
下期がスタートするこの時期、舶用エンジンや甲板機械の引き合いは増えているのに、決算書を見ると債務超過が続いている——そんな状況ではないでしょうか。
新造船や脱炭素対応エンジンへの需要は伸びているのに、老朽化した生産設備を更新するための投資がかさみ、資金繰りは苦しいまま。しかも特定技能で溶接や機械加工の人材を受け入れたくても、直近の決算が債務超過だと審査が通るか不安、という声も少なくありません。
実は、債務超過の理由が前向きな設備投資であることを正しく示せれば、特定技能の受入れをあきらめる必要はありません。
この記事では、舶用機器メーカーが債務超過でも特定技能を受入れる3つの条件と、中小企業診断士が作成する企業評価書(改善の見通しに関する評価書面)のサンプルのイメージを、法人支援150社以上の実績を持つ中小企業診断士が解説します。読み終える頃には、自社の状況を審査官にどう説明すればよいか、次の一歩が具体的に見えてくるはずです。
- 舶用エンジン・機器の受注は増えているが資金繰りが苦しい方
- 老朽設備の更新投資で決算が赤字・債務超過になった方
- 特定技能の受入れ審査が通るか不安な経営者の方
- 企業評価書を誰に頼めばいいか分からない方
- 舶用機器メーカーが債務超過でも特定技能を受入れられる理由
- 企業評価書(改善の見通しに関する評価書面)の記載項目とサンプルのイメージ
- 老朽設備の更新投資を審査官へ前向きに伝える視点
- 企業評価書を誰に依頼すればよいか(中小企業診断士・公認会計士)
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舶用機器メーカーが債務超過で企業評価書を求められる理由

舶用ディーゼルエンジンや甲板機械(デッキマシナリー)、バルブ・ポンプ類を手がける舶用機器メーカーは、造船・舶用工業分野の中でも特定技能の受入れニーズが高い業種のひとつです。新造船の建造需要に加え、脱炭素対応エンジンや環境規制に対応した舶用機器への引き合いが増える一方、生産現場では溶接工や機械加工の熟練工の確保が追いつかず、外国人材の受入れを急ぐ会社が増えています。
ところが、受注そのものは伸びているのに、決算だけを見ると赤字・債務超過という舶用機器メーカーは珍しくありません。理由の多くは、老朽化した工作機械や検査設備の更新、環境規制対応の新型エンジン開発への先行投資です。将来の受注に備えた前向きな投資であっても、会計上は一時的に財務状況を悪化させます。
この状態で外国人技能実習(育成就労)や特定技能の受入れを進めようとすると、直近の決算内容が壁になります。厚生労働省の資料には、監理団体の財産的基礎について、直近期末に債務超過がある場合は「中小企業診断士、公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が改善の見通しについて評価を行った書面」の提出を求める旨が記載されています。この書面が、いわゆる企業評価書です。
外国人技能実習機構(OTIT)が示す提出書類でも、企業評価書は別紙②-1・番号20に位置づけられており、債務超過の状態にある企業が受入れを続ける、または新たに始めるための必須の説明資料として扱われています。「うちは業績が悪いから審査は通らない」と自己判断して申請自体をあきらめてしまう舶用機器メーカーの社長・総務担当者も多いのですが、それは早計です。圧力容器や大型のボイラーを扱う検査設備の更新など、舶用機器ならではの高額投資が背景にあることをきちんと説明できれば、評価は変わってきます。
| 要因 | 舶用機器メーカーに与える影響 |
|---|---|
| 新造船・脱炭素対応エンジンの需要増 | 受注は増えるが、対応できる生産設備・人手が不足する |
| 老朽化した生産設備 | 更新のための設備投資が高額になりやすく、資金負担が重い |
| 先行投資による資金繰りの悪化 | 一時的に赤字・債務超過に陥りやすい |
| 特定技能・技能実習の受入れ審査 | 直近の決算内容が影響し、企業評価書の提出を求められる場合がある |
ここで放置してしまうとどうなるでしょうか。特定技能の人材を確保できないまま熟練工の高齢化が進み、受注が増えても生産が追いつかない状態が固定化します。「決算が悪いから」と受入れを先送りするほど、人手不足はむしろ深刻になり、投資回収も遅れるという悪循環に陥りかねません。
