
東京出入国在留管理局から「直近の決算が債務超過となっているため、特定技能の受入れに関する届出を簡素化できる基準を満たせません。企業評価書(改善の見通しについて評価を行った書面)を提出していただく必要があります」と案内された。
そう言われても、社内に中小企業診断士の知り合いはいない。企業評価書がどんな書類なのかも、どこに頼めばいいのかも分からない——そんな状態ではないでしょうか。
ちょうど10月は最低賃金が改定され、来期の人件費水準が見えてくる時期です。特別養護老人ホームや有料老人ホームのように人件費比率が高い介護施設ほど、この引き上げが経営に直接響きます。
介護施設は、利用者・入居者の生活を支える仕事の性質上、人手を急に減らすことができません。そのため人件費の負担は年々重くなる一方で、介護報酬は3年に1度しか改定されず、コスト増をすぐには価格に転嫁できない構造があります。この状態を放置すると、悪循環が始まります。企業評価書を用意できない→特定技能の受入れ・在留資格の更新が滞る→現場の人手が戻らない→稼働率が上がらず収益が伸びない→赤字が続き、債務超過がさらに深まる、という流れです。
- 最低賃金の引き上げで人件費が重い施設の社長
- 介護報酬改定を待つ間の赤字が不安な経営管理担当者
- 特定技能の受入れ・更新が不安な総務担当の方
- 企業評価書を誰に頼めばいいか分からない方
- 介護施設が債務超過に陥りやすい2つの構造的な理由
- 特定技能の受入れを守るための3つの視点
- 企業評価書に実際に書かれる記載項目のイメージ
- 中小企業診断士に依頼するときの進め方
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
\無料相談(30秒で予約)/
介護施設が債務超過で企業評価書を求められる2つの理由

特別養護老人ホームや有料老人ホーム、デイサービス運営会社が債務超過に陥り、特定技能の受入れで企業評価書を求められる背景には、複雑な理由が積み重なっているわけではありません。原因はシンプルに2つに絞れます。
理由1 人件費比率が高く、最低賃金の引き上げが直接響く
介護は人の手で支えるサービスのため、他業種に比べて人件費の比率が高い構造にあります。厚生労働省の介護事業経営概況調査でも、介護事業所の収支は人件費の動向に大きく左右されることが繰り返し指摘されています。
| 業種の目安 | 売上に占める人件費の比率 |
|---|---|
| 製造業 | 3割前後 |
| 建設業 | 3〜4割前後 |
| 介護業(特養・有料老人ホーム等) | 6〜7割前後 |
毎年10月頃に発効する最低賃金の引き上げは、この人件費比率の高さゆえに、介護施設の収支へ直接跳ね返ります。2024年10月の改定では全国加重平均で51円引き上げられ、目安制度が始まって以降で最大の上げ幅になったと厚生労働省が公表しています。処遇改善加算で一部の職種は上乗せされても、事務職員や調理員など加算の対象にならない職種の賃金まで含めると、施設全体の人件費は加算額を上回るペースで増え続けます。
特別養護老人ホームや有料老人ホームは24時間体制のため、夜勤帯にも一定の人員配置が必要です。パート・非常勤スタッフの時給も最低賃金に連動して上がるため、正社員だけでなく施設全体の人件費が底上げされる点も見落とせません。
理由2 介護報酬の改定は3年に1度で、コスト増にすぐ追いつかない
一般の企業であれば、原価が上がれば価格に転嫁して収支を保つ選択肢があります。ところが介護報酬は公定価格であり、施設側が自由に値上げすることはできません。しかも改定は3年に1度というサイクルのため、その間に人件費や光熱費が上がっても、次の改定まで収入は据え置かれたままになります。
厚生労働省の介護事業経営概況調査では、2024年度に赤字だった介護事業所の割合が37.5%にのぼったと報告されています。物価高と人件費の高騰が主因とみられ、この状況が続けば、貸借対照表上の純資産がマイナスになる債務超過に至る施設が出てくるのも自然な流れです。
