成形機の入替え時期が近づいている。あるいは、同業や取引先から「一緒にやらないか」と声をかけられた。
そのたびに頭をよぎるのが、「うちの会社には、どれだけの値打ちがあるのか」という問いではないでしょうか。
顧問税理士に聞けば、相続税を計算するための株価は出てきます。ただ、その数字は、設備投資や他社との提携を判断するための物差しとは別物です。
経営の判断に使う企業価値は、実質純資産と営業利益の実力値を土台に、成形機・金型・技術者・取引先構成という業種固有の中身を足して考えます。
何も準備しないまま話し合いの席に着くと、決算書の数字と、償却の終わった設備の簿価だけで会社が値踏みされます。
- 成形機の入替え時期が近い経営者の方
- 同業から提携の打診を受けた社長の方
- 相続税の株価しか知らない経営者の方
- 第三者への承継を選択肢に入れたい方
- 金型や技術者の値打ちを示したい方
- 税務上の自社株評価と、経営的な事業価値の違い
- プラスチック成形会社の企業価値を測る5つの視点
- 実質純資産と正常収益力の見方、直し方
- 償却の終わった成形機や金型を評価に織り込む考え方
- 第三者承継の話し合いに向けた簡易評価の進め方
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として、法人支援150社以上の実績で承継の全体設計に伴走してきました。
読み終えるころには、自社の決算書と設備台帳のどこから手をつければよいかが分かります。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは工場と数字の現状をお聞かせください。
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プラスチック成形会社の企業価値が伝わらない理由と、放置したときに起きること

結論から述べます。決算書だけでは、プラスチック成形会社の企業価値は相手に伝わりません。
理由は単純です。この業種の値打ちの多くが、償却の終わった設備と、技術者の手の中にあるからです。どちらも貸借対照表には、ほとんど姿を現しません。
この記事が前提にするのは第三者承継(M&A・提携)です。第三者承継とは、親族や社内に後継者がいないときに、会社や事業を外部の相手へ引き継ぐことをいいます。
税務上の自社株評価と、経営的な事業価値は目的が違う
まず、2つの「企業価値」を分けて考えます。混ざったままだと話がかみ合いません。
税務上の自社株評価とは、相続税や贈与税を計算するために、決められた方法で株式の価額を求める手続きのことです。類似業種比準方式や純資産価額方式といった考え方があり、方法は通達で定められています。
これは税額を計算するための評価であり、個別の判断・申告・税額計算は税理士の領域です。当社が代わりに行うものではありません。
一方、経営的な事業価値とは、設備投資や提携・譲渡を判断するために、会社が将来生み出す稼ぎと、それを支える資産をあわせて捉えた値打ちのことです。相手のいる交渉で使うため、一つの正解ではなく幅のある目安になります。
| 項目 | 税務上の自社株評価 | 経営的な事業価値 |
|---|---|---|
| 目的 | 相続税・贈与税の計算 | 設備投資・提携・譲渡の判断 |
| 使う場面 | 相続、親族や後継者への贈与 | 第三者承継、金融機関への説明 |
| 主な担い手 | 税理士 | 中小企業診断士・公認会計士など |
| 見るもの | 通達で定められた方式にもとづく計算 | 実質純資産、正常収益力、設備・技術・取引先 |
| 結果の性質 | 計算の答えとして一つに定まる | 話し合いの出発点となる幅のある目安 |
どちらが正しいという話ではありません。用途が違うだけです。相続の場面では前者を、投資や提携の場面では後者を使います。
プラスチック成形業に固有の「見えにくい価値」
この業種には、決算書に映りにくい資産が4つあります。どれも現場では当たり前すぎて、社長自身が価値だと気づいていないことが多いものです。
- 償却の終わった成形機 簿価はほぼゼロでも、いまも主力の製品を生み続けている。
- 金型 顧客の資産であることが多く、自社の帳簿には出てこない。保管とメンテナンスの実務だけが残る。
- 成形条件と段取りのノウハウ 樹脂ごとの温度・圧力・冷却の作り込みは、技術者の頭の中にある。
- 取引先との関係 長年の内示のやりとりや、単価改定の交渉の履歴は、数字の背景として語られない。
