能になるわけではありません。出入国在留管理庁のガイドラインでは、直近事業年度に債務超過があっても、その要因が一時的なものであり、今後の事業計画等に照らして、公認会計士・税理士・中小企業診断士等の公的資格を持つ第三者が「事業の継続性・改善の見通しがある」と評価した書面を提出すれば、受入れの適格性が認められるとされています。この書面が「改善見通しに関する評価書面」、いわゆる企業評価書です。
樹脂成形・プラスチック加工業でこの評価書を実務上機能させるには、次の4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 債務超過の原因を数値で特定する――「原材料高騰」「単価据え置き」「設備更新」のどれが、どの比率で利益を圧迫したかを損益計算書・製造原価報告書から定量化します。
- 3〜5年の改善計画を数値ロードマップで示す――粗利率の回復目標、価格転嫁交渉の進め方、設備投資の返済計画を年度ごとの数値で提示します。
- 第三者性が担保された専門家が評価する――自社や顧問税理士による自己評価ではなく、独立した中小企業診断士が客観的に評価している体裁を整えます。
- 業界特有のリスクへの言及がある――樹脂原料価格の変動リスクや下請け構造という、樹脂成形業に固有の外部要因を評価書内で説明し、改善計画の実現可能性を裏づけます。
特に4つ目は見落とされがちです。汎用的なひな型をそのまま使うと、審査官から「業界の実態を踏まえていない」と受け取られかねません。2024年3月の閣議決定により、特定技能「工業製品製造業分野」にプラスチック製品製造業(日本標準産業分類の中分類18)が新たな対象業務区分として加わったことも踏まえ、業界特有の事情を評価書に反映させることが通過の近道になります。
条件1と2――原因の特定と数値ロードマップは表裏一体
原因を数値で特定する作業と、改善計画を数値ロードマップで示す作業は、実務上は同時に進めます。まず過去3期分の製造原価報告書を分解し、樹脂原料費・労務費・外注加工費のそれぞれが売上高に対してどう変化したかをグラフ化します。そのうえで、原料費の上昇分のうち何割を単価転嫁で回収し、何割を歩留まり改善や工程見直しで吸収するのか、年度ごとの目標値を設定します。この数値がないまま「頑張って改善します」とだけ書いても、審査官には響きません。
条件3――第三者性は資格の有無だけでは足りない
第三者性は、単に資格を持っているかどうかだけで判断されるものではありません。日頃から自社の税務顧問を担っている専門家は、たとえ資格要件を満たしていても「利害関係がある」と見なされやすい立場です。評価書の説得力を高めるには、決算・税務の顧問契約を持たない、独立した中小企業診断士に依頼するのが安全な選択です。
条件4――業界特有のリスクを「他人事」にしない
樹脂原料の価格は、原油相場や為替、環境規制の動向によって短期間で大きく変動します。この変動リスクを評価書の中で「外部環境として仕方がない」と書くだけでは不十分です。価格が再び上昇した場合にどう対応するのか、在庫の持ち方や複数仕入先の確保といった具体策まで踏み込んで書くことで、評価書全体の実現可能性に厚みが出ます。
実務では、外国人技能実習・特定技能の企業評価書作成支援を専門家に依頼し、決算書・製造原価データをもとに4条件をすべて満たす書面を仕上げるのが現実的な進め方です。自社だけで整えようとすると、次の章で触れる「第三者性の欠如」という壁にぶつかりやすくなります。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。決算書をお持ちいただくだけで、現状を診断します。
企業評価書を通した先に手に入る未来

企業評価書を整え、審査を通過した先に何が変わるのか。3つの軸で具体的に描きます。
数字の軸――粗利率と資金繰りの回復
改善計画に沿って価格転嫁交渉を進め、樹脂原料価格の変動分を製品価格へ反映できるようになれば、粗利率は段階的に回復します。年商4億円規模であれば、粗利率を3ポイント回復させるだけで、年間1,000万円以上のキャッシュフロー改善につながる会社も珍しくありません。
時間の軸――経営者が現場から離れられる
特定技能人材が定着し、成形機のオペレーションを任せられるようになれば、経営者が現場に張り付く時間は減ります。空いた時間を、価格交渉や新規取引先の開拓といった「利益を生む仕事」に振り向けられるようになります。
関係性の軸――金融機関・取引先からの信頼
数値に基づく改善計画と第三者評価がそろっていれば、金融機関に対しても「場当たり的な資金繰りではなく、構造改善に取り組んでいる会社」という印象を与えられます。取引先に対しても、外国人材を含めた安定した生産体制を示せることは、価格交渉の場面でも強みになります。実際、価格転嫁の交渉は「値上げをお願いする側」と「検討する側」という力関係で語られがちですが、数値と改善計画をそろえた会社は、交渉のテーブルで対等に近い立場に立てるようになります。利益が残る会社へ、そして交渉力のある会社へ――この2つを共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、KICKコンサルティングの支援

