
顧問先の農業法人から、外国人材の受入れについて相談を受けたことはないでしょうか。施設園芸(ハウス農家)や露地野菜法人、養豚・養鶏・酪農といった畜産会社では、人手不足を背景に特定技能や技能実習の受入れが年々増えています。
ところが、直近の決算が赤字や債務超過になっていると、受入れ審査でつまずくことがあります。このとき求められるのが「企業評価書」です。
あなたはこのような悩みはありませんか?
- 顧問先の決算が債務超過で、受入れ審査が不安
- 企業評価書が必要だが、自所では作成できない
- 作成できる専門家の当てがなく、受任機会を逃しそう
これは、先生おひとりで抱える問題ではありません。企業評価書は中小企業診断士など専門の資格者しか作成できない書面だからです。
本記事では、農業の顧問先の受入れ審査を、企業評価書で支える具体的な進め方をお伝えします。結論を先に言えば、税務は貴所、企業評価書の作成は中小企業診断士という役割分担で、受任機会を逃さずに済みます。
この記事で分かること
- 農業の顧問先で受入れ審査がつまずく理由
- 企業評価書を作成できる資格者は誰か
- 受入れ審査を支える3つのステップの進め方
- 税理士事務所と中小企業診断士の役割分担
執筆はKICKコンサルティング株式会社(銀座本社)代表・松本昌史(中小企業診断士)が担当します。まずは連携の相談窓口をご案内します。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。連携や契約の義務はありません。顧問先との関係はそのまま維持されます。税務は貴所、企業評価書の作成はKICKという役割分担です。
なぜ農業の顧問先で受入れ審査がつまずくのか

農業の顧問先で受入れ審査がつまずく最大の理由は、直近決算の赤字や債務超過です。この状態では、受入れ企業の財務の健全性に疑問が持たれ、追加の説明資料が求められます。
理由は制度の仕組みにあります。外国人技能実習機構(OTIT)に提出する書類のうち、申請企業が債務超過のときには企業評価書(改善見通しに関する評価書面)が求められます。これはOTIT提出書類の別紙②-1・番号20にあたる書面です。
農業は、この場面に直面しやすい業種です。天候や相場に売上が左右され、設備投資の負担も重いため、単年度で赤字や債務超過に振れることが珍しくないからです。
特定技能や技能実習の受入れ審査では、受入れ企業がその人材を安定して雇用し続けられるかが見られます。財務が健全であれば問題になりにくいのですが、債務超過だと「本当に雇用を維持できるのか」という点で追加の説明を求められます。そこで登場するのが企業評価書です。
特に、次のような農業の顧問先では、受入れ審査で企業評価書が必要になりやすいと言えます。
- 直近決算が赤字で、純資産がマイナスに転じた施設園芸法人
- 大型の畜舎や機械を借入で導入し、償却負担が重い畜産会社
- 天候不順で収量が落ち、単年度の資金繰りが厳しい露地野菜法人
農業特有の財務の振れやすさ
施設園芸のハウス農家では、燃料費や資材費の高騰が利益を圧迫します。露地野菜法人は、天候不順による収量の変動が売上を直撃します。養豚・養鶏・酪農の畜産会社は、飼料価格の上昇と大型設備の減価償却が重くのしかかります。
いずれも、事業そのものは続いているのに、単年度の決算だけを見ると財務が厳しく映ることがあります。ここで特定技能の人材を受け入れたいのに、審査で足踏みしてしまうのです。
貴所は、こうした農業の顧問先の数字を最もよく理解しています。しかし数字を理解していることと、企業評価書を作成できることは別の話です。ここに次の壁があります。
企業評価書を作成できる資格者の壁
もう一つの大きな壁が、作成資格です。企業評価書は、誰でも作れる書面ではありません。作成できるのは中小企業診断士など専門の資格者に限られ、税理士や行政書士は作成できません。
顧問先の財務を最もよく知る貴所であっても、この書面の作成主体にはなれないのです。ここに、税理士事務所が単独では対応しきれない構造があります。
| 役割 | 担い手 | この記事での位置づけ |
|---|---|---|
| 顧問先の税務・決算 | 貴所(税理士) | これまで通り継続 |
| 在留資格の申請サポート | 貴所または連携する行政書士 | 顧問先との窓口 |
| 企業評価書の作成 | 中小企業診断士(KICK) | 財務分析と改善見通しを担当 |
要するに、農業の顧問先の受入れ審査がつまずくのは、債務超過という財務の事情と、企業評価書を作れる資格者が限られるという二つの壁が重なるためです。この二つを分けて考えることが、解決の出発点になります。
このまま何もしなければ顧問先と貴所に起きること

