
「債務超過なので、企業評価書を提出してください」
監理団体(外国人技能実習生の受け入れを管理・指導する団体)や登録支援機関(特定技能の外国人を支援する団体)から突然こう言われて、戸惑っている経営者の方は少なくありません。
「債務超過だと、技能実習生を受け入れられなくなるのか」「特定技能の外国人を雇い続けられないのか」と不安を感じていらっしゃるかもしれません。
結論から申し上げると、債務超過であっても外国人雇用を継続することは可能です。
ただし、そのためには中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格)や公認会計士など、公的資格をもつ専門家が作成した「企業評価書」の提出が必要になります。企業評価書とは、「なぜ債務超過になったのか」「どのような計画で改善するのか」を、第三者の立場から論理的に証明する書類です。数字を並べただけの書類では通用しません。
KICKコンサルティングには、食品製造業・建設業・介護事業・加工系製造業など、さまざまな業種のお客様から企業評価書のご依頼をいただいています。近年は特に、「今すぐ評価書を出さないと、実習生の受け入れが止まってしまう」という緊急性の高いご相談が増えています。
この記事では、企業評価書の必要性、通る評価書と通らない評価書の違い、そして専門家に依頼すべき理由まで、中小企業診断士の実務経験をもとに具体的に解説します。
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外国人技能実習制度から育成就労制度へ|企業評価書が求められる制度背景
技能実習制度で頻発していた問題
1993年に創設された外国人技能実習制度は、日本の技術や知識を開発途上国へ伝え、その国の経済発展に貢献することを目的とした制度でした。分かりやすく言えば、「日本の会社で働きながら技術を学んでもらい、母国に持ち帰ってもらう」という仕組みです。
しかし実態としては、外国人労働者を「安価な労働力」として扱うケースが後を絶たず、深刻な問題が浮き彫りになりました。
厚生労働省の発表によると、2022年に労働基準監督署が監督指導を行った9,829事業場のうち、73%を超える7,247事業場で労働基準関係法令違反が確認されています。違反内容の内訳は次のとおりです。
| 違反内容 | 割合 |
|---|---|
| 機械等の安全基準違反 | 23.7% |
| 割増賃金の未払い | 16.9% |
| 健康診断に関する違反 | 16.1% |
出典:厚生労働省「外国人技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(2022年)」
こうした劣悪な労働環境を背景に、2022年時点で在留する34万人超の技能実習生のうち、年間約1万人が職場から失踪している事実が法務省の調査で明らかになっています。失踪の大きな原因の一つは、技能実習制度では原則として実習先の変更(転籍)が認められていなかったことでした。つまり、劣悪な環境から逃げたくても、別の職場に移るという選択肢がなかったのです。
育成就労制度への移行|「人材確保」の明文化
2024年3月15日、政府は技能実習制度に代わる「育成就労制度」を創設するための出入国管理・難民認定法等の改正案を閣議決定しました。新制度は2027年までの施行が予定されています。
従来の技能実習制度と育成就労制度の最大の違いは、制度の目的そのものです。
| 比較項目 | 外国人技能実習制度 | 育成就労制度 |
|---|---|---|
| 目的 | 国際貢献(建前) | 人材育成と人材確保 |
| 転籍(職場変更) | 原則不可 | 条件付きで可能 |
| 在留期間 | 最長5年 | 3年間(特定技能1号への育成が目標) |
| 労働基準の遵守 | 形式的な指導 | 労働基準監督署との連携を強化・厳格化 |
育成就労制度では、外国人労働者を3年間の在留期間のなかで「特定技能1号」レベルまで育成することが目標です。特定技能1号とは、従来の技能実習制度で1年目に習得する技能水準と同等のレベルを指します。簡単に言えば、「一人前の戦力として働ける水準」です。
転籍についても、労働条件の相違やハラスメントが認められ、本人に一定の日本語能力と技能があり、就労期間が1年を超えていれば認められるようになりました。受け入れ企業には、労働条件通知書の提示や本人説明の記録など、外国人労働者との認識のズレを防ぐ対策がこれまで以上に求められます。
制度が変わっても、企業評価書の重要性は変わりません。むしろ、育成就労制度では受入企業に対してより厳格な基準が求められるため、債務超過の企業にとって企業評価書の位置づけは一層重くなると考えられます。
企業評価書はなぜ必要か|債務超過と提出義務の関係

