
子どもが2人、3人といる会社ほど、「誰を後継者にするか」を決められないまま時間だけが過ぎていく——そんな状況ではないでしょうか。
長男だから、というだけで継がせていいのか。それとも、経営の適性がありそうな子を選ぶべきか。迷っているうちに、後継者本人にも、他の子どもたちにも本音を聞けないまま月日が経っていく社長は少なくありません。
事業承継の後継者選びは、血縁の順番だけで決めるものではありません。先送りしたまま社長の高齢化が進むと、株式の分散や相続時の対立につながるおそれがあります。一方で、判断の軸さえ整理できれば、後継者本人も、継がない子どもたちも納得できる形に近づけます。
この記事では、子どもが複数いる中小企業の事業承継を想定し、親族内承継で後継者を一人に決めるための基準と進め方を整理します。執筆は、中小企業診断士・事業承継士として法人支援150社以上に関わってきた立場から行っています。
後継者を誰にするかは、経営の将来だけでなく、家族の関係にも長く影響する決断です。感覚や順番だけで決めてしまう前に、判断の軸を持って向き合ってみてください。
- 子どもが複数いて後継者を決められない社長
- 長男というだけで継がせていいか迷う経営者
- 後継者以外の子への配慮も考えたい方
- 相続でもめる前に手を打ちたい後継者世代
- 後継者を一人に決める4つの基準
- 選定から実行までの進め方
- 後継者以外の子への配慮の設計
- 事業承継士に相談する際の視点
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。まずは現状をお聞かせください。
\無料相談(30秒で予約)/
子が複数いる会社で事業承継の後継者選びが進まない理由

事業承継の相談を受けていると、子どもが複数いる社長ほど後継者選びが止まっていると感じます。理由ははっきりしています。
誰か一人を選ぶことが、他の子どもを選ばないことと同じ意味になってしまうからです。
「平等に」という思いが決断を止める
子どもたちを平等に扱いたいという親心は自然な感情です。しかし、会社の経営権まで平等に分けようとすると、株式が複数の子どもに分散し、誰も過半数を持たない状態になりかねません。
意思決定のたびに全員の合意が必要になれば、取引先や金融機関との関係にも影響が及びます。「平等」を財産の話と経営権の話で切り分けて考えることが、最初の一歩になります。
本音を聞けないまま先送りされる
「継ぎたいか」「継がせたいか」は、家族の間でこそ切り出しにくい話題です。社長は子どもの負担を気にし、子どもは親の気持ちを気にして、結局どちらも本音を言い出せません。
先送りが続くほど、後継者候補の育成にかけられる時間は短くなります。経営を学ぶ、社内外の信頼を得る、株式を計画的に移す——どれも数年単位の準備が必要です。
経営者保証も一緒に引き継がれる
後継者を決めることは、株式や役職を引き継ぐことだけを意味しません。多くの中小企業では、社長が金融機関の借入に個人保証を差し入れています。後継者が決まれば、この経営者保証の引継ぎも同時に検討する課題になります。
「継がせたい」という気持ちだけで決めてしまうと、後継者候補が保証のリスクを十分に理解しないまま話が進み、就任の直前になって迷いが生じることもあります。
「まだ早い」が一番選択肢の多い時期
多くの社長は「まだ元気だから、後継者の話は先でいい」と考えます。ところが、選択肢が一番多いのは、実はこの「まだ早い」と感じている今この時期です。
候補となる子どもたちが若く、キャリアの選択肢を残したまま話し合いを始められる時期だからこそ、無理のない育成計画を立てられます。体調や業績が急変してから動き出すと、選べる手段は一気に狭くなります。
今すぐ結論を出す必要はありません。まずは「考え始める」ことが、後継者選びの実質的な第一歩です。
放置すると起きること
後継者が決まらないまま社長の判断能力や健康に問題が生じると、経営の意思決定が止まります。相続が発生すれば、遺産分割協議が整うまで自社株の議決権行使が難しくなる場面もあります。
結果として、後継者候補同士の関係がこじれ、円満だった家族が対立するという事態にもつながりかねません。事業承継は、会社の問題であると同時に家族の問題でもあります。両方の視点を持って向き合う必要があります。
だからこそ、後継者を「誰にするか」を、感情論ではなく基準に沿って整理することが必要です。次の章で、その基準を具体的に見ていきます。
親族内承継で後継者を一人に決める4つの基準と進め方

親族内承継で後継者を一人に決めるときは、次の4つの基準で総合的に判断します。順番に見ていきます。
基準1|経営を担う意欲と覚悟があるか
