
船体ブロック製造会社が特定技能の受入れについて、加入している監理団体に相談したところ、「決算が債務超過のままでは、受入れの手続きを進められません。企業評価書を用意してください」と言われた。
「最低賃金の改定で人件費が増えたうえ、ドックやクレーンの更新費用も重なり、今期は赤字になりそうだ」――そんな状況ではないでしょうか。
10月は多くの都道府県で最低賃金の改定が順次発効し、来期の人員計画や設備投資の見直しを迫られる時期です。船体ブロック製造の現場では、人件費と大型設備の維持更新費が同時に重くのしかかり、決算が債務超過に陥るケースが少なくありません。
そこに特定技能や技能実習(育成就労)で外国人材の受入れを検討すると、「改善の見通しについて評価を行った書面(企業評価書)」の提出を求められ、何から手をつければよいのか分からず立ち止まってしまう――あなただけではありません。
結論から言えば、赤字や債務超過があっても、客観的な企業評価書を用意できれば受入れの道は閉ざされません。ただし、誰に・どう頼むかで結果は大きく変わります。詳しい進め方は本文で解説します。
この記事はこんな方におすすめです
- 最低賃金の改定で人件費が急に増えた方
- ドックやクレーンの更新費用がのしかかる方
- 決算が債務超過で受入れ審査が不安な方
- 企業評価書を誰に頼めばよいか分からない方
この記事で分かること
- 船体ブロック製造会社が債務超過に陥る典型的な構造
- 特定技能の受入れに必要な企業評価書の記載イメージ
- 企業評価書を用意する3つの手順
- 中小企業診断士に依頼するメリットと流れ
この記事は、法人支援150社以上の実績を持つ中小企業診断士が、企業評価書の記載イメージとあわせて解説します。読み終える頃には、自社が今どの段階にいて、次に何をすべきかが具体的に分かります。
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船体ブロック製造会社が人件費増で企業評価書を求められる理由

船体ブロック製造会社は、造船所から船体の一部区画の製作を請け負う専門工場です。溶接工や鉄工の技能人材への依存度が高く、人件費と設備投資の負担が経営に直結しやすい業態です。造船・舶用工業分野は特定技能の対象分野の一つでもあり、外国人材の受入れを検討する企業が増えています。
一方で、造船所からの発注は船舶の建造計画に左右されるため、受注量を自社の都合だけでコントロールしにくい面があります。人材と設備を高い水準で維持しながら、受注の波に対応し続けなければならない点が、この業態の経営を難しくしています。
赤字・債務超過に陥る3つの構造要因
原因は一つではなく、複数が重なって進行するのが実情です。気づかないうちに複合して進むことが、この業態の特徴です。
| 要因 | 経営への影響 |
|---|---|
| 最低賃金の改定による人件費増 | 溶接工・鉄工など直接工の賃金が底上げされ、固定費が膨らむ |
| ドック・大型クレーン等の維持更新投資 | 減価償却費と維持修繕費が重なり、キャッシュフローを圧迫する |
| 造船所からの受注量の波(繁閑差) | 閑散期でも人員・設備を維持せざるを得ず、稼働率が下がる |
この3つが同時に進むと、単年度の赤字にとどまらず、資産より負債が上回る債務超過に至ることがあります。決算書だけを見た第三者には、「一時的な業績悪化」なのか「構造的な問題」なのかが伝わりにくいのが実務上の壁です。
放置した場合に起きること
債務超過の状態を放置したまま特定技能や技能実習(育成就労)の受入れ手続きを進めると、審査の段階でつまずく可能性があります。
厚生労働省の資料には、監理団体の財産的基礎について、直近期末に債務超過がある場合は「中小企業診断士、公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が改善の見通しについて評価を行った書面」の提出を求める旨が記載されています。受入れ企業側でも、同様の客観的な評価が実務上求められる場面があります。
準備が遅れるほど、必要な人材の確保が後ろ倒しになり、受注できたはずの仕事を逃すリスクが高まります。そのため、赤字や債務超過に気づいた段階で早めに動き出すことが重要です。
船体ブロック製造業に特有の資金繰りの難しさ
船体ブロック製造は、受注してから完成・引き渡しまでの製作期間が長く、材料費や人件費が先行して発生しやすい業態です。造船所からの入金までのあいだ、運転資金を自社で立て替える形になりやすく、資金繰りが締まりやすい構造があります。
そこに最低賃金の改定や設備更新の負担が重なると、単月の資金繰りだけでなく、決算全体の純資産が目減りしていきます。帝国データバンクなどの調査でも、人件費の上昇が中小の製造業・下請企業の収益を圧迫していると指摘されており、船体ブロック製造会社に限った問題ではありません。
だからこそ、「自社だけが特別に悪い状況にある」と抱え込みすぎず、業界に共通する構造として客観的に説明できる状態を整えることが、受入れ審査を突破するうえでの近道になります。
決算書だけでは伝わらないこと
金融機関や審査機関は、決算書の数字そのものは確認できても、「なぜその数字になったのか」「今後どう改善していくのか」までは決算書だけから読み取れません。そこを補うのが、改善の見通しについて評価を行った書面、つまり企業評価書の役割です。
要するに、船体ブロック製造会社の債務超過は「人件費」「設備投資」「受注の波」という3つの構造要因と、業態特有の資金繰りの難しさが絡み合って生まれます。次章では、この状況から特定技能の受入れへ進むための具体的な手順を見ていきます。
企業評価書の基本を先に押さえたい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
特定技能を受入れる3つの手順|企業評価書のサンプルと書き方

