【重要】2024年問題を乗り切る建設業向け財務戦略3つのポイント

2026年7月現在、建設現場を預かる経営者の多くが、二つの数字に頭を悩ませています。ひとつは、2024年4月から罰則付きで適用された時間外労働の上限規制。もうひとつは、決算書に記載された債務超過という数字です。厚生労働省の規定では、36協定を結んでいても時間外労働は原則月45時間・年360時間までとされ、特別条項を使っても年720時間以内、単月100時間未満、複数月平均80時間以内という枠から外れることは許されません。違反すれば6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金という刑事罰の対象になります(厚生労働省)。

現場はこれまで、残業でなんとか穴を埋めてきました。しかしその前提が崩れた今、多くの経営者が増員という選択肢に向き合わざるを得なくなっています。国土交通省の資料によれば、建設業の就業者数は1997年の685万人をピークに2023年時点で483万人まで減少し、55歳以上が全体の3割を超える一方、29歳以下は約1割にとどまります。人を増やしたくても、国内だけでは現実的に難しいのが実情です。

そこで視野に入るのが、特定技能や技能実習といった外国人材の採用です。ところが、いざ申請の段階に進むと、もうひとつの壁にぶつかる経営者が少なくありません。資材価格の高騰と人件費の上昇が続くなか、決算書が債務超過の状態になっている——帝国データバンクの調査では、2025年の建設業倒産は2,021件となり前年比6.9%増加、4年連続の増加で過去10年で最多を記録しています。倒産の内訳を見ると、負債5,000万円未満の小規模倒産が全体の6割を超え、資本金1,000万円未満の事業者が7割を占めるとされ、体力に乏しい中小・零細の下請層が苦境に立たされている実態が浮かび上がります。物価高倒産や人手不足倒産が高水準で続く現状は、あなたの会社だけの問題ではありません。資材価格の高騰、労務費の上昇、価格転嫁が進まない多重下請構造——これらは個々の経営判断の失敗ではなく、職人不足・高齢化・資材高という業界全体が直面している構造的な圧力です。

ただし、債務超過という事実そのものが、外国人材の採用を止めてしまうわけではありません。次に何をすべきかを、順を追って説明します。

外国人技能実習・特定技能の企業評価書

結論から言えば、直近事業年度の決算書が債務超過であっても、外国人技能実習機構(OTIT)が定める基準を満たす第三者評価書類、いわゆる企業評価書を用意すれば、技能実習生の受入れに向けた申請手続きを進めることができます。OTITが公表している技能実習計画認定申請に係る提出書類一覧・確認表(別紙②-1)の番号20には、直近の事業年度で債務超過がある場合、中小企業診断士や公認会計士等、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が改善の見通しについて評価を行った書類も提出することが明記されています。つまり、税理士や社内の経理担当者が独自に作成した書類では、この基準を満たすことができません。

ただし、企業評価書さえあれば無条件に認定されるわけではなく、評価内容の論理性と財務分析の精度が審査の可否を左右します。ここから先は、その評価書が実際にどのような構造で作られ、なぜ専門家に依頼する経営者が増えているのかを見ていきます。

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「2024年問題」が追い詰める建設業の資金と人材

残業規制の罰則と現場が抱える時間外労働の実態

建設業は長らく、時間外労働の上限規制について5年間の適用猶予を受けてきました。しかしその猶予は2024年3月末で終了し、2024年4月1日以降は原則どおりの規制が適用されています(厚生労働省)。具体的な上限は次のとおりです。

区分上限の内容
原則(36協定)月45時間・年360時間以内
特別条項適用時年720時間以内
単月(休日労働含む)100時間未満
複数月平均(2〜6か月・休日労働含む)80時間以内
月45時間超過が許される回数年6か月まで
違反時の罰則6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金

