
「原材料は値上がりする一方なのに、親事業者に価格を認めてもらえない」。金属加工業の経営者から、こうした声を聞く機会が増えています。切削・プレス・溶接・板金など、日本のものづくりを支える金属加工業は、電気代・鋼材価格の高騰と人手不足が同時に進み、利益が残らない構造に追い込まれがちです。原材料費の価格転嫁率が80.0%であるのに対し、労務費の転嫁率はわずか30.0%にとどまるという調査結果もあります(公正取引委員会・中小企業庁「価格転嫁に係る業種分析報告書」)。人を増やしたくても人件費が価格に反映されず、赤字や債務超過に陥る会社は少なくありません。それでも、外国人材の受入れをあきらめる必要はありません。この記事では、価格転嫁が進まず債務超過に陥った金属加工業が、特定技能や育成就労で外国人材を受け入れるために満たすべき4つの条件を、中小企業診断士の実務視点で解説します。
この記事で分かること
- 金属加工業で価格転嫁が進まず赤字・債務超過に陥る構造的な理由
- 債務超過のまま何も対策しないと受入れ審査でどうなるか
- 特定技能・育成就労の受入れに必要な企業評価書の4つの条件
- 企業評価書を中小企業診断士に依頼するメリットと進め方
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価格転嫁が進まない金属加工業が、赤字・債務超過に陥る構造

金属加工業の多くは、大手メーカーや商社を親事業者とする下請け構造の中にあります。見積りの主導権は親事業者側にあり、鋼材やアルミ、電気代が上がっても、こちらから価格改定を切り出すのは容易ではありません。「この価格では赤字だと分かっていても、取引を失うのが怖くて受注してしまう」という声は、金属加工業の現場でよく聞かれます。
原材料費より労務費の転嫁が遅れている
公正取引委員会・中小企業庁の調査では、コスト別の価格転嫁率(中央値)は原材料価格が80.0%であるのに対し、エネルギーコストは50.0%、労務費に至っては30.0%にとどまると報告されています。鋼材の値上がり分は比較的認めてもらいやすい一方、人を採用し、賃上げをするための費用は価格にほとんど反映されていないのが実態です。人手不足で外国人材の採用を急ぎたい会社ほど、人件費の増加分を価格に乗せられず、利益が圧迫されるという矛盾を抱えています。
受注は増えているのに、手元にお金が残らない
金属加工業の経営相談で目立つのが、「受注は減っていないのに、決算を締めると利益が残らない」という声です。原因を分解すると、鋼材やアルミの仕入価格は決算のたびに上がっているのに、既存の取引価格がそのまま据え置かれているケースが大半です。さらに、電気代の上昇分は転嫁できても、増員のために払った人件費や残業代は「自社の生産性向上で吸収すべきもの」として扱われ、価格に反映されにくいという構造的な認識のズレもあります。人を採用するほど固定費が増え、粗利率がじわじわと下がっていく。これが、金属加工業で赤字・債務超過が進む典型的なパターンです。
何も対策しないと、受入れ審査でこうなる
金属加工業が該当する特定技能「工業製品製造業」分野(旧・素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野)は、出入国在留管理庁が公表する5年間の受入れ見込数が16分野の中でも最大級とされ、多くの企業が受入れを検討しています。しかし、直近の事業年度末で債務超過にある会社は、そのままでは受入れの審査を通過できません。技能実習・特定技能・育成就労のいずれも、債務超過がある場合は改善の見通しを客観的に示す書面(企業評価書)の提出が求められるためです。
ここで多くの経営者が誤解しやすいのが、「赤字だから受入れをあきらめるしかない」という思い込みです。実際には、債務超過そのものが受入れを妨げているのではなく、改善の見通しを客観的に説明できていないことが審査を止めている場合がほとんどです。原因と改善の道筋さえ示せれば、審査は前に進みます。
| 状態 | 受入れ審査への影響 |
|---|---|
| 企業評価書を用意せず放置 | 債務超過を理由に受入れが認められない、または申請が長期化する |
| 自社だけで簡易な書面を作成 | 第三者による客観性がないと判断され、差し戻しになりやすい |
| 中小企業診断士による企業評価書を用意 | 改善の見通しが客観的に示され、審査を進めやすくなる |