債務超過があっても、次の3つの手順を踏めば、特定技能や外国人技能実習(育成就労)の受入れ準備を前に進められます。丸投げしたいほど頼りたい気持ちに、専門家として応えられる部分です。
- 直近の決算内容を整理し、債務超過に至った理由(人件費増・設備投資・受注の波など)を数値で言語化する
- 設備投資の返済計画や受注見込みをもとに、改善の見通し(いつ、どの程度、黒字化・純資産回復が見込めるか)をまとめる
- 中小企業診断士または公認会計士に依頼し、改善の見通しについて評価を行った書面(企業評価書)を作成してもらう
ここで注意したいのは、企業評価書を作成できる資格者です。作成できるのは中小企業診断士または公認会計士に限られ、税理士は作成できません。顧問税理士に決算内容を相談すること自体は有効ですが、書面の作成そのものは別の専門家に依頼する必要があります。
企業評価書のサンプル・記載イメージ
「実際どんなものか分からない」という声が多いため、一般的な構成項目を表にまとめました。架空の記載例ではなく、一般的に含まれる項目名の一覧です。
| 記載項目 | 記載イメージ |
|---|---|
| 企業概要 | 事業内容・沿革・主要な取引先(造船所等)との関係 |
| 財務状況・債務超過の理由 | 人件費増、設備投資、受注の波など、債務超過に至った要因の説明 |
| 改善の見通し | 受注計画・資金繰り計画をもとにした、純資産回復の見通し |
| 評価者の所見 | 中小企業診断士等の第三者による客観的な評価コメント |
このように、企業評価書は決算書の数字だけでなく、「なぜ債務超過になったのか」「どう改善していくのか」を第三者の目線で言語化した書面です。自社だけで作成しようとすると、この客観性の担保が難しくなります。
書き方で気をつけたいポイント
企業評価書を準備するとき、次の点でつまずく経営者・総務担当者が少なくありません。
- 債務超過の理由を「業界全体の不況」など抽象的な言葉で済ませてしまう
- 改善の見通しに具体的な数値や根拠がなく、印象論にとどまる
- 設備投資の返済計画と、受注見込みの数字が連動していない
抽象的な説明ほど、審査で「もう少し具体的に」と追加の確認を求められやすくなります。受注の見通し、返済計画、人員計画をひとつの筋道として示せるかどうかが、書面の説得力を左右します。
ここまで整理したうえで中小企業診断士に依頼すると、ヒアリングから書面の完成までがスムーズに進みます。逆に、決算の整理が済んでいない状態で依頼すると、準備に想定より時間がかかることがあります。
企業評価書の作成サービスについては、次のページで詳しくまとめています。
外国人技能実習・特定技能の企業評価書について 社長やご担当者の方へ。“あなた”は今、このようなお悩みを抱えていませんか。 外国人技能実習制度を活用したいが、企業評価書の作成方法が分からないという方 特定技能外国人の受入れにあたり、経営改善の見通しについて評価が必要だ...
要するに、決算の整理・改善の見通しの言語化・専門家への依頼という3つの手順を踏めば、債務超過があっても受入れ準備は着実に進められます。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは決算の状況をお聞かせください。
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人件費増と設備負担を乗り越え特定技能の受入れで手に入る未来

