売上増でも利益が出ない理由とは?損益分岐点比率を80%以下に下げる実務手順

「受注は増えた。売上も前年を超えた。それなのに、決算書を開くと利益はほとんど残っていない」

製造業や建設業の経営者の方から、毎月のようにこのご相談をいただきます。中小企業庁「2021年版中小企業白書」によれば、中規模企業の損益分岐点比率は平均85.1%、小規模企業は92.7%に達しています。一方、大企業は60.0%。同じ売上でも、中小企業は売上が10%下がっただけで赤字に転落しかねない構造を抱えているということです。

問題は、この数字を「自社の数字」として把握できている経営者がほとんどいない点にあります。月次試算表は税理士から届くものの、固定費と変動費が混ざったまま、損益分岐点がいくらなのか、限界利益率がいくつなのか、答えられない。これは経営者の力量の問題ではありません。会計処理の建付けと管理会計の不在が生み出す、構造的な情報不足の問題です。

そして、放置されたどんぶり勘定こそが、資金繰りを締め上げる共通の敵です。本記事では、KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)が150社以上の中小企業を支援してきた現場経験をもとに、損益分岐点比率を引き下げるための実務手順と、自社だけで取り組む際の限界を、数字で具体的にお伝えします。

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結論 損益分岐点比率を80%以下に下げれば利益体質に変わります

結論から申し上げます。中小企業が利益を残し続けるための最初の到達点は、損益分岐点比率を80%以下に引き下げることです。

なぜ80%なのか。中小企業庁の損益分岐点比率の業種別データでは、製造業や卸売業の優良企業帯が90%未満に集中しています。さらに60%以下になると「超優良」と評価される水準です。逆に95%を超えると、売上が5%下がっただけで赤字に陥ります。コロナ禍や原材料高、為替変動など、売上が一気に1割減ることは珍しくありません。耐性のない企業から先に資金繰りが詰まっていきます。

損益分岐点比率を下げる方法は、原則として次の4つしかありません。

レバー具体策利益への効き方
①単価アップ価格改定 付加価値向上最も大きい
②変動費削減仕入先見直し 歩留改善大きい
③固定費削減家賃 人件費構造見直し中程度(聖域あり)
④数量増加販路拡大 リピート強化時間がかかる

多くの経営者が真っ先に手をつけるのは「④数量増加」です。営業を増やし、広告を打ち、売上を伸ばそうとする。ところが損益分岐点比率が高い体質のまま売上を伸ばしても、固定費が連動して膨らみ、利益はほとんど残りません。順番が逆なのです。

正しい手順は、まず①と②に手をつけて損益分岐点比率を下げ、利益が残る構造に変えてから、④で売上を伸ばす。これが「低重心経営」と呼ばれる考え方であり、KICKコンサルティングがV字回復プロジェクトで一貫してお伝えしている原則です。

利益が残らない3つの構造的原因 これを潰さない限り赤字傾向が続きます

「真面目にやっているのに利益が出ない」会社には、ほぼ例外なく次の3つの構造的問題が潜んでいます。

原因1 固定費と変動費の分解が「勘定科目どおり」のまま放置されている

変動費はおおむね原材料費・外注費・仕入原価。固定費は人件費・家賃・減価償却費・水道光熱費。多くの経営者・税理士は、決算書の勘定科目をそのまま固定費と変動費に振り分けます。これが落とし穴です。

たとえば人件費。基本給は固定費ですが、残業代・歩合給・派遣スタッフ費用は売上に連動する変動費的性質を持ちます。水道光熱費も、事務所の電気代は固定費ですが、製造ラインの電気代は稼働量に比例する変動費です。この「準変動費」の按分を間違えると、損益分岐点の計算結果は数千万円単位でずれます。

原因2 限界利益率が製品・顧客別に把握できていない

限界利益(売上−変動費)は、固定費を回収する原資です。ところが多くの中小企業では、製品全体・会社全体の限界利益率しか見ていません。

実際に分析すると、たとえば10商品のうち、上位2商品で限界利益の80%を稼ぎ、下位3商品は限界利益がマイナスというケースが頻繁に見つかります。これがパレートの法則(80/20の法則)の現実です。限界利益マイナスの商品は、売れば売るほど赤字を増やしているのですが、製品別の限界利益が見えていない経営者は、それを「主力に次ぐ準主力」と誤解して営業を強化してしまいます。

