
名古屋出入国在留管理局の窓口で、「直近の決算が債務超過になっているので、改善の見通しについて評価を行った書面(企業評価書)を提出していただかないと、特定技能の受入れ手続きを進められません」と案内された。
そう言われても、身近に中小企業診断士の知り合いはいない。企業評価書がどんな書類なのかも、どこに相談すればいいのかも分からない——そんな状態でこの記事にたどり着いた方もいるのではないでしょうか。
10月は下期の始まりであり、最低賃金の改定時期でもあります。ただでさえ樹脂原料や電気代の値上がりで原価が重くなっているところに、人件費までまた一段と上がる——そんな三重苦を感じている経営者の方も多いはずです。
プラスチック射出成形業は、自動車部品や日用品の下請け構造になりやすく、原価が上がっても取引先への価格転嫁が進みにくい業種です。原価上昇分を自社でかぶり続ければ、利益は削られ、やがて純資産がマイナスの債務超過に陥ります。そうなると、人手不足を補うために進めたい特定技能の受入れそのものが止まってしまいます。
- 樹脂原料・電気代の高騰で原価が苦しい方
- 特定技能の受入れ審査が通るか不安な方
- 企業評価書を誰に頼めばいいか分からない方
- 価格転嫁が進まず赤字が続いている方
この記事では、プラスチック成形業が債務超過に陥る原因を整理したうえで、特定技能の受入れに欠かせない企業評価書のサンプル・書き方まで、初めて依頼する方にも分かるように解説します。
- プラスチック成形業が債務超過に陥る2つの原因
- 特定技能の受入れに使える企業評価書の中身
- 企業評価書を用意する3つの対策
- 中小企業診断士に頼むメリットと進め方
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プラスチック成形業が債務超過で企業評価書を求められる理由

プラスチック射出成形会社が債務超過に陥る原因は、複雑に見えても実務ではおおむね2つに整理できます。読者が初めて企業評価書という言葉に触れる前提で、シンプルに押さえておきましょう。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 樹脂原料・電気代の高騰 | 原油由来の樹脂ペレットの仕入れ値と、成形機を動かす電気代が同時に上がり、原価を直撃している |
| 価格転嫁の遅れ | 自動車部品や日用品メーカーなど大口取引先への価格交渉力が弱く、原価上昇分を販売価格に反映しにくい |
原価率がわずか数ポイント上がるだけでも、下請け構造で利益率の薄いプラスチック成形業では、営業利益が一気に消し飛びます。この状態を放置すると、純資産がマイナスの債務超過に転落し、決算書を見た監理団体や出入国在留管理局から企業評価書の提出を求められる事態になります。
特にプラスチック射出成形は、成形機を24時間近く稼働させる会社も多く、電気代の値上がりが利益に与える影響が他業種より大きく出やすい業種です。樹脂原料の仕入れ値と電気代という、いずれも自社でコントロールしにくい2つのコストが同時に上がっているところに、この業種特有の苦しさがあります。
この悪循環を一つずつたどってみましょう。企業評価書が用意できない→特定技能の受入れ・在留資格の更新が進まない→現場の人手が足りないまま受注を抱える→納期遅れや品質低下で取引先の信頼を失う→受注が減りさらに赤字が膨らむ——という連鎖です。途中を一つでも止められれば、この連鎖は断ち切れます。
中小企業庁「中小企業白書」でも、価格交渉力の弱い中小製造業ほど原材料費の転嫁が遅れやすい傾向が繰り返し指摘されています。プラスチック成形業に限った話ではなく、業界構造そのものが原因になっているケースが多いのです。
さらに、プラスチック射出成形は技能実習の職種としても位置づけられているため、すでに技能実習生を受け入れている会社が、決算をまたいで特定技能へ移行しようとした際に、初めて「債務超過」という壁に気づくことも少なくありません。受入れの継続・移行を考え始めたタイミングで決算書を見返し、純資産がマイナスになっていないかを確認しておくことが、後になって慌てないための第一歩です。
帝国データバンクの調査でも、原材料費や電気代の高騰分を価格転嫁できずに収益が悪化する中小製造業の存在が繰り返し取り上げられています。「うちだけが厳しい」わけではなく、同じ構造で苦しんでいる同業他社は全国に数多くあります。大切なのは、自社の状態を正確な数字で把握し、早めに手を打つことです。
