
愛知商工連盟協同組合から「直近の決算が債務超過になっているので、企業評価書を出してください。提出がないと、今の技能実習生の受入れを続けられなくなります」と言われた。
そう言われても、中小企業診断士の知り合いはいない。企業評価書が何なのかも、誰に頼めばいいのかも分からない。縫製の現場を回しながら、どうすればいいのか途方に暮れてしまう——そんなご相談が数多く届いています。
年末調整や冬のボーナスの準備が始まる11月は、秋冬物の納品が一段落し、春夏物の段取りに入る縫製・繊維会社が多い時期です。だからこそ、決算書の数字と向き合った経営者の手が止まってしまうのです。
- 工賃が据え置かれ、債務超過に陥った縫製工場の社長
- 監理団体から企業評価書を求められた総務担当の方
- 技能実習生の受入れを止めたくない繊維会社の経営者
- 企業評価書を誰に頼めばいいか分からない方
ここで、悪循環をひとつずつ見てみましょう。
企業評価書が用意できない。すると、技能実習生の受入れや継続雇用が難しくなります。縫製ラインの人手が足りなくなり、納期に応えきれません。取引先からの発注が減り、売上が落ちます。工賃が上がらないまま固定費だけが残り、赤字が膨らみます。さらに債務超過が深くなり、次の決算でも同じ書面を求められる——この連鎖です。
しかし、順番を正しく踏めば、この連鎖は断ち切れます。企業評価書は「会社の不合格通知」ではありません。債務超過でも、改善の見通しを第三者が評価して書面にすれば、受入れを続けられる道が開けるという仕組みです。
この記事では、中小企業診断士が、初めて企業評価書を頼む縫製・繊維会社の経営者に向けて、失敗しないための「3つのコツ」を実務の順番でお伝えします。
- 縫製・繊維会社が債務超過で企業評価書を求められる理由
- 企業評価書(改善の見通しについて評価を行った書面)の構成とサンプルのイメージ
- 工賃据置でも技能実習を守るための3つのコツ
- 企業評価書は誰が作れるのか、自社で作れない理由
- 技能実習・特定技能・育成就労で押さえたい注意点
執筆するのは、中小企業診断士で、法人支援150社以上の実績を持つKICKコンサルティング(銀座本社)の松本昌史です。読み終えたとき、「何を、誰に、どの順番で頼めばいいか」がはっきり分かる状態を目指します。
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縫製・繊維会社が債務超過で企業評価書を求められる理由

まず、そもそもなぜ企業評価書が必要になるのかを整理します。
技能実習生を受け入れる会社は、実習を最後まで続けられるだけの経営の安定が求められます。実習生には毎月の賃金を払い、指導する人と場所を確保し続けなければならないからです。
そのため、直近の決算が債務超過(負債が資産を上回り、純資産がマイナスの状態)の場合、改善の見通しについて評価を行った書面の提出を求められることがあります。これが、一般に「企業評価書」と呼ばれる書面です。
厚生労働省の資料にも、債務超過がある場合には、中小企業診断士や公認会計士など、企業評価を行う能力を有する公的資格を持つ第三者が、改善の見通しについて評価を行った書面が必要になる旨が示されています。
縫製・繊維会社で債務超過が起きやすい2つの原因
縫製・繊維の会社が債務超過になる背景は、細かく見れば会社ごとに違います。ただ、初めて評価書に向き合う方は、まず次の2つに絞って考えると整理しやすくなります。
| 原因 | 現場で起きていること | 決算書への表れ方 |
|---|---|---|
| 工賃(加工賃)の据置・単価の引下げ | 生地・副資材・光熱費・最低賃金が上がっても、取引先との縫製工賃が変わらない | 売上は同じでも利益が削られ、赤字が続く |
| 受注量の波と取引先への依存 | 発注が季節や取引先の都合で増減し、特定の取引先に売上が偏っている | 忙しい月と暇な月で資金繰りが揺れ、借入が積み上がる |
どちらも、経営者の努力不足ではなく、取引の構造から生まれやすい問題です。ここを責めるのではなく、状況として正しく言葉にすることが、評価書づくりの出発点になります。
このまま何もしなければ、どうなるか
企業評価書を出さないまま時間が過ぎると、次のような流れになりかねません。
- 監理団体や機構への書類が整わず、受入れの手続きが止まる
- 実習生が減り、縫製ラインの人数が足りなくなる
- 納期に間に合わず、取引先からの発注が細る
- 固定費は変わらないので、赤字がさらに広がる
- 次の決算でも債務超過が続き、同じ書面をまた求められる
書面の提出には準備の期間が必要です。期限が近づいてから動くと、手を尽くしても間に合わないことがあります。早めに動くほど、選べる手段は増えます。
