
造船所や船体ブロック製造会社が特定技能の受入れについて、加入している監理団体に相談したところ、「鋼材高騰で決算が厳しいのは分かりますが、債務超過のままでは受入れの手続きを進められません。企業評価書を用意してください」と言われた。
債務超過の原因は、鋼材価格の高騰と円安にあります。船価は契約時点で決まる一方、受注してから資材を調達する商慣行のため、鋼材や輸入エンジン・舶用機器の調達コストが上がるほど利益が圧迫される構造です。
このまま企業評価書を用意できなければ、今いる技能実習生・特定技能人材の継続雇用すらできなくなります。継続雇用できなければ新しい船体の受注をこなす人手を確保できず、人手が足りなければ建造が進まず、最悪の場合、会社そのものが立ち行かなくなります。
あなたの会社だけが弱いわけではありません。人手不足に鋼材高騰が重なり、多くの造船所・舶用工業関連会社が同じ壁にぶつかっています。そこで頼みの綱になるのが、特定技能「造船・舶用工業」分野での外国人材受入れです。ただし赤字決算や債務超過があると、受入れ審査で「改善の見通しに関する評価書面」、いわゆる企業評価書の提出を求められることがあります。
- 鋼材価格高騰で利益が読めず不安な方
- 円安で舶用機器の輸入コストが重い方
- 決算が赤字・債務超過で受入れ審査が心配な方
- 企業評価書を誰に頼めばよいか分からない方
この記事では、鋼材高騰・円安で赤字や債務超過に陥った造船業が、特定技能の受入れ審査を通すために押さえるべき4つの条件を、中小企業診断士の視点から解説します。KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は法人支援150社以上の実績を持つ認定経営革新等支援機関です。
- 鋼材高騰・円安が造船業の決算を圧迫する仕組み
- 債務超過のまま受入れ審査に臨むリスク
- 企業評価書(改善の見通しに関する評価書面)に必要な4つの条件
- 中小企業診断士に依頼する具体的な流れ
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
鋼材高騰・円安が造船業を赤字に追い込む構造

結論から言えば、造船業の赤字・債務超過は、経営努力だけでは避けにくい構造的な要因が重なって起きています。ポイントは大きく4つあります。
| 高騰要因 | 具体的な内容 | 決算への影響 |
|---|---|---|
| 鋼材価格 | 造船用の鋼板・厚板の価格上昇 | 原価率の上昇、粗利益率の低下 |
| 円安 | 輸入エンジン・舶用機器の調達コスト増 | 資材費・設備投資費の増加 |
| 受注後価格確定の商慣行 | 受注時点と資材調達時点の価格差 | 想定外の損失、赤字受注化 |
| 人手不足 | 熟練の溶接工・仕上げ工の採用難 | 外注比率の上昇、工期遅延コスト |
価格転嫁の遅れが状況をさらに悪化させる
日本銀行の企業物価指数でも、鉄鋼製品を含む素材価格の上昇局面が続いてきたことが確認できます。造船業のように受注から竣工まで数年単位を要する業種では、契約時点の船価と、実際に鋼材を調達する時点の価格差が大きくなりやすく、価格転嫁の交渉が追いつかないまま工事を進めざるを得ない場面も出てきます。
取引先との力関係もあり、「値上げ交渉をしたくても言い出しにくい」という声もよく聞かれます。価格転嫁の遅れは、造船業に限らず多くの製造業・建設業に共通する悩みですが、資材費の比率が高い造船業ではその影響がとりわけ大きく現れます。
なぜ利益が残らないのか
造船業では、船価に占める鋼材や舶用機器などの資材費の割合が高いといわれます。しかも一般的な商慣行として、受注してから資材を調達するため、契約時点の見積りと実際の調達コストにずれが生じやすい業種です。
国土交通省の資料でも、鋼材価格の上昇が造船所の収益を圧迫している実態が指摘されています。船価の見直し交渉が追いつかないまま資材費だけが上振れすれば、粗利益がゼロに近づき、最終的に赤字決算へつながります。
放置するとどうなるか
「今期だけの一時的な赤字」と捉えて対策を先送りすると、翌期以降も同じ受注構造が続く限り、赤字が積み重なり債務超過に発展しかねません。
債務超過のまま特定技能や技能実習の受入れ審査を迎えると、出入国在留管理庁や外国人技能実習機構(OTIT)から事業の継続性・安定性を疑問視され、追加書類の提出や審査の長期化を招くことがあります。「決算書が赤字だから受入れは無理」とあきらめる必要はありませんが、何も準備せずに審査へ臨むのはリスクが高い選択です。