国土交通省の資料では、令和3年度の建設業の年間総実労働時間は1,978時間で、全産業平均(1,632時間)より350時間以上長いことが示されています。さらに、4週8休を実現できている建設技能者はわずか5.7%にとどまるというデータもあります。つまり、これまで現場を支えてきた長時間労働という前提そのものが、法令違反のリスクと隣り合わせになっているのです。

債務超過が外国人材審査に立ちはだかる理由

残業で穴を埋められないなら、人を増やすしかありません。しかし国内の若手人材は限られており、多くの経営者が特定技能や技能実習といった外国人材の採用に向き合うことになります。国土交通省の資料によれば、建設分野で活躍する外国人技能者の在留者数は約14.6万人で全建設技能者数の約4.9%を占め、在留資格別では技能実習が最多(2024年時点で約11万人)となっています。特定技能については2024年8月速報値で33,948人が建設分野に在留し、2024年度から5年間の受入見込数は80,000人まで拡大される方針です。

ところが、ここで多くの経営者が直面するのが決算書の中身です。資材価格の高騰と価格転嫁の遅れにより、建設業では債務超過に陥る中小事業者が少なくありません。帝国データバンクの調査では、2025年度の建設業倒産のうち物価高を主因とするものが247件、価格転嫁率は全業種平均で42.1%にとどまるという実態も明らかになっています。別の集計では、建設工事費デフレーターが2021年12月から2025年12月にかけて約17%上昇したとされ、受注単価に転嫁できないままコストだけが積み上がる構造が続いていることがうかがえます。OTITの基準では、直近の事業年度で債務超過がある場合、技能実習計画認定申請において中小企業診断士等の第三者評価書類の提出が求められます。つまり、2024年問題による増員ニーズ資材高騰による債務超過という二つの圧力が、同時に経営者へのしかかっているのです。

何もしなければ起こる3つの悪化シナリオ

  • 採用計画の停止・遅延 評価書類が不備のまま申請すれば、認定が下りず、予定していた現場稼働計画そのものが白紙に戻ります。技能実習生の入国スケジュールは監理団体との調整も含めて数か月単位で動くため、一度差し戻しになると、次の入国時期まで数か月単位のロスが生じることも珍しくありません。
  • 金融機関との対話が硬直化 債務超過の状態を放置すれば、金融機関との今後の資金調達協議においても、経営改善の道筋を示せないままの状態が続きます。数字だけを提示しても、改善に向けた具体的な計画が伴わなければ、対話は前に進みにくいのが実情です。
  • 既存社員の疲弊と離職 残業規制の下で増員できなければ、限られた人数で工期を守る負担が既存社員に集中し、離職というかたちで人手不足がさらに深刻化します。人が抜ければさらに一人当たりの負担が重くなるという悪循環に陥りやすい点にも注意が必要です。

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債務超過でも特定技能・技能実習を実現する企業評価書戦略

企業評価書の役割とOTIT認定基準

企業評価書とは、OTITが定める別紙②-1の番号20に基づき、直近事業年度に債務超過がある会社が技能実習計画認定申請を行う際に添付する、第三者による経営改善見通しの評価書類です。作成できるのは中小企業診断士または公認会計士等、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する者に限定されており、税理士は対象に含まれません。これは、財務諸表の正確性を確認する税務の専門性と、事業の収益構造や改善可能性を分析評価する診断士・会計士の専門性が、制度上区別されているためです。

なお、技能実習制度では別紙②-1番号20により第三者評価書の提出が明記されているのに対し、特定技能制度では現時点でこれと同一の法令上の提出義務が一律に定められているわけではありません。ただし特定技能の在留資格審査においても、受入れ企業の財務状況や事業継続性が確認される場面があるため、債務超過がある場合は同様の評価書類を実務的に準備しておくことが望ましいとされています。両制度の位置づけを整理すると、次のとおりです。

