
協同組合ハーモニー(監理支援機関)から「直近の決算が債務超過のままでは、育成就労の受入れ計画の認定に進めません。改善の見通しを示す企業評価書をご用意ください」と言われた。
そう言われても、中小企業診断士の知り合いはいない。企業評価書が何を指す書類なのかも、誰に頼めば作ってもらえるのかも分からない——そんな状態で、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
10月は下期のスタートと重なり、最低賃金の改定も控える時期です。ただでさえ厳しい人件費が、この秋さらに重くのしかかると感じている経営者の方もいるでしょう。
鋳造・めっき業は、金属加工の土台を支える重要な業種でありながら、「きつい・汚い・危険」という3K業種のイメージから採用が難しく、慢性的な人手不足に悩まされています。人手が足りず生産が追いつかない、無理な残業で従業員が疲弊する、それでも受注を断らざるを得ない——このような悪循環の末に、決算が債務超過に陥っている会社は少なくありません。長年培ってきた技術力があっても、それを形にする人手が足りなければ、会社の強みを発揮しきれないまま消耗してしまいます。
- 人手不足で生産が追いつかず悩む鋳造・めっき業の方
- 赤字や債務超過で外国人材の受入れ審査が不安な方
- 企業評価書を誰に頼めばいいか分からない方
- 育成就労や特定技能の準備を始めたい経営者の方
本記事では、中小企業診断士の実務視点から、鋳造・めっき業が人手不足の末に債務超過へ陥る本質的な原因と、育成就労・特定技能の受入れに必要な企業評価書を整える3つのステップを、記載イメージのサンプルとあわせて解説します。読み終える頃には、次に何をすべきかが具体的に見えているはずです。
- 鋳造・めっき業が債務超過に陥る2つの根本原因
- 育成就労の受入れに向けた3つのステップ
- 企業評価書の記載イメージとサンプルの読み方
- 中小企業診断士に依頼すべき理由
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鋳造・めっき業が人手不足で債務超過に陥り企業評価書を求められる理由

結論から言うと、原因は大きく2つです。「人手不足による生産能力の低下」と「人件費の増加」が同時に進み、利益が残らない構造になっていることが、企業評価書を求められる根本にあります。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| ①深刻な人手不足 | 3K業種のイメージによる採用難、熟練工の高齢化・退職が重なり、注文をこなせるだけの生産能力を維持できない |
| ②人件費・残業代の増加 | 人を確保するための採用コストや残業代がかさみ、最低賃金の改定も加わって固定費が膨らみ続ける |
「注文はあるのに受けられない」という悪循環
この状況を放置すると、次のような悪循環に陥ります。
人手が足りず生産能力に限界が来る。すると、せっかくの受注を断らざるを得なくなる。断り続ければ取引先からの信頼が下がり、次の発注が別の会社へ流れる。それでも既存の設備や人件費という固定費は減らせないため、売上だけが下がり利益が圧迫される。利益が出なければ賃上げや設備投資に回すお金もなく、さらに採用力が落ちて人手不足が深刻化する——というように、一つひとつの段階を飛ばさずに悪化していきます。
東京商工リサーチの集計では、2025年1〜11月の「人手不足」を理由とする倒産が359件に達し、年間で400件に迫る水準で推移しています。人手不足は、もはや一部の会社だけの問題ではありません。
そして、この悪循環の出口で立ちはだかるのが、外国人材の受入れ審査です。技能実習・育成就労・特定技能のいずれも、監理団体(監理支援機関)や出入国在留管理庁への手続きの過程で、直近の決算状況が確認されます。直近期末が債務超過の状態のままでは、計画の認定や在留資格の許可が進まないことがあります。そこで必要になるのが、改善の見通しを示す企業評価書です。
厚生労働省が示す技能実習制度運用要領には、監理団体の財産的基礎について、直近期末に債務超過がある場合、中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が、改善の見通しについて評価を行った書面の提出を求める旨が記載されています。企業評価書(改善の見通しについて評価を行った書面)は、中小企業診断士が名指しされている数少ない書類です。
「このままでは」を数字で考える
