
「この赤字は、たまたまです」。決算書を前に、そう言いたくなった経営者は少なくありません。鉄骨と生コンが上がり切った時期に着工した工事が、引き渡しのときに原価を食い破った。それだけの話なのに、外国人技能実習機構への提出書類では、その一行が「継続して人を雇える会社なのか」という疑いに変わってしまいます。
ご安心ください。追い込まれているのは、あなたの会社だけではありません。帝国データバンク「建設業の倒産動向(2025年)」によれば、2025年の建設業の倒産は前年比6.9%増の2,021件で、2013年以来12年ぶりに2,000件を超えました。同社の「物価高倒産動向調査(2025年)」でも、物価高を原因とする倒産949件のうち建設業が240件と業種別で最多です。敵は、あなたの経営判断ではありません。資材と労務費が先に上がり、請負単価が後から追いつくという、この業界の時間差そのものです。
結論を先に申し上げます。審査官が見ているのは赤字の有無ではなく、その赤字が「一時的」であることを、第三者が検証できる形で説明できているかです。必要なのは言い訳ではなく、3つの論理です。
- 「一時的赤字」が審査で伝わらない構造的な理由
- 審査官を納得させる3つの論理と、その組み立て順
- 債務超過のときに求められる第三者評価書の根拠
- 決算書3期分から一時性を立証する具体的な手順
- 自社作成の限界と、専門家に任せた場合の違い
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは決算書の状況をお聞かせください。
「一時的赤字」が審査官に届かない構造

結論から申し上げます。審査官は建設現場を知りません。だから「たまたま」という言葉は、書類の上では「原因不明」と同義になります。ここを埋めない限り、何度説明しても平行線です。理由は3つあります。
審査官が見るのは現場ではなく数字だけ
外国人技能実習機構が公表している「技能実習計画認定申請に係る提出書類一覧・確認表」では、番号20として直近2事業年度の貸借対照表の写し、番号21として直近2事業年度の損益計算書の写しの提出が求められます。審査官の手元にあるのは、この紙だけです。着工が2年前だったこと、鉄骨の見積が契約後に跳ねたこと、発注者が単価改定に応じなかったこと。現場では当たり前の事情が、決算書には一行も書かれていません。貸借対照表に残るのは純資産のマイナスという結果だけ、損益計算書に残るのは完成工事総利益の落ち込みという結果だけです。
審査官の仕事は、赤字の理由を推理することではありません。書類に書かれた事実が要件を満たすかを確認することです。書かれていない事情は、存在しないものとして扱われます。厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが、これは審査の公平性を保つための当然の設計です。つまり、書けば伝わる。書かなければ、どれだけ正当でも伝わりません。
債務超過があると第三者の評価書が要件になる
同じ確認表の番号20には、直近の事業年度で債務超過がある場合、中小企業診断士、公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が、改善の見通しについて評価を行った書類も提出することが明記されています。つまり社長がどれだけ丁寧に理由書を書いても、要件は満たされません。税理士の顧問先であっても、この書面は税理士では要件を満たしません。制度が指名しているのは、中小企業診断士か公認会計士です。
「一時的」を主張するほど疑われる逆説
ここが最も見落とされる点です。「一時的です」「来期は戻ります」という主張は、根拠を伴わない限り、審査官の側では「見通しが甘い会社」という評価に反転します。人の採用は最長で複数年に及びます。審査官は、その期間ずっと賃金を払い続けられるかを確かめる立場です。主観的な楽観は、リスクの証拠として読まれます。
赤字は御社の失敗ではなく、業界の時間差
もう1つ、押さえておくべき事実があります。建設業の赤字は、いま個社の問題ではなくなっています。帝国データバンクが2026年2月に実施した価格転嫁の実態調査では、企業の価格転嫁率は42.1%にとどまりました。コストが100上がっても、請負金額に乗せられたのは42程度という水準です。残りの58は、元請と下請の力関係の中で、施工者の粗利から消えていきます。
そこに、2024年4月から建設業にも適用された時間外労働の上限規制が重なりました。工期を延ばせば現場経費が積み上がり、人を増やせば労務費が増える。国土交通省の公共工事設計労務単価が14年連続で上がり続けている以上、人件費の増加は避けようがありません。請負契約は着工前に金額が確定し、原価は着工後に動く。この時間差こそが、真面目に受注した会社ほど赤字になる仕組みの正体です。