買い手や提携先は、これらを知らないまま資料を読みます。説明されなければ、無いものとして扱われます。
何もしないまま時間が過ぎると起きること
ここで手を打たない場合、起きることは3つです。
- 決算書と簿価だけで値踏みされ、話し合いの土俵が相手の資料で決まる
- ベテラン技術者の退職とともに、説明できたはずの価値が社外へ消える
- 設備投資の判断が先送りされ、更新の時期と承継の時期が重なって身動きが取りにくくなる
特に3つ目は見落とされがちです。老朽化した成形機を抱えたまま譲渡の話に入ると、更新にかかる負担を理由に条件を下げられやすくなります。
要するに、この章の話は一つです。価値は存在するのに、伝える形になっていない。次の章では、その形の作り方を5つの視点で示します。
プラスチック成形会社の企業価値を測る5つの視点と簡易評価の進め方

結論を先に述べます。プラスチック成形会社の企業価値は、次の5つの視点で組み立てると、相手に説明できる形になります。
簡易評価とは、詳しい調査に入る前に、手元の決算書と現場の情報だけで会社のおおよその値打ちをつかむ作業のことです。まずはこの簡易評価で全体像を描きます。
| 視点 | 見るところ | よくある見落とし |
|---|---|---|
| 実質純資産 | 資産と負債を実際の値打ちに直す | 滞留した材料・仕掛品がそのまま残っている |
| 正常収益力 | ふだんの実力としての営業利益 | 役員報酬や一時的な費用が調整されていない |
| 設備の実態 | 成形機・周辺機器・工場の能力 | 簿価ゼロの主力機が数えられていない |
| 技術者と技能 | 成形条件の標準化と引継ぎ可能性 | ノウハウが個人の頭の中だけにある |
| 取引先構成 | 得意先の分散と取引の安定性 | 1社への依存度が説明されていない |
実質純資産を洗い出す
実質純資産とは、貸借対照表の純資産を、資産と負債の実際の値打ちに直したもののことです。土台になる数字なので、ここから始めます。
直す先は決まっています。手をつける順に並べます。
- 売掛金 回収が滞っている先が混じっていないか
- 棚卸資産 動いていない樹脂材料、使われない仕掛品、旧型の製品在庫
- 機械装置 帳簿の額ではなく、いま売買されるとしたらいくらか
- 土地・建物 取得時の額と現在の相場の差
- 保険 解約したときに戻る金額の相当分(契約ごとに扱いが違う)
- 負債側 未払いの残業代、退職金の必要額、リース残高、経営者個人の保証
この作業をすると、帳簿上は薄く見えた純資産が厚くなる会社が少なくありません。逆に、在庫の整理で目減りする会社もあります。
どちらに転んでも、実態を先に知っている側が話し合いで落ち着いていられます。
正常収益力(営業利益の実力値)をつかむ
正常収益力とは、その年だけの特別な事情を除いた、ふだんの実力としての営業利益のことです。買い手が最も見る数字です。
プラスチック成形の場合、次の項目で数字が動きます。
- 役員報酬と、経営者一族に関する費用の水準
- 樹脂価格の変動と、単価への転嫁が追いついているか
- 電力料金の変動(成形は電気を多く使う工程)
- 金型費の受け取りが特定の期に偏っていないか
- 不良対応や特別採用の費用が一時的に膨らんでいないか
- 本業と関係のない資産の維持費
3期分を並べ、年ごとの凸凹の理由を一つずつ言葉にします。理由が説明できる凸凹は、減点になりません。
説明できないまま資料に載せると、相手は最も低い年の数字を実力とみなします。ここが、準備の有無で最も差の出るところです。
成形機・金型など設備投資の実態を数える
3つ目が、この業種の要になります。減価償却が終わっていても、稼働している設備には値打ちがあります。
簿価がゼロであることと、価値がゼロであることは別です。実際に製品を生み、売上を作っている機械は、買い手にとって「買わずに済む設備」だからです。
設備の一覧を作るときは、次を書き出します。
- 成形機の台数と型締力の構成、電動か油圧か、導入年
- 直近の稼働率と、24時間運転が可能かどうか
- 周辺機器(乾燥機・チラー・取出ロボット・粉砕機・材料搬送)の有無
- 工場の受電容量、天井高、クレーン、増設できる余地
- 過去の更新履歴と、これから更新が必要な機械の時期
ここで大事なのは、更新が必要な設備を隠さないことです。隠しても後の調査で出てきます。
むしろ、いつ・何を・どの順で入れ替えるかの計画を先に示すほうが、条件の話は前に進みます。設備投資の計画そのものが、説明材料になるからです。
