
顧問先の給与計算や社会保険を見ている税理士の先生、そして更新を担当する行政書士の先生に向けて書いています。
ある日、顧問先の外国人社長が、出入国在留管理局(入管)から届いた資料提出通知書を持ってきます。求められている資料は、おおむね次の内容です。
「常勤の職員が1人以上在籍していることを明らかにする資料(賃金支払文書、住民票等)、および日本語能力を有することを明らかにする資料を提出してください」
社長は「スタッフを1人雇っているのに、常勤職員の要件を満たしていないと言われました」「アルバイトを2人雇えば足りますか」と戸惑っています。2025年10月16日の改正で、常勤職員1名以上の雇用は資本金等3,000万円以上と並ぶ必須の基準になりました。
賃金台帳も社会保険の手続きも先生の事務所が見ている。だからこそ社長は、日本語の通知を読む前に顧問税理士の先生へ持ってきます。申請を担当する行政書士の先生に相談が行く場合も同じです。ところが、雇用計画と損益計画の評価書面は中小企業診断士や公認会計士など企業評価の資格を持つ第三者が作るもので、先生ご自身が顧問先の評価者になることにはためらいがあります。頼める診断士も周りにいない。そこで探した先で、当社KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)にご相談いただく。常勤職員に関するご相談は、ほとんどがこうして始まります。
結論を先に書きます。先生が最初に確認すべきことは、顧問先の従業員を「在留資格」「週の所定労働時間」「雇用保険と社会保険の加入」の3点で一覧にすることです。常勤職員の要件は、「誰を」「どんな働き方で」雇うかが出入国在留管理庁の公表資料で具体的に決まっており、この一覧で要件を満たす人がいるかどうかがほぼ見えます。そのうえで、事業計画書を確認する中小企業診断士として付け加えたいのは、その人件費を払い続けられる計画かどうかが、事業計画書の確認でも更新の審査でも同時に見られるという点です。
この記事で整理できること
- 常勤職員に数えられる人と働き方の基準
- 先生が賃金台帳と社会保険の資料から確認する項目
- 人件費を払い続けられるかを事業計画で示す考え方
常勤職員1名が必須になった改正の中身

改正前の基準では、事業の規模について「資本金または出資の総額が500万円以上」か「経営者以外に2人以上の常勤職員」のどちらかを満たせばよいとされていました。資本金を500万円用意すれば、従業員を雇わずに申請できたわけです。
2025年10月16日に施行された改正後の基準では、資本金等3,000万円以上であることと、1人以上の常勤職員を雇用していることの両方が求められます。どちらか一方では足りません。「3,000万円があれば雇用は不要」という理解は、改正前の感覚が残ったままの誤解です。顧問先の社長には「お金と人の両方がそろって、初めて基準を満たします」と伝えると分かりやすいでしょう。
すでに経営管理ビザで在留している方には、施行日から3年を経過する2028年10月16日までの経過措置があり、この期間の更新申請では新基準に適合していなくても、経営状況や適合する見込みを踏まえて判断されます。ただし3年経過後の更新では、原則として新基準への適合が必要になります。先生から顧問先に、経過措置の期間を「採用の準備期間」として使うよう促していただくことが、もっとも実務的な備えです。経過措置と更新の関係は経営管理ビザ更新に3000万円は必要かの記事で整理しています。
常勤職員として認められる人の範囲