債務超過という言葉に強い抵抗を感じる社長も多いでしょう。ですが、債務超過の中小企業は決して珍しくありません。大切なのは、いまの数字を隠さず、これからの見通しを第三者に整理してもらうことです。
「うちだけではない」縫製・繊維の現場に共通する事情
縫製・繊維の仕事は、取引先から預かった生地や指示書に沿って、決められた工賃で加工する形が多くあります。仕入れ価格の上昇分を、自社の判断で価格に乗せにくい構造です。
その一方で、実習生の賃金は最低賃金を下回れません。毎年の最低賃金の引上げは、そのまま人件費の増加につながります。工賃が動かないなかで、費用だけが確実に増えていくのです。
もうひとつ、縫製工場は設備の入れ替えや、ミシン・裁断機などの維持にもお金がかかります。売上が細っても、これらの負担はすぐには減りません。
こうした事情が重なり、真面目に仕事を続けてきた会社ほど、気づけば純資産がマイナスになっている。これが現場の実感ではないでしょうか。
企業評価書の基本を先に押さえたい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
企業評価書のサンプルと書き方|工賃据置でも技能実習を守る3つのコツ

ここからが本題です。企業評価書は、作り方の順番を間違えなければ、初めての方でも通る形に整えられます。
先に、書面の全体像を見ておきましょう。実際の様式は提出先や案件によって異なるため、ここでは一般的に盛り込む項目の一覧にとどめます。
| 項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 企業概要 | 事業内容(縫製・繊維の加工内容)、従業員数、実習生の受入れ状況 |
| 財務状況 | 直近の決算内容、債務超過の金額と、そうなった理由 |
| 改善の見通し | 工賃の見直し、受注の確保、コスト削減などの具体的な取組みと時期 |
| 評価者の所見 | 中小企業診断士などが、見通しの妥当性をどう評価したか |
| 添付資料 | 決算書、取引先との取引状況が分かる資料など |
この形を頭に入れたうえで、次の3つのコツを順番に押さえましょう。企業評価書の書き方で迷う方の多くは、ここで手が止まっています。
コツ1つ目:工賃据置の影響を「数字」で切り分ける
最初のコツは、債務超過の理由を感覚ではなく数字で説明することです。
たとえば「工賃が安くて赤字です」だけでは、評価する側は納得できません。次のように、費用の内訳ごとに変化を並べると、理由が一気に見えやすくなります。
- 生地・副資材の仕入れ価格は、以前と比べてどれだけ上がったか
- 人件費(最低賃金の上昇を含む)は、どれだけ増えたか
- 光熱費・運送費は、どれだけ増えたか
- それに対し、縫製工賃はどれだけ変わったか(据置なら変化なし)
こうして整理すると、「経営の失敗」ではなく「コストの上昇に工賃が追いつかなかった」という構造が浮かび上がります。
ここで重要なのは、一時的な要因と、続く要因を分けることです。一時的な要因は「今期だけ」と説明できますが、続く要因は対策とセットで示さないと、改善の見通しは信用されません。
コツ2つ目:改善の見通しは「受注の裏付け」とセットで示す
2つ目のコツは、「来期は良くなります」という言葉だけで終わらせないことです。評価する側が知りたいのは、なぜ良くなるのかという根拠です。
縫製・繊維会社なら、たとえば次のような材料が裏付けになります。
- 取引先との工賃の見直し交渉の状況(交渉の予定や経過)
- 年間の発注見込みや、継続的な取引の実績
- 不良や手直しを減らすなど、社内でできる工程の改善
- 取引先を増やす、加工の種類を広げるといった取組み
あくまで、実際に取り組めること、実際に見込めることだけを書きます。実態のない見通しを並べると、かえって評価が下がります。できていないことは、無理に書かないことが大切です。
取引先との力関係で、工賃の交渉がすぐには進まないこともあるでしょう。その場合は、「交渉が難しいときに、社内でどこまでコストを下げられるか」を別の柱として置くと、見通しに厚みが出ます。
債務超過の会社には、企業評価書とは別に「経営改善計画策定支援(405事業)」という制度もあります。金融機関と共有する本格的な経営改善計画を、専門家費用の3分の2を国が補助する形で作れる仕組みで、既存融資の返済条件の変更(リスケジュール)と組み合わせて資金繰りを立て直すことも可能です。倒産の可能性を下げる選択肢として、気になる方は次のページをご覧ください。
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コツ3つ目:受入れ体制を「書面の外」でも整えておく
3つ目のコツは、書面の見栄えより、実習を続けられる体制そのものを整えておくことです。
