
福岡食品関連協同組合から、「直近の決算が債務超過のため、改善の見通しについて評価を行った書面(企業評価書)をご用意いただけないと、技能実習生の受入れを次の期も続けることができません」と伝えられた。
そう言われても、企業評価書が何なのかも分からない。中小企業診断士の知り合いもいない。何から手をつければいいのか、途方に暮れている経営者・総務担当者は少なくありません。
10月は最低賃金の改定が発効する時期です。学校給食・社員食堂・宅配弁当の受託契約は年度単位・複数年単位で単価があらかじめ決まっているケースが多く、人件費だけが先に上がっていく現実に、頭を悩ませている総務担当者も多いのではないでしょうか。
- 学校給食・社員食堂・宅配弁当を受託している方
- 入札や複数年契約で単価を上げられず悩む方
- 赤字・債務超過で受入れ審査が不安な方
- 企業評価書を誰に頼めばいいか分からない方
給食・弁当の受託契約は、発注者(自治体・企業・学校法人など)との間で契約期間中の単価があらかじめ決まっており、原材料費や人件費が上がっても価格に転嫁できません。企業評価書を用意できないまま決算が債務超過のままだと、技能実習や特定技能の受入れが止まり、現場の人手が足りなくなります。人手が足りなければ調理・盛り付け・配送の体制を維持できなくなり、品質やスケジュールが乱れて契約先からの信頼を失います。信頼を失えば契約更新を打ち切られるおそれが出てきます。契約を失えば売上そのものが減り、赤字はさらに深まり、翌期の決算はいっそう悪化します。そうなれば、次の人材の受入れ審査はますます厳しく見られるようになります。この悪循環に一度入ると、自力で抜け出すのは簡単ではありません。
- 給食・弁当受託業が債務超過に陥る2つの構造的な原因
- 企業評価書の書き方を整理する3つの手順
- 企業評価書に記載する項目のサンプルイメージ
- 自社だけで対応する場合の限界とリスク
本記事は、法人支援150社以上の実績を持ち、中小企業庁認定の経営革新等支援機関でもある中小企業診断士が、給食・弁当受託業の実情を踏まえて解説します。読み終える頃には、価格転嫁の交渉と企業評価書の準備を同時に進める道筋が見えているはずです。
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給食受託・弁当製造業が価格転嫁できず企業評価書を求められる理由

給食・弁当受託業が赤字・債務超過に陥る原因は、複雑に見えて実は2つに整理できます。原因を正しく理解することが、企業評価書で「改善の見通し」を示す第一歩になります。
原因① 契約期間中は単価を変えられない
学校給食・社員食堂・宅配弁当の多くは、入札や年間契約・複数年契約によって単価があらかじめ固定されています。発注者にとっては予算管理がしやすい仕組みですが、受託側は契約期間中にコストが上がっても価格を据え置かざるを得ません。契約更新のタイミングまで、実質的に価格転嫁の手段がないのが実情です。契約が数年単位であれば、その間ずっとコスト増を自社で吸収し続けることになります。
原因② 原材料費と最低賃金が同時に上がる
米・食肉・野菜・食用油などの原材料費は、円安や天候要因で上下しやすく、下げ止まらない年も少なくありません。そこに最低賃金の毎年の引き上げが重なり、早朝・深夜の調理や配送を支えるパート・アルバイトの人件費が先に上がっていきます。日本銀行の企業物価指数でも食料品関連の価格上昇傾向が続いていることが示されており、原材料費と人件費の両方が同時に上がる年は、給食・弁当受託業にとって特に厳しい局面になります。帝国データバンクの価格転嫁に関する実態調査でも、費目によって価格転嫁の進み方に差があることが指摘されており、給食・弁当のような固定単価の業態は特に転嫁が遅れやすい構造にあります。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 契約構造 | 入札・複数年契約による単価固定で、契約期間中は価格転嫁できない |
| コスト構造 | 原材料費の高止まりと最低賃金の引き上げが同時に進み、利益率を圧迫する |
