
内装仕上げ工事会社が特定技能の受入れについて、加入している監理団体に相談したところ、「決算に債務超過が見られる状態では、受入れの手続きを進めることができません。企業評価書を用意してください」と言われた。
債務超過の原因は、テナント退去に伴う原状回復工事中心の受注構成にあります。原状回復は工期が短く単価も低いため、件数をこなしても利益が残りません。
このまま企業評価書を用意できなければ、今いる技能実習生・特定技能人材の継続雇用すらできなくなります。継続雇用できなければ現場の人手を確保できず、新装工事の依頼が来ても受けられません。最悪の場合、原状回復頼みの受注構成から抜け出せないまま、会社が立ち行かなくなります。
「退去する店舗の原状回復の依頼ばかりが増え、新装工事の見積りがなかなか決まらない」——そんな実感はないでしょうか。
10月は下期が始まり、最低賃金の改定も発効する時期です。職人への外注単価が上がりやすく、原状回復中心の受注構成では利益がさらに薄くなります。
元請けからの発注が途切れているわけではないのに、なぜか決算の数字が良くならない——そう感じている経営者は少なくないはずです。あなただけが特別に苦しんでいるわけではありません。
- 原状回復工事ばかり増えて利益が薄いと感じる方
- 新装工事の受注が減り売上が伸び悩む方
- 直近決算が赤字・債務超過で不安な方
- 特定技能の受入れ審査が通るか心配な方
- 企業評価書を誰に頼めばよいか分からない方
このまま原状回復に偏った受注構成が続けば、売上の数字は保てても利益は目減りし、決算はやがて債務超過に近づきます。そうなると外国人技能実習(育成就労)・特定技能の受入れ審査で、改善の見通しに関する評価書面=「企業評価書」の提出を求められる場面が出てきます。
本記事では、内装仕上げ工事会社が受注構成の変化でも特定技能を受入れ続けるために押さえておきたい4つの条件と、企業評価書の記載イメージを具体的に解説します。
- 原状回復工事が増えると利益が薄くなる仕組み
- 内装工事業が債務超過に陥りやすい典型的な流れ
- 企業評価書に何を書けば審査担当者に伝わるか
- 特定技能を受入れ続けるための4つの条件
- 中小企業診断士に相談すべきタイミング
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内装工事業が原状回復急増で企業評価書を求められる理由

結論から言うと、原状回復工事と新装工事は同じ「内装工事」でも収益構造がまったく違います。この違いを把握しないまま件数だけを追うと、赤字が静かに積み上がります。
原状回復工事と新装工事の違い
原状回復工事は、退去するテナントが借りたときの状態に戻す工事です。スケルトン戻しや設備の撤去が中心で、工期が短く、追加提案の余地も少ない仕事です。
一方、新装工事は新しい店舗のブランドイメージをかたちにする仕事です。造作・什器・照明までまとめて任されることが多く、単価も利益率も原状回復より高くなります。
| 項目 | 原状回復工事 | 新装工事 |
|---|---|---|
| 工期の目安 | 短い(数日〜数週間) | 長い(1〜数か月) |
| 単価水準 | 低め | 高め |
| 追加提案の余地 | 少ない | 多い(造作・什器・照明) |
| 粗利率の傾向 | 薄い | 厚い |
この違いがあるため、受注件数が同じでも、内訳が原状回復に偏るだけで粗利は確実に下がります。売上高だけを見ていると、この変化に気づくのが遅れがちです。
特に、テナントの入れ替わりが激しい商業施設を主な取引先にしている会社ほど、この偏りが起きやすい傾向にあります。取引先の業態が変わっていなくても、自社の受注の中身は静かに変化しているかもしれません。
放置すると起きる悪化のシナリオ
原状回復比率の上昇を放置すると、次の悪循環に陥ります。
- 粗利率が下がり、固定費(職人の常用契約・車両・倉庫)を賄えなくなる
- 資材(石膏ボード・電気配線材等)の価格高騰分を価格に転嫁しきれない
- 外注職人の単価が最低賃金改定の影響で上がり、利益がさらに削られる
- 元請けからの入金サイトが長く、資金繰りが先に苦しくなる
この状態が数期続くと、貸借対照表の純資産がマイナス、つまり債務超過になります。特定技能や外国人技能実習(育成就労)の受入れでは、直近期末に債務超過があると、通常の書類に加えて「改善の見通しについて評価を行った書面」=企業評価書の提出を求められます。
厚生労働省の資料でも、監理団体・監理支援機関の財産的基礎について、直近期末に債務超過がある場合は中小企業診断士や公認会計士等の資格を持つ第三者が改善の見通しを評価した書面の提出を求める旨が示されています。特定技能を受け入れる企業側にも、同じ考え方で評価書面の提出が求められる場面があります。