だからこそ、説明の軸は「うちは頑張った」ではなく「業界共通の変動が、自社のこの案件にこう波及した」でなければなりません。個人の努力の話にした瞬間、審査官は比較する物差しを失います。
放置したときに起きること
| 対応 | 書類上の見え方 | 起きる結果 |
|---|---|---|
| 決算書だけを提出する | 債務超過の事実のみが残る | 要件不備で補正指示。認定まで数か月の空白 |
| 社長名の理由書を添える | 当事者の主観としか読まれない | 第三者評価の要件を満たさず再提出 |
| 赤字の原因を書かず提出 | 構造的赤字と区別できない | 継続的な雇用能力に疑義。計画そのものの見直し |
| 3つの論理で立証する | 外部指標と自社原価が接続する | 一時性が検証可能な事実として伝わる |
要するに、伝わらないのは事情がないからではなく、事情を数字に翻訳していないからです。
審査官を納得させる3つの論理

ここからが本題です。一時的赤字の立証は、外部指標・内部比較・将来証拠という3層で組み立てます。1つでも欠けると、残りの2つも効きません。
論理1 資材価格指数の推移と自社原価をリンクさせる
まず、赤字が自社の外側で起きたことを示します。一般財団法人建設物価調査会の建設資材物価指数(2015年=100、東京)は、2025年8月時点で総合143.2、前年同月比プラス3.2%。建築部門141.9、土木部門147.7です。国土交通省の公共工事設計労務単価も、2025年の全国全職種平均が24,852円と、14年連続の上昇となりました。
大事なのは、この数字を並べて終わらせないことです。赤字となった工事の着工月と引渡月を指数の折れ線に重ね、その区間で指数が何ポイント動いたかを示す。そして自社の原価台帳で、同じ区間に鋼材費や外注費が何%増えたかを並べる。外部指数と自社原価が同じ方向に同じ幅で動いていれば、その赤字は自社の見積能力ではなく市況が原因だと、審査官の側で検算できます。検算できる主張だけが、事実として扱われます。
論理2 赤字案件と黒字案件の利益率を並べて見せる
次に、赤字が全社的なものではないことを示します。決算書は全案件を合算した数字です。合算されている限り、会社全体が採算割れしているように見えます。ここを分解します。
- 直近3期の完成工事を、契約締結時期ごとに区分する
- 案件ごとに完成工事高、完成工事原価、粗利率を算出する
- 資材高騰前に契約した案件と、その後に契約した案件で粗利率を比較する
- 赤字の総額のうち、特定の何件で何割を占めているかを明示する
たとえば全体の粗利率がマイナスでも、値上げ前に契約した数件を除けば残りは黒字で推移している、という形が示せれば話は変わります。赤字が「会社の体質」ではなく「特定の契約の属性」に集中していることを、案件単位の数字で示す。これが2つ目の論理です。
論理3 価格転嫁済みの受注残を示す
最後に、将来の証拠を出します。先ほど触れたとおり、業界全体の価格転嫁率は4割程度にとどまります。裏を返せば、単価改定を通せた会社は明確な少数派であり、そこに入れたこと自体が経営努力の客観的な証明になります。過去の赤字を弁明するより、この一枚を出すほうが強く効きます。
提示するのは、改定後の単価で締結済みの請負契約書、注文書、見積承諾書です。工事名、契約日、請負金額、実行予算、想定粗利率を一覧にし、赤字案件の粗利率と並べる。前の単価では赤字、新しい単価では黒字。同じ工事内容で、価格だけが変わっている。この対比が、「戻ります」という言葉を「戻ることが決まっています」に変えます。
3つの論理に必要な資料
準備するものを整理します。特別な資料は必要ありません。ほとんどが、既に社内にあるものです。
| 論理 | 立証すること | 使う資料 |
|---|---|---|
| 論理1 外部指標 | 赤字の原因が社外にある | 建設資材物価指数、企業物価指数、公共工事設計労務単価、自社の仕入伝票 |
| 論理2 内部比較 | 赤字が特定案件に集中している | 工事台帳、案件別の完成工事高と原価、粗利率一覧 |
| 論理3 将来証拠 | 改定単価での受注が確定している | 請負契約書、注文書、見積承諾書、受注残一覧 |
| 土台 | 改善の見通しが数値で描ける | 決算書3〜5期分、資金繰り表、返済計画 |
3つを1つの物語にまとめる
