
露地野菜栽培法人が特定技能の受入れについて、加入している監理団体に相談したところ、「決算に債務超過が見られる状態では、受入れの手続きを進めることができません。企業評価書を用意してください」と言われた。
債務超過の原因は、天候にあります。台風や長雨で収穫量が急に減ったかと思えば、豊作の年は今度は市場価格が下落する。この二つのリスクの間で、決算の数字は大きく揺れ動きます。
このまま企業評価書を用意できなければ、今いる特定技能人材・技能実習生の継続雇用すらできなくなります。継続雇用できなければ来期の収穫期に必要な人手を確保できず、収穫の適期を逃せば出荷できず、売上は作れません。最悪の場合、天候だけでなく人手の面からも経営が立ち行かなくなります。
ちょうど台風シーズンが一段落し、今年の収穫への影響が数字となって見え始める時期でもあります。
とはいえ、債務超過の状態でも、特定技能や技能実習(育成就労)による外国人材の受入れをあきらめる必要はありません。
この記事では、天候不順で赤字・債務超過に陥りやすい露地野菜栽培法人が、審査を一発で通す企業評価書をどう準備するかを、3つのポイントに整理して解説します。
中小企業診断士として法人支援150社以上に関わってきた立場から、実務でつまずきやすい点を中心にまとめました。
読み終える頃には、自社の決算がなぜ赤字になったのかを説明する筋道と、企業評価書を誰にどう依頼すればよいかが分かります。
キャベツやレタスなど品目が違っても、天候の影響で収益が振れやすいという構造そのものは共通しているため、他の露地野菜を扱う法人にも参考にしていただける内容です。
- 台風や長雨で収穫が乱高下し赤字が続く方
- 露地野菜の経営で債務超過が心配な方
- 企業評価書を何から始めればよいか迷う方
- 特定技能の受入れ審査を確実に通したい方
- 露地野菜栽培法人が天候不順で赤字になりやすい構造
- 企業評価書に必要な3つのポイントと記載イメージ
- 中小企業診断士に依頼するときの流れと注意点
- 特定技能の受入れ審査を通過した後に描ける未来
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露地野菜栽培法人が天候不順で債務超過に陥り企業評価書を求められる理由

結論から言うと、露地野菜栽培法人が債務超過になりやすいのは、天候による収穫量の変動が売上に直結する一方で、人件費や借入金の返済といった固定費はほとんど動かないためです。
キャベツ・レタス・だいこん・たまねぎ・ばれいしょなど、広い圃場で作る露地野菜は、施設園芸(ビニールハウス)のように天候の影響を建物で緩和できません。
施設園芸であれば燃料費の高騰という形で赤字要因が数値化しやすいのに対し、露地野菜は収穫量そのものが年によって大きく上下するため、決算書だけを見た第三者には原因が伝わりにくいという特徴があります。
収穫量の急減と豊作貧乏という二つのリスク
台風や長雨で収穫量が計画を下回れば、その年の売上は単純に減ります。
一方で、天候に恵まれて収穫量が増えても、市場全体が豊作になると卸売価格が下落し、出荷量は確保できたのに利益が伸びない「豊作貧乏」に陥ることがあります。
露地野菜栽培法人の決算は、この二つのリスクの間で振れ幅が大きくなりやすい構造を持っています。
| 要因 | 具体的な内容 | 財務への影響(例) |
|---|---|---|
| 収穫量の急減(台風・長雨) | 収量が計画を下回り、契約先への出荷量が不足する | 売上高の減少。人件費・機械のリース料は変わらず粗利が圧迫される |
| 豊作による市場価格の下落 | 出荷量は確保できても卸売市場の価格が下がる | 増収でも利益が伸びない、または減益になる |
この2つの要因は、単独でも赤字要因になり得ますが、実際には重なって発生することが多く、1年の悪天候が数年分の資金繰りに影響を残すケースも珍しくありません。
放置すると受入れ審査にどう影響するか
債務超過の状態を客観的な説明なしに放置すると、次のようなことが起きます。
- 金融機関からの追加融資が受けにくくなる
- 特定技能・技能実習の受入れ審査で追加書類を求められる
- 審査側から改善の見通しが立っていないと判断され、受入れ自体が止まる
特定技能所属機関の定期報告は令和7年度から年1回化されましたが、告示では「過去3年間に債務超過となっていない法人」であれば届出が一部簡素化されるという基準も示されています。
裏を返せば、債務超過がある法人は、初回の申請時だけでなく定期報告のタイミングでも状況説明を求められる可能性があるということです。