鋼材や為替の変動は一企業の努力だけでコントロールしきれません。だからこそ、外部要因を客観的に説明できる資料が受入れ審査では重要になります。
資金繰り・金融機関対応への影響も見過ごせない
赤字や債務超過は、受入れ審査だけの問題ではありません。金融機関との取引においても、決算書の自己資本比率や借入依存度は重要な指標として見られます。鋼材高騰・円安による赤字が続けば、追加融資や借換えの相談自体がしにくくなるという副次的なリスクもあります。
受入れ審査への備えとして企業評価書を整理する過程は、実は金融機関に自社の状況を説明する資料としても役立ちます。「なぜ赤字になったのか」「どう改善していくのか」を数値で語れる会社は、受入れ審査でも、金融機関との対話でも、信頼を得やすくなります。
企業評価書で受入れを実現する4つの条件

結論として、鋼材高騰・円安による赤字・債務超過があっても、特定技能「造船・舶用工業」分野の受入れは実現できます。押さえるべきポイントは次の4つの条件です。
- 現状分析:赤字・債務超過の実態を、決算書と資金繰りの数値で正確に把握する
- 原因分析:鋼材高騰・円安・受注後価格確定の商慣行など、外部要因を客観的に整理する
- 改善計画:3〜5年程度の具体的な改善の見通し(原価管理・価格転嫁・受注構造の見直し等)を数値で示す
- 第三者評価:中小企業診断士など専門資格を持つ第三者による客観的な評価書面(企業評価書)を用意する
4つの条件をもう少し詳しく見る
それぞれの条件を、造船・舶用工業の実務に即して見ていきます。
①現状分析:直近数期分の決算書と資金繰りの状況を並べ、赤字・債務超過に至った経緯を時系列で整理します。自己資本比率や営業利益率の推移を見える化すると、審査側にも社内にも状況が伝わりやすくなります。
②原因分析:鋼材価格・為替・受注後価格確定の商慣行・人手不足による外注費増加など、外部要因と内部要因を切り分けて整理します。「経営努力が足りなかった」のではなく「構造的な要因が重なった」ことを裏付けで示すのがポイントです。
③改善計画:船価交渉の見直し、受注時点での資材価格変動条項の導入、外注比率の適正化など、実務レベルで実行可能な打ち手を数値目標とともに示します。抽象的な「頑張ります」では審査側の納得を得られません。
④第三者評価:①〜③を踏まえ、中小企業診断士が客観的な立場から評価し、企業評価書としてまとめます。自社作成の資料に、専門資格を持つ第三者の評価を組み合わせることで、書面の説得力が高まります。
企業評価書とはどんな書面か
企業評価書は、正式には「改善の見通しについて評価を行った書面」と呼ばれます。OTITへの提出書類では別紙②-1・番号20に位置づけられ、債務超過や赤字決算の企業が、技能実習・特定技能の受入れを続けるために提出する書面です。
作成できるのは中小企業診断士など経営評価の専門資格を持つ第三者に限られます。自社の総務担当者が数値をまとめただけの資料では、客観性の面で審査側の納得を得にくいのが実情です。
造船業の企業評価書サンプル・作成支援では、鋼材高騰・円安という外部要因を、決算数値と結びつけて客観的に説明する書面を、中小企業診断士が伴走しながら作成します。
サンプル・ひな形だけでは通りにくい理由
インターネット上には企業評価書のサンプルやひな形も出回っています。ただし、企業評価書の中身は「現状・原因・改善の見通し」の三段構えで、同じ債務超過でも原因や改善の道筋は会社ごとに異なります。ひな形の文言をそのまま流用しても、自社の実態に合った根拠にならない点には注意が必要です。
技能実習と特定技能、どちらで受入れるか
造船・舶用工業分野では、技能実習と特定技能のどちらでも外国人材の受入れが可能です。技能実習は人材育成を目的とする制度、特定技能は即戦力人材の受入れを目的とする在留資格という位置づけの違いがあります。
いずれの制度でも、赤字・債務超過がある場合は事業の継続性・安定性を説明する資料が求められる点は共通します。どちらの制度を選ぶ場合でも、企業評価書の考え方は土台として押さえておく必要があります。
2027年施行予定の育成就労制度も見据えて備える
技能実習制度に代わる育成就労制度は、2027年4月の施行が予定されています。制度が変わっても、赤字・債務超過の企業に対して事業の継続性・安定性を確認する視点そのものがなくなるとは考えにくく、財務状況を客観的に説明する準備の重要性は今後も続くと見られます。
早い段階で企業評価書の作成プロセスに慣れておけば、育成就労制度への移行期であっても、慌てずに対応できます。今回の受入れ審査への対応は、将来の制度変更に備える練習でもあると捉えると、投資対効果は決して小さくありません。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは決算の状況をお聞かせください。