金型は、顧客の資産として預かっている場合が多くあります。自社の資産には計上できませんが、「どの顧客の、どんな型を、何型預かっているか」という一覧は価値の証明になります。型の数は、そのまま取引の深さを表すからです。
技術者と技能の引継ぎ可能性を見る
4つ目は人です。成形条件の作り込み、段取り替えの速さ、トラブル時の対応力。この3つが、同じ機械でも会社ごとの差を生みます。
ただし、技能が個人の頭の中にあるままだと、買い手は価値として数えにくくなります。その人が辞めれば消えてしまうからです。
そこで、次のような形に置き換えます。
- 主要製品の成形条件表が、紙またはデータで残っているか
- 段取り替えの手順と時間が記録されているか
- 不良の原因と対処が、事例として蓄積されているか
- 技能士などの資格保有者と、年齢構成が分かるか
- 若手への教育の仕組みがあるか
文書に残った技能は、引き継げる資産になります。属人のままの技能は、リスクとして見られます。この差は交渉の場で小さくありません。
取引先構成と受注の安定性を示す
5つ目が取引先構成です。売上の中身を、得意先別・製品別・業種別に分けて並べます。
1社への依存度が高いことは、それ自体では弱点にも強みにもなります。取引年数が長く、単価改定にも応じてもらえている関係なら、安定した基盤として説明できます。
反対に、依存度が高いのに取引条件を一方的に決められている状態は、価値を下げる要因として見られます。
自動車・医療・食品・住宅設備など、納めている業種の組み合わせも見どころです。景気の波の受け方が業種ごとに違うため、分散していれば安定性の説明になります。
5つを1枚にまとめて、話し合いの目安にする
最後に、5つの視点を1枚の資料に束ねます。順番はこうです。
- 実質純資産を出す(資産と負債を実態に直す)
- 3期分の正常収益力を出す(凸凹の理由を書き添える)
- 設備の一覧と更新計画を作る
- 技能と取引先構成を、資料の形にする
- 1枚にまとめ、強みと弱みを自分の言葉で説明できる状態にする
中小企業の第三者承継では、実質純資産に、正常収益力の数年分を足して考える方法がよく使われます。ただし「何年分」に決まった数字はありません。
会社の状態、業種の見通し、相手が期待する効果によって変わります。ですから、ここで出るのは金額そのものではなく、話し合いの出発点となる目安の考え方です。
最終的な金額は、買い手と売り手の合意で決まります。目安を持っている側は、その合意に自分の言い分を持ち込めます。
株式の扱い、保険の役割、後継者不在への備えまで含めて全体を組み立てたい方は、プラスチック成形会社の企業価値づくりを支える事業承継コンサルティングもあわせてご覧ください。
この段階でご相談いただいても、契約をお勧めすることはありません。決算書がそろっていなくても構いません。数字の整理の途中で結構です。まずは現状をそのままお聞かせください。
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事業性評価で企業価値を示せた先に手に入る3つの未来

5つの視点で自社を整理し切ると、手に入るものが3つあります。金額の話だけではありません。
事業性評価とは、財務の数字だけでなく、事業の内容や将来性を含めて会社の実力を見ることをいいます。金融機関が融資を判断するときにも使われる考え方です。
話し合いのものさしを自分の側に持てる
1つ目は、交渉の主導権です。相手の資料に反応するだけの立場から抜け出せます。
「この機械は償却が終わっていますが、いまも主力です」「この得意先とは長い付き合いで、単価改定にも応じていただいています」。こう言えるだけで、話の中身が変わります。
説明できる会社は、条件を一方的に決められにくくなります。相手も、根拠のある話には根拠で応じるからです。
設備投資の判断に迷いがなくなる
2つ目は、投資の判断です。企業価値の物差しを持つと、設備投資が「出費」から「価値づくり」に変わります。
いま入れ替えるべきか、次の代に委ねるか。承継の時期と更新の時期を並べて見られるようになるため、判断の材料がそろいます。
投資を先送りして数字だけを整える必要もなくなります。設備の状態と将来の計画を、そのまま材料として示せるからです。
銀行と従業員への説明が変わる
3つ目は、社外と社内への説明力です。事業性評価の考え方でまとめた資料は、金融機関との対話でもそのまま使えます。
返済の見通しだけでなく、稼ぐ力の中身を語れるようになるためです。設備資金の相談にも、同じ資料が生きます。
