
お盆で帰省した後継者と、株の引き継ぎや資金の話をひとしきり終えた——そんな夏ではないでしょうか。従業員承継(MBO・EBO)で株式や個人保証の整理は少しずつ進んでも、弔慰金や死亡退職金の規程、それを支える法人保険の中身までは手つかずという会社は少なくありません。規程も保険契約も、創業家が経営していた頃のまま据え置かれていると、いざというときに遺族へ渡る金額や、税務上の取扱いが想定とずれてしまう恐れがあります。この記事では、従業員承継という事業承継の場面で、弔慰金・死亡退職金の規程と法人保険を新しい経営者(後継者)に合わせて見直す3つのポイントを、中小企業診断士・事業承継士が整理します。
- 役員や社員へ従業員承継を進めている社長
- MBOで経営を引き継いだばかりの後継者
- 弔慰金・死亡退職金の規程を見直したい総務担当者
- 法人保険の契約内容がよく分からず不安な経営者
- 従業員承継で弔慰金・死亡退職金の規程が古いままだと起きる問題
- 弔慰金・死亡退職金を後継者に合わせて見直す3つのポイント
- 死亡退職金の非課税枠と弔慰金の非課税の考え方
- 法人保険の契約者・被保険者・受取人を点検する進め方
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
\無料相談(30秒で予約)/
従業員承継(事業承継)で弔慰金・死亡退職金の規程が抱える問題

従業員承継(MBO・EBO)は、役員や幹部社員が自社株を買い取って経営を引き継ぐ事業承継の一つの形です。子や親族に後を継がせる人がいない、あるいは会社をよく知る右腕に任せたいという理由で選ばれることが増えています。株式の買取資金や個人保証の引継ぎは、話し合いの早い段階で議題に上がります。
一方で、弔慰金・死亡退職金の規程は後回しになりがちです。理由は単純で、「まだ誰も亡くなっていないから」急ぎに見えないためです。しかし規程と、それを裏付ける法人保険の契約は、経営者が交代した瞬間から前提が変わっています。
創業家の家族構成を前提にした規程のまま
多くの中小企業の弔慰金・死亡退職金規程は、創業家が経営していた時代に作られています。想定していた受取人も、法定相続人の人数も、創業家の家族構成が基準でした。
従業員承継で経営者が交代すると、新しい経営者(後継者)の家族構成は当然、創業家とは違います。規程を書き換えないまま放置すると、非課税の考え方の前提や、保険の受取人の設定が実態と合わなくなります。
役員退職金(生前)との違いを整理する
役員退職金は、社長が勇退するときに支払われる生前の退職金で、功績倍率法などの考え方で適正額を検討します。これに対して弔慰金・死亡退職金は、経営者が在任中に亡くなったときに遺族へ支払われるお金です。
性質が違うにもかかわらず、同じ規程や同じ法人保険の契約でまとめて扱われているケースがあり、経営交代のタイミングで整理し直す価値があります。役員退職金は功績倍率法など在任年数や貢献度に応じた考え方で金額を検討しますが、弔慰金・死亡退職金は「いつ起きるか分からない万一の場面」に備える性質のものなので、判断の軸そのものが異なります。
| 項目 | 誰に、いつ支払われるか |
|---|---|
| 役員退職金(生前) | 勇退した経営者本人に、退任のタイミングで支払われる |
| 死亡退職金 | 在任中に亡くなった経営者の遺族に、死亡後に支払われる |
| 弔慰金 | 遺族への見舞いの意味合いで、死亡退職金とは別枠で支払われる |
この整理をしないまま放置すると、いざというときに遺族へ渡る金額が想定より少なくなったり、逆に非課税の範囲を超えて課税されたりする恐れがあります。従業員承継が一段落したタイミングこそ、規程と法人保険を見直す好機です。
経営交代のタイミングで見落とされやすい理由
従業員承継では、株式の買取資金や個人保証の引継ぎのように「金額が大きく、期限が意識しやすい」テーマが優先されます。弔慰金・死亡退職金は、支払う場面が来るかどうか分からないため、優先順位が下がりやすいのです。
加えて、規程や保険証券は総務部門や当時の経営者の手元に眠っていることが多く、後継者自身がその存在すら把握していないケースもあります。「誰も悪意はないのに、単に引き継がれていない」状態が、従業員承継の現場ではしばしば起こります。