放置すればするほど、繁忙期に必要な人材が確保できないまま受注機会を逃し、結果としてさらに利益が残らない状態が続きます。赤字は「今の数字」の問題ですが、人材不足は「来年、再来年の受注」の問題だと捉えることが大切です。
現場でよくある失敗パターン
企業評価書の準備でよく見られる失敗が、決算書の数字をただ並べるだけで終わってしまうケースです。売上・利益の推移表を添付しただけの資料では、なぜ赤字になったのか、どう改善するのかが伝わらず、差し戻しにつながりやすくなります。もう一つの失敗が、顧問税理士に相談すれば足りると考え、準備を先延ばしにしてしまうケースです。前述のとおり、企業評価書を作成できるのは中小企業診断士または公認会計士に限られるため、税理士への相談だけでは受入れ準備は完結しません。制度上の要件を早い段階で正しく理解しておくことが、遠回りを避ける近道になります。
金属加工業が特定技能を受入れる4つの条件

結論から言えば、価格転嫁が進まず債務超過に陥っていても、次の4つの条件を満たす企業評価書を用意できれば、特定技能・育成就労の受入れを前に進めることができます。抽象的な「頑張ります」ではなく、数字で語れる状態にすることがポイントです。
条件1:債務超過の原因を構造的要因として客観的に特定する
まず必要なのは、赤字や債務超過の原因を「なんとなく景気が悪いから」ではなく、構造的な要因として言語化することです。金属加工業であれば、労務費の価格転嫁率が原材料費より50ポイント近く低いという業界共通の構造や、特定の親事業者への売上依存度、原価管理の未整備などを、決算書の数字とあわせて説明します。原因が特定できていない企業評価書は、審査側から見ても改善の実現可能性が伝わりません。
実務では、直近3期分の決算書を並べ、売上総利益率がどの期からどれだけ下がったか、その下落が原材料費・エネルギーコスト・労務費のどこに起因するかを分解します。「利益が残らないのは売上が足りないからではなく、原価と価格の差が縮んでいるから」という構造を数字で示せると、審査側にも改善の余地があることが伝わりやすくなります。
条件2:数値に基づく具体的な改善計画を示す
次に、原価管理の見直しと価格改定交渉のロードマップを、数値で示します。品番ごとの原価を洗い出し、赤字品番から優先的に価格改定を申し入れる、といった手順です。実際に主要取引先へ品番単位で価格改定を提示し、多くの品番で希望額が実現し、会社全体の利益改善につながった金属加工業の事例も報告されています。「いつまでに」「どの品番で」「何パーセントの改定を目指すか」まで落とし込むことが、抽象論で終わらせないための分岐点です。
改善計画には、価格改定だけでなく、歩留まり改善や段取り時間の短縮といった原価そのものを下げる施策もあわせて盛り込みます。価格交渉には相手企業の事情もあり、思うように進まない場合もあるため、「価格転嫁」と「原価低減」の両輪で改善シナリオを描くことが、評価書面の説得力を高めます。
条件3:資金繰り・返済計画の実行可能性を裏付ける
改善計画が絵に描いた餅にならないよう、資金繰り表と返済計画をセットで示します。借入先ごとの残高・返済条件を整理し、改善計画によって何年後にどこまで債務超過が解消される見込みかを、月次のキャッシュフローに落とし込みます。金融機関との返済猶予(リスケジュール)の状況がある場合は、その経緯もあわせて記載し、資金繰りの実行可能性を裏付けます。
ここで重要なのは、楽観的すぎる数値を置かないことです。過去の実績から大きく乖離した改善率を並べると、かえって信ぴょう性を欠く評価書面になります。保守的に見積もった数値で、それでも改善の道筋が成り立つことを示す方が、審査側の信頼を得やすくなります。
条件4:中小企業診断士による第三者評価書面を取得する
最後に、これらの内容を第三者の専門家がまとめた書面にすることです。改善見通しに関する評価書面(企業評価書)を作成できるのは、中小企業診断士または公認会計士に限られ、税理士は対象になりません。自社の担当者が作った資料では「身内の見通し」として扱われやすく、客観性を示すには外部の専門家による評価が欠かせません。中小企業診断士による企業評価書の作成支援を活用すれば、原因分析から改善計画の数値化まで、一気通貫で書面に落とし込むことができます。
企業評価書には、決算書の数値だけでなく、経営者へのヒアリングを踏まえた事業の実態や、受入れ後の育成体制についても記載します。財務データと現場の実情の両方を反映した書面であるほど、改善の見通しに説得力が生まれます。
| 条件 | 押さえるポイント |
|---|---|