技能実習制度運用要領が定める提出義務
外国人技能実習制度には「技能実習制度運用要領」という、制度運用に必要な事項をまとめたルールブックが存在します。この運用要領は、外国人技能実習機構が公表しており、技能実習計画の認定基準や申請時の提出書類などが細かく定められています。
この運用要領では、「直近の事業年度において債務超過がある場合、中小企業診断士、公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が改善の見通しについて評価を行った書類の提出が必要」と定められています。
「債務超過」とは、貸借対照表(会社の財産と借金の一覧表)において、純資産(資産の合計から負債の合計を引いた金額)がマイナスになっている状態を指します。分かりやすく言えば、「会社の財産をすべて売り払っても、借金を返しきれない状態」です。
この状態にある企業が外国人を受け入れるには、経営者自身の「大丈夫です」という主張だけでは認められません。国家資格をもつ専門家が「この企業には改善の見通しがある」と客観的に評価した書類を添えて提出する義務があるのです。
「債務超過=不許可」ではない
ここで重要なポイントがあります。債務超過だからといって、即座に外国人の受け入れが不許可になるわけではありません。
多くの中小企業は、事業拡大のための設備投資や新規出店によって一時的に債務超過に陥ることがあります。また、コロナ禍や原材料価格の高騰、エネルギーコストの上昇によって業績が悪化し、結果として債務超過になったケースも珍しくありません。たとえば、年商5,000万円の食品製造業が1,000万円の設備投資を行い、減価償却費の負担で一時的に純資産がマイナスになるのは、経営判断として十分にあり得ることです。
制度が求めているのは「今、債務超過であること」の否定ではなく、「将来、改善できる見通しがあること」の証明です。この証明を、論理的かつ客観的に行うのが企業評価書の役割です。
企業評価書が必要になる典型的な場面
KICKコンサルティングにご相談いただくケースとして、特に多いのは次のような場面です。
| 場面 | 具体例 |
|---|---|
| 技能実習計画の認定申請 | 新たに技能実習生を受け入れる際、直近決算が債務超過だった |
| 在留資格の変更・更新 | 技能実習2号から3号への移行時、または特定技能への変更時に求められた |
| 監理団体からの指摘 | 定期監査で債務超過が判明し、改善資料の提出を要請された |
| 新規の外国人雇用 | 初めて外国人材を受け入れたいが、決算書を確認すると債務超過だった |
いずれの場面でも、企業評価書が適切に作成されていなければ申請が受理されず、外国人雇用が停止するリスクがあります。既に外国人材が現場で活躍している企業にとっては、事業継続に直結する問題です。
通らない企業評価書の特徴|よくある3つの失敗パターン

