
セントラルキッチンを運営する会社が特定技能の受入れについて、加入している監理団体に相談したところ、「決算に債務超過が見られる状態では、受入れの手続きを進めることができません。企業評価書を用意してください」と言われた——そんな経験はないでしょうか。
企業評価書を用意できず特定技能人材・技能実習生を継続雇用できなければ、調理ラインを稼働する人手を確保できません。最悪の場合、主要取引先からの信頼を失い、会社そのものが立ち行かなくなります。
債務超過の原因は、外食チェーンなど特定の取引先1社への売上依存にあります。発注量や卸単価の見直し一つで収益が大きく揺れ、原材料費や人件費が上がっても価格に転嫁しきれません。加えて、企業評価書を作成できるのは中小企業診断士や公認会計士など限られた資格者のみで、身近に頼れる先が無いという事情も、この問題を長引かせています。
下期に入り、主要取引先との来期の発注計画や卸単価の交渉が動き出す時期でもあります。
とはいえ、債務超過の状態でも、特定技能や技能実習(育成就労)による外国人材の受入れをあきらめる必要はありません。
- 特定の大口取引先への依存に不安がある方
- 発注量の変動で赤字になりやすい方
- 特定技能の受入れ審査が不安な方
- 企業評価書を誰に頼めばいいか分からない方
この記事では、特定取引先への依存で赤字・債務超過に陥りやすいセントラルキッチンが、審査を一発で通す企業評価書をどう準備するかを、3つの視点に整理して解説します。
- セントラルキッチンが企業評価書を求められる理由
- 特定技能を受入れる3つの視点
- 企業評価書の記載イメージとサンプル
- 依頼先として中小企業診断士を選ぶ基準
中小企業診断士として法人支援150社以上に関わってきた立場から、実務でつまずきやすい点を中心にまとめました。読み終える頃には、自社の決算がなぜ赤字になったのかを説明する筋道と、企業評価書を誰にどう依頼すればよいかが分かります。
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セントラルキッチンが特定取引先依存で企業評価書を求められる理由

セントラルキッチンは、複数店舗の調理を集約して効率化するための施設です。そのぶん、特定のチェーン本部や大口の取引先1社からの発注に売上の大半を依存しやすい構造になっています。ポイントは3つです。
主要取引先1社への依存が生む構造的な赤字リスク
取引先が数店舗の閉店や商品リニューアルを決めただけで、発注量が一気に減ることがあります。設備投資で借入を抱えた直後にこうした変動が起きると、固定費を回収できず赤字が続きやすい構造になります。原材料費や光熱費、人件費が上がっても、契約上すぐに卸単価へ転嫁できないことも、収益を圧迫する要因です。
特定技能・技能実習の「一定の基準」と債務超過の関係
店舗とは別の場所で集中的に調理・加工を行うセントラルキッチンは、特定技能では「飲食料品製造業分野」の受入れ対象になります(外食店舗と同一敷地内にある調理施設は扱いが異なるため、この点は自社がどちらに当たるか確認が必要です)。技能実習でも、惣菜加工をはじめとする食品製造関係の職種で外国人材を受け入れてきた実績があり、セントラルキッチンとは相性の良い制度です。厚生労働省の資料には、監理団体等の財産的基礎について、直近期末に債務超過がある場合は「中小企業診断士、公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が改善の見通しについて評価を行った書面」の提出を求める旨が記載されています。特定技能の定期届出でも、過去3年間に債務超過となっていない法人であることが、届出を簡素化できるかどうかを分ける「一定の基準」のひとつとして扱われます。この基準に該当しない場合に、企業評価書の提出を求められる流れです。
放置するとどうなるか
企業評価書を用意しないまま審査に臨むと、外国人技能実習機構(OTIT)や地方出入国在留管理局から追加の説明を求められ、審査が長期化します。最悪の場合、新規の受入れや在留資格の更新自体が止まり、現場の人手不足がさらに深刻化するという悪循環に陥ります。
特に人手が足りないままでは、既存の従業員に長時間労働の負担がかかり、離職が離職を呼ぶ状態になりかねません。審査の停滞は、資金繰りだけでなく現場の人員体制にも直接影響することを、早い段階で理解しておく必要があります。
2027年施行予定の育成就労制度にも備える
技能実習に代わる新しい制度として、2027年4月に育成就労制度の施行が予定されています。制度の詳細は今後も整理が進みますが、財産的基礎や債務超過に関する考え方は、現行の技能実習・特定技能と地続きになると見込まれます。企業評価書を今のうちに整えておくことは、育成就労制度への移行への備えにもなります。