この2つの原因を放置すると、赤字が数期続いて純資産がマイナス(債務超過)になり、技能実習・特定技能・育成就労のいずれの制度でも、受入れや在留資格の更新の審査で「改善の見通しについて評価を行った書面(企業評価書)」の提出を求められます。この書面を用意できなければ、審査そのものが止まってしまい、現場の人手不足がさらに深刻になります。
要するに、給食・弁当受託業の債務超過は「経営の失敗」ではなく「契約構造上、価格転嫁が遅れやすい」という業界特有の事情によるところが大きいのです。だからこそ、感情論ではなく客観的な数字で改善の見通しを示す企業評価書が必要になります。原価が上がっているのに単価が動かせないという事実を、まず正確に把握することから始めましょう。
このまま何もしなければ、何が起きるか
この2つの原因を放置した場合の悪化シナリオも、具体的にイメージしておく必要があります。少子化にともない学校給食の対象校数が緩やかに減少している自治体もあり、既存契約を維持できなければ、調理設備や人員体制にかかる固定費の負担割合はさらに重くなります。農林水産省の食品価格動向に関する資料でも、原材料コストの高止まりが続いていることが示されており、対応を先送りするほど自己資本の毀損は進みます。2期・3期と赤字が続けば、金融機関からの新規融資も難しくなり、資金繰りと人材確保の両面で選択肢が狭まっていきます。早い段階で原価の可視化に着手できるかどうかが、その後の交渉力を大きく左右します。
企業評価書の基本を先に押さえたい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
企業評価書の書き方3つの手順|外国人技能実習のサンプルと記載イメージ

企業評価書を用意し、価格転嫁の遅れという根本原因を解消するには、次の3つの手順で進めます。
手順1 原価と契約条件のギャップを可視化する
まず、原材料費・人件費の推移と、契約単価の変化を並べて表にします。どの費目がどれだけ上がり、契約単価がどれだけ据え置かれているかを数値で示すことが、次の交渉と企業評価書の両方の土台になります。感覚ではなく数字で示すことで、発注者にも金融機関にも説得力のある説明ができるようになります。
手順2 発注者に単価改定を打診する
契約更新の時期に合わせて、可視化した数字を根拠に発注者へ単価改定を打診します。交渉がすぐにまとまらなくても、動いている事実そのものが「改善の見通し」の材料になります。学校給食や社員食堂であれば、栄養バランスや衛生管理の水準を維持するために原価が必要であることも、あわせて伝えるとよいでしょう。
手順3 中小企業診断士に企業評価書の作成を依頼する
単価改定の交渉には時間がかかることが少なくありません。交渉と並行して、中小企業診断士(または公認会計士)に企業評価書の作成を依頼し、技能実習・特定技能の受入れ審査を止めないようにします。企業評価書には、次のような項目を記載するのが一般的です。
| 記載項目 | 内容のイメージ |
|---|---|
| 企業概要 | 事業内容・受託先の種類(学校給食/社員食堂/宅配弁当 等)・従業員数 |
| 財務状況・債務超過の理由 | 契約単価が固定される構造と、原材料費・人件費の上昇という2つの原因の説明 |
| 改善の見通し | 単価改定交渉の進捗、原価管理の強化、新規契約先の開拓など具体的な改善策 |
この記載イメージはあくまで一般的な構成項目の一覧であり、実際の記載内容や数値は会社ごとの決算・契約状況に応じて作成します。架空の数値をそのまま流用することはできません。
手順1で作った原価と契約単価の比較表は、そのまま企業評価書の「財務状況・債務超過の理由」の裏付け資料としても使えます。手順2で発注者に打診した記録(打診した時期・提示した資料・発注者からの回答)も、「改善の見通し」の具体性を高める材料になります。手順を1つずつ積み重ねることが、結果として企業評価書の説得力を高めることにつながります。
なお、債務超過が続いている会社には、企業評価書とは別に「経営改善計画策定支援(405事業)」という制度もあります。金融機関と共有する本格的な経営改善計画を、専門家費用の3分の2を国が補助する形で作れる仕組みで、既存融資の返済条件の変更(リスケジュール)と組み合わせて資金繰りを立て直すことも可能です。倒産の可能性を下げる選択肢として、気になる方は次のページをご覧ください。