企業評価書は、改善の見通しを示す書面です。しかし、読む側は「この会社は実習生に賃金を払い続け、きちんと指導できるのか」も見ています。次の点を、日頃から確認しておきましょう。
- 実習生への賃金を、毎月確実に払えているか
- 実習生を指導する担当者が、現場にいるか
- 寮や社宅など、生活の環境が保たれているか
- 監理団体との連絡が、途切れていないか
これらが整っていれば、書面の内容にも説得力が生まれます。反対に、賃金の遅れがあるまま書面だけを整えても、評価は得られにくくなります。
ちなみに、書面を出すときに多い失敗は、「言われた期限に慌てて、決算書だけを添えて出す」ことです。決算書は結果の数字にすぎません。なぜそうなったのか、これからどうするのかまでを一緒に示して、はじめて書面としての意味が生まれます。
もうひとつの失敗は、書面ができてから、実習生や現場の担当者に共有しないことです。改善の見通しに「工程の見直し」を書いたのに、現場が知らなければ実行できません。書面は、会社全体で共有する「これからの約束」でもあります。
3つのコツをまとめると、「数字で切り分ける」「裏付けと一緒に示す」「体制を整える」です。この順番で進めれば、初めての企業評価書でも迷いにくくなります。
詳しい流れや対応内容は、次のページにまとめています。
外国人技能実習・特定技能の企業評価書について 社長やご担当者の方へ。“あなた”は今、このようなお悩みを抱えていませんか。 外国人技能実習制度を活用したいが、企業評価書の作成方法が分からないという方 特定技能外国人の受入れにあたり、経営改善の見通しについて評価が必要だと言...
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縫製業が技能実習の受入れを続けて手に入れる未来

企業評価書がきちんと整うと、経営者の毎日はどう変わるのでしょうか。抽象的な話ではなく、3つの軸で具体的に描いてみます。
数字の軸:債務超過の理由と行き先が、1枚で説明できる
いまは、監理団体や取引先、金融機関から数字のことを聞かれるたびに、頭の中で説明を組み立て直しているかもしれません。
企業評価書があれば、債務超過の理由と、改善に向けた取組みが、第三者の目を通した形で1つにまとまります。聞かれるたびに説明を作り直す負担が減り、説明の一貫性が保てます。
時間の軸:書類に追われる夜と週末が減る
書類の書き方を調べ、様式を探し、診断士の当てを探す。この作業は、ふだんの縫製現場の管理に加えて、経営者の時間を大きく奪います。
専門家に任せる部分を決めておけば、社長や総務担当は、本来の仕事である納期管理と品質、実習生の指導に時間を戻せます。
関係性の軸:実習生・取引先・金融機関との信頼が保たれる
受入れが続くということは、実習生が技術を身につけ、現場の戦力として育っていくということです。一緒に働く日本人従業員にとっても、ラインが安定する安心感があります。
さらに、改善の見通しを文書で示せる会社は、取引先や金融機関からも「きちんと向き合っている会社」と見てもらいやすくなります。
2027年4月には、技能実習に代わる育成就労制度の運用が始まる予定です。制度が変わっても、財務の状況を第三者の目で整理し、説明できる会社は強い立場に立てます。今回の準備は、その先にも役立つ土台になります。
債務超過を抱えたままでも、受入れを続けながら、立て直しの道を進む。その未来を共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

ここまで読んで、「自社で書けそうだ」と感じた方もいるかもしれません。正直にお伝えします。普通の企業が、自社だけで企業評価書を作成することはできません。
企業評価書は、中小企業診断士や公認会計士といった、企業評価を行う能力を持つと認められる公的資格者が、第三者として評価して作る書面です。社長や総務の方が自分で書いて出しても、受け入れられないおそれがあります。
なお、税理士は決算や申告の専門家ですが、この書面を作成できる資格者としては挙げられていません。「顧問の税理士に頼めば済む」と思い込まないよう注意してください。
自己流で進めるときの3つの壁
- 専門性の壁:改善の見通しを、根拠つきで組み立てる知識が必要
- 時間の壁:現場を回しながら、資料集めと文書づくりを進める余裕がない
- 判断ミスの壁:内容が甘いと、書面が受け入れられず、やり直しになる
企業評価が拒否されないように、要点を理解している経験豊富な中小企業診断士を紹介します。
KICKコンサルティングの支援内容