企業評価書の作成は、専門知識と客観性の両方が求められる作業です。自社だけで進めようとすると、次のような壁にぶつかります。
専門性の壁に加えて、時間コストの問題もあります。決算書の読み解き、原価構造の分析、改善計画の数値化を自社だけで行うには、経営者自身が数週間単位の時間を割かなければなりません。その間にも、本業である受注対応や価格交渉は止まりません。だからこそ、企業評価書の作成を中小企業診断士に任せる経営者が増えているのです。
もう一つ見落とされがちなのが、判断ミスのリスクです。改善計画の数値目標を楽観的に置きすぎると、翌年度以降に未達が続き、かえって金融機関からの信頼を損ないます。逆に保守的すぎる計画は、審査官に「改善の見通しが弱い」と受け取られます。この匙加減は、多くの中小企業の決算書と改善計画を見てきた専門家でなければ判断が難しい領域です。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、法人支援実績150社以上、認定経営革新等支援機関(中小企業庁)として、管理会計を軸にした経営改善支援を行っています。代表の松本昌史は中小企業診断士・MBA(経営管理修士)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)として、決算書の数値を見える化し、樹脂成形・プラスチック加工業特有の原価構造を踏まえた企業評価書を作成します。単なる書面作成ではなく、そのあとの粗利改善・資金繰り改善まで一気通貫で伴走する点が特徴です。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約はなく、しつこい営業も一切ありません。お断りいただいて構いません。1社ごとに時間をかけて向き合うため、月あたりのご相談枠には限りがあります。
よくある質問

Q. 債務超過だと、特定技能や育成就労の受入れは絶対に不可能ですか。
A. いいえ、不可能ではありません。債務超過の要因が一時的なもので、改善の見通しがあると中小企業診断士等の第三者が評価した書面を提出すれば、受入れの適格性が認められます。
Q. 企業評価書は誰が作成できますか。
A. 公認会計士・税理士・中小企業診断士等、企業評価の能力があると認められる公的資格を持つ第三者が作成します。ただし特定技能の場合は税理士が対象外となる制度上の整理があるため、事前確認が必要です。
Q. 顧問税理士に評価書を作ってもらってはいけませんか。
A. 制度上は資格要件を満たせば可能ですが、日頃から決算・税務を担当している顧問税理士は第三者性が弱いと見られる場合があります。独立した専門家に依頼するほうが審査上は安全です。
Q. 樹脂成形業ならではの評価ポイントはありますか。
A. あります。樹脂原料の価格変動リスクと、下請け構造による価格転嫁の難しさという業界特有の事情を評価書に反映することで、改善計画の実現可能性がより説得力を持ちます。
Q. 改善計画は何年分を用意すればよいですか。
A. 一般的には3〜5年の数値ロードマップを用意します。粗利率の回復目標や価格転嫁交渉の進捗を、年度ごとに具体的な数値で示すことが求められます。
Q. 企業評価書の作成にはどれくらいの期間がかかりますか。
A. 決算書・製造原価データが揃っていれば、ヒアリングから書面完成まで数週間程度で仕上がるケースが多いです。詳しい期間は現状の資料状況により異なります。
Q. 育成就労制度になっても企業評価書は必要ですか。
A. 2027年4月に施行予定の育成就労制度でも、債務超過企業に対する評価の考え方は特定技能の枠組みを引き継ぐ見通しです。今のうちに評価書と改善計画を整えておくことが安心材料になります。
Q. すでに特定技能人材を受け入れている場合、更新時にも評価書は必要ですか。
A. 更新時点で債務超過が続いている場合は、改めて改善見通しに関する評価書面の提出を求められることがあります。受入れ後も財務状況の変化を継続的に確認しておくことが重要です。
Q. 価格転嫁がうまくいかない場合、評価書だけで審査は通りますか。
A. 評価書はあくまで「改善の見通し」を示す書類です。価格転嫁の交渉方針や取引先との協議状況など、実行可能な打ち手を具体的に盛り込むことが通過の鍵になります。交渉が進んでいない段階でも、今後どう働きかけていくのかという計画を示すことが重要です。
Q. 樹脂原料の仕入れ先を分散すれば、評価書の説得力は上がりますか。
A. 上がります。単一の仕入れ先に依存している状態は、価格変動リスクをそのまま受け止める構造だと見なされます。複数の仕入れ先を確保する計画や、在庫の持ち方を見直す方針を盛り込むことで、改善見通しの実現可能性がより高く評価されます。
Q. 無料相談では何を話せばよいですか。
A. 直近の決算書と、外国人材の受入れ・更新の時期が分かれば十分です。現状の債務超過の状態と、想定しているスケジュールをお聞かせください。
まとめ

樹脂成形・プラスチック加工業の赤字は、経営者の努力不足ではありません。樹脂原料の価格変動と、下請けという取引構造が重なって生まれる、業界共通の課題です。大切なのは、その構造を数値で特定し、改善の見通しを第三者の目で裏づけること。それが、債務超過でも特定技能・育成就労の受入れを止めない、唯一の現実的な道筋です。
企業評価書は、単なる審査突破の書類ではなく、粗利率を取り戻し、金融機関や取引先からの信頼を積み直すための「経営の見取り図」でもあります。まずは現状の数字を専門家に見せることから始めてみてください。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状の決算書だけでもお聞かせください。
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