項目技能実習特定技能
債務超過時の評価書別紙②-1番号20により提出が明記されている法令上一律の明記はないが、審査実務上の準備が推奨される
受入れ人数の考え方受入れ機関の規模に応じた人数枠が設けられている建設分野では常勤職員数が上限の基準となる
制度の位置づけ2027年4月に育成就労制度へ段階的に移行予定育成就労からの移行先として連続性を持つ制度設計

育成就労制度は2027年4月1日に施行することが2025年9月の閣議決定で確定しており、技能実習から段階的に移行していく見込みです。制度が変わっても、経営の実態を客観的に説明する書類の重要性は変わりません。

企業評価書作成の4ステップ実務フロー

企業評価書は、次のような手順で作成が進みます。

  1. お申込み・資料提出 基礎資料として直近2期の決算書を準備します。
  2. オンラインヒアリングの実施 事業概要、現状課題、改善策について、経営者から直接聞き取りを行います。
  3. 企業評価書のプロ作成 ヒアリング内容をもとに、企業の強みと具体的な改善策を明確化し、審査基準に適合する書類を構築します。
  4. 成果物の納品 完成した評価書類を納品し、申請書類一式への組み込みをサポートします。

建設業の場合、下請構造や工事進行基準による収益認識の特殊性など、業種特有の論点を反映した分析が必要になります。業種別の対応範囲や具体的な作成の流れについては、企業評価書作成支援サービスで詳細を確認できます。

採用が実現した先にある具体的な未来

評価書が認定され、外国人材の受入れが実現した先には、三つの変化が待っています。第一に現場では、残業時間の上限を守りながらも工期を守れる人員体制が整い、担当者一人当たりの負荷が適正な水準に戻ります。工期の遅延リスクが下がれば、受注そのものに対する自信も取り戻せます。第二に財務面では、改善見通しを言語化したことで、金融機関との対話において具体的な数字と計画をもとに前向きな協議ができるようになります。債務超過という数字だけが独り歩きする状態から、改善のストーリーを語れる状態へと変わります。第三に組織面では、若手の日本人社員と技能を持つ外国人材が現場でともに働くことで、これまで属人化していた技能やノウハウの継承が少しずつ進み始めます。残業規制を守りながら現場を回せる体制、金融機関に胸を張って示せる財務の見通し、そして次の世代へ技能をつなぐ担い手——これらを共に手に入れましょう。

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外国人技能実習・特定技能の企業評価書

自社作成の限界と専門家に依頼が増える理由

自社だけで評価書を作る場合の3つの壁

決算書さえあれば自社でも評価書が作れるのではないか、と考える経営者もいます。しかし実際には、次の3つの壁が立ちはだかります。

項目自社で作成する場合専門家に依頼する場合
OTIT基準への適合公的資格がなければ、そもそも評価書の作成主体になれない中小企業診断士等の公的資格保持者が作成主体となる
経営者の作業負担決算分析と改善計画の言語化を手探りで進める必要がある決算書の提出とヒアリング対応が中心となる
審査基準の理解審査で重視される観点の把握が難しく、差し戻しのリスクがある建設業を含む多業種での支援実績に基づいた構成で作成する

専門性の壁だけでなく、経営者自身が本業の時間を削って手探りで書類を作成する時間コストも無視できません。日々の現場管理や資金繰りに追われるなかで、決算分析と改善計画の言語化にまで手が回らないという声は多くの経営者から聞かれます。さらに、審査基準への理解不足による不備は、認定の遅延という形で直接的に事業計画へ跳ね返ります。一度差し戻しになれば、再提出までにさらに時間がかかり、予定していた技能実習生の入国時期そのものがずれ込むおそれもあります。だからこそ、企業評価書に特化した専門家へ依頼する経営者が増えているのです。

KICKコンサルティング株式会社の支援内容

KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、企業評価書の作成に特化した専門支援を行っています。代表の松本昌史は、経済産業大臣登録の中小企業診断士であり、MBA(経営管理修士)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、一般社団法人金融検定協会認定の中小企業事業再生マネージャーの資格を持ち、事業承継士としても活動しています。当社は認定経営革新等支援機関として、法人支援実績150社以上を積み重ねてきました。建設業のほか、製造業、運輸・物流業、宿泊業、介護業など、業種ごとに異なる収益構造や下請構造を踏まえた分析力が強みです。