受注を1件断るたびに、その分の売上と利益機会が失われます。生産能力が追いつかない状態が続けば、月単位・年単位でその損失は積み上がっていきます。人手不足を理由に受入れの審査が進まなければ、さらに人材確保の選択肢が狭まり、悪循環から抜け出すきっかけを失うことになります。
特に鋳造・めっき業は、電気炉やめっき槽といった設備を止められないという事情もあります。人が足りないからといって稼働を減らせば、今度は固定費だけがのしかかり、赤字幅がさらに広がってしまいます。「人を増やせないなら、稼働自体を絞るしかない」という判断は、多くの場合、状況をさらに悪化させます。
この段階で必要なのは、精神論で踏ん張ることではありません。決算の実態を数字で直視し、どこにテコ入れをすれば黒字化できるのかを整理したうえで、その見通しを客観的に示す書面を用意することです。次の章で、その具体的な手順を見ていきます。
企業評価書の基本を先に押さえたい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
育成就労の受入れに向けた3つのステップ|企業評価書のサンプルと書き方

債務超過の状態から、育成就労や特定技能の受入れにつなげるまでの道筋を、実務では次の3つのステップで整理します。抽象的な心構えではなく、実際に手を動かす順番として捉えてください。
ステップ1 決算の実態を数字で正しく把握する
まず、直近の決算書を見て、純資産がどれだけマイナスになっているか、債務超過に至った要因は何かを数字で洗い出します。原価高騰なのか、人件費の増加なのか、設備投資の負担なのかによって、後の改善計画の中身が変わってきます。感覚や思い込みではなく、決算書の数字から出発することが最初の一歩です。
鋳造・めっき業の場合、人件費だけでなく、電気炉やめっき槽の稼働にかかる電気料金、薬品費といった変動費も利益を圧迫しやすい費目です。どの費目がどれだけ利益を押し下げているのかを一つずつ切り分けることで、次の改善計画がより実効性のあるものになります。決算書だけでは見えにくい部分は、月次の試算表もあわせて確認すると、直近の傾向をつかみやすくなります。
ステップ2 黒字化までの改善計画を明文化する
次に、いつまでに、何をして、どの程度の黒字化を目指すのかを、具体的な数値目標つきで文書にします。省人化につながる設備投資、単価交渉による価格転嫁、受注の選別による採算改善など、鋳造・めっき業であれば現実的に打てる手を計画に落とし込みます。
なお、債務超過が続いている会社には、企業評価書とは別に「経営改善計画策定支援(405事業)」という制度もあります。金融機関と共有する本格的な経営改善計画を、専門家費用の3分の2を国が補助する形で作れる仕組みで、既存融資の返済条件の変更(リスケジュール)と組み合わせて資金繰りを立て直すことも可能です。倒産の可能性を下げる選択肢として、気になる方は次のページをご覧ください。
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ステップ3 中小企業診断士に企業評価書の作成を依頼する
そして、改善の見通しについて評価を行った書面=企業評価書そのものは、中小企業診断士または公認会計士という、公的資格を持つ第三者にしか作成できません。自社の担当者や顧問税理士が作成しても、要件を満たす書面として認められない可能性があります。
ここで焦って自己流の書面を用意してしまうと、後になって内容の不足を指摘され、受入れのスケジュールそのものが後ろ倒しになりかねません。ステップ1・ステップ2で整理した数字と改善計画をもとに、中小企業診断士がヒアリングを重ねながら、審査で求められる要件を満たす書面へと仕上げていきます。自社の担当者は、数字の整理と事実確認に集中できるため、負担も抑えられます。
企業評価書には、おおむね次のような項目が記載されます。架空の記載例ではなく、一般的に求められる構成として押さえておいてください。
| 項目 | 記載内容の例 |
|---|---|
| 企業概要 | 会社名・所在地・設立年・主要事業内容などの基本情報 |
| 財務状況・債務超過の理由 | 直近決算の純資産の状況と、債務超過に至った要因の整理 |
| 改善の見通し | 黒字化に向けた具体的な取り組みと、数値目標を伴う計画 |
この記載イメージをより詳しく知りたい方に向けて、企業評価書サービスのページに具体的な内容をまとめています。
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人手不足を乗り越え育成就労の受入れで手に入る未来