資材価格の高騰が利益をさらに削る
石膏ボードや軽量鉄骨、電気配線材といった内装工事に欠かせない資材は、原材料や輸送コストの影響を受けて価格が上下しやすい状況が続いています。日本銀行の企業物価指数でも、建設関連資材の価格水準は高止まりの傾向が続いていることが確認できます。
原状回復工事は単価があらかじめ低めに抑えられがちなため、資材価格が上がっても価格に転嫁しきれず、そのまま利益を圧迫します。新装工事であれば見積り段階で交渉の余地がある費用も、原状回復では認められにくいのが実情です。
下請け構造が資金繰りをさらに圧迫する
内装仕上げ工事会社の多くは、元請けゼネコンや商業デベロッパーの下請けという立場です。仕様変更への追加対応を求められても、追加費用を請求しづらい場面が少なくありません。
さらに、支払いサイトが長い元請けが相手だと、資材代や外注職人への支払いが先行し、粗利が薄い状態のまま資金繰りだけが先に苦しくなります。利益と資金繰りは別の問題として、両方を数字で確認しておく必要があります。
要するに、原状回復偏重の受注構成を放置すると、資金繰りだけでなく外国人材の受入れ審査にも影響が及びます。
企業評価書の基本を先に押さえたい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
特定技能を受入れ続けるための4つの条件|企業評価書のサンプルと記載項目

受注構成が変化しても特定技能・外国人技能実習の受入れを続けるには、次の4つの条件を順番に満たすことが近道です。抽象論ではなく、実務の手順として整理します。
いきなり企業評価書の文章を書き始めるのではなく、まず自社の状況を数字で押さえてから着手するほうが、結果的に短い時間で説得力のある書面に仕上がります。
条件1.原状回復と新装工事の比率を数値で把握する
まず、直近1〜2期の受注を「原状回復」と「新装」に分け、件数と粗利をそれぞれ集計します。感覚ではなく数字で比率を出すことが、改善の出発点です。
工事台帳や請求書を種類ごとに仕分けるだけでも、どの月・どの元請けからの依頼で原状回復が増えているかが見えてきます。この数値が、次の企業評価書で「なぜ利益が下がったか」を説明する根拠にもなります。
条件2.債務超過があれば早めに企業評価書の準備に着手する
直近決算で純資産がマイナスであれば、受入れ手続きを進める前に企業評価書の準備を始めるほうが安心です。作成には一定の期間がかかるため、着手が遅れるほど審査のスケジュールが窮屈になります。
特に、外国人材の在留期限が迫っている状態で慌てて用意すると、内容が薄くなりがちです。決算が固まった直後の落ち着いた時期に着手するのが理想です。
条件3.新装工事の受注比率を高める営業ミックスを見直す
原状回復の依頼を断る必要はありません。並行して、元請けゼネコンや商業デベロッパーへの営業頻度を上げ、新装工事の相談を早い段階で拾える体制をつくることが重要です。
過去に取引のあった元請けへ定期的に近況を伝えるだけでも、次の新装案件の相談先として思い出してもらいやすくなります。営業は特別な仕掛けより、接点の継続がものを言います。
条件4.中小企業診断士に相談し改善計画とセットで示す
企業評価書は、現状の数字を並べるだけの書類ではありません。受注構成をどう改善し、いつ頃債務超過を解消できる見通しかまでを、中小企業診断士等の第三者の視点でまとめる書面です。
自社の担当者だけでまとめると、どうしても希望的な見通しに寄りがちです。第三者の目を通すことで、審査担当者にも伝わる客観的な書面になります。
ここで、企業評価書に何を書くのか、記載イメージを表で示します。架空の数値は使わず、一般的な構成項目だけを整理したものです。
| 記載項目 | 記載イメージ |
|---|---|
| 企業概要 | 事業内容(原状回復・新装内装工事)、沿革、従業員数 |
| 財務状況・債務超過の理由 | 受注構成の変化、資材価格の高騰、外注費の上昇等の要因 |
| 改善の見通し | 新装工事の受注比率を高める計画、経費削減、資金繰り対策 |
| 評価者の所見 | 中小企業診断士等の第三者による客観的な評価コメント |
「外国人技能実習 企業評価書 サンプル」や「特定技能 企業評価書 サンプル」で調べる経営者も多いですが、実際に効果があるのは書式の見た目より、この4項目の中身がどれだけ具体的かです。
詳しくは次のページにまとめています。
外国人技能実習・特定技能の企業評価書について 社長やご担当者の方へ。“あなた”は今、このようなお悩みを抱えていませんか。 外国人技能実習制度を活用したいが、企業評価書の作成方法が分からないという方 特定技能外国人の受入れにあたり、経営改善の見通しについて評価が必要だ...