大切なのは、債務超過という「結果」ではなく、その「理由」を客観的な第三者の視点で説明できるかどうかです。次の章で、舶用機器メーカーが特定技能を受入れるために満たしたい3つの条件を、企業評価書のサンプルのイメージとあわせて具体的に見ていきます。
造船・舶用工業分野で特定技能の受入れが広がっている背景
出入国在留管理庁が示す分野別の運用方針では、造船・舶用工業分野において、2024年度からの5年間で最大3.6万人程度の特定技能人材の受入れが見込まれています。舶用エンジンの製造・修理を担う工場だけでなく、甲板機械やバルブ・ポンプ等を手がける舶用機器メーカーも受入れの対象です。国土交通省も、脱炭素化に対応した舶用機器の技術開発や設備投資を後押しする方向性を示しており、環境規制対応の投資と外国人材の受入れは、今後さらに結びつきが強くなる領域だといえます。
一方で、こうした投資はエンジン1基分の設計変更や生産ラインの改修だけでも金額が大きくなりやすく、決算への影響も避けられません。「投資したから赤字になった」という順序を、審査官にきちんと理解してもらえるかどうかが、受入れの可否を左右します。
企業評価書の基本を先に押さえたい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
特定技能を受入れる3つの条件|企業評価書のサンプルと書き方

舶用機器メーカーが債務超過の状態から特定技能・外国人技能実習の受入れにつなげるには、次の3つの条件を満たすことが重要です。ひとつずつ、実務でどう対応するかを見ていきましょう。
赤字・債務超過の理由が前向きな設備投資だと財務データで示す
まず整えたいのは、決算書だけでは伝わらない「なぜ債務超過になったのか」という背景です。老朽設備の更新や脱炭素対応エンジンの開発投資といった前向きな理由による赤字であることを、投資の内容・時期・金額が分かる資料とあわせて整理します。あわせて、いわゆる「債務超過理由書」の形で経緯を文章化しておくと、後の企業評価書の作成もスムーズに進みます。
特定技能協議会への加入など受入れ体制を整える
造船・舶用工業分野で特定技能人材を受け入れるには、企業評価書の準備と並行して、受入れ企業としての体制づくりも必要です。分野別の協議会への加入や、外国人材への支援体制、適切な雇用契約の整備など、制度上求められる要件を1つずつ満たしていきます。企業評価書だけを整えても、受入れ体制が伴っていなければ審査は前に進みません。
中小企業診断士による企業評価書(改善の見通しに関する評価書面)を用意する
企業評価書を作成できるのは、中小企業診断士または公認会計士に限られます。税理士は、この書面を作成する資格を持ちません。顧問税理士に相談しても対応できない領域だと知らずに時間だけが過ぎてしまうケースもあるため、早い段階で企業評価を行える中小企業診断士に相談することが近道です。
企業評価書に決まったフォーマットはありませんが、記載する項目のイメージは次のとおりです。外国人技能実習の企業評価書サンプルや特定技能の企業評価書サンプルを探している場合も、まずはこの3つの構成を押さえておくと理解が早まります。
| 記載項目 | 記載イメージ |
|---|---|
| 企業概要 | 沿革、事業内容(舶用エンジン・甲板機械等の製造)、主要取引先、従業員数など |
| 財務状況・債務超過の理由 | 直近の決算内容、債務超過に至った経緯(老朽設備の更新投資など) |
| 改善の見通し | 今後の受注動向、設備投資の効果、資金繰り改善の計画など |
この記載イメージはあくまで一般的な構成であり、実際の数値や事例をそのまま当てはめることはできません。会社ごとの決算内容や投資計画に合わせて、中小企業診断士が個別に組み立てる書面です。特に「改善の見通し」の部分は、根拠のない期待値ではなく、受注状況や設備の稼働計画に基づいた説明が求められます。詳しくは次のページにまとめています。
外国人技能実習・特定技能の企業評価書について 社長やご担当者の方へ。“あなた”は今、このようなお悩みを抱えていませんか。 外国人技能実習制度を活用したいが、企業評価書の作成方法が分からないという方 特定技能外国人の受入れにあたり、経営改善の見通しについて評価が必要だ...