| 1. 原因の特定 | 労務費転嫁の遅れなど構造要因を決算数値と結びつける |
| 2. 改善計画の数値化 | 品番別の価格改定と原価低減をロードマップ化する |
| 3. 資金繰りの裏付け | 借入条件と月次キャッシュフローを保守的に見積もる |
| 4. 第三者評価の取得 | 中小企業診断士または公認会計士に評価書面を依頼する |
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは決算書と受入れの状況をお聞かせください。
4つの条件を満たしたその先に、手に入る未来

企業評価書を整え、4つの条件を満たすことで変わるのは、審査書類が1枚増えることだけではありません。
数字の軸:価格転嫁の実績が経営データとして残る
品番ごとの価格改定交渉を積み重ねると、労務費の転嫁率という「言い訳のできない数字」が改善していきます。原価管理の仕組みが社内に残るため、次に原材料価格が動いたときも、根拠を持って交渉に臨めるようになります。これは特定技能の審査だけでなく、金融機関に決算書を説明するときの材料にもなります。
時間の軸:採用と定着の見通しが立つ
受入れの目処が立てば、育成就労への移行を含めた中長期の採用計画を組めるようになります。人手不足を理由に受注を断る場面が減り、繁忙期の対応力が上がります。急な欠員が出るたびに現場をやりくりする状態から、計画的に人員を配置できる状態へと変わっていきます。
関係性の軸:親事業者・金融機関との対話が変わる
原価と改善計画を数字で語れる会社は、親事業者との価格交渉でも、金融機関との返済協議でも、対等な立場で話しやすくなります。「お願いして値上げを聞いてもらう」関係から、「原価の根拠を示して協議する」関係へ。社員にとっても、経営の見通しが数字で説明される会社は、安心して働き続けられる会社になります。「値上げをお願いする会社」から「改善の見通しを説明できる会社」へ。この変化を、共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、KICKコンサルティングの支援

原価計算や資金繰り表の作成は、日々の受注対応に追われる中で後回しになりがちです。決算書の数字を分析し、改善見通しに関する評価書面としてまとめるには、財務分析の専門知識と、審査側が何を確認したいのかという実務経験の両方が求められます。自己流でまとめた書面は、数値の根拠が弱く、差し戻しや再提出につながることも珍しくありません。
特に金属加工業では、原価計算の単位が案件ごと・品番ごとに細かく分かれているため、どの数字を根拠として使うべきかの判断だけでも時間がかかります。経理担当者が1人しかいない、あるいは経営者自身が経理を兼務しているという会社も多く、通常業務と並行して評価書面をまとめるのは現実的に難しい場合があります。だからこそ、原価分析や書面作成の実務に慣れた専門家に任せる経営者が増えています。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、法人支援実績150社以上、認定経営革新等支援機関(中小企業庁)として、中小企業診断士・公認会計士による企業評価書の作成を支援しています。原因分析、改善計画の数値化、資金繰り計画の作成まで、経営改善の実務を一気通貫で伴走する点が特長です。「申請書類を整えるだけ」ではなく、利益が残る構造そのものを見直すところまで踏み込んで支援します。
- 直近3期の決算書をもとにした原因分析と、赤字・債務超過に至った構造の言語化
- 品番別・取引先別の原価分析と、価格改定交渉に使えるデータの整理
- 月次資金繰り表の作成と、返済計画の実行可能性の検証
- 中小企業診断士による改善見通しに関する評価書面(企業評価書)の作成
「経営改善は精神論ではなく構造改善である」という考え方のもと、数字を見える化し、利益が残る構造へ転換するところまで伴走するのが、KICKコンサルティングの支援スタイルです。特定技能・育成就労の受入れをきっかけに、原価管理そのものを見直したいという経営者の相談にも対応しています。
お断りいただいても構いません。費用は一切かかりません。しつこい営業もありませんので、まずは現状の決算状況だけでもお聞かせください。
よくある質問

Q. 債務超過の金属加工業でも特定技能の受入れは可能ですか。
A. 直近の事業年度末で債務超過があっても、改善の見通しを示す企業評価書を用意できれば、受入れを前に進められる可能性があります。書面がないまま申請すると、原因や改善計画の説明が不足していると判断され、審査が長期化しやすくなります。早めに準備に着手することが、結果的に受入れまでの期間を短くします。