特に露地野菜栽培法人の場合、悪天候の翌年にたまたま豊作が続いて黒字化しても、審査側がそれを「一時的な回復」と見るか「安定した改善」と見るかは、決算数値だけでは判断できません。
だからこそ、単年度の数字ではなく複数年の推移と、その背景にある天候要因を整理して示すことが重要になります。
要するに、露地野菜栽培法人にとって企業評価書は、一度きりの通過儀礼ではなく、天候リスクと向き合い続けるための説明資料と考えたほうが実態に近いと言えます。
企業評価書の基本を先に押さえたい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
露地野菜栽培法人が特定技能を受入れる3つのポイント|企業評価書のサンプルと書き方

天候不順による赤字を審査で正しく理解してもらうためのポイントは、次の3つに整理できます。
ポイント1 天候データと収穫量の相関を客観的に示す
「天候が悪かったので赤字になりました」という説明だけでは、審査側は一時的な要因なのか経営体質の問題なのか判断できません。
台風の上陸や長雨といった気象の記録と、自社の収穫量・出荷量の推移を年度ごとに並べて示すと、赤字の原因が天候にあることが伝わりやすくなります。
特定の年だけ大きく落ち込んでいる決算数値を示せれば、一過性の要因であることの説明力が上がります。
気象庁の統計や地域の農業共済組合が持つ被害記録など、公的な裏付けのあるデータを添えられると、説明の客観性はさらに高まります。
収穫日誌や出荷記録を日頃から残しておくことも、いざ企業評価書を作成する段階になったときの土台になります。
ポイント2 収入保険や作付け分散などの改善策を具体的に描く
審査で重視されるのは、赤字の理由そのものより「今後どう改善するか」です。
農業経営収入保険制度への加入、作付け品目や出荷先(卸売市場・契約栽培・直売)の分散、天候の影響を受けにくい品目の組み合わせなど、具体的な改善策を時期とあわせて示すことが欠かせません。
抽象的な「経営努力を続けます」ではなく、いつ・何を・どこまでやるかを書くほど、見通しの説得力は高まります。
また、天候リスクは1品目に集中しているほど大きくなるため、収穫時期の異なる品目を組み合わせることも、改善策として説明しやすい材料になります。
ポイント3 中小企業診断士による第三者評価を早めに依頼する
改善の見通しについて評価を行った書面(企業評価書)を作成できるのは、中小企業診断士や公認会計士など、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者です。
決算が確定してから慌てて依頼すると、天候データとの照合や改善策の整理に十分な時間を取れません。
決算の着地が見えた段階で早めに相談しておくと、申請スケジュールにも余裕を持たせられます。
実務の流れとしては、まず現状のヒアリングで作付け品目や被害状況を確認し、次に決算数値と天候データを突き合わせて財務分析を行い、最後に改善の見通しを書面としてまとめるという順序になります。
この一連の作業を経営者一人で抱え込むのではなく、早い段階で第三者に相談しておくことが、天候不順の年ほど重要になります。
企業評価書の記載イメージ
特定技能 企業評価書 サンプルとしてよく求められるのは、次の3つの項目で構成された書面です。
| 記載項目 | 記載する内容の一例 |
|---|---|
| 企業概要 | 栽培品目、作付面積、主な出荷先、雇用状況など |
| 財務状況・債務超過の理由 | 台風や長雨による収穫減、豊作時の市場価格下落など、赤字の直接的な要因 |
| 改善の見通し | 収入保険への加入、作付け品目・出荷先の分散、設備投資計画の見直しなどの具体策と実行時期 |
架空の数値を書き込むのではなく、自社の決算書と作付け計画に基づいて、この3項目を一つずつ埋めていくのが実務の進め方です。
特に「財務状況・債務超過の理由」の欄は、単に赤字額を書くのではなく、どの年にどの品目で何が起きたのかを具体的に記すほど、審査側にとって読みやすい書面になります。
企業評価書のサービス内容や依頼の流れは、次のページにまとめています。
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天候リスクを乗り越え特定技能の受入れで手に入る未来

企業評価書を整え、特定技能の受入れ審査を通過した先には、抽象的な安心ではなく具体的な変化があります。
数字の軸 収穫のロスを最小限に抑えられる
収穫期に必要な人手を安定して確保できれば、悪天候の合間の限られた収穫適期を逃さずに済みます。
