
「原材料費だけがどんどん上がっていくのに、販売価格に転嫁しきれない」「決算書を見るたびに、債務超過の数字から目をそらしたくなる」。食品製造業の経営者から、こうした声を聞く機会が増えました。帝国データバンクの調査によれば、2026年の飲食料品値上げ品目数は1〜11月判明分だけで1万4,902品目に達し、調査を開始した2022年以降5年連続で年間1万品目を超える見通しです。日本銀行の企業物価指数でも、2025年は前年比3.2%上昇と4年連続で過去最高を更新し、農産物の伸び率は統計を遡れる61年以降で過去最大を記録しました。小麦・食用油・調味料原料の仕入れ値は、現場の努力だけで吸収できる水準をとうに超えています。
それでも製造ラインを止めるわけにはいきません。人手不足が深刻な食品製造業では、特定技能や外国人技能実習(育成就労への移行を控えた制度)で働く外国人材が、もはやライン稼働の生命線になっています。ところが、いざ在留資格の更新や新規受け入れの申請に進もうとすると、決算書の「債務超過」という一文が重くのしかかります。審査する側から見れば、債務超過は「この会社は大丈夫か」という疑問符そのものだからです。
加工食品・調味料・酒類飲料といった品目は、原材料の大半を輸入や国際相場に依存しており、為替変動と天候不順の影響を直接受けます。仕入れ担当者が毎月頭を悩ませているのは、単なる「値上げ交渉」ではなく、「いつ、どこまで、どうやって価格に転嫁するか」という経営判断そのものです。しかも判断を誤れば、取引先との関係が壊れかねません。だからこそ、多くの経営者が「今は耐えるしかない」と、根本的な財務改善を先送りにしてしまいます。
ご安心ください。原材料高騰による一時的な債務超過に苦しんでいるのは、あなたの会社だけではありません。共通の敵は、経営者個人の力不足ではなく、「原材料高騰という外部環境」と「それを放置したまま迎える審査期限」です。この記事では、債務超過の食品製造業が外国人材の受け入れを止めないために何を準備すべきかを、中小企業診断士の実務視点から解説します。
ご相談いただいても、無理な売り込みは一切ありません。初回相談は無料です。決算書の現状確認と制度適用の可否確認まで、費用は一切かかりません。お断りいただいて構いません。
結論 債務超過でも「改善見通しに関する評価書面」があれば道は開ける

結論から言えば、債務超過そのものが在留資格審査の即NGを意味するわけではありません。外国人技能実習機構(OTIT)が定める提出書類の中には、別紙②-1・番号20として「改善見通しに関する評価書面」という項目があり、債務超過であっても、改善の道筋を客観的に示す書面を用意すれば審査に臨める仕組みになっています。ただし、この書面は誰でも作成できるわけではなく、中小企業診断士または公認会計士に作成が限定されています。顧問税理士では作成できません。この記事で分かることは、次の5点です。
この記事で分かること
- 食品製造業が原価高騰でなぜ自社だけでは立て直せないのか、構造的な理由
- 債務超過を放置した場合に半年〜1年後に起きる具体的なリスク
- 「改善見通しに関する評価書面(企業評価書)」に盛り込むべき改善計画5選
- 管理会計を使った収支計画の作り方の基本
- 中小企業診断士に依頼するメリットと、自社対応の限界
なぜ自社だけでは立て直せないのか 原価高騰が財務諸表を蝕む構造