Q. 企業評価書は誰が作成できますか。
A. 中小企業診断士または公認会計士が作成できます。顧問税理士に決算の相談をしている会社でも、税理士単独では企業評価書を作成できない点に注意が必要です。第三者性のある専門家による評価であることが重視されます。
Q. 労務費の価格転嫁率が低いのは、当社だけの問題ですか。
A. 業界全体の傾向です。公正取引委員会・中小企業庁の調査では、原材料価格の転嫁率が80.0%であるのに対し、労務費は30.0%にとどまるとされています。多くの金属加工業が同じ壁に直面しており、経営者個人の努力不足が原因ではありません。
Q. 特定技能「工業製品製造業」分野とはどのような分野ですか。
A. 機械金属加工や機械組立などを含む分野で、旧称は素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野です。特定技能16分野の中でも受入れ見込数が最大級とされる分野で、金属加工業からの受入れニーズが特に高い分野です。
Q. 育成就労制度が始まると、何が変わりますか。
A. 育成就労制度は技能実習制度を発展的に解消するかたちで、2027年4月の施行が予定されています。債務超過がある場合に改善見通しの評価書面が求められる点は、現行制度と同様に引き継がれる想定です。制度移行後を見据えて、今のうちに原価構造の改善に着手しておくことが望ましいと考えられます。
Q. 企業評価書の作成にはどのくらいの期間がかかりますか。
A. 決算書の内容や資料の準備状況によって変わります。原因分析と改善計画の数値化に一定の時間を要するため、受入れを検討し始めた段階で早めに相談することをおすすめします。資料の準備が整っているほど、書面の作成はスムーズに進みます。
Q. 価格改定交渉は、どこから手をつければよいですか。
A. すべての品番を一度に交渉するのではなく、赤字幅が大きい品番から優先順位をつけて交渉することが現実的です。原価の見える化が交渉の前提になるため、まずは品番ごとの原価を洗い出すところから始めます。
Q. 金融機関への説明にも企業評価書は使えますか。
A. 企業評価書に記載する原因分析や改善計画は、金融機関への決算説明や返済協議の資料としても活用できます。数字の根拠が明確な資料は、金融機関との対話を進めやすくし、既存借入の返済条件の見直しを相談する際の材料にもなります。
Q. 従業員数が少ない小規模な金属加工業でも依頼できますか。
A. 従業員数の規模にかかわらず依頼できます。むしろ小規模な会社ほど、原価計算や資金繰り管理を担う専任の担当者がいないことが多く、外部の専門家による支援の効果を感じやすい傾向にあります。
Q. 相談は無料ですか。
A. 初回のご相談は無料です。決算の状況をお伺いしたうえで、企業評価書の要否や進め方をご案内します。その場でのご契約を求めることはなく、お断りいただいても費用は一切かかりません。
まとめ

金属加工業の赤字・債務超過は、経営努力が足りないからではなく、原材料費に比べて労務費の価格転嫁が進みにくいという構造的な壁が背景にあります。この壁を放置したまま特定技能の受入れを申請しても、審査は前に進みません。原因を客観的に特定する、改善計画を数値化する、資金繰りの実行可能性を示す、中小企業診断士による評価書面を取得する。この4つの条件を満たすことが、価格転嫁できない金属加工業が特定技能・育成就労を受け入れるための現実的な道筋です。
大切なのは、企業評価書を「審査を通すための書類」として捉えるのではなく、自社の原価構造を見直すきっかけとして活用することです。価格転嫁と原価低減の両輪で利益が残る構造をつくれば、その効果は外国人材の受入れにとどまらず、今後の事業の土台そのものを強くします。売上を追うのではなく、利益が残る構造をつくることが、金属加工業の経営改善における本質です。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、企業評価書の作成から利益が残る原価構造への転換まで、中小企業診断士が伴走して支援します。まずは現状の決算状況をお聞かせください。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。費用は一切かかりません。
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