企業評価書を整え、育成就労や特定技能の受入れが軌道に乗ると、会社の状態は具体的にどう変わるのでしょうか。3つの軸で考えてみます。
数字の変化 断っていた受注を受けられる生産体制へ
生産能力に見合った人員体制が整えば、これまで人手不足を理由に断っていた受注を受けられるようになります。売上と利益率の両方が改善していく道筋が見えてきます。
時間の変化 場当たり的な対応から計画的な生産へ
急な欠員や納期のひっ迫に振り回される時間が減り、計画的にシフトを組み、無理のない残業で現場を回せるようになります。経営者自身が目先の穴埋めに追われる時間も、確実に減っていきます。空いた時間を、次の設備投資の検討や若手の育成計画といった、将来につながる仕事に振り向けられるようになるのも、大きな変化です。
関係性の変化 金融機関・取引先からの信頼
債務超過であっても、改善の見通しを客観的な書面で示せることは、金融機関や取引先に対する説明力そのものです。「見通しが立っている会社」として、融資や取引の相談がしやすくなります。人手不足という重い課題を、企業評価書という一枚の書面をきっかけに乗り越えた先の未来を、共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

普通の会社が、自社だけで企業評価書を作成することはできません。企業評価書の作成は、中小企業診断士または公認会計士という公的資格を持つ第三者が担う業務であり、顧問税理士や社内の経理担当者が代わりに作成しても、審査で求められる要件を満たさない可能性があります。「企業評価書は税理士に頼める」と誤解しているケースも見られますが、作成できるのは中小企業診断士または公認会計士であり、税理士は対象に含まれません。
自社の決算を客観的に評価し、業種特有の事情(人手不足による受注機会の損失、設備の稼働状況など)を踏まえた改善の見通しを書面にまとめるには、専門的な知見と一定の作業時間が必要です。慣れない書類作成に時間をかけて、内容が不十分なまま審査に臨んでしまうことが、最も避けたいリスクです。本業の生産現場を回しながら、片手間で書類を仕上げようとすると、かえって審査までの時間が長引いてしまうことも少なくありません。
企業評価が拒否されないように、要点を理解している経験豊富な中小企業診断士を紹介します。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、法人支援実績150社以上、認定経営革新等支援機関(中小企業庁)として、経営改善・資金繰り改善に一気通貫で伴走してきました。代表の松本昌史は、中小企業診断士・MBA(経営管理修士)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)として、数字を見える化し、利益が残る構造への転換を支援しています。
東京・銀座に本社を構えていますが、全国オンライン対応が可能です。「近くに頼める専門家がいない」という地方の鋳造・めっき業の方も、遠慮なくご相談ください。決算の実態把握から、改善計画の明文化、企業評価書の作成、そして受入れ後を見据えた経営改善まで、申請サポートという枠を超えて伴走します。
企業評価書の作成そのものだけでなく、「そもそも人手不足の何が利益を圧迫しているのか」「どこから手をつければ黒字化に近づくのか」という管理会計の視点からのご相談も承っています。書類を整えて終わりではなく、受入れ後の経営改善まで見据えて伴走するのが、KICKコンサルティングの一気通貫の支援スタイルです。
企業評価書をまとめて確認したい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
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企業評価書のよくある質問|育成就労・特定技能の疑問を解消

Q. 企業評価書とは何ですか?
A. 正式には「改善の見通しについて評価を行った書面」といい、直近期末が債務超過の状態にある会社が、技能実習・育成就労・特定技能の受入れに関する手続きの中で提出を求められることがある書面です。中小企業診断士または公認会計士など、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を持つ第三者が作成します。単に「決算が悪い理由」を説明する書類ではなく、そこからどう黒字化に向かうのかという見通しまで含めて評価する点が特徴です。