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価格転嫁と技能実習の受入れを両立させて手に入る未来

企業評価書を整え、価格転嫁の交渉も並行して進めた先には、次の3つの変化が見えてきます。
数字の軸 原価に見合った契約単価に近づく
可視化した原価データを根拠に交渉を重ねることで、これまで据え置かれてきた契約単価を、次の契約更新のタイミングで実態に見合った水準へ近づけられる可能性が高まります。原価と単価のギャップを毎期記録しておけば、次の交渉でも同じ資料をすぐに使えるようになります。
時間の軸 受入れ審査で足を止めずに済む
企業評価書が整っていれば、決算が債務超過であっても、技能実習・特定技能の受入れ審査や在留資格の更新手続きを止めずに進められます。人手不足で調理・配送の現場が回らなくなる事態を避けられ、繁忙期の受注も安定して受けられるようになります。
関係性の軸 発注者・監理団体との信頼が深まる
数字に基づいた誠実な交渉と、客観的な企業評価書の提示は、発注者や監理団体からの信頼にもつながります。「この会社はきちんと経営の実態を説明できる」という評価は、次の契約更新や新規受入れの場面でも生きてきます。
価格転嫁が遅れがちな給食・弁当受託業だからこそ、原価の可視化と企業評価書という2つの備えを、共に手に入れましょう。
3つの軸は、それぞれ単独で成立するものではなく、相互に支え合っています。数字の裏付けがあるからこそ発注者との交渉に時間をかけられ、審査を止めずに人材を確保できるからこそ現場が安定し、その安定した実績がさらに信頼を積み重ねていきます。一度この好循環に乗ってしまえば、翌期以降の企業評価書の更新も、ゼロから作り直すのではなく、蓄積したデータを更新するだけで済むようになります。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

普通の会社が自社だけで、企業評価書を作成することはできません。企業評価書は「改善の見通しについて評価を行った書面」であり、中小企業診断士または公認会計士という、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格者が作成することが求められています。自己流で作った書面を提出しても、客観性を欠くと判断され、審査で受け付けてもらえないリスクがあります。
とはいえ、給食・弁当受託業の契約構造や原価計算に不慣れな専門家に依頼すると、実態とかけ離れた評価になりかねません。専門性の壁に加えて、決算資料や契約条件を整理する時間的なコストや、伝え方を誤って審査に通らないリスクもあります。企業評価が拒否されないように、要点を理解している経験豊富な中小企業診断士を紹介します。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、法人支援150社以上の実績を持つ、中小企業庁認定の経営革新等支援機関です。代表は中小企業診断士・MBA(経営管理修士)であり、給食・弁当受託業を含む飲食料品製造業の財務分析と企業評価書の作成支援を行っています。東京・銀座を拠点としていますが、全国どこからでもオンラインでご相談いただけます。「近くに頼める専門家がいない」という心配は不要です。
まず契約条件と決算内容をヒアリングし、原価と単価のギャップを財務分析で数値化したうえで企業評価書を作成します。必要に応じて、発注者との価格転嫁交渉に使える資料の整理まで伴走します。書面を提出して終わりではなく、翌期以降も改善の見通しを更新し続けられる体制づくりまで見据えて支援します。
特に給食・弁当受託業は、契約先が自治体・学校法人・企業など多岐にわたり、それぞれ求められる説明の仕方が異なります。契約構造を理解したうえで企業評価書を作成できるかどうかが、審査を止めずに進められるかの分かれ目になります。自己流での対応や、業界事情に不慣れな専門家への依頼で時間を失う前に、早めに相談することをおすすめします。
企業評価書をまとめて確認したい方へ
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企業評価書のよくある質問|給食受託・特定技能の疑問を解消