最初に確認すべきは、本人が経営者になりたいと本当に思っているかです。周囲の期待に応えるためだけに継ごうとしていないかは、本人と直接話さなければ分かりません。
個人保証を引き受ける覚悟、失敗の責任を自分で負う覚悟まで含めて、本人の意思を確認します。子どもが複数いる場合は、一人だけでなく全員に同じ問いを投げかけることが出発点になります。
「継ぎたいか」を聞かずに社長が一人で決めてしまうと、後になって「本当は聞いてほしかった」という気持ちのすれ違いが残ります。まずは対話の機会をつくることから始めましょう。日常の会話の延長で少しずつ聞いていくだけでも、状況は変わり始めます。
基準2|経営者としての適性
実務ができることと、経営を担えることは別の力です。数字を読んで判断する力、社員をまとめる力、変化に対応する力があるかを見ます。
今の実力だけでなく、周囲の支えを受けながら数年で育つ伸びしろがあるかという視点も欠かせません。現時点の完成度だけで判断すると、本来ふさわしい候補を見落とすことがあります。
基準3|社内外からの信頼
社員、取引先、金融機関が後継者候補をどう見ているかも重要な基準です。社長には見えていない評価が、現場や取引先には蓄積されています。
役員や古参社員へのヒアリングを通じて、社内での信頼度を客観的に把握しておくと、就任後の摩擦を減らせます。取引先や金融機関の担当者に、後継者候補を早い段階から紹介しておくことも、信頼を積み重ねる一つの方法です。
基準4|後継者以外の子への配慮ができているか
親族内承継に固有の基準がこれです。後継者を一人に決めることは、他の子どもへの説明と配慮をセットで考えることを意味します。
自社株を後継者に集中させる代わりに、他の子どもには相応の財産を残す代償金の準備や、遺留分に配慮した設計を検討します。全員が納得できる形を、後継者が決まる前から並行して考え始めることが、後の対立を防ぎます。
会社の財産と個人の財産、経営権と相続財産を分けて整理すると、家族それぞれが何を受け取るのかが具体的に見えてきます。
この4つ目の基準を後回しにすると、後継者本人が「兄弟姉妹に申し訳ない」という気持ちを抱えたまま経営を始めることになります。
4つの基準は、どれか一つでは決められない
意欲があっても適性が伴わない、適性はあるが本人に意欲がない、信頼はあるが他の子への配慮が置き去りになっている——こうした組み合わせは珍しくありません。
4つの基準を一枚の表やメモに書き出し、後継者候補ごとに今どこが強く、どこが弱いかを可視化すると、感覚的な判断から一歩前に進めます。強い部分は伸ばし、弱い部分は育成や周囲の支援で補うという発想で考えます。
候補が複数いる場合は、同じ物差しで比較することも大切です。一人ずつ別の基準で評価してしまうと、後になって「なぜあの子が選ばれたのか」という疑問が残ってしまいます。
対話の始め方
いきなり「後継者になってほしい」と切り出すと、相手は身構えてしまいます。まずは「会社の将来についてどう考えているか」を聞くところから始めると、本音を引き出しやすくなります。
複数の子どもがいる場合は、一人ずつ個別に話す機会と、家族全員で共有する機会の両方を用意すると、後から「聞いていなかった」という不満が出にくくなります。会食の場など、あらたまりすぎない雰囲気を選ぶ社長も多くいます。
進め方と、成果物の構成イメージ
4つの基準を踏まえた後継者選びは、次の3段階で進めます。一般的な進め方の項目を示すので、自社に置き換えて確認してみてください。
| 段階 | 主な内容 |
|---|---|
| ① 現状把握 | 経営者自身の意向整理、子ども一人ひとりへの意向確認、自社株の保有状況と分散の有無の棚卸し |
| ② 対策設計 | 4つの基準に沿った後継者候補の評価、株式移転の方法の検討、後継者以外の子への配慮(代償財産・遺留分対応)の設計 |
| ③ 実行・引継ぎ | 後継者への権限移譲の計画化、株式移転手続き、税理士・司法書士など専門家との連携 |
3つの段階はそれぞれ独立しているわけではなく、行きつ戻りつしながら進むこともあります。大切なのは、順序を意識して一つずつ整理していくことです。
この進め方を自社だけで組み立てるのは簡単ではありません。詳しくは次のページでまとめています。
中小企業診断士 · 事業承継士 · 認定経営革新等支援機関 事業承継を何から始めるべきか、 一緒に整理しませんか。 株式・保険・後継者育成がバラバラのまま、時間だけが過ぎていませんか。 KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、経営全体を見ながら事業承継を一本化して伴走する専門...