従業員に対しても同じです。会社の強みが言葉になっていれば、承継の話が出たときにも、行き先の不安ではなく続いていく話として伝えられます。
数字の裏づけ、投資の判断軸、社内外への説明力。この3つを、共に手に入れましょう。
プラスチック成形の企業価値を自社だけで測る限界と、事業承継士による伴走支援

ここまでの5つの視点は、社内でも着手できます。ただし、自社だけで完結させようとすると、3つの壁に当たります。
自社だけで進めるときの3つの壁
1つ目は、身内の目では見え方が偏ることです。当たり前になっている強みは書き落とされ、慣れた弱みは軽く見積もられます。
2つ目は、時間です。日々の生産を回しながら3期分の数字を組み直し、設備台帳を作り直す作業は、片手間では進みません。
3つ目は、専門の切り分けです。誰に何を頼むかを間違えると、同じ資料を何度も作り直すことになります。
事業の棚卸しという方法と、KICKの立ち位置
事業の棚卸しとは、会社の事業そのものの中身を調べ、稼ぐ力の源泉と将来性を明らかにする作業のことです。決算書には表れない現場の実力を、言葉と数字にしておく作業だとお考えください。
買い手が行う財務や法務の調査は、危ないところがないかを確かめる調査です。強みを示す調査は、売り手が自分で用意するしかありません。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として、この売り手側の整理に伴走します。認定経営革新等支援機関でもあります。
工場を見て、成形機の前で話を聞き、数字と現場をつなげた資料にする。これが当社の役割です。
他の専門家との役割の切り分け
それぞれの領域を、はっきりさせておきます。
- 税理士 └ 個別の税務判断・税務申告・税額計算、税務上の自社株評価
- 弁護士 └ 契約の法律判断、紛争への対応
- 司法書士 └ 登記に関する手続き
- 行政書士 └ 許認可に関する手続き
- 中小企業診断士(KICK) └ 事業性評価・事業の棚卸し、承継全体の設計と伴走
どの専門家も欠かせません。困るのは、それぞれの話がつながらないまま時間だけが過ぎることです。全体の設計図を持つ役割が、当社の仕事です。
法人保険の役割も、承継の形に合わせて点検する
経営者に万一のことがあったときの備えとして、法人保険を使っている会社は多くあります。株式の買取資金や、役員退職慰労金の準備として入っている契約もあります。
承継の形が第三者へ移ると、その契約の役割も変わります。被保険者が現経営者のままでよいのか、受取人の設定が今の目的と合っているか。点検する価値があります。
当社は事業承継専属の保険代理店でもあります。ここで行うのは「減らすための見直し」ではなく「守るための再設計」です。
削りすぎれば、万一のときに事業の継続や家族の生活に影響が出ます。保険料の負担だけを見て判断しない、という順序を大切にしています。
初回のご相談で、保険や契約をお勧めすることはありません。その場で結論を出していただく必要もありません。「まだ何も決めていない」という段階のご相談を、いちばん多くいただいています。
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プラスチック成形の企業価値と第三者承継についてよくある質問

Q. プラスチック成形会社の企業価値はいくらになりますか
A. 決まった相場はありません。同じ売上・同じ台数でも、収益力と設備の状態、取引先構成によって大きく変わるためです。
実質純資産に正常収益力の数年分を足す考え方が使われますが、年数に決まりはなく、最後は買い手と売り手の合意で決まります。
まずは決算書3期分と設備の一覧を用意し、自社の目安を持つところから始めてください。
Q. 簡易評価にはどのくらいの手間がかかりますか
A. 資料がそろっていれば、全体像を描く作業自体はそれほど長くかかりません。時間がかかるのは、資料を集める工程のほうです。
特に手間取るのが、設備の一覧と在庫の実態です。台帳と現場が合っていない会社が多いためです。
先に工場を歩いて、稼働している機械に印をつけるところから始めると早く進みます。
Q. 減価償却が終わった成形機は評価されないのですか
A. 帳簿の価値はゼロでも、稼働していれば評価の対象になります。買い手にとっては「買わずに済む設備」だからです。
ただし、自動的に加算されるわけではありません。稼働率、直近の修繕、部品の入手可能性を示して初めて材料になります。