企業評価書を整えた先に手に入る未来

企業評価書を整え、受入れ審査を安心して迎えられる体制ができると、次の3つの軸で変化が生まれます。
人材の軸
溶接・仕上げ・機械加工・電気機器組立てなど、造船・舶用工業分野で不足しがちな技能人材を、特定技能の在留資格で確保できます。熟練工の採用難による外注比率の上昇にも歯止めがかかり、社内で工程を完結できる範囲が広がります。
時間の軸
受入れ準備から審査までの流れを事前に把握し、計画的に進められるようになります。決算が赤字だからと直前で慌てて資料を集める状況を避けられ、受入れの予定時期から逆算して社内の準備を進められます。
関係性の軸
客観的な企業評価書を用意できる会社として、監理団体や登録支援機関、取引先、金融機関からの信頼も高まります。「鋼材高騰・円安で苦しいのはどこも同じ」という前提のうえで、先に備えた会社から、外国人材の受入れという選択肢を手にしていきます。
3つの軸は互いに独立していません。人材が確保できれば工期が安定し、時間の余裕が生まれ、それが取引先・金融機関からの信頼につながるという好循環が生まれます。鋼材高騰・円安という逆風の中でも、この好循環を共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、KICKコンサルティングの支援

企業評価書の作成には、財務分析の専門性と、審査側が納得する書き方の両方が求められます。総務担当者や経理担当者が本業の合間に自己流で作成しようとすると、時間がかかるうえ、内容の客観性でつまずくケースが少なくありません。
だからこそ、中小企業診断士に企業評価書の作成を任せる経営者が増えています。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)のサービス内容
代表の松本昌史はMBA(経営管理修士)・中小企業診断士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)であり、金融検定協会「中小企業事業再生マネージャー」の認定も受けています。法人支援実績は150社以上、認定経営革新等支援機関としての登録もあります。
- 決算書・資金繰り表をもとにした現状分析
- 鋼材高騰・円安など外部要因を踏まえた原因整理
- 3〜5年の改善計画の策定支援
- 中小企業診断士名義での企業評価書(改善の見通しに関する評価書面)の作成
「申請サポート」ではなく、決算の数字を見える化し、利益が残る構造へ転換するところまでを含めた伴走支援です。企業評価書の作成だけで終わらせず、鋼材高騰・円安を踏まえた原価管理や価格転嫁の相談まで対応します。
支援の流れ
- 無料相談:決算状況・受入れの目的・希望時期をヒアリング
- 現状分析:決算書・資金繰り資料をもとに赤字・債務超過の実態を数値化
- 原因分析・改善計画の策定:鋼材高騰・円安等の外部要因を整理し、3〜5年の改善計画を作成
- 企業評価書の作成:中小企業診断士名義で評価書面を仕上げ、受入れ手続きに合わせて提出
管理会計を活用した伴走支援という考え方のもと、企業評価書の作成後も、価格転嫁や原価管理といった「利益が残る構造」への転換まで並走します。「忙しいのに儲からない」状態のまま受入れだけを進めても、根本的な財務体質は変わりません。企業評価書の作成をきっかけに、決算の構造そのものを見直すことが、中長期的には最も効果的な対策になります。
自社だけで進める場合のリスク
総務担当者や経営者自身が本業と並行して企業評価書を作成しようとすると、次のような負担が生じがちです。
- 決算分析の専門知識がなく、原因分析が主観的な記述にとどまる
- 改善計画の数値に根拠が乏しく、審査側から追加資料を求められる
- 本業の合間に作成するため、受入れ予定時期までに間に合わない
専門性の壁・時間コスト・判断ミスのリスクを考えると、早い段階で中小企業診断士に相談したほうが、結果的に受入れまでの時間も短縮できるケースが多くあります。とりわけ造船業は決算周期と受注サイクルが長いため、審査の直前になってから慌てて動き出すと、必要な決算期をまたいでしまい、間に合わなくなることもあります。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。1社ごとに時間をかけるため、月あたりのご相談数には限りがあります。
よくある質問

Q. 企業評価書とはどんな書面ですか