収量そのものを増やすことはできなくても、収穫できたはずの野菜を無駄にせず出荷できる体制は、天候リスクへの備えとして直接的な効果を持ちます。
収穫適期は品目ごとに数日単位で決まるため、人手が足りずに収穫が数日遅れるだけで、品質が落ちて出荷できなくなることもあります。
安定した人員体制は、そうした「収穫できたのに出荷できなかった」損失を防ぐ、地味だが確実な効果を持っています。
時間の軸 審査対応に追われる時間から解放される
企業評価書と改善計画を一度きちんと整えておけば、次の決算や定期報告のたびにゼロから資料を作り直す必要がなくなります。
浮いた時間を、圃場の管理や新しい出荷先の開拓といった本業に振り向けられます。
毎年の決算期に「今年も赤字の説明をどうしよう」と頭を悩ませる状態から抜け出せることも、経営者にとっては見過ごせない変化です。
関係性の軸 監理団体や取引先との信頼が積み上がる
債務超過という事実を隠さず、改善の見通しを客観的な書面で示す姿勢は、監理団体や登録支援機関、取引先の卸売市場からの信頼にもつながります。
「天候不順でも、きちんと立て直す会社だ」という評価は、次の作付け計画や取引条件の交渉でも力になります。
特定技能の外国人材にとっても、経営が安定している職場のほうが働き続けやすく、定着率の向上という形で関係性の軸に返ってきます。
天候不順の年をきっかけに経営体制を見直した法人が、その後の受入れ更新や技能実習からの移行手続きをスムーズに進められているのも、こうした信頼の積み重ねによるところが大きいと言えます。
天候という自分たちだけでは変えられない条件と向き合いながら、安定した経営基盤を共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

ここまでの3つのポイントは、理屈としては理解できても、自社だけで書面に落とし込むのは簡単ではありません。
気象データと決算数値を突き合わせる分析、審査側が納得する言葉での改善策の言語化、決まった様式がない書面をゼロから組み立てる作業には、いずれも専門性と時間がかかります。
顧問税理士や行政書士に相談しても、企業評価を行う公的資格を持たない専門家では、この書面自体を作成する権限がありません。
だからこそ、企業評価書に強い中小企業診断士に、早い段階で伴走してもらう経営者が増えています。
企業評価書は、中小企業診断士や公認会計士が作成のメインであり、普通の企業が自己流で用意しても、審査で受け入れられないことがほとんどです。企業評価が拒否されないように、要点を理解している経験豊富な中小企業診断士を紹介します。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、東京を拠点としながら全国どこからでもオンラインでご相談いただける体制で、認定経営革新等支援機関として法人支援150社以上に携わってきました。
代表の松本昌史は中小企業診断士であり、MBA(経営管理修士)や1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)としての知見も踏まえながら、債務超過の状態にある農業法人の決算を数字だけでなく、天候という現場の実情とあわせて読み解くことを大切にしています。
一般社団法人金融検定協会が認定する「中小企業事業再生マネージャー」としての立場から、単なる書面作成にとどまらず、資金繰りそのものの立て直しまで視野に入れた助言を心がけています。
顧問税理士や行政書士がいらっしゃる場合も、その先生方の役割を踏まえたうえでご支援しますので、今の体制を崩すご提案はいたしません。
「今期は天候のせいで仕方なかった」で終わらせず、その説明を審査に通る書面として形にするところまで一緒に進める、というのが伴走支援の考え方です。
1社ごとに天候の影響や作付け内容が異なるため、丁寧に時間をかけて向き合う必要があり、月あたりでお受けできるご相談数には自然と限りがあります。
露地野菜栽培法人の場合、決算書だけでなく作付け計画や収穫記録も確認しながら分析を進めるため、初回のご相談では現在の栽培品目や被害状況を伺うところから始めています。
企業評価書をまとめて確認したい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
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企業評価書のよくある質問|特定技能・債務超過の疑問を解消

Q. 企業評価書とは何ですか