成果物として何が出来上がるのかが見えると、進め方の解像度が上がります。
\無料相談(30秒で予約)/
後継者選びをやり切った先に手に入る未来

後継者選びに正面から向き合うと、会社にも家族にも変化が生まれます。3つの軸で見ていきます。どれも、後継者選びを先送りしている間は手に入らないものです。
後継者が自信を持って経営を引き継げる
基準に沿って選ばれた後継者は、「なぜ自分が選ばれたのか」を自分の言葉で説明できます。社員や取引先への説明にも迷いがなくなります。
就任してから慌てて根回しをするのではなく、選ばれた理由を胸に、最初から自分の言葉で経営方針を語れる状態で引き継ぎをスタートできます。
継がない子どもたちも納得して見送れる
配慮の設計が先に済んでいれば、継がない子どもたちも「自分は蔑ろにされていない」と感じられます。経営権は一人に、財産の配慮は全員にという整理が、家族の関係を守ります。
正月やお盆に家族が集まったときに、事業承継の話題を避けなくてよくなることも、見落とされがちですが大きな変化です。
会社の意思決定が滞らず、信頼が続く
後継者が明確であれば、金融機関も取引先も安心して長期の取引を続けられます。社長の高齢化や急な不在があっても、経営が止まりません。
融資の継続や新規の取引開始を検討する際、後継者の有無と育成状況を確認する金融機関は少なくありません。後継者が明確な会社は、それだけで交渉のテーブルに立ちやすくなります。
後継者選びに納得できた先にある、円満な事業承継とご家族の安心を、共に手に入れましょう。
自社だけで後継者を選ぶ限界と、事業承継士による伴走支援

後継者選びを社長一人、あるいは家族の中だけで進めようとすると、限界にぶつかることがあります。ここでは代表的な3つの限界を紹介します。
身内だからこそ話しにくいことがある
「経営者としての適性がない」とは、家族には言いにくい言葉です。第三者が入ることで、言いにくいことを客観的な基準として伝えられるようになります。
子ども同士の話し合いも、当事者だけで進めようとすると感情がぶつかりやすくなります。間に第三者を置くことで、基準に沿った冷静な話し合いに近づけます。
複数の専門家の話がかみ合わない
顧問税理士は税務の視点、金融機関は資金繰りの視点、それぞれの専門家が自分の領域だけを見て意見を述べます。全体を見渡して整理する役割が不在だと、社長が板挟みになりがちです。
評価の物差しを自社だけで作るのが難しい
「経営者としての適性」を測る物差しは、業種や会社の規模によって重みづけが変わります。他社の事例を知らないまま自己流の基準を作ると、後になって「これでよかったのか」という迷いが残ります。
法人支援150社以上で見てきた後継者選びの共通点を踏まえて基準を組み立てることで、自社だけでは気づきにくい抜け漏れを防げます。
税理士・司法書士との役割分担
株式の移転にともなう税務の個別判断や申告は税理士の領域、登記の手続きは司法書士の領域です。KICKがこれらの手続きを代わって行うわけではありません。
KICKの立ち位置は、中小企業診断士・事業承継士(認定経営革新等支援機関)として、後継者選びから株式移転、専門家との連携までの全体の設計と伴走を担うことです。税理士や司法書士を否定するのではなく、それぞれの専門家の話がかみ合うように全体をつなぎます。
現状把握のヒアリングから、後継者候補の評価、他の子どもへの配慮の設計、専門家との連携まで、一つひとつの工程に伴走します。法人支援150社以上で培った視点をもとに、自社に合った進め方を一緒に組み立てます。
最初の一歩は、複雑な手続きではありません。今の状況を、社長の言葉でそのまま話していただくところから始まります。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
\無料相談(30秒で予約)/
事業承継の後継者選びによくある質問

Q. 長男以外を後継者にしてもよいのでしょうか。
A. 問題ありません。事業承継の後継者は、出生順ではなく経営を担う意欲と適性で選ぶものです。長男だからという理由だけで決めると、後になって「本当は継ぎたくなかった」という状況が起きやすくなります。長女や次男・三男が経営に強い意欲を持っているケースは珍しくありません。
Q. 子どもたちに株式を平等に分けてはいけませんか。
A. 財産としての公平さと、経営権の所在は分けて考える必要があります。株式を均等に分けると、意思決定のたびに全員の合意が必要になりかねません。経営権は後継者に集中させ、他の子には別の形で配慮する設計が一般的です。