特定技能では「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」という分野の中に、プラスチック成形の業務区分が位置づけられています。射出成形機の操作や金型の着脱、材料の投入、成形品の取り出しや外観検査といった、現場の実務に直結する業務が対象です。「うちの業種は対象外なのでは」と不安に思う必要はなく、原価と決算の状態さえ整えられれば、受入れの土俵に立てます。
企業評価書の基本を先に押さえたい方へ
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特定技能の受入れを進める3つの対策|企業評価書のサンプルと書き方

企業評価書を用意し、特定技能の受入れ審査を乗り切るための実務的な対策は、次の3つに整理できます。抽象論ではなく、実際に手を動かす順番で見ていきます。
対策1 原価を「見える化」する
まず、樹脂原料費・電気代・外注費・人件費を製品別に分け、どこで原価が重くなっているかを管理会計の視点で把握します。「なんとなく厳しい」を「どの製品のどの費目が原因か」まで数字で示せると、あとの改善計画も評価書も説得力が増します。
プラスチック成形業の現場では、金型・成形機ごとの稼働率や不良率まで細かく数字を把握している会社は意外と多くありません。どんぶり勘定のまま「全体が厳しい」とだけ捉えていると、値上げ交渉でも根拠を示せず、企業評価書に書く「債務超過の理由」もぼやけてしまいます。製品別・取引先別に原価と利益率を並べるだけでも、どこにメスを入れるべきかが具体的に見えてきます。
対策2 改善計画を明文化する
原価の見える化ができたら、値上げ交渉の方針・不採算品の見直し・省エネ設備への切り替えなど、今後どう黒字化・純資産回復へ向かうのかを文章と数値で明文化します。企業評価書の「改善の見通し」は、この計画がベースになります。
改善計画には、①いつまでに・②何を・③どの程度改善するのか、という3点を具体的な数値目標として盛り込みます。「頑張って黒字化します」だけの精神論では、企業評価書を作成する中小企業診断士も評価のしようがありません。数値目標がある計画は、金融機関との交渉でもそのまま使える資料になります。
なお、債務超過が続いている会社には、企業評価書とは別に「経営改善計画策定支援(405事業)」という制度もあります。金融機関と共有できる本格的な経営改善計画を、専門家費用の3分の2を国が補助する形で作れる仕組みで、既存融資の返済条件の変更(リスケジュール)と組み合わせて資金繰りを立て直すことも可能です。倒産の可能性を下げる選択肢として、気になる方は次のページをご覧ください。
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対策3 中小企業診断士による企業評価書を用意する
改善計画がまとまったら、中小企業診断士(または公認会計士)に、改善の見通しについて評価してもらう書面=企業評価書を作成してもらいます。「企業評価書 サンプル」で検索する方も多いですが、決まった様式はなく、一般的には次のような項目で構成されます。
| 記載項目 | 内容のイメージ |
|---|---|
| 企業概要 | 会社名・所在地・事業内容・沿革などの基本情報 |
| 財務状況・債務超過の理由 | 直近の決算数値と、樹脂原料高騰など債務超過に至った要因の整理 |
| 改善の見通し | 今後の収支改善計画と、純資産回復・黒字化の見込み時期 |
この一覧はあくまで一般的な構成項目であり、架空の記載例をそのまま流用するものではありません。自社の数値・事実に基づいて、中小企業診断士が個別に作成する必要があります。
作成の進め方は、①決算書・試算表など現状の数値を専門家に渡す、②ヒアリングを通じて債務超過に至った経緯と改善計画をすり合わせる、③中小企業診断士が企業評価書として書面にまとめる、という流れが一般的です。自社で一から様式を考える必要はなく、必要な資料をそろえれば専門家主導で形にしていけます。詳しくは次のページにまとめています。
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原価高騰を乗り越え特定技能の受入れで手に入る未来