  • 経済産業大臣登録の中小企業診断士が直接対応、企業評価書の作成から納品までを一貫して担当
  • 建設業をはじめとする各業種の企業評価書作成に特化した専門支援
  • Zoom等を用いたオンライン完結型のヒアリングにより、全国どこからでも相談可能
  • 最短1営業日からのスピーディーな納品体制で、急な提出要求にも対応

なお当社の業務範囲は、企業評価書の作成、財務分析、申請書類作成のサポートに限定されます。技能実習計画やその他の在留資格に係る申請書類そのものの提出は、監理団体や登録支援機関、行政書士等の管轄となるため、当社では申請サポートという立場で伴走します。

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採用計画の遅れは、現場の稼働計画と資金繰りの両方に直結します。迷っている時間こそが、最も大きなコストです。

よくある質問

債務超過の会社でも技能実習生を受け入れられますか
OTITが公表する別紙②-1番号20の基準に基づき、中小企業診断士等の第三者評価書類を提出すれば、技能実習計画認定申請を進めることが可能です。評価書類が整っていない場合、申請自体が受理されない可能性があります。
企業評価書は税理士に依頼できますか
OTITの基準では、企業評価を行う能力を有すると認められる中小企業診断士や公認会計士等の公的資格保持者が作成主体とされており、税理士は対象に含まれません。
特定技能の場合も企業評価書は必須ですか
技能実習制度のように法令上一律の提出義務が定められているわけではありませんが、債務超過がある場合は審査実務上、財務状況の説明資料として評価書類を準備しておくことが実際的な対応とされています。
企業評価書の作成にはどれくらいの期間がかかりますか
決算書とヒアリング情報が揃っている場合、最短1営業日からの納品に対応可能です。急ぎの案件ほど、早めの相談が重要になります。
2024年問題の残業上限規制に違反するとどうなりますか
厚生労働省の規定により、時間外労働の上限規制に違反した場合、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科される可能性があります。
建設業の年間総労働時間は他産業よりどれくらい長いですか
国土交通省の資料では、令和3年度の建設業の年間総実労働時間は1,978時間で、全産業平均より350時間以上長いとされています。
建設業の就業者数はどれくらい減少していますか
国土交通省の資料によれば、建設業の就業者数は1997年の685万人をピークに、2023年時点で483万人まで減少しています。
特定技能の建設分野には人数の上限がありますか
建設分野では、特定技能と特定活動で就労する外国人材の合計数が、受入企業の常勤職員数を超えてはならないという上限が設けられています。
育成就労制度はいつから始まりますか
2025年9月の閣議決定により、育成就労制度は2027年4月1日に施行することが確定しています。施行後は激変緩和のための移行期間が設けられる見込みです。
企業評価書を提出しないとどうなりますか
OTITの審査基準を満たす評価書類が添付されていない場合、技能実習計画の認定が下りず、外国人材の受入れ計画そのものが停止するおそれがあります。
企業評価書は決算書のどの数字を根拠に作成しますか
直近2事業年度の貸借対照表と損益計算書を基礎資料とし、純資産の状況や収益構造、資金繰りの見通しなどを分析したうえで、改善策を具体的に言語化していきます。
建設業の倒産件数は最近どのように推移していますか
帝国データバンクの調査によれば、建設業の倒産件数は2021年の1,066件を底に4年連続で増加し、2025年には2,021件と2013年以来12年ぶりに2,000件を超えました。

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2024年問題と債務超過、二つの課題は別々の問題に見えて、実は一つの解決策でつながっています。評価書という一枚の書類が、現場と財務と採用のすべてをつなぐ起点になります。

外国人技能実習・特定技能の企業評価書

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