Q. 後継者を決める時期の目安はありますか。
A. 育成には数年単位の時間がかかるため、早めの着手が望まれます。社長が60歳前後になった時点で、後継者候補との対話を始めている会社が少なくありません。準備が遅れるほど、選べる選択肢は狭くなっていきます。
Q. 後継者以外の子には、具体的にどう配慮すればよいですか。
A. 代償金として現金や他の資産を用意する方法や、遺留分に配慮した合意を事前に整える民法上の制度を活用する方法があります。どの方法が合うかは家族構成や資産状況によって異なるため、事業承継士や税理士と一緒に検討することをおすすめします。
Q. 子どもの中に適任者がいない場合はどうすればよいですか。
A. 親族内にこだわらず、役員・従業員への承継や、社外への譲渡という選択肢もあります。子どもへの承継を前提に検討を始めても、途中で選択肢を広げることは十分可能です。選択肢を早く把握しておくほど、判断に余裕が生まれます。
Q. 後継者候補に経営の適性が見えない場合はどうしますか。
A. 一定期間、経営の一部を任せて実際の判断力を確認する方法があります。適性を見極めないまま就任させると、就任後に苦労するのは後継者本人と社員です。段階的な権限移譲で見極める時間を確保しましょう。
Q. 自社株の評価額が高い場合、後継者への移転はどう考えればよいですか。
A. まずは自社株の評価の考え方を理解し、移転の方法と時期を計画的に検討することが出発点です。具体的な引き下げ手法や税負担の試算は、税理士による個別の判断が必要な領域です。
Q. 法人保険は後継者選びにどう関係しますか。
A. 後継者以外の子への代償金や、相続にともなう資金の準備手段の一つとして法人保険が使われることがあります。保障の内容や契約の目的が事業承継の設計と合っているかを点検する視点で活用を検討します。断定的な返戻率や特定の商品を前提にした話ではなく、目的に合っているかどうかを確認する視点です。
Q. 後継者候補の子どもが遠方に住んでいる場合はどうすればよいですか。
A. 距離があっても、対話の頻度を意識的に確保すれば検討は進められます。帰省のタイミングに合わせて話す機会を作る、オンラインで定期的に近況を共有するなど、方法はいくつもあります。大切なのは距離ではなく、話し合いを先送りしないことです。
Q. 後継者を決めたことは、いつ・どう周囲に伝えればよいですか。
A. まず家族の中で合意を固め、そのうえで役員や古参社員、主要な取引先や金融機関へ段階的に伝えるのが一般的です。一度にすべてを公表するより、関係の近い順に丁寧に伝えるほうが、社内外の理解を得やすくなります。
Q. 相談すると、しつこく営業されませんか。
A. ご心配は不要です。無料相談は現状を整理するための場であり、その場での契約や強引な勧誘は行いません。話を聞くだけでも問題ありません。
まとめ
子どもが複数いる会社の事業承継では、後継者を一人に決めることと、後継者以外の子への配慮を設計することを、同時に進める必要があります。
意欲と覚悟、経営者としての適性、社内外からの信頼、そして他の子への配慮という4つの基準に沿って考えれば、感情論だけで止まっていた判断を前に進められます。
現状把握、対策設計、実行・引継ぎという3段階で進めれば、何から手をつければよいか分からない状態からも、一歩ずつ具体的に前進できます。
後継者選びは、会社の将来だけでなく、家族の将来を左右する決断です。一人で抱え込まず、専門家と一緒に整理することで、納得のいく形に近づけます。
「まだ早い」と感じている今こそ、実は選択肢が一番多い時期です。子どもたちと話す機会を、今日から少しずつ作ってみてください。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
\無料相談(30秒で予約)/
関連記事
中小企業診断士 · 事業承継士 · 認定経営革新等支援機関 事業承継を何から始めるべきか、 一緒に整理しませんか。 株式・保険・後継者育成がバラバラのまま、時間だけが過ぎていませんか。 KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、経営全体を見ながら事業承継を一本化して伴走する専門...
事業承継専属の保険代理店という考え方 中小企業の事業承継において、法人保険は長年にわたり「とりあえず加入してきたもの」になりがちです。創業期、成長期、拡大期と、その時々の経営判断の積み重ねで保険は増え、気づけば保険料負担が重くなっているケースも少なくありません。 一方で、「保険をやめ...







コメント