原因3 損益分岐点が「動的にモニタリング」されていない

損益分岐点は固定値ではありません。原材料費が上がれば変動費率が上昇し、損益分岐点は跳ね上がります。賃上げを実施すれば固定費が増え、これも損益分岐点を押し上げます。にもかかわらず、年に1度の決算でしか損益分岐点を計算していない企業がほとんどです。

2024年以降、原材料・エネルギー・人件費の高騰が続いています。中小企業庁の調査でも、価格転嫁が十分に進んでいない中小企業の利益率圧迫が指摘されています。月次で損益分岐点を見ていない会社は、気づいたときには損益分岐点比率が95%を超え、売上が少し落ちるだけで赤字に転落する状態に陥ります。

このまま放置した場合 3年後にどうなるか

仮に、損益分岐点比率92%の中小企業が、現状のまま3年間を過ごしたとします。原材料費が年3%上昇、賃上げが年3%実施、売上はほぼ横ばい。試算してみます。

時点売上高変動費固定費営業利益損益分岐点比率
現状5億円3億円1億6,000万円4,000万円92%
1年後5億円3億900万円1億6,480万円2,620万円94.7%
2年後5億円3億1,827万円1億6,975万円1,198万円97.6%
3年後5億円3億2,782万円1億7,484万円▲266万円(赤字)100.5%

売上が一切落ちなくても、コスト上昇を放置するだけで3年後には赤字に転落します。さらに、ここで売上が10%減少する局面が訪れれば、年間で5,000万円規模の赤字に陥り、運転資金は急速に枯渇します。日本政策金融公庫の融資審査も、債務償還年数の悪化により厳格化されます。

この未来を回避するには、いま、損益分岐点の構造に手を入れる以外に方法はありません。

CVP分析の実務 4ステップで損益分岐点が見える化されます

では、自社の損益分岐点を正確に把握する実務手順を解説します。CVP分析(Cost-Volume-Profit Analysis、原価・販売量・利益の関係分析)は、次の4ステップで進めます。

ステップ1 勘定科目を「変動費・準変動費・準固定費・固定費」の4区分に分ける

多くの教科書では「変動費」「固定費」の2区分しか説明されていません。しかし実務では、この間に「準変動費」「準固定費」が存在します。

区分具体例処理方針
変動費原材料費 外注加工費 仕入原価 運送費そのまま変動費
準変動費残業代 派遣費 製造ライン電気代 燃料費過去24か月の実績から固定部分と変動部分を回帰分析で按分
準固定費設備リース料 役員報酬 賞与階段状に増減するため範囲を区切って固定費扱い
固定費家賃 基本給 減価償却費 保険料そのまま固定費

正確な固変分解には、最低でも過去24か月の月次推移データが必要です。中小企業庁の経営革新等支援機関では、これを「最小二乗法」または「高低点法」と呼ばれる統計的手法で按分していきます。

ステップ2 限界利益と限界利益率を算出する

限界利益は次の式で計算します。

限界利益 = 売上高 − 変動費

限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上高 × 100

たとえば売上5億円、変動費3億円の会社なら、限界利益は2億円、限界利益率は40%です。この限界利益率は会社全体ではなく、製品別・顧客別・事業部別に算出することが重要です。多品種少量生産の製造業では、製品ごとに限界利益率が大きく異なるため、全体平均は実態を覆い隠してしまいます。

ステップ3 損益分岐点売上高を計算する

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率

損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 × 100

固定費1億6,000万円、限界利益率40%の会社なら、損益分岐点売上高は4億円。実際の売上が5億円なら、損益分岐点比率は80%です。ここまで来ると「売上が20%落ちても赤字にならない」状態になり、安全余裕率20%が確保されます。

ステップ4 利益感度分析でレバーを試算する

最後に「単価を1%上げたら営業利益はいくら増えるか」「変動費を3%下げたら損益分岐点はいくら下がるか」をシミュレーションします。これが利益感度分析です。多くの場合、単価を1%上げる効果は、数量を10%増やす効果に匹敵します。最も影響力の大きいレバーから順に手をつけるという原則は、CVP分析の実務でも変わりません。