常勤職員の要件で数に入れられる人は、国籍と在留資格で限定されています。公表資料の内容を整理すると次のとおりです。
| 区分 | 常勤職員の要件(1名以上) | 日本語能力の要件の対象 |
|---|---|---|
| 日本人、特別永住者 | 対象 | 対象(試験などの証明は不要) |
| 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者 | 対象 | 対象(N2などの証明が必要) |
| 技術・人文知識・国際業務、特定技能など就労系の在留資格の外国人 | 対象外 | 対象(N2などの証明が必要) |
| 在籍出向、派遣、請負で働く人 | 対象外 | 自社の職員ではないため対象外 |
先生方からもよく質問を受けるのが、常勤職員の要件と日本語能力の要件で「常勤職員」の範囲が違う点です。常勤職員1名の要件では、日本人、特別永住者と、永住者や定住者などの身分系の在留資格の人だけが数に入ります。一方、日本語能力の要件は「申請者または常勤職員のいずれか」がB2相当以上であればよく、この「常勤職員」には就労系の在留資格で働く外国人も含まれます。
公表資料の例でいえば、就労系の在留資格でN2を持つ外国人1名だけを雇っている会社は、日本語の要件は満たしても常勤職員の要件は満たしません。逆に、定住者1名だけを雇っていて、その人も代表も日本語能力を証明できない会社は、常勤職員の要件は満たしても日本語の要件を満たしません。誰を雇うかは、常勤職員の要件と日本語の要件を同時に満たす組み合わせで考える必要があります。
確認には、従業員ごとの在留カードの写しや住民票を給与台帳と突き合わせ、在留資格を一覧に書き込めば足ります。顧問先の社長には「同じ外国人スタッフでも、ビザの種類によって数に入る人と入らない人がいます」と説明すると、話が通じやすくなります。
常勤と認められる働き方の基準

対象者の範囲に入っていても、働き方が常勤でなければ数に入りません。公表資料は、一定の勤務計画のもとで所定の時間に常時勤務し、職務に応じた給与が設定されていることを一般的な事項とし、パートタイマーと対比して次の観点から判断するとしています。
- 雇用保険の被保険者で、週の所定労働時間が30時間以上
- 労働日数が週5日以上かつ年間217日以上で、週労働時間が30時間以上
- 入社から6か月継続勤務し全労働日の8割以上出勤した職員に10日以上の年次有給休暇
先生の手元の資料に置き換えると、雇用保険の資格取得の記録、労働条件通知書や雇用契約書の所定労働時間、出勤簿と賃金台帳の労働日数、有給休暇の管理簿が、この3つの観点に対応します。帳簿でこれらが確認できれば、常勤の実態を書類で示せる状態といえます。
週3日勤務のアルバイトを2名雇っても、1名の常勤職員にはなりません。業務委託の個人事業主や派遣社員も対象外です。常勤職員が複数いる場合は、少なくとも1名が基準を満たすことを確認できれば足り、全員分の書類は必要ないとされています。
この基準は、雇う側にとっては社会保険の加入義務とほぼ重なります。週30時間以上働く職員は、健康保険と厚生年金の加入対象になるのが一般的です。つまり常勤職員1名の雇用は、給与に加えて会社負担の社会保険料を払い続けることを意味します。顧問先にはこの点を、採用を決める前の段階で伝えておいてください。
更新時に求められる雇用と納付の証明

在留期間更新許可申請では、カテゴリー3と4の会社に対して、常勤職員が1人以上いることを示す賃金支払文書や住民票などの提出が求められます。日本語能力の要件を常勤職員で満たす場合は、その職員の住民票や試験の合格証、賃金支払文書も必要です。
あわせて、更新時には公租公課の履行状況が確認されます。雇用保険の被保険者資格の取得と保険料の納付、労災保険の適用手続き、健康保険と厚生年金の加入と納付、法人税や消費税、法人住民税や事業税の納付です。常勤職員を雇ったのに雇用保険や社会保険の手続きをしていなければ、雇用の実態を疑われるだけでなく、公的義務の不履行として消極的に評価されます。
ここは士業の先生の役割が分かれる場面です。税理士の先生は税目ごとの納付状況と賃金台帳を、社会保険労務士の先生は加入手続きと保険料の納付を確認します。行政書士の先生は、賃金支払文書と住民票がそろっているかを早めに顧問先へ確認しておくと、提出直前に慌てずに済みます。更新の全体の流れは経営管理ビザ更新の流れと必要書類をご覧ください。
人件費を払い続けられる計画かという視点