民間信用調査会社の調査でも、2024年度の介護事業者の倒産件数は過去最多を更新したと報じられています。訪問介護事業者の倒産が目立つ一方、特別養護老人ホームや有料老人ホームのような入所系施設でも、人件費と光熱費の増加分を吸収しきれず、赤字が慢性化するケースが増えています。「うちはまだ大丈夫」と思っていても、最低賃金の改定が続くたびに、じわじわと利益が削られていく点に注意が必要です。
資金繰りが厳しくなると、設備の更新や職員研修への投資を後回しにしがちです。目先の資金繰りを優先した結果、サービスの質や職場環境が悪化し、人材の定着率がさらに下がるという副作用が出ることもあります。早い段階で自施設の状態を客観的に把握しておくことが、こうした悪循環を防ぐ第一歩になります。
このまま何も手を打たなければ、赤字が翌期以降も積み重なり、金融機関からの評価も厳しくなります。特定技能や技能実習の受入れ・更新の場面で、改善の見通しが見えない会社だと判断されれば、外国人材の確保という一番の対策手段そのものが遠のいてしまいます。人手不足を補うはずの制度が使えなくなれば、既存スタッフの負担がさらに増し、離職という形でもう一段の人手不足を招きかねません。
企業評価書の基本を先に押さえたい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
特定技能の受入れを守る3つの視点|企業評価書のサンプルと書き方

債務超過そのものを消すことはすぐにはできなくても、「改善の見通しがある」ことを客観的に示すことはできます。それが企業評価書の役割です。ここではポイントを3つの視点に絞って手順化します。
視点1 人件費比率と収支のズレを数字で可視化する
まず取り組みたいのが、人件費比率の高さと介護報酬改定のタイムラグが、自施設の収支にどれだけ影響しているかを数字で洗い出すことです。最低賃金の改定前後の人件費総額、稼働率、加算の取得状況を並べるだけでも、赤字の構造が具体的に見えてきます。
具体的には、①職種別の人件費(正社員・パート・派遣の内訳)、②処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算の取得状況、③定員に対する稼働率の推移、の3点を最低でも3期分並べます。この作業だけで、「加算は取っているのに赤字が続く理由」が数字として説明できるようになり、企業評価書の土台になる資料が整います。
この可視化の作業こそ、企業評価書のベースになる部分です。自己流で決算書を並べるだけでは説得力のある評価にならないため、専門家と一緒に整理することをおすすめします。詳しくは次のページにまとめています。
外国人技能実習・特定技能の企業評価書について 社長やご担当者の方へ。“あなた”は今、このようなお悩みを抱えていませんか。 外国人技能実習制度を活用したいが、企業評価書の作成方法が分からないという方 特定技能外国人の受入れにあたり、経営改善の見通しについて評価が必要だと言...
視点2 改善の見通しを示す経営改善計画を明文化する
数字で現状を把握したら、次は「どう改善していくか」を計画として明文化する段階です。人件費の適正化、稼働率の向上策、加算の取得計画などを、具体的な数値目標つきで示します。この計画そのものが、企業評価書の「改善の見通し」部分の核になります。「いつまでに、何を、どれだけ改善するか」を数値と期限で書くことが、抽象的な決意表明で終わらせないコツです。
なお、債務超過が続いている介護施設には、企業評価書とは別に「経営改善計画策定支援(405事業)」という制度もあります。金融機関と共有する本格的な経営改善計画を、専門家費用の3分の2を国が補助する形で作れる仕組みで、既存の借入の返済条件の変更(リスケジュール)と組み合わせて資金繰りを立て直すことも可能です。倒産の可能性を下げる選択肢として、気になる方は次のページをご覧ください。
社長やご担当者の方へ。“あなた”は今、このようなお悩みを抱えていませんか。 ✓ 手元資金が減少している状況 ✓ 借入返済の負担が重く、将来の資金繰りに不安を感じている状態 ✓ 補助金を活用し、経営改善に取り組みたいが、準備や進め方が分から...