要するに、数値の把握・早めの着手・営業ミックスの見直し・専門家との共同作成という4つの条件を積み重ねることが、企業評価書を実のある書面にする近道です。
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受注構成を整え特定技能の受入れで手に入る未来

企業評価書をきちんと整え、受注構成の見直しに取り組んだ会社には、次の3つの変化が現れます。どれも一時的な対症療法ではなく、経営の土台そのものが強くなる変化です。
数字:粗利率が新装工事の水準に近づく
原状回復に偏っていた受注が減り、新装工事の比率が上がることで、工事1件あたりの粗利率が改善します。同じ職人の人数でも、残る利益が変わります。
粗利率が上向けば、外注職人への支払いや資材の仕入れにも余裕が生まれ、無理な値引き対応で受注を取りにいく必要もなくなります。
時間:審査を待つ間の不安から解放される
企業評価書を早めに準備しておけば、特定技能や育成就労の受入れ手続きを、直前になって慌てて進める必要がなくなります。工期の計画に集中できる時間が戻ります。
受入れ更新の時期になるたびに財務資料をかき集める負担もなくなり、現場の管理に充てる時間が増えます。
関係性:元請けやオーナーからの信頼が厚くなる
財務状況を自ら把握し、改善計画を持って説明できる会社は、元請けゼネコンや商業デベロッパーからも「任せて安心な会社」と見られます。次の新装案件の相談も入りやすくなります。
受入れた特定技能の人材にとっても、経営が安定している会社は長く働き続けたいと思える職場になります。安心して働ける環境は、定着率にも良い影響を与えます。
数字・時間・関係性という3つの軸で、原状回復に振り回されない経営基盤を共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

受注構成の分析や企業評価書の作成を、現場を回しながら社内だけで進めるのは簡単ではありません。
専門性の壁
企業評価書は、財務諸表を読み解き、改善の見通しを第三者の視点で客観的に示す書面です。自社で作成すると「身内の甘い見通し」と受け取られかねません。作成できるのは中小企業診断士または公認会計士に限られ、税理士は作成できない点にも注意が必要です。
受注構成の分析まで含めると、財務の知識に加えて業界特有の商習慣への理解も求められます。この両方を兼ね備えた専門家に依頼できるかどうかで、書面の説得力は大きく変わります。
時間コストの壁
現場監督を兼ねる社長や総務担当者にとって、財務分析と書面作成に割ける時間は限られています。並行して受注構成の見直しまで進めるのは負担が大きい作業です。
判断ミスのリスク
改善の見通しに具体性がない企業評価書は、審査担当者に伝わりません。記載内容の甘さが、受入れ審査の遅れに直結することもあります。だからこそ、専門家に伴走してもらう経営者が増えています。
特に、受注構成の変化のように業界特有の事情が絡む場合、一般論だけの説明では説得力を欠きます。内装仕上げ工事業の商習慣を理解した専門家に相談することが、遠回りに見えて確実な近道です。時間をかけて自己流でまとめた末に、内容の甘さを指摘されて作り直すよりも、最初から専門家と組んだほうが結果的に早く進みます。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士が受注構成の分析から企業評価書の作成まで一貫して支援します。法人支援150社以上の実績をもとに、内装仕上げ工事業特有の収益構造を踏まえた評価書をまとめます。
具体的には、直近決算の数値整理、原状回復と新装工事の粗利分解、改善の見通しの言語化、そして企業評価書としての書面化までを一つの流れで支援します。必要に応じて、資金繰りの見通しについても一緒に整理します。
「何をどこまで自社で準備すればよいか分からない」という段階からの相談も歓迎しています。まずは現状の受注構成と直近の決算内容をお聞かせください。
企業評価書をまとめて確認したい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
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企業評価書のよくある質問|特定技能・債務超過の疑問を解消