この壁を放置すると、顧問先の受入れが前に進まないだけでなく、貴所の受任機会まで失われます。理由は、審査の停滞が顧問先の不信につながり、相談先が他所へ移りやすくなるからです。
受入れ審査の停滞と現場への影響
企業評価書の準備が整わなければ、受入れの手続きは前に進みません。施設園芸のハウス農家であれば、繁忙期に間に合わず、予定していた特定技能の人材を受け入れられない事態も起こります。
露地野菜法人では、収穫期の人手が確保できず、機会損失が現場の売上に直結します。畜産会社では、日々の飼育を回す人員が足りず、既存の従業員の負担が増していきます。人手不足の解消どころか、経営の不安が深まってしまうのです。
農業の受入れは、作付けや繁殖のサイクルに合わせて進める必要があります。手続きが数か月遅れれば、その年の受入れそのものを見送らざるを得ないこともあります。時間の損失が、そのまま現場の損失になるのです。
顧問先離れと受任機会の逸失
問題はそれだけではありません。顧問先が「この事務所では受入れの相談に乗ってもらえない」と感じると、在留資格に強い別の事務所へ相談が流れます。
一度そうなると、税務の顧問契約そのものが揺らぐこともあります。受入れ支援という入口を他所に押さえられ、気づけば顧問先ごと失っていたという事態は避けたいところです。
さらに見落としがちなのが、貴所の心理的な負担です。顧問先から「どうすればよいか」と頼られたのに、明確な道筋を示せないままでは、先生ご自身も気持ちが晴れません。答えを用意できないもどかしさは、日々の業務にも影を落とします。
結論として、何もしないことのリスクは、顧問先の現場の停滞と、貴所の受任機会の逸失という二重の損失です。だからこそ、企業評価書を用意できる体制を早めに持っておくことが重要になります。
農業の顧問先の受入れ審査を支える3つのステップ

ここからが本題です。農業の顧問先の受入れ審査は、3つのステップで支えられます。結論から言えば、現状の把握、企業評価書の作成連携、そして役割分担での仕上げという順に進めれば、無理なく前進します。
この3つのステップは、貴所が単独ですべてを抱える必要がありません。財務分析と企業評価書の作成という専門部分を中小企業診断士が引き受けるため、貴所の負担は小さく保てます。
顧問先の決算と債務超過の確認
最初のステップは、顧問先の直近決算を確認し、債務超過の有無をはっきりさせることです。ここは、日頃から数字を扱う貴所が最も得意とする領域です。
債務超過であれば、特定技能や技能実習の受入れ審査で企業評価書が求められる可能性が高くなります。逆に、資産が負債を上回っていれば、そもそも企業評価書が不要な場合もあります。
畜産会社のように大型設備を抱える顧問先では、減価償却の進み方で純資産が大きく動きます。まずは決算書を手元に、受入れ予定の人数や時期とあわせて、企業評価書が要る場面かどうかを見極めます。
この見極めの段階で、KICKに早めに声をかけていただくと、その後の流れがなめらかになります。企業評価書が必要かどうかの判断からご一緒できるため、顧問先を待たせずに済みます。
企業評価書の作成を中小企業診断士と連携
次のステップは、企業評価書の作成を中小企業診断士と連携して進めることです。ここが、税理士事務所が単独では踏み込めない専門領域になります。
企業評価書(改善見通しに関する評価書面)は、単に赤字の事実を書く書面ではありません。農業の事業構造を踏まえ、財務がどう改善していくのかという見通しを、客観的な根拠とともに示すものです。
KICKでは、中小企業診断士が顧問先の決算書と事業内容を分析し、改善見通しを組み立てます。施設園芸なら生産計画と資材コストの見通し、露地野菜法人なら作付けと販路の計画、畜産会社なら飼育頭数と飼料コストの動きを踏まえて評価書を作成します。
大切なのは、赤字や債務超過を「一時的な数字」として文脈の中で説明することです。農業は天候や相場に左右されやすく、単年度の数字だけでは実力が測れません。生産のサイクルや価格の回復見込みを踏まえ、改善の道筋を客観的に示すことで、受入れ審査を支える資料になります。
この工程で貴所にお願いするのは、決算データの共有と、顧問先との橋渡しだけです。財務分析や書面の作成という手間のかかる部分は、中小企業診断士が引き受けます。詳しくは企業評価書の作成支援の詳細をご確認ください。
顧問先を奪うことはありません。企業評価書の作成はKICK、顧問先の税務は貴所という役割分担です。連携の義務も、契約の縛りもありません。
在留資格の申請に向けた役割分担の仕上げ
最後のステップは、在留資格の申請に向けて、役割分担のまま手続きを仕上げることです。企業評価書がそろえば、受入れ審査に必要な財務面の説明資料が整います。
この段階では、在留資格の申請サポートを貴所または連携する行政書士が担い、企業評価書の作成をKICKが担うという分担が明確になります。それぞれが専門領域に集中するため、顧問先にとっても分かりやすい体制です。
顧問先から見れば、窓口はこれまで通り貴所のままです。裏側で中小企業診断士が企業評価書を支えているという安心感が、受入れ審査に臨む顧問先の後押しになります。
役割分担を整理すると、それぞれの担い手が迷わず動けます。3つのステップの全体像を、次の表にまとめます。
| ステップ | 主に動く担い手 | やること |
|---|---|---|
| 決算と債務超過の確認 | 貴所(税理士) | 直近決算から企業評価書の要否を見極める |
| 企業評価書の作成連携 | 中小企業診断士(KICK) | 財務分析と改善見通しを組み立て評価書を作成 |
| 在留資格の申請に向けた仕上げ | 貴所または連携する行政書士 | そろった資料で受入れ手続きを進める |
農業の受入れは、特定技能の分野でも技能実習でも進み方が似ています。育成就労制度は2027年4月に施行される予定で、受入れの相談は今後さらに増えると見込まれます。早めに連携の型を持っておけば、顧問先の相談に落ち着いて応じられます。
この3つのステップを踏めば、債務超過の農業法人でも、受入れ審査に向けた準備を前に進められます。貴所は税務という本来の強みに集中したまま、受任機会を守れるのです。
連携で税理士事務所が手に入れる未来