Q. 育成就労と特定技能で、必要になる書類は違いますか?
A. 制度上の手続きは異なりますが、いずれも直近の決算状況が確認される場面があり、債務超過の状態であれば企業評価書の提出を求められる可能性がある点は共通しています。個別の要件は、監理支援機関や行政窓口に確認しながら進めることをおすすめします。
Q. 企業評価書は誰が作成できますか?
A. 中小企業診断士または公認会計士です。顧問税理士に相談されるケースもありますが、税理士は企業評価書の作成者には含まれません。作成できる専門家を早い段階で確認しておくと安心です。
Q. 企業評価書のサンプルやひな形はありますか?
A. 決まった様式が公表されているわけではありませんが、企業概要・財務状況と債務超過の理由・改善の見通しという3つの柱で構成されるのが一般的です。外国人技能実習の企業評価書サンプルを求める方は、本文中の記載イメージの表を参考にしてください。
Q. 改善報告書と企業評価書は同じ書類ですか?
A. 名称が似ていますが、異同については確認できておりません。求められている書類がどちらを指すのか分からない場合は、通知してきた監理団体や監理支援機関に直接確認することをおすすめします。
Q. 債務超過の理由書とは違うものですか?
A. 債務超過の理由書は、債務超過に至った経緯そのものを説明する書類として使われることがある一方、企業評価書は中小企業診断士等の第三者が改善の見通しまで評価する書面である点が異なります。自社で理由書を作成できたとしても、企業評価書まで自社だけで代替できるとは限らない点に注意が必要です。どちらが必要かは、通知の内容にあわせて確認してください。
Q. 企業評価書の作成にはどのくらいの準備期間が必要ですか?
A. 決算内容の精査や事業計画のヒアリングを丁寧に行うため、一定の準備期間を見込んでおくと安心です。受入れのスケジュールが決まっている場合は、早めに相談を始めることをおすすめします。決算資料や試算表がすぐに揃う状態にしておくと、ヒアリングから書面の完成までがスムーズに進みやすくなります。
Q. 鋳造・めっき業ならではの注意点はありますか?
A. 3K業種のイメージによる採用難や、電気炉・めっき槽などの設備維持にかかる固定費の重さは、他業種にはない特有の事情です。改善計画には、こうした業種特有の背景を踏まえた具体策を盛り込むことが説得力につながります。あわせて、若手の定着を後押しする作業環境の改善や、多能工化による省人化の取り組みを数値目標とセットで示せると、より説得力のある企業評価書につながります。
Q. 育成就労制度はいつから始まりますか?
A. 育成就労制度は、2027年4月(令和9年4月)の施行が予定されています。現行の技能実習制度からの移行が見込まれており、今のうちから制度の内容を把握しておくことをおすすめします。制度の詳細は今後も更新される可能性があるため、最新の公表情報を確認しながら準備を進めることが大切です。
Q. 監理支援機関とは何ですか?
A. 育成就労制度のもとで、現在の監理団体にあたる立場として位置づけられる見込みの組織です。監理支援機関の許可要件を確認しながら、受入れに向けた準備を進める企業が増えています。受入れ企業側としては、監理支援機関からの連絡内容を正確に受け止め、必要な書類を早めに準備しておくことが、スムーズな移行につながります。
まとめ|鋳造・めっき業が企業評価書で人手不足の壁を越える
鋳造・めっき業の債務超過は、根をたどれば「人手不足による生産能力の低下」と「人件費の増加」という2つの原因に行き着きます。原因を数字で把握し、改善計画を明文化し、中小企業診断士に企業評価書の作成を依頼する——この3つのステップを踏むことで、育成就労や特定技能の受入れへの道は開けます。
大切なのは、赤字や債務超過そのものではなく、そこから先の見通しを客観的に示せるかどうかです。一人で抱え込まず、専門家の力を借りて次の一手を整えてください。人手不足という現場の課題と、決算という数字の課題は、切り離さずに一緒に向き合うことで、初めて解決の糸口が見えてきます。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約やしつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずはお気軽にご連絡ください。
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