Q. 企業評価書とは何ですか?
A. 外国人技能実習(育成就労)・特定技能の受入れで、直近期末に債務超過がある企業に提出が求められる「改善の見通しについて評価を行った書面」の通称です。中小企業診断士等の第三者が、財務状況の原因と今後の見通しをまとめて作成します。
Q. 企業評価書は誰が作成できますか?
A. 中小企業診断士または公認会計士など、企業評価を行う能力があると認められる公的資格を持つ第三者に限られます。税理士は、この書面の作成対象には含まれません。顧問税理士がいる場合も、企業評価書自体は別に依頼する必要があります。
Q. 企業評価書のサンプルや記載項目のひな形はありますか?
A. 決まった様式はありませんが、企業概要・財務状況と債務超過の理由・改善の見通し・評価者の所見という4項目を軸にまとめるのが一般的です。フォーマットを探すより、自社の実態に沿った中身をどう組み立てるかが重要になります。
Q. 内装工事業でも原状回復工事の受注が多いと不利になりますか?
A. 原状回復工事そのものが問題ではありません。原状回復に偏った受注構成のまま利益が薄くなっている状態を放置しているかどうかが問われます。企業評価書でその実態と改善策をどう説明するかが重要です。
Q. 債務超過の理由書はどう書けばいいですか?
A. 「なぜ債務超過になったか」という原因(受注構成の変化・資材高騰・外注費の上昇等)を具体的な数字とともに示し、改善の見通しにつなげる構成にします。企業評価書と併せて整理されることが多い書面です。
Q. 育成就労制度でも企業評価書は必要ですか?
A. 2027年4月施行予定の育成就労制度でも、財産的基礎に関する考え方は特定技能・技能実習と共通する見込みです。監理支援機関(旧・監理団体)側だけでなく、受入れ企業側にも同様の考え方が及ぶ可能性があるため、制度の詳細は今後の運用要領を確認する必要があります。
Q. 特定技能の企業評価書はどんな場合に必要になりますか?
A. 主に、受入れ企業の直近期末が債務超過であった場合です。定期報告や在留資格の更新の場面で財務状況の確認が行われる際にも関係してきます。
Q. 企業評価書の作成にはどれくらい期間がかかりますか?
A. 財務資料の準備状況によって変わりますが、決算書等の資料が揃っていれば、比較的短期間でまとめられます。受入れスケジュールが決まっている場合は、逆算して早めに相談することをおすすめします。
Q. 外国人技能実習の企業評価書サンプルの探し方が分かりません
A. インターネット上のひな形をそのまま流用すると、自社の実態と合わず説得力を欠くことがあります。自社の受注構成や財務状況に沿った内容を、専門家と一緒に組み立てる方法が確実です。
Q. 顧問税理士がいますが、企業評価書は税理士に頼めますか?
A. 企業評価書の作成者としては、税理士は対象に含まれません。顧問税理士とは財務資料の共有等で連携しつつ、企業評価書自体は中小企業診断士または公認会計士に依頼する形になります。
Q. 企業評価書 中小企業診断士に依頼するメリットは何ですか?
A. 中小企業診断士は経営全般を診る立場から、財務状況の原因分析と改善計画の両方を一つの書面にまとめられます。数字の説明だけでなく、実行できる改善策として示せる点が強みです。
まとめ
内装仕上げ工事会社の赤字・債務超過は、多くの場合「受注が減った」のではなく「原状回復に受注の中身が偏った」ことが原因です。
件数を追うだけでは気づきにくい変化だからこそ、数値で把握し、企業評価書という客観的な書面に落とし込むことが、特定技能の受入れを守る近道になります。
原状回復と新装工事の比率を数値で把握する、債務超過があれば早めに企業評価書の準備に着手する、営業ミックスを見直す、中小企業診断士に相談する——この4つの条件を一つずつ積み重ね、原状回復に振り回されない受注体質を築いていきましょう。
受注構成の変化は、業界の外からは見えにくい事情です。だからこそ、数字で示す企業評価書が、審査担当者にもオーナーにも伝わる説明の土台になります。今期の受注内訳を確認するところから、まず始めてみましょう。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは今の受注構成をお聞かせください。
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