多くの食品製造業では、原価管理が「昨年の仕入れ値に多少色を付ける」程度の感覚で行われがちです。しかし小麦・食用油・調味料原料のように、国際相場と為替の影響を強く受ける品目は、年に何度も仕入れ値が変動します。価格改定のタイミングが半年遅れるだけで、粗利益率は数ポイント単位で削られていきます。問題の本質は、原材料高騰そのものよりも、「価格転嫁の遅れ」と「原価構造の見える化不足」が同時に起きていることにあります。
| 表面的な症状 | 本質的な原因 |
|---|---|
| 粗利益率が毎期じわじわ下がる | 原材料ごとの原価変動を月次で追えていない |
| 値上げ交渉が後手に回る | 価格転嫁の根拠となる数値資料を持たずに交渉している |
| 決算書が債務超過に転落する | 単年の赤字補填が繰り返され、資本が毀損している |
| 在留資格の更新に不安を感じる | 改善計画を客観的な書面として示せていない |
日本銀行の企業物価指数でも、2026年3月時点で飲食料品が前年同月比4.3%上昇、農林水産物にいたっては18.9%上昇しています。この水準の変動を、経理担当者一人の感覚と表計算ソフトだけで追い切るのは、率直に言って現実的ではありません。原価管理の仕組みと、審査書類としての説明力は、まったく別のスキルセットだからです。
多くの食品製造業の決算書を見てきましたが、債務超過に陥る過程には共通のパターンがあります。単年度の赤字であれば自己資本の範囲で吸収できますが、原材料高騰が2期、3期と続くと、繰越損失が積み上がり、ついには自己資本を食いつぶします。この間、経営者は日々の資金繰りや現場対応に追われ、「なぜ利益が残らないのか」を数値で分解する時間を確保できていないケースがほとんどです。売上は前年並みでも、原価率が数ポイント悪化しただけで、利益は簡単に消えてしまいます。
このまま放置すると何が起きるか 半年後のライン停止という現実

債務超過を「決算書の数字の問題」として先送りにしてしまうと、影響は財務の外側にまで広がります。まず、特定技能や技能実習の在留資格更新・新規受け入れの審査で、追加資料の提出を求められたり、審査期間が長引いたりする可能性が高まります。人手が薄い状態で審査が長期化すれば、その間の増員はできません。製造ラインの一部が回らなくなれば、既存の受注をこなせず、取引先からの信頼低下という新たな問題が発生します。
さらに、育成就労制度は2027年4月の施行が予定されており、これまでの技能実習制度からの移行対応も同時並行で求められます。制度移行の混乱期に、財務資料の不備まで重なれば、対応の後手が二重・三重になります。資金繰りの面でも、債務超過を放置すれば金融機関からの見方が厳しくなり、次の設備投資や運転資金の調達で不利な条件を提示される可能性も否定できません。「今期は乗り切れたから来期考えよう」という先送りの積み重ねが、半年後、1年後の選択肢を確実に狭めていきます。
もうひとつ見落とされがちなのが、社員の士気への影響です。ライン稼働が不安定になれば、既存の外国人材にとっても「この会社で長く働けるのか」という不安材料になります。定着してほしい人材ほど、会社の先行きに敏感です。財務の立て直しは、単に決算書の数字を整えるためではなく、現場で働く一人ひとりが安心して働き続けられる土台をつくるための取り組みでもあります。
解決策 改善見通しに関する評価書面に盛り込む改善計画5選

「改善見通しに関する評価書面」で審査官に伝えるべきは、単なる決意表明ではありません。数値と根拠に裏打ちされた、実行可能な改善計画です。中小企業診断士としての支援経験から、食品製造業における改善計画は次の5点で構成するのが実務上有効です。
1. 原材料価格推移の客観的な提示
小麦・食用油などの主要原材料について、日本銀行の企業物価指数など公的統計を根拠に、自社が置かれている外部環境の厳しさを客観的に示します。「経営努力が足りない」のではなく「業界全体が直面している構造変化」であることを、まず正確に伝える工程です。
2. 価格交渉の進捗状況の記載
取引先との価格転嫁交渉が、どこまで進んでいるかを具体的に記載します。すでに合意した値上げ幅、交渉中の案件、今後のスケジュールを時系列で示すことで、「値上げは検討中」ではなく「実行段階にある」ことを伝えられます。
3. 歩留まり改善・廃棄ロス削減の数値目標
原価は仕入れ値だけで決まりません。歩留まり率を1ポイント改善するだけでも、原材料費全体に与える影響は小さくありません。現場の生産性改善を定量目標として盛り込むことで、経営者の主観ではなく、実務データに基づく計画であることを示します。
4. 外国人材の定着によるライン稼働率の向上
ここが多くの食品製造業で見落とされがちな視点です。特定技能・育成就労の人材が定着し、ライン稼働率が安定すること自体が、収益改善の重要な要素になります。人材確保は「コスト」ではなく「収益改善の前提条件」として位置づけて記載します。
5. 専門家による蓋然性の高い収支計画の策定
最後に欠かせないのが、第三者である中小企業診断士による収支計画の裏付けです。損益分岐点分析やパレート分析といった管理会計の手法を用いて、どの製品群・取引先が利益を生み、どこにテコ入れが必要かを可視化します。経営者の実感だけでなく、客観的な数値で「この会社は立ち直れる」という蓋然性を示せるかどうかが、審査官の心証を大きく左右します。
損益分岐点分析では、固定費と変動費を切り分けたうえで「あと何個売れば黒字化するか」「原価率が1ポイント改善すると利益はいくら増えるか」を数値で示します。パレート分析では、取引先や製品群を売上・利益貢献度の高い順に並べ、限られた経営資源をどこに集中すべきかを明らかにします。感覚ではなく数値で優先順位を決めることが、改善計画の実行力を左右します。この2つの分析を組み合わせることで、「売上を増やす」だけでなく「利益が残る構造に変える」という、本質的な改善計画に仕上がります。
なお、財務体質そのものを底上げしたい場合は、食品製造業の企業評価書作成支援のように、財務分析と書面作成を一体で進める専門家の伴走支援を検討する価値があります。
ご相談いただいても、無理な売り込みは一切ありません。現状の決算書をお持ちいただければ、その場で改善計画の方向性をお伝えします。契約の義務はありません。
改善計画が実行された先にある、具体的な未来