導入年と稼働状況を機械ごとに書き出した一覧を作ってください。それが評価の土台になります。
Q. 金型は自社の資産として評価できますか
A. 顧客の資産として預かっている型は、自社の資産には計上できません。それでも、価値の証明としては有効です。
預かっている型の数と顧客の内訳は、取引の深さと継続性を表すからです。型があるということは、その製品の受注が続いている証拠になります。
顧客別の預かり型リストを整理し、保管とメンテナンスの実務も書き添えてください。
Q. 赤字でも企業価値はつきますか
A. つく場合があります。赤字の原因が一時的なものか、構造的なものかで見方が分かれるためです。
樹脂価格の高騰や、大型設備を入れた年の負担であれば、実力としての収益力は別に示せます。
製品別・得意先別の粗利を分けて、稼げている部分と足を引っ張っている部分を分けるところから着手してください。
Q. 相続税の自社株評価の数字を、そのまま交渉に使ってはいけませんか
A. 使わないほうが安全です。目的が違う計算のため、経営の判断や第三者との交渉には合わないことがあります。
税務上の評価は税額の計算のためのものであり、買い手が見る収益力や設備の実態は反映されません。
相続や贈与の場面では税理士に、投資や譲渡の判断では経営的な事業価値に、と使い分けてください。
Q. 事業承継税制は第三者承継でも使えますか
A. 株式を第三者へ売却する形の承継は、法人版事業承継税制(特例措置)の対象になりません。制度は後継者への贈与や相続を前提としているためです。
なお同制度を検討する場合、特例承継計画の提出期限は令和9年(2027年)9月30日ですが、贈与・相続を実行する期限は令和9年(2027年)12月31日で、こちらは延長されない見込みです。
納税を猶予する制度であり、要件を満たさなくなれば猶予が打ち切られる点にも注意がいります。適用の可否は個社の要件次第で、判断は税理士の領域です。
Q. 従業員に知られずに進められますか
A. 進められます。初期の整理は、経営者とごく限られた担当者だけで完結できます。
ただし、資料の依頼が急に増えると社内で気づかれることがあります。依頼の理由をどう説明するかを、着手前に決めておいてください。
「設備の更新計画を作るため」という形にすると、実際の作業とも合うため無理がありません。
Q. 設備投資は譲渡の話の前に済ませたほうがよいですか
A. 一律には決められません。老朽化した設備を抱えたままだと条件に響きますが、直前の大型投資が回収前の負担と見られることもあるためです。
判断の分かれ目は、その投資が受注の裏づけを持っているかどうかです。裏づけがあれば、価値として説明できます。
投資の前に、更新計画と受注の見通しをセットで整理してください。順番を逆にしないことが大切です。
Q. まず誰に相談すればよいですか
A. 目的で分かれます。税額の計算や申告は税理士、事業の強みの可視化と承継全体の設計は中小企業診断士の領域です。
どちらか一方で完結する話ではありません。顧問税理士がいる状態のまま、事業の整理だけを外部に頼むこともできます。
まずは自社の現状を話せる相手を1人決めて、そこから役割を広げていくと進みやすくなります。
まとめ

プラスチック成形会社の企業価値は、相続税の株価とは別の物差しで測ります。設備投資や第三者承継の判断に使うのは、経営的な事業価値のほうです。
測る視点は5つでした。
- 実質純資産を、資産と負債の実態に直して洗い出す
- 正常収益力を、3期分の凸凹の理由とともにつかむ
- 成形機・周辺機器・工場の能力と、更新計画を数える
- 技術者の技能を、引き継げる形の記録に置き換える
- 取引先構成と受注の安定性を、資料の形で示す
償却の終わった成形機も、預かっている金型も、ベテランの段取りも、説明されなければ無いものとして扱われます。
価値は、あるかないかではなく、示せるかどうかで決まります。
ここで出る金額は答えではなく、話し合いの出発点となる目安です。目安を持っている側は、条件の話に自分の言い分を持ち込めます。
何から手をつけるか迷ったら、まず工場を歩いて、稼働している成形機を導入年つきで書き出してみてください。それだけでも、自社の値打ちの輪郭が見えてきます。
ご相談の場で、契約をお勧めすることはありません。その場での結論も、しつこい連絡もありません。整理の途中でも、まだ何も始めていなくても構いません。今の状況をそのままお聞かせください。
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