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3つの条件を満たし特定技能の受入れで手に入る未来

3つの条件を満たし、特定技能の受入れが実現すると、舶用機器メーカーの現場は具体的にどう変わるのでしょうか。3つの軸で見ていきます。
資金繰りが安定し、受注拡大に投資できる未来
企業評価書で改善の見通しを示せれば、外国人材の受入れという選択肢が戻るだけでなく、投資に対する社内外の見方も変わります。「一時的な赤字」であることが客観的に説明できる状態になれば、金融機関との資金繰りの相談も、これまでより前向きに進めやすくなります。次の設備投資の判断も、場当たり的ではなく計画に基づいて行えるようになります。
特定技能の人材が定着し、生産体制が安定する未来
受入れ体制を整えたうえで特定技能の人材を迎えられれば、溶接や機械加工の現場に若い働き手が加わり、熟練工の技術を引き継ぐ時間的な余裕が生まれます。受注が増えても生産が追いつかないという状態から、少しずつ抜け出せます。属人化していた検査・加工の技術を、複数人で担える体制に近づけていけます。
金融機関や取引先からの信頼が厚くなる未来
中小企業診断士による客観的な評価を経たうえで受入れ審査に臨んだという事実は、金融機関や造船所などの主要取引先に対しても、経営管理がきちんと機能している会社だという印象につながります。決算の数字だけでは伝わらない「改善に向けた取り組み」を、外部に説明できる材料にもなります。次の融資や取引条件の相談でも、同じ資料を土台に話を進められます。
老朽設備の更新という重い投資を乗り越え、特定技能の受入れで人手不足を解消し、金融機関・取引先からの信頼も取り戻す。舶用機器メーカーとして次の成長段階に進むための土台を、共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

ここまで3つの条件を見てきましたが、実際に自社だけで企業評価書を用意しようとすると、いくつかの壁にぶつかります。ひとつは専門性の壁です。企業評価書は中小企業診断士または公認会計士でなければ作成できず、社内に有資格者がいなければ社外に依頼するほかありません。
もうひとつは時間の壁です。決算書の整理、投資内容の裏付け資料の収集、改善の見通しの言語化には相応の時間がかかります。日々の受注対応や現場管理に追われる社長・社長補佐・経営管理担当者が、片手間で仕上げられるものではありません。さらに、書面の書き方を誤ると、かえって「見通しが甘い」と受け取られてしまうリスクもあります。数字の裏付けが弱いまま提出してしまい、追加の説明を求められて受入れの時期が延びてしまうことも起こり得ます。だからこそ、企業評価書に強い中小企業診断士に伴走を任せる経営者が増えています。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、代表・松本昌史(中小企業診断士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・中小企業事業再生マネージャー)を中心に、法人支援150社以上の実績を持つ、認定経営革新等支援機関(中小企業庁)です。舶用機器メーカーのような製造業の決算内容と投資背景を丁寧に読み解き、企業評価書の作成から特定技能の受入れ体制づくりまで一貫して伴走します。
具体的には、次のような支援をひとつの窓口で受けられます。
- 決算書・試算表の分析と、債務超過に至った経緯の整理
- 設備投資の内容・時期・金額を裏付ける資料の洗い出し
- 中小企業診断士による企業評価書(改善の見通しに関する評価書面)の作成
- 特定技能・外国人技能実習の受入れに向けた社内体制づくりの助言
決算書の数字だけでは伝わらない「投資の意図」と「今後の見通し」を、第三者の視点から言語化できることが、社内だけで進めるのとの一番の違いです。
企業評価書をまとめて確認したい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
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企業評価書のよくある質問|特定技能・債務超過の疑問を解消

企業評価書とはそもそも何ですか
企業評価書とは、外国人技能実習(育成就労)・特定技能の受入れにあたり、直近の決算が債務超過にある企業に提出が求められる書面の通称です。正式には「改善の見通しについて評価を行った書面」と呼ばれ、外国人技能実習機構(OTIT)が示す提出書類の別紙②-1・番号20に位置づけられています。会社の財務状況を客観的な第三者が評価し、今後の見通しを示す点が特徴です。
企業評価書は誰に依頼すればよいですか。税理士でもよいですか