企業評価書を整え、特定技能の受入れ審査を通過できると、会社にどんな変化が起きるのでしょうか。数字・時間・関係性の3つの軸で具体的に見てみましょう。
数字の軸では、成形ラインを止めずに稼働率を維持できるようになり、値上げ交渉の材料となる原価データも手元にそろいます。時間の軸では、人手不足を理由に受注を断る場面が減り、納期遅れによる取引先からの信頼低下を防げます。関係性の軸では、特定技能人材が定着し、現場の技能承継が進むことで、経営者一人が現場に張り付く働き方から抜け出せます。
原価高騰という共通の敵に対し、企業評価書という一つの書面を整えるだけで、資金繰り・人手・取引先との関係という複数の悩みが同時に動き始めます。
現場の社員にとっても、「この会社は数字と向き合い、先を見て手を打っている」と伝わることは大きな安心材料になります。経営者だけが数字を抱え込むのではなく、改善計画という形で見える化されることで、幹部社員や現場のリーダーも同じ方向を向いて動けるようになります。
特定技能人材が定着すれば、育成にかけた時間がそのまま生産性として積み上がっていきます。採用と教育を繰り返すコストから抜け出し、原価改善に充てる時間も生まれます。この未来を、共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

ここまで読んで、「自社でも企業評価書を作れそうだ」と感じた方もいるかもしれません。しかし、普通の企業(自社だけ)では、そもそも企業評価書を作成できません。企業評価書は、中小企業診断士または公認会計士という、企業評価を行う能力があると認められた第三者が作成する書面と定められているためです。自己流で作った資料を提出しても、評価書として受け入れられず、審査に通らないおそれがあります。
専門家に依頼せず自社で進めようとすると、①財務分析の専門知識が無く原因を数値で説明できない、②改善計画の根拠が薄く審査側を納得させられない、③本業の合間で作成するため時間がかかり受入れ時期に間に合わない、といった壁にぶつかりがちです。時間コストも判断ミスのリスクも、経営者一人で背負うには大きすぎます。
企業評価が拒否されないように、要点を理解している経験豊富な中小企業診断士を紹介します。KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、MBA(経営管理修士)・中小企業診断士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)の資格を持つ代表・松本昌史が、法人支援150社以上の実績をもとに伴走します。認定経営革新等支援機関(中小企業庁)としての立場から、数字を見える化し、利益が残る構造への転換までを一気通貫でサポートします。
東京・銀座本社を拠点としていますが、全国どこからでもオンラインで対応可能です。「近くに頼める専門家がいない」という理由であきらめる必要はありません。中部・関西など製造業が集積するエリアのプラスチック成形会社からのご相談も、オンラインでそのまま対応しています。
企業評価書の作成だけを単発で請け負うのではなく、原価の見える化から改善計画の策定、金融機関との対話まで、数字をベースにした伴走支援を行っている点がKICKコンサルティングの特徴です。「評価書だけ作ってもらって終わり」ではなく、その後の経営改善まで見据えて相談できる相手を探している方にこそ向いています。
- 原価データの整理・管理会計での見える化
- 改善計画の策定と企業評価書の作成
- 特定技能・技能実習・育成就労の受入れに向けた資金繰り相談
- 価格交渉の材料となる原価データの整理サポート
「まず何から相談すればいいか分からない」という状態でも問題ありません。決算書と直近の試算表を持参いただければ、そこから一緒に現状を整理していきます。企業評価書はゴールではなく、会社を立て直すための出発点です。そこから先の資金繰りや価格交渉まで見据えて伴走することが、KICKコンサルティングの強みです。
企業評価書をまとめて確認したい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
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企業評価書のよくある質問|特定技能・債務超過の疑問を解消

企業評価書とは何ですか