会社種別によって異なる「依存」の実態
ひと口にセントラルキッチンといっても、居酒屋チェーンの一括調理拠点、ファミリーレストランの集中仕込み工場、コンビニ向け弁当・惣菜の受託製造など、依存の形はさまざまです。契約更新のタイミングで一方的な単価引き下げを打診されるケース、真空調理機や急速冷却機といった大型設備の減価償却負担が重い時期に発注が細るケースなど、パターンごとに債務超過に至る経緯が異なります。企業評価書では、自社がどの型に当てはまるのかをまず整理することが出発点になります。取引先の業績が悪化して発注量そのものが減る場合と、自社の卸単価交渉力が弱く価格を据え置かれる場合とでは、改善計画の書き方も変わってきます。
つまり、セントラルキッチンにとって企業評価書は「取引先依存という構造的な弱さ」を、客観的な第三者の目でどう説明し直すかという書面です。次の章で、実際にどう受入れを進めるかを見ていきましょう。
企業評価書の基本を先に押さえたい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
セントラルキッチンが特定技能を受入れる3つの視点|企業評価書のサンプルと書き方

債務超過でも特定技能の受入れを進めるには、次の3つの視点を押さえて企業評価書を組み立てます。
視点1|自社の財務状況と債務超過の理由を数値で説明する
決算書の数字をそのまま並べるだけでは、審査官には伝わりません。「取引先の発注量が前期から落ち込んだ」「大口案件の値下げ要請を受けた」など、債務超過に至った理由を、取引構造にまで踏み込んで具体的に説明することが出発点になります。架空の数値や誇張した説明は書かず、決算書と整合する事実だけを積み上げます。売上高に占める主要取引先の比率の推移など、依存の度合いが分かる形で示せると、説明に説得力が増します。
視点2|改善の見通しを取引先分散の視点で具体的に示す
「今期は黒字化する見込みです」という抽象的な表現では説得力がありません。新規取引先の開拓、卸単価の改定交渉、間接部門の見直しといった具体的な改善計画とスケジュールを示すことが重要です。特定取引先への依存が課題であるなら、取引先の分散そのものを改善計画の柱に据えると、審査官にも実態が伝わりやすくなります。例えば「今期中に新規取引先を1社開拓し、来期には主要取引先の比率を引き下げる」といった時期を伴う目標が、抽象論との違いになります。
視点3|中小企業診断士等の客観的な第三者評価を得る
自社の説明だけでは「都合の良い見通しではないか」と受け取られかねません。だからこそ、中小企業診断士や公認会計士など、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を持つ第三者による評価が求められます。この第三者性こそが、企業評価書という書面の核心です。
企業評価書を作成する3つのステップ
- 現状分析:決算書と取引先別の売上構成を整理し、債務超過に至った経緯を数値で裏付ける
- 改善計画の立案:取引先分散・単価交渉・コスト構造の見直しを、時期を示して計画に落とし込む
- 第三者評価書の作成:中小企業診断士等が計画の妥当性を確認し、書面としてまとめる
この3ステップを踏むことで、審査官が知りたい「なぜ赤字になったのか」「今後どう改善するのか」「その見通しは客観的に見て妥当か」という3つの問いに、筋道立てて答えられる書面になります。
企業評価書に記載する項目のイメージは、次のとおりです。架空の記載例ではなく、一般的な構成項目名の一覧として示します。
| 記載項目 | 記載する内容のイメージ |
|---|---|
| 企業概要 | 事業内容、主要取引先の構成、従業員数などの基本情報 |
| 財務状況・債務超過の理由 | 直近の決算数値、債務超過に至った経緯(発注減・単価据え置き等) |
| 改善の見通し | 取引先分散、価格交渉、コスト構造の見直しなど具体的な計画と時期 |
| 評価者の所見 | 中小企業診断士等の第三者による、計画の妥当性についての評価 |
「外国人技能実習 企業評価書 サンプル」といった検索で情報を探す方も多いのですが、様式は決まった1つの型があるわけではありません。自社の取引構造に合わせて、上の項目を過不足なく組み立てることが、審査を通すための近道です。他業種向けのひな形をそのまま流用すると、セントラルキッチン特有の取引構造が伝わらず、かえって説明が弱くなることもあります。詳しくは次のページにまとめています。
外国人技能実習・特定技能の企業評価書について 社長やご担当者の方へ。“あなた”は今、このようなお悩みを抱えていませんか。 外国人技能実習制度を活用したいが、企業評価書の作成方法が分からないという方 特定技能外国人の受入れにあたり、経営改善の見通しについて評価が必要だ...