企業評価書を作成できるのは、中小企業診断士または公認会計士に限られます。日頃決算を見てもらっている税理士であっても、企業評価書そのものを作成する資格はありません。「企業評価書 税理士」と検索して情報を探す経営者も多いのですが、依頼先は中小企業診断士(または公認会計士)と正しく理解しておくことが大切です。
特定技能で舶用機器メーカーは外国人材を受入れられますか
造船・舶用工業分野は、特定技能制度の対象分野のひとつです。舶用エンジンや甲板機械、バルブ・ポンプ類などを製造する舶用機器メーカーも、溶接や機械加工、電気機器の組立てといった業務区分で特定技能の外国人材を受入れることができます。出入国在留管理庁の分野別運用方針では、2024年度からの5年間で最大3.6万人程度の受入れが見込まれており、今後も裾野が広がっていく分野です。分野別の協議会への加入など、受入れ企業として整えるべき体制もあわせて確認しておく必要があります。
債務超過でも特定技能や技能実習の受入れは可能ですか
直近の決算が債務超過であっても、それだけで受入れが一律に不可能になるわけではありません。債務超過に至った理由と、今後の改善の見通しを企業評価書で示せれば、受入れの選択肢は残ります。老朽設備の更新投資のような前向きな理由であることを、客観的な資料とともに説明できるかどうかが分かれ目です。
企業評価書のサンプルやフォーマットはありますか
企業評価書に全国共通の決まったフォーマットはありません。「外国人技能実習 企業評価書 サンプル」「特定技能 企業評価書 サンプル」を探す声は多いのですが、実際には企業概要・財務状況(債務超過の理由)・改善の見通しという3つの記載項目を軸に、会社ごとの実情に合わせて中小企業診断士が個別に作成します。架空の記載例をそのまま流用できるものではない点に注意が必要です。
2027年施行予定の育成就労制度でも同じ書面が必要になりますか
育成就労制度は2027年4月の施行が予定されています。厚生労働省の資料や運用要領では、育成就労の実施にあたる監理支援機関(現行の監理団体に相当)についても、財産的基礎の観点から同様の評価書面の提出が求められる可能性が示されています。制度の詳細は今後の運用で明らかになる部分もありますが、早めに財務状況を整理しておく価値は大きいテーマです。
特定技能の定期報告でも債務超過は影響しますか
特定技能の定期報告制度では、一定の基準を満たす受入れ企業について届出の簡素化が図られる仕組みがあります。この「一定の基準」には、過去一定期間に債務超過となっていないことが含まれており、債務超過の有無が定期報告の負担にも関わってきます。更新や定期報告のタイミングで慌てないよう、早めに自社の状況を確認しておくことをおすすめします。
企業評価書の作成にはどのくらいの準備期間が必要ですか
必要な期間は、決算書や試算表、投資内容が分かる資料の整理状況によって変わります。過去の決算資料や設備投資の経緯を示す資料があらかじめ整理されていれば、ヒアリングから書面の完成までを比較的スムーズに進められます。逆に資料が散在していると、収集だけで時間がかかることもあるため、早めの相談が安心につながります。
技能実習と特定技能で、企業評価書の扱いは違いますか
技能実習(育成就労)と特定技能では、それぞれ制度上の位置づけは異なりますが、直近期末に債務超過がある場合に改善の見通しを示す書面の提出が求められる点は共通しています。舶用機器メーカーの中には、技能実習からの移行や、特定技能との併用を検討する会社もあり、どちらの制度で受入れを進める場合でも、まずは自社の財務状況を整理しておくことが土台になります。
まとめ
舶用機器メーカーの債務超過は、多くの場合「悪化」ではなく、脱炭素対応エンジンや老朽設備更新への「先行投資」の結果です。決算書の数字だけを見て特定技能の受入れをあきらめる前に、その理由を客観的に説明できる材料が揃っているかを、まず確認してみてください。
①理由を財務データで示す、②中小企業診断士による企業評価書を用意する、③受入れ体制を整える。この3つの条件を順番に満たしていけば、債務超過の状態からでも特定技能の受入れという選択肢は十分に見えてきます。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
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企業評価書は、中小企業診断士にしか作成できない独占業務であり、財務状況や経営計画、労務体制に関する高度な分析が求められます。 群馬県高崎市で建設業を営む株式会社E様(従業員4名)では、外国人技能実習生の受け入れにあたり、短期間での企業評価書の提出が必要となっていました。しかし、「本業で手が回ら...









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