改善見通しに関する評価書面は、審査を通すための書類にとどまりません。そこに書かれた改善計画を実際に実行することで、会社の姿そのものが変わっていきます。
目に見える変化
製造ラインが安定して稼働し、外国人材が定着することで、現場の雰囲気が落ち着きます。歩留まり改善の数値目標を追う習慣がつき、社員が「なんとなく」ではなく「数字で」現場を語るようになります。朝礼で共有される数字が、叱責のためではなく、前進を確認するためのものに変わっていきます。
通帳と時間の変化
価格転嫁が計画的に進み、粗利益率が回復してくると、月末の資金繰りに追われる感覚が薄れていきます。金融機関への説明も、感覚論ではなく数値計画に基づいてできるようになり、銀行対応にかかる精神的な負担が軽くなります。経営者自身が、休日にまで資金繰りのことを考え続ける状態から抜け出せます。土曜日の朝、通帳を確認せずに家族と過ごせる時間が戻ってきます。
背中の変化
数値に基づく経営改善を実行し続ける経営者の姿は、後継者や幹部社員にとって何よりの教材になります。取引先や金融機関からの評価も変わり、「原材料高騰でも立て直した会社」という信頼が積み上がっていきます。後継者がいずれ会社を引き継ぐときも、感覚ではなく仕組みで経営を語れる土台があれば、引き継ぎそのものの不安が大きく減ります。利益が残る構造と、周囲からの信頼を、共に手に入れましょう。
なぜ自社対応には限界があるのか

ここまで読んで、「自社の経理担当と顧問税理士で何とかできないか」と考える経営者もいるでしょう。しかし、改善見通しに関する評価書面には専門性の壁があります。まず、この書面を作成できるのは中小企業診断士または公認会計士に限られており、顧問税理士では対応できません。次に、OTITが求める審査基準を踏まえた書面構成には、外国人材受け入れ制度に関する専門知識が必要です。
さらに、社内の人間が自社の財務を分析すると、どうしても「これくらいなら大丈夫だろう」という希望的観測が入り込みやすくなります。審査官が求めているのは、経営者の願望ではなく、第三者の目で検証された客観的な計画です。本業である製造業務と並行して、慣れない書面作成に時間を割くコストも無視できません。だからこそ、外部の専門家に任せる経営者が増えています。
加えて、原材料価格の統計をどこから引用すべきか、改善計画をどの粒度で数値化すれば審査官に伝わるか、といった「書き方」のノウハウは、実際に多くの案件を見てきた専門家でなければ蓄積されません。自己流で作成した書面が、かえって説明不足と受け取られ、追加資料の提出を求められて時間を浪費してしまうケースも珍しくありません。時間的な余裕がない中で在留資格の更新期限を迎える食品製造業ほど、早い段階で専門家に相談する価値があります。
KICKコンサルティングができる支援

KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、経済産業大臣登録の中小企業診断士・松本昌史が直接対応し、製造業を中心に財務分析と企業評価書作成の支援を行ってきました。債務超過企業・赤字企業の財務分析と改善計画策定を数多く手がけており、原材料高騰に直面する食品製造業特有の事情も踏まえた書面作成が可能です。
全国オンライン対応のため、来社の必要はありません。決算書を共有いただければ、現状の財務分析から改善計画の骨子まで、初回相談の段階でお伝えします。業務範囲は財務分析・企業評価書作成・申請サポートに限定しており、在留資格申請そのものの代行は行っていません。専門領域を明確にしたうえで、特定技能・育成就労のための企業評価書作成支援を提供しています。
これまで支援してきた製造業の現場では、財務分析を通じて「どの製品で利益が出ていないのか」「どの取引先との条件が不利になっているのか」が初めて可視化され、経営者自身が驚かれることも少なくありません。企業評価書の作成は、審査対応であると同時に、自社の収益構造を見つめ直す機会でもあります。書面をきっかけに、原価計算のルールそのものを見直し、以後の価格交渉が格段にやりやすくなったという声も寄せられています。
よくある質問

Q. 改善見通しに関する評価書面とはどのような書類ですか
A. OTITが定める提出書類の別紙②-1・番号20にあたる書面で、債務超過の企業が在留資格の審査を受ける際に、改善の道筋を客観的に示すためのものです。財務分析と収支計画をもとに作成します。
Q. 企業評価書は誰が作成できますか
A. 中小企業診断士または公認会計士に限られています。顧問税理士は作成できません。財務の専門家であっても、対応可能な資格が制度上定められている点に注意が必要です。
Q. 債務超過でも特定技能人材を受け入れられますか
A. 債務超過であること自体が受け入れを一律に妨げるものではありません。改善見通しに関する評価書面によって、改善の蓋然性を客観的に示すことが重要になります。
Q. 育成就労制度への移行はいつ始まりますか
A. 育成就労制度は2027年4月の施行が予定されています。現行の技能実習制度からの移行期にあたるため、財務資料の整備は早めに着手するほど余裕を持って対応できます。
Q. 企業評価書の作成にはどれくらいの期間がかかりますか
A. 決算書の内容や改善計画の精緻さによって変わりますが、財務分析からヒアリング、書面作成まで一定の工程が必要です。余裕を持ったスケジュールで早めに相談を始めることをおすすめします。
Q. 顧問税理士に企業評価書の作成を依頼できますか
A. 依頼できません。作成できるのは中小企業診断士または公認会計士に限られるため、外国人材の受け入れに関する財務書面については、これらの専門家への相談が必要です。
Q. 原材料価格の上昇はいつまで続きますか
A. 帝国データバンクの調査では、2026年の飲食料品値上げ品目数は1〜11月判明分で1万4,902品目に達し、2022年以降5年連続で年間1万品目を超える見通しです。今後の見通しは不透明ですが、価格転嫁と原価管理の両輪で備える必要があります。
Q. 企業評価書があれば在留資格の審査に有利になりますか
A. 書面があること自体が結果を約束するものではありませんが、改善の道筋を客観的な数値で示せることは、審査官の心証形成において重要な材料になります。
Q. 全国どこからでも相談できますか
A. KICKコンサルティング株式会社はオンライン対応のため、来社不要で全国から相談いただけます。決算書をお送りいただければ、現状の分析から始められます。
Q. 相談したら契約しなければなりませんか
A. 契約の義務はありません。初回相談は無料で、現状のヒアリングと制度の適用可否の確認までは費用がかかりません。内容にご納得いただけない場合はお断りいただいて構いません。
まとめ 原材料高騰は、書面ひとつで乗り越え方が変わる

小麦・食用油などの原材料高騰は、経営者個人の努力だけで解決できる問題ではありません。しかし、債務超過という結果に対してどう向き合うかは、経営者自身が選べます。改善見通しに関する評価書面を通じて、価格転嫁の進捗、歩留まり改善、外国人材定着によるライン稼働率向上、そして専門家による収支計画という5つの要素を客観的に示せれば、審査官にも、金融機関にも、そして社員にも、「この会社は立ち直る」という説得力のあるメッセージを届けられます。原材料高騰という共通の敵に、一人で立ち向かう必要はありません。
ご相談いただいても、無理な売り込みは一切ありません。初回相談は無料です。1社ごとに時間をかけて対応しているため、月あたりのご相談枠には限りがあります。お断りいただいても構いませんので、まずは現状をお聞かせください。









コメント