A. 企業評価書とは、外国人技能実習(育成就労)や特定技能の受入れ申請で、直近決算が債務超過のときに提出を求められる「改善の見通しについて評価を行った書面」の通称です。技能実習では外国人技能実習機構(OTIT)、特定技能では出入国在留管理庁が手続き全体を所管しており、OTITへの提出書類では別紙②-1・番号20に位置づけられています。なお、外国人技能実習機構は令和9年4月から外国人育成就労機構へ改組される予定です。
Q. 露地野菜栽培法人が債務超過でも特定技能を受入れられますか
A. はい、可能です。債務超過そのものが受入れを一律に禁止する理由にはなりません。ただし、赤字が一時的で今後改善する見通しがあることを、客観的な書面で示す必要があります。
Q. 企業評価書は誰が作成できますか
A. 中小企業診断士や公認会計士など、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が作成します。顧問税理士に相談されるケースもありますが、税理士単独では作成できない点に注意が必要です。在留資格の申請取次や申請サポートを担う行政書士も、企業評価書そのものの作成者ではない点は同様です。
Q. 企業評価書のサンプルや記載イメージはありますか
A. 決まった様式はありませんが、企業概要・財務状況と債務超過の理由・改善の見通しという3項目は共通しています。本文のH2-2で紹介した記載イメージの表を参考にしてください。
Q. 天候不順による赤字はどう説明すればよいですか
A. 台風や長雨、豊作による市場価格の下落など、天候に起因する要因と財務数値の変化を年度ごとに対応させて説明します。特定の年だけ利益が落ち込んでいることを示せると、一時的な要因であることが伝わりやすくなります。
Q. 特定技能の定期報告でも企業評価書は必要ですか
A. 特定技能所属機関の定期報告は令和7年度から年1回化されましたが、届出の一部簡素化の基準として「過去3年間に債務超過となっていない法人」という条件が示されています。この基準に当てはまらない場合は、定期報告のタイミングでも状況説明が必要になることがあります。
Q. 技能実習(育成就労)でも同じ書面が必要ですか
A. はい。監理団体・監理支援機関の財産的基礎の確認でも、直近期末に債務超過がある場合は同種の評価書面の提出が求められます。出入国在留管理庁の資料によると、育成就労制度は令和9年4月1日からの運用開始が予定されており、これにあわせて外国人技能実習機構も外国人育成就労機構へ改組される見込みです。この考え方は技能実習制度の枠組みを引き継ぐとされています。
Q. 企業評価書を依頼するタイミングはいつがよいですか
A. 決算が確定し債務超過が分かった時点で、できるだけ早く依頼することをおすすめします。申請の直前に依頼すると、天候データとの照合や改善策の整理に十分な時間を取れなくなるためです。
Q. 収入保険に加入していると企業評価書の審査で有利になりますか
A. 収入保険制度は、天候や市場価格の変動による収入減少を補う公的な仕組みであり、加入していること自体が改善の見通しの裏付けの一つになります。ただし加入だけで足りるわけではなく、作付け計画や出荷先の分散とあわせて説明することが大切です。
Q. 企業評価書の作成には時間がどれくらいかかりますか
A. 決算数値の分析、天候データとの照合、改善策のヒアリングと書面化という複数の工程があるため、依頼から完成までにはある程度の期間が必要です。申請期限から逆算し、余裕を持って依頼することをおすすめします。
まとめ
露地野菜栽培法人の赤字・債務超過は、経営者の努力不足ではなく、天候という自分たちだけでは変えられない条件によって生まれやすいものです。
大切なのは、その事実を隠さず、天候データと改善策をセットにした企業評価書で客観的に説明することです。
収穫量の急減と豊作貧乏という2つの要因を整理し、天候データとの相関、収入保険や作付け分散といった改善策、中小企業診断士による第三者評価という3つのポイントを押さえれば、特定技能の受入れ審査は乗り越えられます。
債務超過は経営の失敗を示す数字ではなく、天候という条件のもとでどう立て直すかを説明するきっかけにすぎません。
来期の収穫期に向けて、人手の不安を残したまま迎えるか、今のうちに体制を整えておくかで、1年後の決算は大きく変わります。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
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