経営者が交代した直後は、資金繰りや取引先への対応で手一杯になりがちです。だからこそ、事業が落ち着いた最初のタイミングで、規程と法人保険を棚卸ししておくことが、将来のトラブルを避ける近道になります。放置したままだと、次のような状態に気づかないまま時間が過ぎてしまいます。
- 弔慰金・死亡退職金規程に書かれた対象者が、創業家の家族を指したままになっている
- 法人保険の被保険者が、退任した前経営者のままになっている
- 受取人の指定が会社なのか遺族なのか、規程と保険証券で食い違っている
これらはどれも「気づいた人が声を上げない限り、誰も直さない」タイプの問題です。従業員承継という節目は、こうした点検を後継者自身が主導できる、数少ないタイミングでもあります。
事業承継に合わせて弔慰金・死亡退職金の法人保険を見直す3つのポイント

従業員承継の場面で弔慰金・死亡退職金と法人保険を見直すときは、次の3つのポイントで進めると整理しやすくなります。特別な準備は要らず、今ある規程と保険証券を並べて確認するところから始められます。
規程が前提にしている家族構成を確認する
まず、弔慰金・死亡退職金規程が誰を対象に作られているかを確認します。創業家の家族構成を前提にした条文のまま残っていないか、対象者の範囲や受給順位の定めを読み直します。
非課税枠の考え方を整理する
死亡退職金は、相続税の取扱いでは「500万円×法定相続人の数」までが非課税とされています(規程に基づく適正額であることが前提です)。弔慰金は、業務上の死亡か業務外の死亡かで非課税とされる範囲の考え方が変わり、一般的な考え方として業務上死亡なら普通給与の3年分程度、業務外死亡なら6か月分程度までが目安とされ、これを超える部分は死亡退職金として扱われます。
個別の当てはめや正確な金額計算は税理士の領域です。この記事では考え方の整理にとどめ、実際の金額の判断は顧問税理士に確認することをおすすめします。会社によっては、死亡退職金と弔慰金を一つの規程にまとめている場合と、別々の規程で定めている場合があり、まずは自社がどちらの形になっているかを確認するところから始めます。
契約者・被保険者・受取人の名義を点検する
法人保険の契約は、契約者(会社)・被保険者・受取人という3つの立場で成り立っています。経営者が交代しても、被保険者が前の経営者のまま、受取人の設定も古いままになっている契約が見つかることがあります。
新しい経営者(後継者)の状況に合わせて、契約内容を点検し、必要であれば名義変更や規程の改定を進めます。名義変更や規程改定は、株主総会や取締役会での決議など、会社として正式な手続きを踏むのが基本です。口頭の申し合わせだけで済ませず、記録に残しておくと後から見直すときにも役立ちます。
あわせて、法人保険の保険料の取扱いにも触れておきます。2019年(令和元年)の法人税基本通達の改正後は、最高解約返戻率に応じて損金算入できる割合が区分されるようになりました。一律に全額が損金になるわけではなく、契約ごとに確認が必要です。
| 見直すポイント | 具体的に確認すること |
|---|---|
| ①規程が前提にしている家族構成 | 弔慰金・死亡退職金規程が創業家の家族構成のまま作られていないか、対象者の範囲を確認する |
| ②非課税枠の考え方 | 死亡退職金と弔慰金の非課税の考え方を踏まえ、規程上の支給額が実情と合っているかを点検する |
| ③契約者・被保険者・受取人の名義 | 法人保険の名義が新しい経営者に合っているかを確認し、必要なら名義変更や規程改定を進める |
この3つを整理する順番として、まず①現状の規程と保険証券を並べて棚卸しし、次に②非課税の考え方を踏まえて支給水準の妥当性を確認し、最後に③名義や受取人の更新に進むと、抜け漏れが少なくなります。詳しくは事業承継専属の保険代理店として次のページでもまとめています。
2026.02.06
事業承継専属の保険代理店という考え方 中小企業の事業承継において、法人保険は長年にわたり「とりあえず加入してきたもの」になりがちです。創業期、成長期、拡大期と、その時々の経営判断の積み重ねで保険は増え、気づけば保険料負担が重くなっているケースも少なくありません。 一方で、「保険をやめ...
