
特別養護老人ホームが特定技能の受入れについて、厚生労働省から「決算が債務超過の状態では、受入れの審査で立ち止まることになります。企業評価書がないと先に進められません」と言われた。
債務超過の原因は、職員不足で稼働率が上がらないことにあります。稼働率が上がらないまま、光熱費や食材費、人件費だけが上がり、介護報酬だけでは吸収しきれません。
このまま企業評価書を用意できなければ、今いる特定技能人材の継続雇用すらできなくなります。継続雇用できなければ入所待機者を受け入れる体制を整えられず、体制を整えられなければ稼働率を上げられず、売上は作れません。最悪の場合、施設そのものが立ち行かなくなります。
上期の数字が固まり、下期でどう挽回するかを考え始める時期ではないでしょうか。とくに特別養護老人ホーム(特養)では、入所を待つ高齢者が大勢いるのに、ベッドを満床にできないまま上期を終えてしまった、という声をよく耳にします。
この記事では、職員不足で稼働率が上がらない特養が、赤字や債務超過を抱えたまま審査を一発で通すための3つの条件と、審査で必ず名前が挙がる「企業評価書(改善の見通しについて評価を行った書面)」の中身を、中小企業診断士の視点から解説します。
- 入所待機者がいるのに満床にできない特養の施設長
- 職員不足で夜勤体制の維持に悩む社会福祉法人の理事
- 直近決算が赤字・債務超過で受入審査が不安な総務担当
- 企業評価書を誰に頼めばいいか分からない経営管理職
- 特養の稼働率が上がらない構造的な3つの原因
- 債務超過でも特定技能を受入れる3つの条件
- 企業評価書(改善見通しに関する評価書面)の記載イメージ
- 受入れが実現した先に手に入る具体的な未来
私たちKICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として法人支援150社以上の実績があり、外国人材の受入れに必要な企業評価書の作成支援を行っています。この記事を読み終える頃には、自社が今どこにいて、次に何をすべきかが具体的に分かるはずです。
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特養が債務超過で企業評価書を求められる理由

結論から言うと、特養の赤字・債務超過は「利用者がいないから」ではなく、「職員が足りず、ベッドを開けられないから」起きています。ポイントは3つです。
入所待機者はいるのに、なぜ稼働率が伸びないのか
多くの特別養護老人ホームでは、入所者3人に対して常勤換算で介護・看護職員1人以上という人員配置基準が求められます。この基準を満たせなければ、ベッドが空いていても入所者を受け入れられません。
厚生労働省の統計でも、介護関連職種の有効求人倍率は全職種平均を大きく上回る水準が続いており、採用の難しさは特養に限った話ではありません。ただし特養は夜勤を含む交代制勤務が前提のため、他業種より採用のハードルがさらに高くなりがちです。
帝国データバンクの調査でも、人手不足を背景にした介護事業者の休廃業・解散や倒産が高水準で推移していることが指摘されています。「利用者が集まらない」のではなく「職員がいないから断らざるを得ない」という点が、特養特有の悩みです。
入所を待つ高齢者やその家族からすれば、「なぜ空きがあるのに入れないのか」と疑問に思われることもあります。しかし現場の実情は、法令上の人員配置基準を満たせるだけの職員体制を組めていないだけ、というケースが大半です。
広域型・地域密着型を問わず、特養は民間の有料老人ホームのように利用料を柔軟に設定できる仕組みではありません。収入の大部分は介護報酬で決まっているため、コスト増を価格に転嫁するという選択肢自体がほぼありません。だからこそ、稼働率をどこまで引き上げられるかが、収支改善のほぼ唯一の変数になります。
赤字・債務超過に陥る3つの原因
特養の経営が悪化するときは、たいてい次の3つが重なっています。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 職員不足による稼働率の頭打ち | 夜勤を回せる職員が足りず、待機者がいてもベッドを満床にできない |
| 物価高騰と人件費上昇 | 食材費・水道光熱費・委託費が上がる一方、介護報酬は制度改定を待たないと変わらない |
| 人材紹介・派遣への依存 | 採用難を埋めるための紹介手数料・派遣費用がかさみ、収支をさらに圧迫する |
このまま何も手を打たなければ、稼働率は上がらず、固定費だけが重くなっていきます。数年単位でこの状態が続くと、貸借対照表の純資産がマイナス、つまり債務超過に転じる可能性があります。そうなると、特定技能や技能実習の在留資格の更新・新規受入れの審査で、財務状況の説明を求められます。