3つの論理は、順番に置いて初めて意味を持ちます。市況が動いた(論理1)から、特定の契約が赤字になった(論理2)。その契約は既に一巡し、新しい単価の受注が積み上がっている(論理3)。この因果が1本の線でつながったとき、赤字は「事故」ではなく「通過点」として読まれます。この筋書きを、財務指標と改善計画に落とし込んだものが、債務超過企業の企業評価書作成支援で作る書面です。
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3つの論理が通ったあとに手に入るもの

この書面が整うと、変わるのは審査の結果だけではありません。3つの軸で申し上げます。
数字 説明できる決算書になる
案件別の粗利率と受注残の粗利率が可視化されると、どの契約条件なら利益が残るかが社内の共通言語になります。次の見積で、スライド条項や単価改定の交渉根拠として、そのまま建設物価調査会の指数を持ち出せます。評価書を作る過程そのものが、価格転嫁の武器になります。
「この単価では受けられません」と言えるようになる。その一言が言えるかどうかで、翌期の粗利率は変わります。指数という第三者の物差しを持つ会社と、感覚で交渉する会社とでは、同じ工事でも残る利益が違ってきます。
時間 現場が止まらない
補正指示による差し戻しがなくなれば、認定までの空白が消えます。予定していた入職時期に人が入り、既に受注した工事の工程が動きます。職人不足で受注を断る、という最も痛い選択をしなくて済みます。
技能実習生が現場に入れば、既存の職人は本来の技能に集中できます。人が足りないことによる工期遅延は、遅延損害金や次の指名からの除外という形で、決算書に二次被害をもたらします。認定が予定どおり下りるということは、その連鎖を断つということです。
関係性 銀行と監理団体の見る目が変わる
中小企業診断士が作成した改善見通しの評価書面は、外国人技能実習機構だけに向けたものではありません。同じ論理構成は、金融機関への説明資料としても機能します。債務超過の会社が、外部指標を引いて赤字の一時性を語り、転嫁済みの受注残を提示する。その姿勢は、監理団体にとっても「任せてよい受入れ企業」の判断材料になります。
赤字の説明に費やしていた時間を、次の受注に向ける。その静かな余裕を、共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、KICKコンサルティングの支援

ここまで読んで、「自社でもできそうだ」と感じた経営者もいらっしゃるはずです。ただ、実務には3つの壁があります。
壁1 資格要件の壁
最大の壁は、努力では越えられません。外国人技能実習機構の確認表番号20が求めているのは、中小企業診断士、公認会計士等の公的資格を有する第三者による評価です。社長が徹夜で書いた100枚の資料も、この要件の前では0枚と同じ扱いになります。
壁2 時間の壁
案件別の原価分解は、経理担当者に頼めば数週間かかります。しかも機構からの追加提出要求は、多くの場合すでに期限が迫った状態で届きます。現場を回しながら、指数を調べ、原価を割り、改善計画を書く。その時間は、本来なら見積と現場管理に使うべきものです。
壁3 書き方の壁
同じ事実でも、書き方で結論が変わります。「資材が高騰したため赤字」と書けば言い訳になり、「指数がこの区間で何ポイント上昇し、自社原価が同率で連動した結果、当該2件で粗利率がこう推移した」と書けば検証可能な事実になります。だからこそ、プロに任せる経営者が増えています。
| 項目 | 自社で作成する場合 | KICKコンサルティング |
|---|---|---|
| 資格要件 | 要件を満たさない | 経済産業大臣登録の中小企業診断士が直接作成 |
| 赤字の説明 | 主観的な事情説明になりやすい | 外部指数と自社原価を接続した検証可能な記述 |
| 使う資料 | 直近期の決算書のみ | 決算書3〜5期分と原価台帳、受注残から一時性を立証 |
| 経営者の負担 | 数週間の資料作成 | オンラインでのヒアリングと決算書のご提出のみ |
| 建設業への理解 | — | 建設業の企業評価書作成支援の実績を保有 |
ご相談から納品までの流れ
- 問い合わせフォームから現状をお送りいただく。決算書がまだ手元になくても構いません
- オンラインで、赤字となった工事の経緯、契約時期、受注残の状況をうかがう
- 決算書3〜5期分と工事台帳から、外部指標と自社原価の連動を検証する
- 改善の見通しを数値で組み立て、評価書面として納品する