ご相談いただいても、商品ありきの提案は一切ありません。今の契約が事業承継の計画に合っているかを一緒に点検するだけで、加入や見直しを無理にお勧めすることもありません。
\無料相談(30秒で予約)/
弔慰金・死亡退職金を整えた先に手に入る未来

弔慰金・死亡退職金の規程と法人保険を、従業員承継後の実情に合わせて整えると、次の3つが手に入ります。
後継者の家族が安心できる保障
新しい経営者(後継者)の家族構成に合わせて保障を組み直すことで、万一のときに遺族が困らない備えが整います。創業家の家族構成のまま放置された規程では得られない安心です。後継者にとっても、自分の家族のための備えが会社の制度として整っていると分かれば、経営を引き受ける決断そのものへの安心感にもつながります。
社内から見た規程の一貫性
規程が実情に合っていると、役員・幹部社員から見ても「会社の約束事がきちんと守られている」という信頼につながります。従業員承継を選んだ会社にとって、こうした社内の納得感は経営の土台になります。将来、別の役員や社員へさらに承継を重ねる場面が来ても、整った規程は次の代への引き継ぎをスムーズにします。
経営者が本業に集中できる安心
弔慰金・死亡退職金の規程と保険契約という、普段は意識しない備えを整理しておくことで、後継者は目の前の経営課題に集中できます。取引先との関係構築や、資金繰りの立て直しといった本業に力を注げるのは、こうした足元の備えが整っているからこそです。
従業員承継で会社を引き継いだ後継者が、いざというときの不安を抱えたまま経営するのではなく、事業の成長に前向きに取り組める状態を、共に手に入れましょう。備えを整理する作業そのものは数時間から数日で終わるものですが、その効果は経営者が交代した後、何年にもわたって会社と家族を支え続けます。
事業承継と法人保険を自社だけで抱える限界と、事業承継士の伴走支援

弔慰金・死亡退職金の規程は総務や人事の担当分野、法人保険は保険担当者の分野、非課税枠の判断は税理士の分野と、関わる専門家が分かれています。それぞれが専門的に正しくても、話が噛み合わず全体像が見えないまま時間だけが過ぎてしまうことがあります。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士(認定経営革新等支援機関)として、事業承継の全体設計と伴走を行っています。あわせて事業承継専属の保険代理店として、法人保険を承継の計画に合わせて再設計する支援もしています。
税理士・保険担当者・後継者、それぞれの話をつなぎ、規程・保険・税務の整合性を一緒に確認するのがKICKの役割です。他の専門家の仕事を代わりに行うのではなく、全体を見渡す立場として関わります。税務の個別判断・申告はあくまで税理士の領域であり、その点は正確に切り分けてご案内します。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、これまで法人支援150社以上の実績があります。従業員承継(MBO・EBO)のように、家族承継とは違う難しさを持つ場面でも、認定経営革新等支援機関としての立場から、規程・保険・税務が噛み合っていない状態を一つずつ整理してきました。
弔慰金・死亡退職金の規程は、一度整えれば終わりではなく、経営者の交代や家族構成の変化に合わせて見直し続けるものです。最初の見直しに一緒に立ち会い、その後も相談できる相手がいることが、経営者・後継者にとっての安心材料になります。
相談の進め方は難しいものではありません。まず現状の規程・保険証券を一緒に確認し、次に非課税枠の考え方を踏まえて支給水準や契約内容のずれを洗い出し、必要な手続きの方向性を整理してお伝えします。手続きそのものを代行するのではなく、税理士・保険担当者とのやり取りに、経営者・後継者と一緒に立ち会う形で伴走します。初回のご相談は、資料が手元に無い状態でも構いません。分かる範囲からお話しください。
ご相談いただいても、契約を迫ることは一切ありません。現状の規程と保険証券を一緒に眺めて、整理すべき点を洗い出すところから始めます。お断りいただいても構いません。オンラインでのご相談にも対応していますので、遠方の会社様もお気軽にお声がけください。
\無料相談(30秒で予約)/
従業員承継と法人保険のよくある質問

Q. 弔慰金と死亡退職金は何が違うのですか
A. 死亡退職金は退職金の一種として遺族に支払われるお金で、弔慰金は見舞いの意味合いで支払われるお金です。どちらも遺族に渡るお金ですが、相続税の取扱い上の非課税の考え方がそれぞれ別に定められています。
Q. 死亡退職金の非課税枠はどのくらいですか
A. 相続税の取扱いでは「500万円×法定相続人の数」までが非課税とされています。ただし規程に基づいた適正な金額であることが前提で、個別の当てはめは税理士に確認する必要があります。
Q. 弔慰金の非課税の範囲はどう決まるのですか