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特定取引先への依存を乗り越え特定技能の受入れで手に入る未来

企業評価書を整え、特定技能の受入れが軌道に乗ると、セントラルキッチンの経営は3つの軸で変わっていきます。
数字:黒字化への具体的な道筋が見える
改善計画に沿って取引先を分散し、原価と単価の見直しを進めることで、債務超過からの回復に向けた数字の裏付けができます。決算のたびに「今期はどうなるか」と不安を抱える状態から抜け出せます。設備投資の減価償却負担と発注量のバランスも、計画段階で見通しを立てやすくなります。
時間:更新・定期報告のたびに慌てなくなる
企業評価書の考え方を一度整理しておけば、特定技能の在留資格更新や定期報告のたびに一から資料を作り直す必要がなくなります。審査対応にかかる時間が減り、本業である調理・品質管理に集中できます。人手不足の解消によって、突発的な発注量の増減にも現場で対応しやすくなります。
関係性:取引先と対等に向き合える体制になる
人手不足が解消し、複数の取引先と安定的に取引できる体制が整えば、単価交渉でも一方的に不利な条件を飲まされにくくなります。外国人材にとっても、経営が安定した職場は長く働きたいと思える環境になります。定着率が上がれば、採用や教育にかかる手間も減っていきます。
3つの軸はそれぞれ独立しているのではなく、互いにつながっています。数字の裏付けが取れれば時間的な余裕が生まれ、時間に余裕ができれば取引先との関係づくりにも力を割けるようになります。取引先への依存から抜け出し、安定した経営基盤とともに特定技能の受入れで手に入る未来を、共に手に入れましょう。今の努力は、来期以降の経営を確実に軽くしていきます。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

ここまで読んで、「理屈は分かったが、自社だけで企業評価書を作れるだろうか」と感じた方も多いはずです。実際、自社だけで進めるには次のような壁があります。
専門性の壁と時間コスト
企業評価書は、財務分析の専門知識に加え、審査官がどこを見て判断するかという実務感覚が求められます。日々の受注対応に追われる中で、経営者やご担当者様がゼロから資料を組み立てるのは大きな負担です。慣れない書面作成に時間を割いた結果、肝心の取引先交渉や現場対応が後回しになっては本末転倒です。
判断ミスのリスク
なお、改善の見通しに関する評価を行えるのは中小企業診断士または公認会計士であり、税理士は作成できません。顧問税理士に決算の相談はできても、企業評価書そのものの作成は依頼先を誤ると、書面そのものが受理されない事態にもなりかねません。だからこそ、企業評価を行う能力を有すると認められる資格者に、早い段階から相談する経営者が増えています。
また、社内の担当者だけで改善計画を作ると、どうしても「希望的な見通し」に寄りがちです。取引先分散にどれだけの時間がかかるか、値上げ交渉がどこまで通るかといった見立ては、外部の視点を交えたほうが現実的な計画になります。第三者の目が入ることで、審査官から見ても納得感のある計画に仕上がります。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)では、中小企業診断士である代表が、法人支援150社以上の実績をもとに、企業評価書の作成から改善計画の組み立てまでを伴走します。特定取引先への依存という構造的な課題も含め、貴社の実情に沿った評価書を一緒に整えます。支援の内容は、次のような流れです。
- 現状のヒアリング:取引先構成、発注の推移、設備投資の状況を確認する
- 財務状況の分析:決算書をもとに、債務超過に至った経緯を整理する
- 改善計画の策定:取引先分散や単価交渉など、実行可能な計画に落とし込む
- 企業評価書の作成:中小企業診断士として、計画の妥当性を評価し書面化する
- 審査対応のフォロー:提出後の問い合わせにも、必要に応じて対応する
自社の担当者だけで抱え込まず、早い段階で第三者の視点を入れることが、審査を止めないための近道です。依頼先を選ぶ際は、資格の有無だけでなく、外国人材の受入れ制度そのものへの理解があるかどうかも確認すると安心です。
専門家に頼るかどうかは、話を聞いてからで構いません。強引な勧誘は一切いたしません。
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企業評価書をまとめて確認したい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
企業評価書のよくある質問|特定技能・債務超過の疑問を解消