企業評価書は提出すればそれで終わりではありません。記載内容に説得力がなければ、改善の見通しが認められず、受け入れが不許可になるケースもあります。KICKコンサルティングに「他の専門家に頼んだが通らなかった」とご相談いただく事例をもとに、通らない評価書に共通する特徴を3つお伝えします。
数字の羅列だけで「改善の根拠」がない
決算書の数字をそのまま転記しただけの評価書は、最も多い失敗パターンです。「売上高〇〇万円、経常利益〇〇万円」と数字を並べても、「なぜ改善するのか」が書かれていなければ、審査する側は判断のしようがありません。
たとえば、建設業のA社様(従業員15名)の事例では、前任の税理士が作成した評価書に「来期は売上が回復する見込み」とだけ記載されていました。しかし、回復の根拠となる受注見込みや契約状況の記載が一切なく、不許可となりました。KICKコンサルティングが改めて作成し直したところ、受注済み案件の一覧と工事完了時期を明示したうえで売上回復の見通しを記載し、無事に許可を得ることができました。
改善計画が非現実的
「来期は売上を50%増やします」「3年で債務超過を解消します」といった計画は、一見すると前向きに見えます。しかし、その根拠となる受注データや市場環境の分析がなければ、「絵に描いた餅」と判断されます。
食品製造業のB社様(従業員30名)のケースでは、売上を毎年20%ずつ増加させる計画を提出されていました。ところが、過去5年間の実績を確認すると売上はほぼ横ばいでした。過去の実績と整合性のない計画は信頼性に欠けると判断され、評価書の再提出を求められています。
この場合の「整合性」とは、たとえば「過去5年間の売上成長率が平均3%なのに、突然20%成長を見込む根拠は何か」を説明できるかどうかです。新規取引先の獲得や設備増強などの具体的な裏付けがなければ、計画の信頼性は認められません。
キャッシュフローの視点が欠落
損益計算書(P/L)上は黒字に見えても、実際の資金繰りが回っていなければ企業の継続性は証明できません。「利益が出ている=問題ない」という認識は危険です。
キャッシュフロー(お金の出入り)とは、実際に手元にお金が入ってくるタイミングと出ていくタイミングのことです。帳簿上は利益があっても、入金が2か月後、支払いは今月、という状況が続けば資金はどんどん減っていきます。
介護事業を営むC社様(従業員25名)の事例がまさにこのパターンでした。売上は安定していたものの、介護報酬(国から支払われるサービス料)の入金サイクルが約2か月後であるのに対し、毎月の人件費の支払いが先に発生するため、常に資金繰りが逼迫していました。損益だけでなく、お金の流れまで含めた分析が評価書には不可欠です。
通る企業評価書に共通する3つのポイント

では、実際に「改善の見通しあり」と認められる企業評価書には何が書かれているのでしょうか。KICKコンサルティングがこれまで作成してきた評価書に共通するポイントを3つに整理してお伝えします。
改善見通しの論理性
評価書で最も重視されるのは、「なぜ債務超過に至ったのか」と「どうすれば改善できるのか」を論理的につなげる構成です。
たとえば、金属加工業のお客様の場合を考えてみましょう。
【原因の連鎖】
コロナ禍による受注減 → 設備稼働率の低下 → 固定費負担の増大 → 債務超過
【改善のストーリー】
受注環境の回復(具体的な引き合い件数のデータ) → 稼働率の向上 → 限界利益の増加 → 債務超過の解消
限界利益(売上から材料費などの変動費を引いた利益)がどれだけ回復すれば、いつまでに債務超過を解消できるのか。この「原因→対策→効果」が一本の筋で通っていることが、説得力のある評価書の第一条件です。
資金繰りの裏付け
改善計画がどんなに立派でも、そこに至るまでの資金が確保できなければ「計画倒れ」と見なされます。
KICKコンサルティングが作成する企業評価書では、月次の資金繰り表をもとにしたキャッシュフロー分析を必ず盛り込みます。銀行借入の返済予定、売掛金(まだ受け取っていない代金)の回収サイクル、季節による売上の波など、実態に即した資金の流れを可視化します。これにより「この企業は計画を実行するだけの資金的な裏付けがある」と証明できるのです。
実現可能性の担保
審査担当者が最も知りたいのは、「この改善計画は本当に実行できるのか」という点です。
実現可能性を担保するには、過去の実績データとの整合性が欠かせません。たとえば、過去3年間の月次売上推移と、改善計画における売上見通しを対比させ、「過去にこの水準を達成した実績がある」「既に受注が確定している案件がある」といった裏付けを示すことが重要です。
さらに、業種特有の事情を踏まえた分析があると評価書の信頼性が格段に高まります。
| 業種 | 評価書に盛り込むべき業種特有の分析 |
|---|---|
| 建設業 | 公共工事の発注時期・受注残高の推移・完成工事高の見通し |
| 食品製造業 | 季節商品の受注動向・原材料価格の見通し・主要取引先との契約状況 |
| 介護事業 | 利用者数の推移・介護報酬改定の影響・稼働率と損益分岐点 |
| 製造業(加工系) | 設備稼働率・主要顧客の発注見通し・外注費と内製化のコスト比較 |
企業評価書を自分で作成するリスク|専門家に依頼すべき理由