A. 正式には「改善の見通しについて評価を行った書面」といい、債務超過や赤字決算の企業が技能実習・特定技能の受入れを続けるために提出する書面です。OTIT提出書類では別紙②-1・番号20に位置づけられます。
Q. 造船業は特定技能の対象になりますか
A. 造船・舶用工業分野は特定技能の対象分野です。溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立てなど複数の業務区分があり、技能評価試験は日本海事協会(ClassNK)が実施しています。
Q. 企業評価書は税理士に依頼できますか
A. 企業評価書(改善の見通しに関する評価書面)を作成できるのは中小企業診断士や公認会計士などの経営評価の専門資格を持つ第三者に限られ、税理士は作成できません。誰に頼めばよいか迷う場合は中小企業診断士へ相談することをおすすめします。
Q. 赤字決算でも受入れは可能ですか
A. 赤字決算だけで一律に受入れが認められないわけではありません。ただし審査側に事業の継続性・安定性を示す必要があり、企業評価書などの客観的な資料が求められる場合があります。
Q. 企業評価書のサンプルをそのまま使ってもよいですか
A. サンプルは書式のイメージをつかむ参考にはなりますが、改善の見通しの根拠は会社ごとに異なるため、そのまま流用すると審査側の納得を得にくくなります。自社の決算数値に基づいて個別に作成する必要があります。
Q. 改善計画の期間はどれくらいが目安ですか
A. 一般的には3〜5年程度の計画期間で作成されることが多く、5年を超える長期の計画は審査側から懐疑的に見られる場合があるため、過大な計画にならないよう注意が必要です。
Q. 円安による資材高騰は理由書にどう書けばよいですか
A. 円安が輸入エンジンや舶用機器の調達コストに与えた影響を、決算数値(原価率の推移など)と結びつけて説明することがポイントです。感覚的な説明ではなく、数値の裏付けがある記述が求められます。
Q. 育成就労制度が始まると企業評価書は不要になりますか
A. 育成就労制度は2027年4月に施行が予定されていますが、財務状況を客観的に説明する重要性は変わらないと考えられます。制度移行後も、債務超過や赤字がある企業では同様の書面の準備が必要になる可能性があります。
Q. 中小企業診断士に依頼する場合、何を準備すればよいですか
A. 直近数期分の決算書、資金繰りの状況が分かる資料、赤字・債務超過に至った経緯のメモなどがあると、現状分析と原因整理がスムーズに進みます。
Q. 舶用機器メーカーやエンジン製造工場でも企業評価書は必要ですか
A. 造船・舶用工業分野は、造船所だけでなく船舶用エンジン・機器製造工場や艤装工事会社も対象に含まれます。赤字・債務超過があれば、企業規模や業務区分にかかわらず、同様に企業評価書の準備を検討する必要があります。
Q. 企業評価書は一度作れば毎年使い回せますか
A. 企業評価書は、作成時点の決算数値と改善の見通しをもとに評価した書面です。決算状況や改善の進捗は年ごとに変わるため、定期報告や更新のタイミングでは、最新の決算数値に基づいた見直しが必要になります。
まとめ
「鋼材が上がったから」「円安だから」という説明だけでは、受入れ審査の担当者には伝わりません。大切なのは、外部要因を決算数値と結びつけ、改善の見通しとして言語化することです。それができれば、赤字や債務超過があっても、特定技能「造船・舶用工業」分野の受入れという選択肢は十分に現実的です。
あらためて整理すると、押さえるべきは次の4つの条件でした。
- ①現状分析:決算書・資金繰りの数値で赤字・債務超過の実態を把握する
- ②原因分析:鋼材高騰・円安・受注後価格確定の商慣行を客観的に整理する
- ③改善計画:3〜5年の具体的な見通しを数値で示す
- ④第三者評価:中小企業診断士による企業評価書で客観性を担保する
この4つを自社だけでゼロから整えるのは簡単ではありません。専門性の壁や時間コストを考えると、早い段階で中小企業診断士に相談したほうが、受入れまでの時間も、社内の負担も小さくできます。鋼材高騰・円安という外部環境は今後も変動が続くと見られますが、原因を客観的に説明できる体制を一度整えておけば、次に決算が悪化した局面でも慌てずに対応できます。
「うちの決算でも大丈夫だろうか」と不安に感じている段階でも、まずは現状をお聞かせください。鋼材高騰・円安という逆風の中でも、外国人材の受入れという選択肢を諦めずに済む道筋を、中小企業診断士と一緒に描いていきましょう。
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