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、法人支援150社以上の実績があり、中小企業庁の認定経営革新等支援機関です。代表の松本昌史は、中小企業診断士で、MBA(経営管理修士)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、中小企業事業再生マネージャーの認定も持っています。
具体的には、次の流れで伴走します。
- 現状の確認:決算書と、求められている書面の内容を確認します
- 債務超過の理由の整理:工賃・仕入・人件費などを数字で切り分けます
- 改善の見通しの組み立て:取引先の状況や社内の取組みを根拠にまとめます
- 企業評価書の作成:診断士の評価として書面に仕上げます
- 提出後の相談:監理団体などからの問い合わせへの対応も一緒に考えます
東京(銀座本社)を拠点にしていますが、全国オンラインで対応できます。「近くに頼める専門家がいない」という地方の縫製・繊維会社の方も、離脱せずにご相談ください。
企業評価書をまとめて確認したい方へ
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企業評価書のよくある質問|技能実習・債務超過の疑問を解消

企業評価書とは何ですか
直近の決算が債務超過の会社について、改善の見通しを第三者が評価して作る書面です。正式には「改善の見通しについて評価を行った書面」と呼ばれます。技能実習の受入れを続けるうえで、提出を求められることがあります。
企業評価書は誰が作成できますか
中小企業診断士や公認会計士など、企業評価を行う能力を持つと認められる公的資格者です。会社の社長や総務担当者が自分で作ることはできません。
企業評価書のサンプルやひな形はありますか
書面の項目は、企業概要、財務状況、改善の見通し、評価者の所見、添付資料が中心です。ただし、様式や求められる内容は提出先と案件で異なります。ひな形をそのまま埋めるだけでは通らないことがあるため、まず何を求められているかの確認から始めます。
債務超過の理由は、どこまで詳しく書くべきですか
費用の内訳ごとに、以前との変化を数字で示すのが基本です。生地や副資材の価格、人件費、光熱費、そして縫製工賃の変化を並べ、どこに原因があるかを分けて書きます。
工賃が据え置かれたままでも、企業評価書は作れますか
作れます。工賃がすぐに上がらない場合でも、社内のコスト削減や受注の確保など、実際に取り組めることを柱に改善の見通しを組み立てます。取引先との交渉状況も、事実の範囲で盛り込みます。
特定技能でも企業評価書は必要ですか
特定技能でも、財務の状況を確認される場面があります。たとえば定期届出の「一定の基準」には、過去3年間に債務超過となっていないことが関わってきます。債務超過の会社は、提出先に確認したうえで、早めに準備を進めると安心です。
育成就労が始まったら、状況は変わりますか
2027年4月から運用が始まる予定の育成就労では、技能実習の監理団体は「監理支援機関」へ、外国人技能実習機構は「外国人育成就労機構」へ移る見込みです。財務の状況を見られる点は続くと考え、いまのうちに数字を整理しておくことをおすすめします。
企業評価書を作るのに、どれくらいの期間が必要ですか
資料の揃い方や、提出先から求められる内容で変わります。決算書と関連資料が早く揃うほど、進みやすくなります。期限が決まっている場合は、余裕をもって早めにご相談ください。
どの段階でKICKコンサルティングに相談すればよいですか
監理団体などから「企業評価書を出してください」と言われた時点が、相談のいちばん良いタイミングです。何を求められているのか分からない段階でも構いません。まず状況をお聞かせください。
地方の会社でも依頼できますか
はい。全国オンラインで対応しています。愛知、岐阜、岡山、広島など、縫製・繊維の会社が多い地域の方からも、遠方でも問題なくお話を進められます。
まとめ
縫製・繊維会社にとって、工賃の据置は会社の努力だけでは変えにくい問題です。だからこそ、債務超過になったとき、企業評価書で「原因」と「これから」を第三者の言葉で整理する意味があります。
コツは3つ。工賃据置の影響を数字で切り分けること、改善の見通しを受注の裏付けとセットで示すこと、受入れ体制を書面の外でも整えることです。
そして、企業評価書は自社だけでは作れません。経験のある中小企業診断士に任せて、社長は現場と取引先に向き合う。この役割分担が、技能実習生を守り、会社を守る近道です。
「言われたけれど、動けない」という状態は、今日で終わらせられます。まずは、いま求められている内容をお聞かせください。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。一歩目だけでも、気軽にお話しください。
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