企業評価書に実際に記載する項目のイメージは、次のような構成です(架空の数値ではなく、一般的な記載項目の一覧です)。
| 記載項目 | 内容のイメージ |
|---|---|
| 企業概要 | 施設の種別(特養・有料老人ホーム等)、事業内容、沿革 |
| 財務状況・債務超過の理由 | 人件費比率の推移、最低賃金改定の影響、介護報酬改定とのタイムラグ |
| 改善の見通し | 人件費適正化・稼働率向上・加算取得などの具体的な計画と数値目標 |
| 作成者情報 | 中小企業診断士(または公認会計士)の氏名・登録情報 |
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
\無料相談(30秒で予約)/
視点3 中小企業診断士に依頼し、特定技能の「一定の基準」をクリアする
特定技能の定期届出には、届出の頻度を簡素化できる「一定の基準」という告示要件があり、そこには「過去3年間に債務超過となっていない法人であること」が明記されています。この基準に触れる法人は、企業評価書によって改善の見通しを示すことが、受入れ・更新の手続きを進める実質的な入り口になります。
企業評価書は中小企業診断士または公認会計士が作成する書面で、税理士は作成できません。「企業評価書を税理士に相談したい」と考える方もいますが、この点だけは誤解のないよう、早めに正しい依頼先を選ぶことが受入れをスムーズに進める近道です。
特定技能の在留外国人数を分野別に見ると、介護分野は全体の2割近くを占め、飲食料品製造業に次ぐ規模になっています。それだけ多くの介護施設が同じ制度・同じ書面と向き合っているということでもあり、決して自社だけが特殊な状況にあるわけではありません。
人件費の不安を乗り越え特定技能の受入れで手に入る未来

企業評価書を用意し、改善の見通しを示せた施設に何が起きるのか。抽象的な言い方ではなく、3つの軸で具体的に描きます。
数字の軸 人件費比率が「見える化」され、次の一手が明確になる
企業評価書の作成プロセスを通じて、人件費比率と稼働率の関係が数字で整理されます。最低賃金の改定があっても、どこまで許容できるか、どこから加算取得や人員配置の見直しが必要かが明確になり、毎年の改定に振り回されにくくなります。感覚ではなく数字で判断できる状態は、経営者本人の安心材料にもなります。
時間の軸 特定技能の受入れ・更新の手続きが止まらなくなる
改善の見通しが客観的に示されていれば、定期届出や在留資格の更新の場面で「債務超過だから受入れが止まる」という事態を避けやすくなります。人手不足のなかで採用活動に充てられるはずだった時間を、目の前の書類対応に奪われずに済みます。特定技能・技能実習・育成就労のいずれの制度でも、更新のたびに慌てて資料を集める負担から解放されます。
関係性の軸 金融機関や監理団体と同じ土俵で話せるようになる
企業評価書と、その裏付けとなる経営改善計画があれば、金融機関に対しても「場当たり的な説明」ではなく「見通しに基づいた説明」ができるようになります。監理団体や登録支援機関とのやり取りでも、根拠のある数字を示せることで信頼関係が築きやすくなります。人材の確保という本来の経営課題に、時間と気持ちを戻せることが最大の効果です。
この3つを共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

普通の介護施設が、自社だけで企業評価書を作成することはできません。企業評価書は中小企業診断士または公認会計士が「改善の見通しについて評価を行った書面」であり、施設の担当者が自己流でそれらしい書類を作っても、審査の場では受け入れられない可能性があります。
人件費の分析、介護報酬改定を踏まえた収支シミュレーション、金融機関にも通用する改善計画づくりには専門性が必要で、片手間で仕上げようとすると時間がかかるうえに、内容の説得力を欠いてしまうリスクもあります。企業評価が拒否されないように、要点を理解している経験豊富な中小企業診断士を紹介します。
KICKコンサルティング株式会社は、法人支援実績150社以上、中小企業庁の認定経営革新等支援機関として、債務超過企業の改善計画づくりに数多く携わってきました。東京・銀座に拠点を置きますが、全国どこからでもオンラインでご相談いただけますので、近くに頼める専門家がいないと感じている地方の施設様もご安心ください。
介護施設特有の事情(夜勤体制、加算の種類の多さ、利用者・入居者への影響を最小限にした改善計画づくり等)も踏まえたうえで、現場の実情に合わせた企業評価書を作成します。数字を整えるだけでなく、「なぜこの数字になっているのか」を経営者の言葉で説明できる状態まで一緒に作り上げるのが、専門家に依頼する一番の価値です。
「相談したら、すぐに大がかりな改革を求められるのでは」と身構える必要はありません。まずは現状の数字を一緒に確認するところから始まります。小さな一歩からで構いませんので、抱え込まずにご相談ください。
具体的には、決算内容と人件費構造の分析、改善の見通しを示す企業評価書の作成、金融機関への説明資料の整理までを、一気通貫でサポートします。
企業評価書をまとめて確認したい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
\無料相談(30秒で予約)/
企業評価書のよくある質問|特定技能・債務超過の疑問を解消

Q. 企業評価書とは何ですか?
A. 直近期末が債務超過の状態にある企業が、外国人材の受入れ・在留資格の手続きの際に提出を求められる書面で、正式には「改善の見通しについて評価を行った書面」と呼ばれます。中小企業診断士または公認会計士が、財務状況と今後の改善計画を評価したうえで作成します。