Q. 企業評価書とは何ですか?
A. 直近の決算が債務超過(純資産がマイナス)の会社が、外国人技能実習・育成就労・特定技能の受入れや在留資格更新の審査を受ける際に提出を求められる書面です。会社の財務状況と、今後の改善の見通しについて第三者が客観的に評価します。名称は「改善の見通しについて評価を行った書面」で、企業評価書はその通称です。
Q. 企業評価書は誰が作成できますか?
A. 中小企業診断士または公認会計士が作成します。税理士は、税務の専門家ではありますが、企業評価を行う能力を有すると認められる資格者としては想定されておらず、企業評価書の作成者にはあたりません。
Q. 給食受託業でも企業評価書は必要ですか?
A. はい。学校給食・社員食堂・宅配弁当の受託会社であっても、外国人材の受入れを行う限り、直近決算が債務超過であれば業種を問わず企業評価書の提出を求められます。契約が入札・複数年契約で単価が固定されているという事情は、審査上の免除理由にはなりません。
Q. 特定技能の受入れでも企業評価書は必要ですか?
A. 必要になる場合があります。特定技能の定期届出では「過去3年間に債務超過となっていない法人」であることが一定の基準として示されており、これに該当しない場合は改善の見通しを示す書面の提出が求められることがあります。
Q. 技能実習と特定技能で、企業評価書の提出先は違いますか?
A. 技能実習は監理団体を通じて外国人技能実習機構(OTIT)へ、特定技能は出入国在留管理庁(地方出入国在留管理局)へ提出する流れになります。育成就労は2027年4月の制度開始後、監理支援機関を通じて外国人育成就労機構へ提出する見込みです。
Q. 企業評価書の記載項目のサンプルはありますか?
A. 本記事のH2-2で紹介した「企業概要」「財務状況・債務超過の理由」「改善の見通し」という3つの記載項目が一般的な構成です。実際の記載内容は会社ごとの決算・契約状況に応じて中小企業診断士が作成するため、そのまま流用できる汎用フォーマットではありません。
Q. 企業評価書の作成にはどのくらい時間がかかりますか?
A. 決算資料や契約条件のヒアリング内容によって異なります。受入れ審査や在留資格更新のスケジュールに間に合うよう、余裕を持った早めの相談をおすすめします。
Q. 価格転嫁の交渉と企業評価書の準備は、どちらを先にすべきですか?
A. 同時並行がおすすめです。価格転嫁の交渉は発注者の契約更新時期に左右され、まとまるまで時間がかかることが多いため、その間に受入れ審査が止まらないよう企業評価書を準備しておく方が安全です。
Q. 育成就労制度に移行しても企業評価書は必要ですか?
A. 2027年4月に予定されている育成就労制度への移行後も、債務超過の会社には改善の見通しを示す書面の提出が求められる見込みです。制度の詳細は、今後の運用要領の公表を待って確認する必要があります。
Q. 改善報告書と企業評価書は同じ書類ですか?
A. 名称が似ていますが、両者の異同は確認できていません。混同して提出すると審査が滞る可能性があるため、監理団体や専門家に個別に確認することをおすすめします。
Q. 企業評価書を提出しても、受入れが認められないことはありますか?
A. 企業評価書はあくまで改善の見通しを客観的に示す書面であり、提出すれば必ず受入れが認められると保証するものではありません。記載内容の具体性や、実際に改善に向けた行動(価格転嫁交渉や原価管理の強化など)が伴っているかどうかも、審査の判断材料になります。
まとめ
給食・弁当受託業の赤字・債務超過は、経営努力が足りないからではなく、入札・複数年契約による単価固定と原材料費・最低賃金の上昇という、業界構造に根ざした2つの原因が重なって起きています。原価を可視化して発注者と交渉を進めつつ、中小企業診断士による企業評価書を並行して準備すれば、技能実習・特定技能の受入れ審査を止めずに、改善への道筋を客観的に示すことができます。契約更新のタイミングは待ってくれませんし、決算の期限も先延ばしにはできません。だからこそ、原価の可視化と企業評価書の準備は、できるだけ早く同時に動かし始めることが大切です。一人で抱え込まず、まずは現状を専門家に話すところから始めてみてください。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
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