要するに、特養の赤字・債務超過は「経営努力が足りない」からではなく、「職員数という物理的な制約」から生まれる構造的な問題です。だからこそ、外国人材の受入れという打ち手が現実的な選択肢になります。
3期連続の赤字だと審査はより厳しくなる
単年度の赤字であれば、次の決算で黒字に戻せる見通しを示せば足ります。しかし赤字が2期、3期と続くと、審査する側は「一時的な落ち込みなのか、構造的な問題なのか」をより慎重に見るようになります。放置する期間が長くなるほど、改善の見通しを説明する難易度は上がっていきます。
逆にいえば、赤字が浅いうちに原因を整理し、改善計画を数字で示せれば、審査を通過できる可能性は十分にあります。早めに動くことが、結果的に一番の近道です。
「様子を見る」がいちばんのリスクになる
特養の現場では、「次の介護報酬改定を待とう」「もう少し採用活動を続けてみよう」と、判断を先送りしてしまうことが少なくありません。しかし職員不足は自然には解消しません。採用の難しさは業界全体の構造であり、時間が経つほど有利になる要素は基本的にないためです。
その間にも、待機者は他の施設や在宅介護へ流れ、稼働率を取り戻す機会そのものが減っていきます。「今期は様子を見る」という判断こそが、翌期の決算をさらに悪化させる最大の要因になりやすいのです。
特定技能を受入れる3つの条件|企業評価書のサンプルと書き方

結論として、債務超過を抱えた特養が特定技能を受入れるために必要なのは、次の3つの条件です。
- 直近期末の財務状況を正確に把握し、債務超過に該当しているかを確認する
- 改善の見通しについて評価を行った書面(企業評価書)を専門家に依頼する
- 人員配置基準を満たす採用計画と、稼働率・収支の数値目標をセットで示す
条件1 貸借対照表で債務超過の有無を確認する
まず直近期末の貸借対照表を見て、純資産がマイナスになっていないかを確認します。単年度が赤字でも、資産が負債を上回っていれば債務超過ではありません。この違いを混同したまま相談を始めると、話がかみ合わなくなります。
条件2 企業評価書を中小企業診断士等に依頼する
直近期末が債務超過に該当する場合、外国人技能実習機構や出入国在留管理庁の審査では、「中小企業診断士、公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が改善の見通しについて評価を行った書面」の提出が求められます。これが企業評価書です。
作成できるのは中小企業診断士または公認会計士であり、税理士は作成できません。顧問税理士に相談しても対応できない領域なので、早い段階で作成できる専門家を探しておく必要があります。
条件3 人員配置基準を満たす採用計画を数値で示す
企業評価書で最も重要なのは、過去の説明ではなく「これからどう改善するか」です。特定技能・技能実習、そして2027年4月に施行予定の育成就労を組み合わせた複数年の採用計画を立て、人員配置基準をいつ満たせるか、稼働率と収支がどう改善するかを数値で示します。
特養の場合、特定技能・技能実習のどちらの在留資格でも介護分野は対象職種に含まれています。1人の採用計画で終わらせず、何年かけて何人を採用し、稼働率を何段階で引き上げるかという複数年のロードマップにすることが、審査での説得力を大きく左右します。
あわせて、監理団体や登録支援機関との連携体制、日本語学習・生活支援の受け入れ体制など、採用後の定着に関する備えも簡潔に触れておくと、計画全体の実現性が伝わりやすくなります。
ここまでの3条件を整理すると、企業評価書は単なる「提出書類のひとつ」ではなく、「自法人の課題を客観視し、改善への道筋を数字で語り直す作業」そのものだと分かります。言い換えれば、企業評価書づくりのプロセス自体が、経営改善の第一歩になります。
企業評価書に一般的に盛り込まれる項目は、次のような構成です(架空の数値ではなく、記載項目の一覧です)。
| 記載項目 | 内容の目安 |
|---|---|
| 企業概要 | 事業内容・入所定員・職員体制などの基本情報 |
| 財務状況・債務超過の理由 | 債務超過に至った経緯(人員不足・稼働率低下等)の客観的な整理 |
| 改善の見通し | 採用計画・稼働率と収支の改善計画・実行体制 |
詳しくは次のページにサービス内容をまとめています。
外国人技能実習・特定技能の企業評価書について 社長やご担当者の方へ。“あなた”は今、このようなお悩みを抱えていませんか。 外国人技能実習制度を活用したいが、企業評価書の作成方法が分からないという方 特定技能外国人の受入れにあたり、経営改善の見通しについて評価が必要だと言われた方 ...