A. 業務上の死亡か業務外の死亡かで考え方が変わります。一般的な目安として、業務上死亡は普通給与の3年分程度、業務外死亡は6か月分程度までとされ、これを超える部分は死亡退職金として扱われます。
Q. 従業員承継だと家族承継と何が違うのですか
A. 家族承継では経営者の家族と遺族が一致しますが、従業員承継では新しい経営者(後継者)の家族は創業家とは別の世帯です。規程や保険の受取人を、新しい家族構成に合わせて考え直す必要があります。また、創業家がそのまま大株主として残る場合もあり、経営者の立場と株主の立場が分かれる分、規程の対象範囲をより丁寧に確認する必要があります。
Q. 法人保険の保険料は全額損金になりますか
A. 一律に全額が損金になるわけではありません。2019年(令和元年)の通達改正後は、最高解約返戻率に応じて損金算入できる割合が区分されており、契約ごとの確認が必要です。
Q. 規程や保険契約の名義変更はいつ行えばよいですか
A. 決まった時期はありませんが、経営交代が一段落したタイミングで点検するのが望ましいです。放置する期間が長いほど、実情とのずれが大きくなりやすい傾向があります。
Q. 弔慰金・死亡退職金の金額は誰が決めるのですか
A. 一般的には、株主総会や取締役会の決議を経て定めた規程に基づいて決まります。功績倍率法などの考え方を参考にしつつ、会社の実情に合わせて検討します。
Q. 税務の細かい判断も相談できますか
A. 個別の税務判断・申告は税理士の領域です。KICKは規程と保険の整理、全体設計の面から支援し、税務の確定判断が必要な場面では顧問税理士との連携を前提にご案内します。顧問税理士がいない場合の連携先についても、状況に応じて相談いただけます。
Q. 相談すると保険への加入を勧められますか
A. 商品ありきの提案はしません。まず今の契約が事業承継の計画に合っているかを一緒に点検し、必要な見直しの方向性を整理することを目的にしています。
Q. 弔慰金・死亡退職金の規程が無い会社はどうすればいいですか
A. 規程が無い場合、支払う金額の目安や手続きが定まらず、遺族に渡すお金が場当たり的になりがちです。従業員承継のタイミングは、規程を新しく整える良い機会でもあります。
Q. 従業員承継の話はいつから始めればいいですか
A. 株式や個人保証の話し合いと並行して、規程と保険の点検も早めに始めることをおすすめします。経営交代が落ち着いてからでは後回しになりやすく、時間が経つほど実情とのずれが大きくなります。
Q. 無料相談ではどこまで話を聞いてもらえますか
A. 現状の規程や保険契約の内容、従業員承継の進み具合など、今分かっている範囲で構いません。まずは現状の棚卸しから一緒に始めます。
まとめ
従業員承継(MBO・EBO)という事業承継の場面では、株式や個人保証の整理に注意が向きがちですが、弔慰金・死亡退職金の規程と法人保険も、経営者交代に合わせて見直すべき対象です。
①規程が前提にしている家族構成を確認する、②死亡退職金・弔慰金の非課税の考え方を整理する、③契約者・被保険者・受取人の名義を点検する——この3つのポイントを押さえれば、新しい経営者(後継者)の実情に合った備えに近づけます。特別な準備は必要なく、今ある規程と保険証券を並べて見るところから始められる点も、忙しい経営者・後継者にとっては取り組みやすいはずです。
個別の税務判断は税理士の領域として正しく切り分けながら、規程・保険・税務の全体を見渡す形で整理を進めることが、遺族にとっても会社にとっても安心につながります。まずは今の規程と保険証券を並べて眺めるところから、始めてみませんか。
従業員承継は、株式や資金の話がまとまった時点で「一段落」と感じやすいものです。しかし弔慰金・死亡退職金のように、日常では意識しない備えこそ、経営者が交代した節目にこそ点検しておく価値があります。後回しにするほど、規程と実情のずれは大きくなります。早いタイミングで一度、現状を整理しておきましょう。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいても構いません。まずは現状をお聞かせください。
\無料相談(30秒で予約)/
関連記事
2026.03.17
中小企業診断士 · 事業承継士 · 認定経営革新等支援機関 事業承継を何から始めるべきか、 一緒に整理しませんか。 株式・保険・後継者育成がバラバラのまま、時間だけが過ぎていませんか。 KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、経営全体を見ながら事業承継を一本化して伴走する専門...
2026.02.06
事業承継専属の保険代理店という考え方 中小企業の事業承継において、法人保険は長年にわたり「とりあえず加入してきたもの」になりがちです。創業期、成長期、拡大期と、その時々の経営判断の積み重ねで保険は増え、気づけば保険料負担が重くなっているケースも少なくありません。 一方で、「保険をやめ...








コメント