ここからは、事業計画書を確認する中小企業診断士の視点です。常勤職員1名を雇う計画は、要件を満たすための形式ではなく、損益と資金の計画に組み込まれていなければ実現可能とは評価できません。
仮に月給25万円で事務職1名を雇うとします。会社負担の社会保険料と労働保険料を加えると、人件費は月29万円前後、年間で約350万円になります。賞与や交通費を出せばさらに増えます。この約350万円を、売上から原価を引いた粗利益の中から、家賃や代表の役員報酬と並べて払い続ける計画になっているかを確認します。粗利益が年1,000万円の計画なら人件費は約35%で、家賃と役員報酬を加えると営業利益がほとんど残らない、という見立てになるかもしれません。その場合は売上の計画を見直すか、職務の内容と給与水準を再検討することになります。
税理士の先生であれば、顧問先の直近の損益計算書から粗利益と固定費を拾うだけで、この粗い試算はすぐにできます。人件費を足すと営業利益がほとんど残らない、あるいは赤字に転じるという結果が出たときが、事業計画の組み直しが必要なサインです。その先の売上の分解や評価書面は、中小企業診断士の領域です。
当社の確認では、売上を「客数×単価」や「取引先数×1社あたり取引額」に分け、どの変数が実績でどの変数が仮説かを区別したうえで、人件費が仮説の売上に依存しすぎていないかを見ます。常勤職員の給与は毎月決まって出ていく固定費であり、仮説の売上が外れても払えるかが、実現可能性の判断の中心です。事業計画書の数字の組み方は、経営管理ビザの事業計画書の例の記事で記載例を示しています。
雇用が難しい顧問先で起きがちなつまずき

常勤職員の要件について、先生方から当社につながるご相談で多いつまずきは次の3つです。
採用できないまま業務委託や派遣で代替する
人手不足で日本人や永住者の採用が進まず、業務委託の個人や派遣社員で現場を回している会社があります。事業としては成り立っていても、常勤職員の要件には数えられません。給与台帳に載っていない人は数に入らないと顧問先に伝えてください。求人を出した記録、面接の実績、採用条件の見直しの経過を残し、採用の見込みを計画に書くことが、経過措置の期間中の「適合する見込み」の説明になります。
配偶者や親族を雇うが給与と勤務の実態が伴わない
日本人の配偶者や定住者の親族を雇うことは、対象者の範囲としては問題ありません。ただし、週30時間以上の勤務計画、職務に応じた給与、雇用保険と社会保険の加入という実態がなければ常勤とは認められません。名前だけの雇用は、賃金支払文書と納付記録を見れば分かります。実態が伴っていなければ、申請の前に整えるよう顧問先に促してください。
人件費を資本金から払い続ける前提にする
資本金3,000万円の使途として、常勤職員の人件費12か月分を計上することはよくあります。ただし、2年目以降も資本金を取り崩して給与を払う計画は、事業の継続性の面で説明がつきません。1年目の立ち上がり期間だけ資本金で補い、2年目からは粗利益で賄う道筋を数字で示す必要があります。試算表で預金が毎月減り続ける顧問先は、早めの見直しが必要です。
当社の支援範囲と行政書士との役割分担

KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、経済産業大臣登録の中小企業診断士として、事業計画書の確認、雇用計画と損益計画を数字に落とす事業計画づくりの申請サポート、更新時に債務超過となった場合の改善見通しに関する評価書面の作成を行っています。在留資格の申請書類の作成と申請取次は行政書士または弁護士の業務であり、当社は行いません。労働保険や社会保険の加入手続きは社会保険労務士の先生の業務であり、必要に応じて連携します。
先生方との連携の進め方は税理士向けの協業のご案内にまとめています。確認と評価書面の作成は全国オンラインで対応しています。料金は改定することがあるため、最新の内容はサービスページでご確認ください。顧問先・依頼者にそのままお伝えいただけるページとして、経営管理ビザの評価書面作成サービスと、外国人経営者向けの支援全体をまとめた外国人の方向けのご案内もご用意しています。
税理士・行政書士の先生との協業のかたち