経営者にお願いするのは、2番目のヒアリングだけです。指数を調べるのも、案件別に原価を割るのも、審査官の目線で文章に落とすのも、当社の仕事です。社長の時間は、次の現場と次の見積に使ってください。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)の代表・松本昌史は、MBA(経営管理修士)、経済産業大臣登録の中小企業診断士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、一般社団法人金融検定協会「中小企業事業再生マネージャー」認定を保有し、150社以上の法人支援に携わってきました。中小企業庁の認定経営革新等支援機関として、企業評価書に特化した申請サポートを行っています。窓口から作成まで、担当者が入れ替わることはありません。なお、中小企業診断士が担えるのは申請サポートまでです。当社が行うのは、財務分析、評価書面の作成、申請書類の準備支援に限られます。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。1社ごとに時間をかけて拝見するため、月あたりのご相談数には限りがあります。
よくある質問

Q. 債務超過だと、必ず企業評価書が必要ですか
A. 外国人技能実習機構の「技能実習計画認定申請に係る提出書類一覧・確認表」番号20では、直近の事業年度で債務超過がある場合、中小企業診断士、公認会計士等の公的資格を有する第三者が改善の見通しについて評価した書類も提出するものとされています。債務超過の事実があるなら、必要とお考えください。
Q. 顧問税理士に書いてもらうことはできますか
A. 確認表が挙げているのは中小企業診断士、公認会計士等です。税理士は税務の専門家であり、この書面の作成者としては要件を満たしません。決算書や原価データのご提供で、顧問税理士のご協力をいただく形が現実的です。
Q. 赤字が1期だけでも評価書は必要ですか
A. 要件の起点は赤字ではなく債務超過です。1期の赤字で純資産がマイナスに転じたなら対象になり、赤字でも純資産が残っていれば対象外です。まずは直近の貸借対照表の純資産の部をご確認ください。
Q. 何期分の決算書を用意すればよいですか
A. 機構への提出は直近2事業年度分です。ただし一時性を立証するには、資材高騰の前後を含む3〜5期分の推移が必要になります。当社では3〜5期分と原価の内訳を拝見しています。
Q. 資材が上がったという証明は、どの資料を使いますか
A. 一般財団法人建設物価調査会の建設資材物価指数、日本銀行の企業物価指数、国土交通省の公共工事設計労務単価が代表的です。自社の仕入伝票や見積書と組み合わせて、同じ期間の変動を並べます。
Q. 受注残がまだ少ない場合はどうなりますか
A. 契約済みの案件だけでなく、単価改定に応じた発注者との継続取引や、内示段階の案件も材料になります。事実として提示できる範囲を整理したうえで、原価低減や固定費の見直しを含む改善計画で補います。
Q. 作成にはどれくらいの期間がかかりますか
A. 資料が揃っている場合、ヒアリングから数営業日での納品を基本としています。機構から期限を切られた急ぎのご相談も承っていますので、まずは残り日数をお知らせください。
Q. 遠方でも依頼できますか
A. オンラインで完結します。ヒアリングはZoom等で行い、ご来社は不要です。全国からご相談をいただいています。
Q. 評価書を出せば必ず認定されますか
A. 認定の可否を判断するのは外国人技能実習機構です。評価書は要件を満たすための必須書類であり、合否を保証するものではありません。当社が行うのは、審査官が検証できる形で事実を整理し、要件不備で止まる状態をなくすことです。
Q. 2027年の育成就労制度への移行で、この書類は変わりますか
A. 技能実習制度は2027年4月に育成就労制度へ移行する予定です。現時点で公表されている情報では、受入れ企業の財務健全性を確認する考え方が緩む方向は示されていません。制度が動く前に、説明できる財務の型を持っておくことをお勧めします。
まとめ

赤字の理由を語る場面で、多くの経営者は「どう説明するか」を考えます。しかし審査官が待っているのは説明ではなく、自分の手で確かめられる数字です。市況の指数、案件別の粗利率、締結済みの受注残。この3つを並べた瞬間、赤字は主張ではなく記録に変わります。
資材が上がったのは、あなたの責任ではありません。ただ、それを翻訳できる人間が社内にいないことだけは、今日中に解決できます。数字はもう、御社の決算書の中にあります。足りないのは、それを審査官の言葉に置き換える第三者の目だけです。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。経済産業大臣登録の中小企業診断士が直接お話をうかがいます。
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