企業評価書の連携体制を持つと、貴所は三つの面で新しい未来を手に入れます。理由は、専門外の負担を負わずに、顧問先への提供価値を広げられるからです。
顧問先との面談の質が上がる
受入れの相談を受けたとき、「企業評価書は中小企業診断士と連携して用意できます」と即答できれば、面談の質が変わります。農業の顧問先は、決算が厳しくても受入れを諦めずに済むと分かり、安心して相談を続けます。
「この事務所は在留資格まわりまで頼れる」という信頼は、他の相談へも波及します。特定技能の受入れをきっかけに、資金繰りや設備投資の相談へ話が広がることも少なくありません。企業評価書という具体的な出口を示せることが、面談の説得力を大きく高めます。
時間と受任の安定が生まれる
財務分析や書面作成という時間のかかる作業を、中小企業診断士が引き受けます。貴所は本来の税務業務に集中でき、繁忙期でも受入れ相談に対応できます。
結果として、受任機会を逃さず、顧問契約の継続にもつながります。専門外の作業に追われずに、受任を安定させられるのです。
顧問先と周囲からの信頼が高まる
受入れ審査という難所を一緒に乗り越えれば、顧問先の信頼は確実に深まります。信頼は紹介を生み、新たな顧問先との出会いにもつながります。
農業は地域のつながりが強い業種です。ひとつの畜産会社や露地野菜法人での実績が、近隣の同業者からの相談につながることもあります。こうした未来は、すべてを自所で抱え込まずに、専門家と連携するからこそ実現します。この価値を、顧問先とともに手に入れましょう。
自所だけで抱える限界と中小企業診断士との連携