この3条件がそろえば、審査官は「なぜ債務超過になったか」ではなく「どう改善するか」を見て判断できるようになります。数字と計画が伴った企業評価書は、審査を後押しする材料になります。
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稼働率の壁を越え、特定技能の受入れで手に入る未来

企業評価書を整え、特定技能の受入れが実現した先には、次の3つの変化が起きます。
数字 稼働率と収支が改善する
人員配置基準を満たせるようになれば、これまで空けていたベッドを埋められます。待機者を受け入れられる分だけ収入が積み上がり、赤字体質からの脱却が見えてきます。
稼働率が上がれば、1床あたりの固定費負担も自然と下がります。人材紹介・派遣に頼っていた費用も、直接雇用の職員が増えるほど圧縮できる余地が生まれます。
時間 採用と定着までのスピードが上がる
企業評価書という客観的な裏付けがあれば、在留資格の審査でつまずく時間が減ります。複数年の採用計画を先に立てておくことで、行き当たりばったりの求人に振り回される時間も減っていきます。
採用のたびに一から書類を作り直す必要もなくなり、次の更新・次の受入れへとスムーズに進めるようになります。
関係性 利用者家族・自治体・金融機関からの信頼が増す
職員体制が安定すれば、利用者家族への説明にも自信が持てます。自治体への実地指導や、金融機関への決算説明でも、「改善の見通しを持って動いている」ことを数字で示せるようになります。
特に金融機関は、赤字そのものよりも「経営者がその原因を理解し、対策を実行しているか」を重視します。企業評価書という第三者の視点が入った書面は、その説明を後押しする材料になります。
働く職員にとっても、人手不足のまま無理を重ねる現場より、計画的に採用が進む現場の方が働きやすいものです。結果として既存職員の離職も落ち着き、採用と定着の好循環が生まれやすくなります。
職員不足という物理的な壁を越え、待機者を受け入れられる特養へ。この未来を、共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

ここまで読んで、「言っていることは分かるが、自分たちだけで書けるだろうか」と感じた方も多いはずです。企業評価書には専門性の壁があります。
専門性の壁 資格要件を満たす専門家が限られる
企業評価書を作成できるのは中小企業診断士または公認会計士に限られます。顧問税理士や社会保険労務士では対応できず、探すだけでも時間がかかります。
加えて、社会福祉法人ならではの会計基準や、実地指導で確認される事項を理解していない専門家に依頼すると、書面の内容と現場実態がずれてしまうこともあります。介護分野の実務を理解した専門家かどうかも、依頼先を選ぶ際の大切な基準です。
時間コストとミスのリスク
施設運営と並行して財務資料をまとめ、改善計画を数値化する作業は、施設長や事務長にとって大きな負担です。記載内容に不備があれば審査が長引き、採用計画そのものが遅れます。
だからこそ、企業評価書の作成は専門家に任せる経営者が増えています。
実地指導・監査への対応という壁もある
特養は自治体による実地指導や、法人内部の監事監査の対象でもあります。財務の説明資料と、外国人材の受入れに使う企業評価書の内容が食い違っていると、かえって不信感を招きかねません。両方を整合させながら作成できるかどうかも、専門家に任せるべき理由のひとつです。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)の支援内容
私たちは、決算書と現場の状況をお伺いした上で、債務超過に至った理由の整理から、人員配置基準を満たすための採用計画、稼働率・収支の改善計画まで、企業評価書として一体で作成する支援を行っています。書面の作成だけでなく、その後の採用計画づくりまで伴走します。
中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として150社以上の法人を支援してきた経験をもとに、社会福祉法人特有の会計・制度も踏まえながら、現場の実態に即した書面を作成します。