常勤職員の要件は、税理士の先生がお持ちの給与台帳、賃金台帳、社会保険の算定基礎届、雇用保険の資格取得の記録と直結しています。「誰を雇えばよいか」と相談を受けたら、冒頭でお伝えした従業員の一覧づくりが最初の一歩です。
行政書士の先生は、申請書類の作成と申請取次、入管への問い合わせを担う立場から、雇用の実態を示す書類を最終的に確認する役割です。人件費の裏付けが足りないと感じた段階で計画の確認を中小企業診断士に切り出していただければ、申請の準備と並行して進められます。
当社がご提案しているのは、決算と税務は税理士の先生、事業計画書の確認と評価書面は中小企業診断士、申請は行政書士の先生という分担です。顧問関係や依頼関係はそのまま保ち、当社は計画の中身の確認に徹します。
顧問先の雇用計画を確認したい税理士・行政書士の先生へ
決算と税務は先生、事業計画書の確認と評価書面は中小企業診断士、申請は行政書士。顧問先の雇用計画や損益計画の確認、更新時の評価書面を、顧問関係を保ったまま連携する協業のかたちをご案内しています。
顧問先・依頼者にそのまま案内できるページ
誰を雇い、その給与を何で払うかを、中小企業診断士が損益と資金の計画に組み込み、評価書面にまとめます。全国オンライン対応。最新の料金はサービスページに掲載しています。
先生が顧問先から受ける常勤職員のよくある質問

Q. 顧問先が週3日のパート2名を雇っています。常勤職員1名として認められますか
認められません。公表資料では、週労働時間30時間以上、年間217日以上の勤務、雇用保険の被保険者であることなどで常勤かどうかが判断されます。パート2名を合算して1名分とみなす扱いはありません。
Q. 技術・人文知識・国際業務の在留資格で働く外国人を常勤職員に数えてよいか、と聞かれました
常勤職員1名の要件の対象にはなりません。対象は日本人、特別永住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者に限られます。
Q. 経過措置の期間中は常勤職員がいなくても更新できるか、と聞かれました
2028年10月16日までの更新申請では、新基準に適合していないことだけを理由に不許可にはならないとされています。ただし、経営状況と適合する見込みが見られるため、採用の計画と人件費の見通しを示す準備を顧問先に促してください。
Q. 顧問先の雇用が決まりました。先生の側で確認しておく点はありますか
雇用保険と社会保険の加入手続きと保険料の納付、労働条件の法令適合です。更新時には公租公課の履行状況が確認され、未加入や未納は消極的な要素として評価されます。手続きは社会保険労務士の先生、納付は税理士の先生が確認しておくと安心です。
Q. どの段階で中小企業診断士に相談するのがよいですか
従業員の一覧で要件を満たす人がいないと分かったときと、人件費を加えた試算で営業利益がほとんど残らないと分かったときが目安です。更新の時期が近づくほど、計画づくりの時間は足りなくなります。
まとめ
経営管理ビザの常勤職員は、2025年10月16日の改正で資本金等3,000万円以上と並ぶ必須の基準になりました。数に入るのは日本人、特別永住者、永住者や定住者などの身分系の在留資格の人に限られ、週30時間以上、年間217日以上の勤務と雇用保険の加入などで常勤かどうかが判断されます。就労系の在留資格の外国人は常勤職員1名の要件には入りませんが、日本語能力の要件では対象になるため、2つの要件を同時に満たす組み合わせで雇う人を決めることが大切です。
先生が顧問先に伝える一文は、「誰を雇うかと、その給与を何で払うかを、一つの計画で示しましょう」です。まず従業員の一覧で要件を満たす人がいるかを確かめ、損益の計画は中小企業診断士、申請は行政書士の先生という分担で、更新の審査に備えてください。
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執筆・監修|KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)代表 松本昌史
中小企業診断士(経済産業大臣登録)、MBA(経営管理修士)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、事業承継士、事業再生マネージャー。認定経営革新等支援機関、M&A支援機関登録。法人の支援実績は150社以上。在留資格の申請書類の作成と申請取次は行いません。
参考資料:出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」(Q&A、2026年6月26日更新)、同「『経営・管理』の許可基準の改正等について(令和7年10月16日施行)」、同「在留資格『経営・管理』」案内ページ(在留期間更新許可申請の提出書類)







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