ここまで読んで、「やはり自所だけで企業評価書までは用意できない」と感じたのではないでしょうか。それは正しい感覚です。理由は、資格と時間という二つの限界があるからです。
資格と時間という二つの限界
第一に、企業評価書を作成できるのは中小企業診断士など専門の資格者に限られます。どれほど顧問先の財務に精通していても、税理士は作成主体になれません。これは制度上の線引きです。
第二に、農業の改善見通しを組み立てる作業には、相応の時間がかかります。生産計画や販路、飼育計画まで踏み込んで分析する必要があり、繁忙期の税理士事務所が片手間で対応するのは現実的ではありません。
もし自所だけで無理に対応しようとすれば、正確さを欠いた資料になりかねません。改善見通しに説得力がなければ、受入れ審査を支えるどころか、かえって顧問先の不利になることもあります。専門家が客観的に作成することにこそ、企業評価書の価値があります。
この二つの限界があるからこそ、中小企業診断士と連携する事務所が増えています。無理に抱え込むより、専門部分を任せる方が、顧問先にとっても貴所にとっても得策だからです。
KICKが担う範囲と連携の始め方
KICKの業務範囲は、財務分析、企業評価書の作成、在留資格の申請サポートに限られます。KICKは認定経営革新等支援機関(中小企業庁)であり、法人支援の実績は150社以上、全国オンライン対応で来社は不要です。
連携の始め方はシンプルです。まず貴所からご相談いただき、顧問先の状況を共有します。その後、企業評価書が必要かどうかを一緒に見極め、必要であれば中小企業診断士が作成に入ります。料金の詳細はサービスページにてご確認ください。
農業の顧問先は、地域や品目によって事情が大きく異なります。施設園芸と畜産では、コスト構造も改善の道筋も違います。だからこそ、業種の実情を踏まえて企業評価書を組み立てられる専門家との連携が、受入れ審査を支えるうえで意味を持ちます。貴所が税務で築いた信頼を土台に、受入れ支援まで守備範囲を広げられるのです。
士業の先生方との連携の仕組みは、士業連携(提携)の詳細にまとめています。あわせて企業評価書の連携サービスの詳細もご覧ください。
顧問先・依頼者を奪うことは一切ありません。税務は貴所、企業評価書の作成はKICKという役割分担を守ります。売り込みもありません。
よくある質問

Q. 連携すると顧問先を奪われませんか
A. 奪うことはありません。顧問先の税務は貴所が継続し、KICKは企業評価書の作成という専門部分だけを担当します。役割分担を明確にした連携です。
Q. 自所の負担はどの程度ですか
A. 主な負担は、決算データの共有と顧問先との橋渡しです。財務分析や企業評価書の作成という手間のかかる作業は、中小企業診断士が引き受けます。
Q. 企業評価書は誰が作れるのですか
A. 中小企業診断士など専門の資格者に限られます。税理士や行政書士は作成できません。だからこそ、作成資格を持つ中小企業診断士との連携が必要になります。
Q. 農業の顧問先が債務超過でも受入れは可能ですか
A. 可能性はあります。債務超過の場合に企業評価書(改善見通しに関する評価書面)で改善の見通しを示すことが、受入れ審査を支える鍵になります。個別の可否は状況によります。
Q. 企業評価書はどんな場面で必要になりますか
A. 申請企業が債務超過のときに求められます。OTIT提出書類の別紙②-1・番号20にあたる書面で、財務の改善見通しを客観的に示すために使われます。
Q. 施設園芸や畜産など業種で対応は変わりますか
A. 基本の流れは同じです。ただし改善見通しの組み立て方は業種で異なります。施設園芸は資材と生産計画、畜産は飼料と飼育頭数など、業種の実情を踏まえて作成します。
Q. 特定技能と技能実習で進め方は違いますか
A. 財務面で企業評価書が求められる考え方は共通です。育成就労制度は2027年4月施行予定で、今後は受入れの相談がさらに増えると見込まれます。
Q. 費用はどのくらいかかりますか
A. 料金の詳細はサービスページにてご確認ください。顧問先の状況によって作業範囲が変わるため、まずはご相談のうえでご案内します。
Q. 遠方でも連携できますか
A. できます。KICKは全国オンライン対応で、来社は不要です。地方の農業法人を顧問先に持つ事務所からのご相談にも対応しています。
Q. まず何から相談すればよいですか
A. 顧問先の直近決算と、受入れの予定時期をお知らせください。企業評価書が必要かどうかの見極めから、一緒に進めます。農業の繁忙期を避けたい場合は、早めのご相談がおすすめです。
ご相談は無料で、売り込みは一切ありません。連携や契約の義務はなく、顧問先との関係はそのまま維持されます。税務は貴所、企業評価書の作成はKICKという役割分担です。
まとめ

農業の顧問先の受入れ審査は、債務超過という財務の事情と、企業評価書を作れる資格者が限られるという壁が重なってつまずきます。しかし、この壁は役割分担で越えられます。
受入れ審査を支える道筋は、決算と債務超過の確認、企業評価書の作成連携、役割分担での仕上げという3つのステップです。貴所は税務という強みに集中したまま、顧問先の受任機会を守れます。
企業評価書の作成は中小企業診断士、顧問先の税務は貴所。この分担を持つ事務所が増えています。施設園芸のハウス農家も、露地野菜法人も、畜産会社も、決算が厳しくても受入れを諦めずに済む体制を、今から用意しておきましょう。







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