Q. 介護施設が特定技能を受け入れる際、企業評価書はいつ必要になりますか?
A. 直近の決算が債務超過の状態にあると、特定技能の定期届出を簡素化できる「一定の基準」を満たせなくなり、企業評価書の提出を求められる場面が出てきます。技能実習や育成就労の受入れ・更新でも、監理団体や監理支援機関から同様の提出を求められることがあります。
Q. 特定技能の定期届出における「一定の基準」とは何ですか?
A. 特定技能所属機関が定期届出の頻度を簡素化できる告示上の要件で、「過去3年間に債務超過となっていない法人であること」が条件のひとつに明記されています。この基準に触れる場合は、企業評価書で改善の見通しを示すことが実務上の対応になります。
Q. 企業評価書は誰が作成できますか。税理士に依頼できますか?
A. 作成できるのは中小企業診断士または公認会計士に限られ、税理士は作成できません。顧問税理士がいる施設様でも、企業評価書に関しては別途、中小企業診断士または公認会計士への依頼が必要になります。
Q. 企業評価書のサンプルやフォーマットはありますか?
A. 決まった全国共通の様式があるわけではなく、企業概要・財務状況と債務超過の理由・改善の見通し・作成者情報といった項目を、評価を行った専門家がまとめる形が一般的です。本記事のH2-2でも記載項目のイメージを表にまとめています。
Q. 企業評価書と改善報告書は同じものですか?
A. どちらも改善に関する書面という点で似ていますが、両者が同一の書式を指すのかは確認できていません。提出先の監理団体や地方出入国在留管理局によって求められる書面が異なる場合があるため、個別に確認することをおすすめします。
Q. 介護報酬改定と最低賃金の改定はどのような関係がありますか?
A. 介護報酬は3年に1度しか改定されない公定価格である一方、最低賃金は毎年10月頃に改定されます。このサイクルのズレにより、人件費比率の高い介護施設ほど、改定の谷間で人件費の伸びに収入が追いつかない期間が生じやすくなります。
Q. 技能実習生や育成就労からの移行でも企業評価書は必要ですか?
A. はい。技能実習の実施者や、2027年4月施行予定の育成就労制度への移行を検討する事業者も、直近期末が債務超過であれば、監理団体(育成就労では監理支援機関)から企業評価書の提出を求められる場合があります。
Q. 全国どこからでも相談できますか?
A. KICKコンサルティング株式会社は東京・銀座に拠点を置きますが、全国オンライン対応が可能です。地方の介護施設様からのご相談にも、オンライン面談で対応しています。
Q. 相談時には何を準備すればよいですか?
A. 直近2〜3期分の決算書(貸借対照表・損益計算書)と、可能であれば人件費の内訳が分かる資料をご用意いただけると、初回のご相談がスムーズです。手元に無い場合でも、まずは現状だけお聞かせいただければ問題ありません。
Q. 企業評価書を用意すれば、必ず特定技能の受入れが認められますか?
A. 企業評価書はあくまで「改善の見通しがある」ことを示す書面のひとつであり、受入れの可否は他の要件も含めて総合的に判断されます。断定はできませんが、改善の見通しを客観的な資料で示すことは、審査を進めるうえで重要な材料になります。
まとめ
介護施設が債務超過に陥る背景には、人件費比率の高さと、3年に1度しか改定されない介護報酬というズレが重なっています。原因は複雑ではなく、この2つに集約されます。
そのうえで、特定技能の受入れを守る道筋も、人件費の可視化・改善計画の明文化・専門家への依頼という3つの視点に沿って進めれば、決して遠いものではありません。最低賃金の改定に振り回される前に、改善の見通しを客観的な書面で示しておくことが、外国人材の受入れを止めないための一番の備えになります。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
\無料相談(30秒で予約)/
関連記事
有限会社D様(群馬県藤岡市、建設業、従業員6名)は、外国人技能実習生の受け入れにあたり、「企業評価書」の提出が求められ、どこに依頼すべきか迷われていました。 企業評価書は、中小企業診断士が作成できる独占業務であり、財務状況や経営計画に関する専門的な分析が必要です。 KICKコンサルテ...
企業評価書は、中小企業診断士にしか作成できない独占業務であり、財務状況や経営計画、労務体制に関する高度な分析が求められます。 群馬県高崎市で建設業を営む株式会社E様(従業員4名)では、外国人技能実習生の受け入れにあたり、短期間での企業評価書の提出が必要となっていました。しかし、「本業で手が回ら...









コメント