技能実習・育成就労・特定技能の受入れにあたり、直近の決算が債務超過になっている企業が提出を求められる書面です。厚生労働省の技能実習制度運用要領には、中小企業診断士・公認会計士等の公的資格を有する第三者が、改善の見通しについて評価を行った書面の提出を求める旨が記載されています。
企業評価書は誰が作成できますか
作成できるのは中小企業診断士または公認会計士です。税理士は、この企業評価書を作成する立場には含まれていません。「企業評価書は税理士に頼めるのでは」と考える方もいますが、税理士に依頼しても評価書としては受け付けられない点に注意が必要です。
プラスチック成形業は特定技能の対象になりますか
プラスチック射出成形は、特定技能の「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」分野に含まれる業務区分の一つです。成形機の操作や金型の着脱、材料の投入、製品の取り出し・検査といった業務が対象になります。
特定技能の企業評価書のサンプルはありますか
公式に統一されたサンプル様式は公表されていません。一般的には企業概要・財務状況と債務超過の理由・改善の見通しという項目で構成されますが、記載内容は会社の実情によって異なるため、架空のひな形をそのまま流用するのではなく、中小企業診断士が個別に作成する必要があります。
債務超過の理由書はどう書けばいいですか
「なぜ債務超過になったのか」を、樹脂原料の高騰・電気代の上昇・価格転嫁の遅れといった具体的な要因と、直近の決算数値を結び付けて説明します。感覚的な説明ではなく、数字の裏付けがある理由書のほうが、審査側の納得を得やすくなります。あわせて、その要因が一時的なものなのか、今後も続くと見込まれるものなのかを整理しておくと、改善の見通しにもつなげやすくなります。理由書は「言い訳」を並べる書類ではなく、次の一手を示すための土台だと捉えると書きやすくなります。
企業評価書のフォーマットは決まっていますか
国が定めた統一フォーマットはありません。そのため「企業評価書 フォーマット」で検索しても、決定版と呼べる様式は見つからないのが実情です。中小企業診断士が、受入れ機関側の意図をくみ取りながら、必要な項目を過不足なく盛り込んで作成します。
特定技能の定期報告で一定の基準とは何ですか
特定技能の受入れ機関には、定期的な届出・報告が課されています。その基準の一つとして、直近の決算で債務超過となっていないことが挙げられており、これに該当しない場合は届出が簡素化されないことがあります。裏を返せば、企業評価書によって改善の見通しを示すことは、日々の届出・報告の負担を軽くすることにもつながります。詳細な要件は個別の状況によって異なるため、専門家への確認をおすすめします。
育成就労制度になっても企業評価書は必要ですか
技能実習の改組後にあたる育成就労制度は、2027年4月の施行が予定されています。制度移行後も、債務超過の企業に改善の見通しを示す書面が求められる枠組みは引き継がれる見込みです。移行時期の詳細な取り扱いは、監理支援機関や外国人育成就労機構への確認が必要です。
相談から企業評価書の提出までどのくらいかかりますか
必要な決算資料や試算表がどれだけ整っているか、改善計画の材料がどこまであるかによって変わります。資料がそろっている会社ほど、ヒアリングから書面化までがスムーズに進みます。正確な見通しは、無料相談の際に現状をお聞きしたうえでお伝えしています。
全国どこでも対応してもらえますか
KICKコンサルティング株式会社は東京・銀座本社を拠点としていますが、全国どこからでもオンラインで対応しています。地方のプラスチック成形工場からのご相談も数多くいただいています。
まとめ
プラスチック成形業の債務超過は、樹脂原料・電気代の高騰と、取引先への価格転嫁の遅れという2つの原因が重なって起きます。原価を見える化し、改善計画を明文化したうえで、中小企業診断士による企業評価書を用意すれば、特定技能の受入れという次の一手に進めます。
自社だけで抱え込まず、専門家と一緒に数字を整理することが、遠回りに見えて一番の近道です。原価高騰も人手不足も、経営者一人で抱えるには重すぎるテーマです。まずは現状の数字を誰かに見てもらうところから始めてみませんか。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
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