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企業評価書のよくある質問|特定技能・債務超過の疑問を解消

Q. 企業評価書とは何ですか
A. 直近期末が債務超過の法人が、外国人材の受入れ審査で提出を求められる書面です。正式には「改善の見通しについて評価を行った書面」と呼ばれ、中小企業診断士または公認会計士が作成します。
Q. 債務超過とは具体的にどういう状態ですか
A. 貸借対照表上、負債の合計が資産の合計を上回り、純資産がマイナスになっている状態です。単年度の赤字とは異なり、資産と負債の累積で判断します。
Q. 特養は債務超過でも特定技能を受入れできますか
A. 可能です。ただし審査では、債務超過に至った理由と、今後の改善の見通しを客観的に示す企業評価書の提出が求められます。
Q. 企業評価書は税理士に依頼できますか
A. 依頼できません。作成できる資格は中小企業診断士または公認会計士に限られます。顧問税理士がいる場合も、企業評価書は別の専門家に依頼する必要があります。
Q. 特定技能の定期報告にある「一定の基準」とは何ですか
A. 出入国在留管理庁の告示では、定期届出の簡素化が受けられる「一定の基準」のひとつに、過去3年間に債務超過となっていない法人であることが挙げられています。債務超過があると、この簡素化を受けられない場合があります。
Q. 監理団体・登録支援機関の側が債務超過だとどうなりますか
A. 受入れ企業(特養)だけでなく、監理団体や登録支援機関自体の財産的基礎も審査の対象です。連携先の監理団体・登録支援機関の財務状況もあわせて確認しておくと、審査全体のつまずきを防げます。
Q. 育成就労制度になると企業評価書は不要になりますか
A. 2027年4月に施行予定の育成就労制度でも、財産的基礎に関する要件は形を変えて残る見込みです。制度の詳細は今後の運用要領で確定するため、現時点では現行の企業評価書の考え方に沿って準備を進めておくことをおすすめします。
Q. 社会福祉法人でも「債務超過」という言葉は使いますか
A. 会計基準は株式会社と異なりますが、資産から負債を差し引いた純資産がマイナスになっているかどうかという考え方そのものは同じです。詳細な判定は決算書に基づき専門家に確認することをおすすめします。
Q. 企業評価書のサンプルやひな形はありますか
A. 決まった様式は公表されていませんが、企業概要・財務状況と債務超過の理由・改善の見通しという記載項目の型は共通しています。外国人技能実習・特定技能どちらの申請でも、この型に沿って作成します。
Q. 企業評価書の作成にはどのくらいの期間がかかりますか
A. 決算書の内容や採用計画の整理状況によって変わりますが、財務資料と現場の状況をお伺いできれば、比較的短期間での作成を目指せます。まずは決算書をお持ちの上でご相談ください。
Q. 特定技能と技能実習、育成就労で企業評価書の考え方は変わりますか
A. どの在留資格でも、直近期末が債務超過であれば改善の見通しを示す書面が求められるという基本的な考え方は共通しています。制度ごとの細かな運用の違いは、審査時点の最新の運用要領で確認する必要があります。
Q. 職員配置基準を満たせないまま特定技能を受入れることはできますか
A. 在留資格の許可と、介護保険制度上の人員配置基準は別の枠組みです。ただし人員配置基準を満たせなければ、受け入れた職員を活かして稼働率を上げること自体ができません。企業評価書の改善計画には、配置基準を満たす具体的な道筋を盛り込むことが実務上重要です。
まとめ

特養の赤字・債務超過は、経営努力の不足ではなく、職員不足でベッドを埋められないという物理的な制約から生まれます。だからこそ、原因を数字で整理し、改善の見通しを企業評価書という形で示すことが、特定技能の受入れを実現する一番の近道になります。
入所待機者を受け入れられる体制を取り戻せるかどうかは、決算書をどう読み解き、どう説明するかにかかっています。まずは現状の決算書をお手元にご準備ください。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。費用は一切かかりません。
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