Q. 企業評価書とは何ですか?
A. 直近期末に債務超過がある企業が、外国人技能実習・特定技能の受入れにあたり提出を求められる、改善の見通しについて評価を行った書面のことです。OTIT提出書類の別紙②-1・番号20にあたります。企業評価書とは何かを正しく理解しないまま提出書類を揃えようとすると、必要な項目が抜け落ちがちです。
Q. 企業評価書は誰が作成できますか?
A. 中小企業診断士または公認会計士など、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を持つ第三者です。税理士は作成できません。
Q. 債務超過だと特定技能の受入れはできませんか?
A. できないわけではありません。企業評価書で改善の見通しを客観的に示せれば、受入れの道は残ります。放置してしまうことが最大のリスクです。
Q. 企業評価書の作成にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 決算資料の整理状況や改善計画の具体性によって変わります。早めに相談いただくほど、余裕を持って準備を進められます。
Q. 外国人技能実習(育成就労)でも企業評価書は必要ですか?
A. 必要になる場合があります。2027年4月に施行予定の育成就労制度でも、財産的基礎に関する考え方は技能実習・特定技能と地続きです。監理団体や監理支援機関を通じて受入れる場合も、財産的基礎の考え方は同様に確認されます。今から準備しておく価値があります。
Q. 企業評価書のサンプルはありますか?
A. 外国人技能実習 企業評価書 サンプルとして決まった1つの様式があるわけではなく、企業概要・財務状況・改善の見通しといった項目を、自社の実情に合わせて組み立てる書面です。他社の書式をそのまま真似るより、自社の取引構造に合った項目立てを優先したほうが、審査官に伝わる内容になります。
Q. セントラルキッチンのような特定取引先への依存は、どう評価書に書けばいいですか?
A. 依存の実態を隠さず記載したうえで、取引先分散などの改善計画を具体的に示すことが評価につながります。第三者の目でその妥当性を裏付けるのが、企業評価書の役割です。
Q. 債務超過の理由書と企業評価書は同じものですか?
A. 債務超過理由書は自社で事実関係を説明する書類であるのに対し、企業評価書は中小企業診断士等の第三者が改善の見通しを評価する書面です。役割が異なるため、あわせて求められることがあります。
Q. 特定技能の受入れ後も、取引先依存の見直しは続ける必要がありますか?
A. 人手不足が解消しても、取引先への依存構造そのものが残っていれば、経営リスクは形を変えて続きます。受入れをきっかけに、取引先分散や単価交渉といった改善計画を実際に進めていくことが、企業評価書で示した見通しを裏付けることにもなります。
Q. 費用はどのくらいかかりますか?
A. 企業の状況や改善計画の複雑さによって変わるため、一律の金額ではお伝えできません。まずは無料相談で現状をお聞かせください。
まとめ
セントラルキッチンは、特定の取引先への依存という構造ゆえに、発注量や単価の変動がそのまま赤字・債務超過につながりやすい業態です。しかし、その構造的な弱さこそ、企業評価書で正しく説明し、改善の見通しを示せば、特定技能の受入れを止める理由にはなりません。
自社の財務状況を数値で説明すること、取引先分散を軸にした改善計画を描くこと、そして中小企業診断士等の客観的な評価を得ること。この3つの視点を押さえられれば、審査官に「この会社は先を見据えて動いている」と伝わる書面になります。
下期の発注計画や単価交渉が動くこの時期こそ、取引先依存という課題に正面から向き合う好機です。最低賃金の改定で人件費が上がる時期でもあるからこそ、コスト構造全体を見直すきっかけとして企業評価書の準備を始める企業も増えています。決算期をまたいで審査が続く場合は、直近の決算数値に加えて期中の進捗が分かる資料も用意しておくと、改善計画の進み具合を都度示せて安心です。人手不足の解消と経営基盤の立て直しを、同時に進めていきましょう。
ご相談いただいても、費用は一切かかりません。お断りいただいても結構です。まずは現状をお聞かせください。
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