「専門家に依頼するとお金がかかるから、自分で書けないだろうか」と考える経営者の方もいらっしゃいます。しかし、企業評価書の自作には大きなリスクがあります。
| リスク | 具体的な影響 |
|---|---|
| 制度上の要件を満たさない | 運用要領では「中小企業診断士、公認会計士等の公的資格を有する第三者」による評価が求められています。経営者自身が作成した書類では、そもそもこの要件を満たしません。 |
| 客観性が担保されない | 自社に有利な情報だけを記載した評価書は、審査の場で信頼性を疑われます。第三者の視点があるからこそ、「この企業は改善できる」という評価に説得力が生まれます。 |
| 不許可・再提出のリスク | 不備のある評価書を提出した場合、再提出を求められるだけでなく、その間の受け入れが止まる可能性があります。外国人材が既に在籍している場合、現場への影響は甚大です。 |
| 時間と労力のロス | 不慣れな書類作成に時間を費やした結果、不許可になれば、費やした時間はすべて無駄になります。最初から専門家に依頼する方が、結果としてコストを抑えられるケースがほとんどです。 |
企業評価書は、経営者の「主観」ではなく、専門家の「客観」で作成することに意味があります。外国人雇用を止めないためにも、最初から専門家への依頼を検討されることを強くお勧めします。
KICKコンサルティングの企業評価書作成サービス|選ばれる4つの理由

KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士が在籍する経営コンサルティング会社です。外国人材の受入に係る企業評価書の作成について豊富な実績があり、全国の事業者様・監理団体様・登録支援機関様・行政書士や社会保険労務士等の専門家の方々からご依頼をいただいています。
中小企業診断士が直接作成
企業評価書の作成は、国家資格である中小企業診断士が直接担当します。経営分析の専門知識と、多数の企業評価書作成で培った実務経験を組み合わせ、「通る評価書」を作成します。単なる書類の代行作成ではなく、財務分析に基づいた改善見通しの立案まで一貫して対応する点が、KICKコンサルティングの大きな特徴です。
全国対応(オンライン面談)
Zoom等のオンライン面談を活用し、全国どこからでもご依頼いただけます。北海道・東北から九州・沖縄まで幅広い対応実績があります。「地方だから対応してもらえるか不安だった」というお声もいただきますが、オンラインで迅速に対応しておりますのでご安心ください。
最短3営業日のスピード対応
「来週までに評価書が必要」という緊急のご依頼にも対応しています。必要な資料(直近の決算書、月次試算表、資金繰り表など)をご準備いただければ、最短3営業日での納品が可能です。「間に合わないかもしれない」と諦める前に、まずはご相談ください。
経営改善・資金調達の支援まで一気通貫
KICKコンサルティングは、企業評価書の作成にとどまらず、経営計画の策定、資金調達の支援、補助金申請のサポートまで、経営課題を幅広くお手伝いしています。評価書作成のためにヒアリングした内容をもとに、債務超過の解消に向けた具体的な改善アクションまで伴走型でご支援することができます。「評価書を出して終わり」ではなく、本質的な経営改善につなげるのが、KICKコンサルティングの仕事です。
これまでに企業評価書を作成した主な業種は、食品製造業、建設業、介護事業、金属加工業、農業、繊維業など多岐にわたります。事業者様だけでなく、監理団体様や登録支援機関様、行政書士・社会保険労務士等の士業の方々からのご紹介やお問い合わせも多数いただいています。
まずは無料相談から|外国人雇用を止めないために

企業評価書は、外国人材の受け入れを継続するための「命綱」ともいえる書類です。
債務超過であっても、適切な評価書があれば外国人雇用は継続できます。逆に、評価書の内容が不十分であれば、長年築いてきた外国人材との信頼関係や事業体制が一瞬で崩れるリスクがあります。
「どうすればいいかわからない」「急いで対応しなければならない」という方は、まずはお気軽にご相談ください。秘密は厳守いたします。









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