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1年半後 経営者が手にする3つの具体的な変化

損益分岐点比率を大きく引き下げた経営者は、数字の改善だけでなく、見える景色そのものが変わります。A社の社長から実際に伺ったお言葉をもとに、3つの軸で具体的にお伝えします。

① 目に見える変化 会議室の空気と社員の表情

毎月の経営会議が、変わります。これまで「先月も赤字でした」「販管費の使いすぎです」と責任を追及する場だった会議が、製品別の限界利益、目標までの差額、来月の打ち手を議論する前向きな場に変わります。社員が数字を語り始め、「この製品は限界利益率が低いので工程を見直したい」という提案が現場から上がってきます。社長が一人で抱えていた経営の重みが、組織で支える形に変わっていきます。

② 通帳と時間の変化 銀行と日曜日

通帳残高が、毎月確実に積み上がっていきます。資金繰り表とにらめっこしながら手形決済日に怯える日々から、3か月先までキャッシュが見える状態に変わります。銀行とのやり取りも変わります。これまで「お願いしてお金を貸してもらう」立場だったのが、「金利交渉ができる」立場に変わる。日本政策金融公庫の格付けが上がれば、調達金利が0.5〜1.0%下がることも珍しくありません。そして、日曜日の朝に資金繰りの試算をしていた習慣が、家族との時間に置き換わります。

③ 背中の変化 後継者と取引先からの目線

後継者となる息子・娘、あるいは番頭の幹部社員が、初めて「この会社を継ぎたい」と口にするようになります。赤字続きの会社を引き継がせるのは、経営者にとって最も辛い瞬間です。しかし黒字体質に戻った会社は、誇りをもって次世代に渡せる資産になります。取引先からの目線も変わり、「あの会社は数字に強くなった」「経営判断が早くなった」と評価され、紹介案件が増えていきます。

これらは精神論ではなく、損益分岐点比率を25ポイント下げた経営者が、現実に手にしている景色です。あなたも、この景色を共に手に入れましょう

自社だけでCVP分析が機能しない4つの理由

「自社でやってみよう」と書籍を買って試みた経営者は数多くいらっしゃいます。しかし、自社だけで完結できるケースは極めて限定的です。理由は次の4つです。

理由1 固変分解には統計的手法と業界知見の両方が必要

準変動費の按分は、勘でやると数千万円単位でずれます。最小二乗法・高低点法といった統計的手法に加え、業界ごとの原価構造の知見が不可欠です。製造業と建設業では人件費の按分ロジックが異なります。

理由2 製品別・顧客別の収益分析にはマンパワーが足りない

製品が60、顧客が80を超える企業では、限界利益分析だけで延べ40〜60時間の作業量になります。経営者・経理担当者の通常業務の合間ではほぼ不可能です。

理由3 「聖域」に手を入れる判断は、社内の人間ほど難しい

赤字製品の販売停止、不採算顧客との取引縮小、長年勤めた社員の役割変更。これらは社内の人間関係を背負ったままでは決断できません。第三者の客観的な視点と、診断士としての制度的な裏付けが必要になります。

理由4 月次モニタリング体制の構築が止まる

一度の分析で終わってしまい、3か月後には元の状態に戻る。これが最も多い失敗パターンです。継続的にPDCAを回す仕組みを内製化するには、半年から1年の伴走支援が必要です。

これらの理由から、損益分岐点改善に本気で取り組む経営者の方々は、外部の経営革新等支援機関を活用される傾向が強まっています。中小企業庁が認定する経営革新等支援機関の活用事例は、中小企業白書でも繰り返し紹介されています。

KICKコンサルティングのV字回復プロジェクト

KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、製造業・建設業の中小企業を中心に、150社以上の経営支援実績を持つ経営革新等支援機関です。代表の松本昌史は、中小企業診断士・MBA・1級FP技能士・事業承継士の4つの専門資格を保有し、財務・管理会計・事業承継までを一気通貫で支援できる体制を整えています。

提供サービス V字回復プロジェクト

フェーズ内容期間
第1フェーズ財務レントゲン 損益分岐点・固変分解・限界利益の可視化1〜2か月
第2フェーズ製品別・顧客別収益分析 利益感度分析の実施2〜3か月
第3フェーズ改善施策の優先順位付けと実行支援3〜6か月
第4フェーズ月次モニタリング体制の内製化支援6〜12か月

本プログラムの全体像については中小企業診断士による管理会計導入支援のページに詳細を掲載しております。

初回相談の進め方

初回のご相談は完全無料です。直近24か月の試算表をお持ちいただければ、その場で簡易的な損益分岐点比率の診断をいたします。所要時間は約1時間。

次の点を明確にお約束します。

  • 強引な営業や売り込みは一切いたしません
  • 無料相談後の契約義務はございません
  • ご相談内容は完全に守秘いたします
  • 無料相談だけでお帰りいただいて結構です

この無料相談枠は、質の高い対応を維持するため毎月先着3社までとさせていただいております。当月分が埋まり次第、翌月以降のご案内となりますのでご了承ください。

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よくあるご質問

Q1 固定費と変動費はどのように分ければよいですか

勘定科目どおりに分けると正確性を欠きます。基本給は固定費、残業代・派遣費は変動費的に扱うなど、過去24か月の月次データから統計的に按分するのが実務です。製造業では「製造ライン稼働時間」を基準にした按分が精度を高めます。

Q2 損益分岐点比率は何%を目指すべきですか

一般的に80%以下が健全水準、60%以下が超優良水準とされています。中小企業庁「2021年版中小企業白書」では、中規模企業の平均が85.1%、小規模企業が92.7%、大企業が60.0%と報告されています。まずは80%以下を目標にされることをお勧めします。

Q3 赤字ではないのに資金繰りが苦しいのはなぜですか

会計上の利益とキャッシュフローは一致しません。売掛金の回収サイトが長い、在庫が膨らんでいる、借入返済元本が重いといった要因があります。損益分岐点分析と並行してキャッシュフロー構造を可視化することで、原因が特定できます。

Q4 限界利益率を上げる最も効果的な方法は何ですか

単価アップが最も効果的です。1%の単価アップは、数量10%アップに匹敵する利益インパクトを持つことが多くあります。続いて変動費削減(仕入先見直し・歩留改善)、最後に数量増加という順番が原則です。

Q5 設備投資の回収期間はどう判断すべきですか

投資による固定費増加額と、それによって増加する限界利益(または削減される変動費)の差分から計算します。損益分岐点比率がどう変化するかをシミュレーションし、95%を超える場合は投資を再考すべきです。

Q6 月次で損益分岐点をモニタリングする頻度はどの程度が適切ですか

毎月の経営会議で必ず確認する体制が望ましいです。原材料費・人件費が変動する局面では、四半期に1度の固変分解の見直しもお勧めしています。

Q7 多品種少量生産でも損益分岐点分析は機能しますか

機能しますが、製品全体の平均では実態が見えません。製品群別、顧客別、事業部別に階層化して分析する必要があります。これがABC分析(パレート分析)と組み合わさることで、撤退判断・集中判断が明確になります。

Q8 顧問税理士がいれば、コンサルタントは不要ではありませんか

税理士の業務は税務申告と過去会計が中心です。一方、CVP分析・固変分解・利益感度分析・撤退判断といった「未来会計」「管理会計」の領域は、中小企業診断士など経営支援を専門とする専門家の支援領域となります。両者は補完関係にあります。

Q9 相談料はかかりますか

初回1時間の経営相談は完全無料です。本格的な支援に進む場合のみ、別途お見積もりとなります。無料相談のみでお帰りいただいて結構です。

Q10 どのような業種に対応していますか

主に製造業・建設業の中小企業を中心に支援しております。東京・埼玉・茨城を中心に、従業員5〜100名規模の中小企業の支援実績が150社以上ございます。

いま、損益分岐点を見える化する第一歩を

売上が伸びているのに利益が残らない構造は、放置すれば3年で赤字に転落します。一方で、損益分岐点比率を25ポイント下げる事例は、現実に存在します。違いを生むのは、固定費と変動費を正しく分け、製品別・顧客別の限界利益を可視化し、月次でモニタリングする仕組みを作れるかどうか、それだけです。

そして、その仕組みづくりは、経営者一人で取り組むには重すぎる作業です。だからこそ、中小企業庁認定の経営革新等支援機関である当社が伴走します。

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