企業評価書を整え、特定技能や技能実習(育成就労)の受入れが実現すると、経営は次の3つの軸で変わっていきます。
人材の軸で変わること
溶接・鉄工などの技能を持つ外国人材が加わることで、繁忙期の稼働率を維持しながら、既存社員の残業負担を減らせます。人手不足で受けられなかった仕事にも対応しやすくなり、造船所からの発注に「対応できません」と答える場面が減っていきます。
技能実習(育成就労)から特定技能へ移行する人材を計画的に育てられれば、数年単位で戦力化できる人材が社内に育っていきます。採用のたびにゼロから探す状態から抜け出せます。
時間の軸で変わること
企業評価書という客観的な裏付けがあることで、審査に必要な準備を早い段階で終えられます。行き当たりばったりの対応に追われる時間が減り、本業である船体ブロックの製作や、設備投資の意思決定に使える時間が増えます。
毎年の定期報告のたびに慌てて資料をかき集める状態から、決算の整理を日常的な業務として位置づけられる状態へ変わっていきます。
関係性の軸で変わること
金融機関や造船所などの取引先に対しても、改善の見通しを客観的な書面で説明できることは、信頼関係の維持につながります。「なんとなく厳しい」ではなく、根拠を持って状況を説明できる状態になります。
受入れが実現した後は、外国人材本人やその家族にとっても、安定した職場という安心につながります。人材の定着は、結果として採用コストの抑制にもつながります。
人件費の増加や設備投資の負担は、簡単には消えません。それでも、審査を通過し、必要な人材を確保できる状態を、共に手に入れましょう。
受入れが軌道に乗った企業では、外国人材が現場の中核として定着し、日本人社員の指導役を任されるまでに育つケースもあります。最初の一歩である企業評価書の準備が、数年先の現場体制を左右すると考えると、早めに動く価値は十分にあります。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

「決算書は自社でも作れるのだから、企業評価書も自社で書けるのではないか」と考える経営者もいます。しかし、企業評価書には専門性の壁があります。
専門性の壁
企業評価書は、財務分析の知識に加え、改善の見通しを説得力のある形で言語化する技術が求められます。自社の関係者が作成したものは、客観性の面で評価されにくいという構造上の問題があります。
時間コストの壁
本業である船体ブロックの製作を続けながら、決算の整理・改善計画の作成・書面のとりまとめを並行して進めるのは、多くの経営者・総務担当者にとって大きな負担です。
判断ミスのリスク
記載内容や根拠の示し方を誤ると、審査で追加の説明を求められ、受入れ時期が後ろ倒しになることがあります。だからこそ、企業評価書の作成に強い専門家に任せる経営者が増えています。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士が中心となり、法人支援150社以上の実績のもとで企業評価書の作成を支援しています。決算内容のヒアリングから、改善の見通しの言語化、書面のとりまとめまで、経営者・総務担当者に伴走します。
中小企業診断士に依頼するメリット
中小企業診断士は、財務分析だけでなく、経営改善計画の策定を専門領域とする国家資格です。船体ブロック製造業のように、受注の波や設備投資の負担が大きい業態でも、業界特有の事情を踏まえたうえで、改善の見通しを説得力のある形に言語化できます。
また、認定経営革新等支援機関(中小企業庁)としての立場から、企業評価書の作成にとどまらず、資金繰りや設備投資計画の相談まで含めて伴走できる点も、自社だけで進める場合との大きな違いです。
企業評価書をまとめて確認したい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは今の状況をお聞かせください。
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企業評価書のよくある質問|特定技能・債務超過の疑問を解消

Q. 企業評価書とは何ですか。
A. 正式には「改善の見通しについて評価を行った書面」と呼ばれ、直近期末に債務超過がある企業が、特定技能や技能実習(育成就労)の受入れにあたって提出を求められる書面です。中小企業診断士または公認会計士など、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格者が作成します。
Q. 企業評価書のサンプルやフォーマットはありますか。
A. 決まった様式が公開されているわけではありませんが、企業概要・財務状況と債務超過の理由・改善の見通しという記載項目は共通しています。本文の表で紹介した記載イメージを参考にしてください。
Q. 企業評価書は税理士に頼めますか。
A. 作成できるのは中小企業診断士または公認会計士であり、税理士は作成できません。顧問税理士への決算相談と、企業評価書の作成は別の専門家に分けて依頼する必要があります。
Q. 債務超過の理由書は企業評価書と同じですか。
A. 債務超過理由書は、債務超過に至った経緯を説明する書類として求められることがある一方、企業評価書は第三者の資格者による客観的な評価を伴う点が異なります。あわせて準備を求められる場合もあります。
Q. 特定技能の定期報告でも債務超過は影響しますか。
A. 特定技能の定期報告では、直近の一定期間に債務超過となっていないことなどが確認される場面があります。届出の簡素化の可否にも関わるため、決算状況は日頃から整理しておくことをおすすめします。
Q. 育成就労制度でも企業評価書は必要になりますか。
A. 育成就労制度は2027年4月に施行が予定されている新しい制度です。現行の技能実習・特定技能と同様に、監理支援機関の財産的基礎に関する要件が設けられる見通しのため、債務超過がある場合は同様の客観的な評価を準備しておくと安心です。
Q. 船体ブロック製造会社でも特定技能の受入れはできますか。
A. 造船・舶用工業分野は特定技能の対象分野です。船体ブロック製造会社も、溶接・鉄工などの技能を持つ人材の受入れ対象になり得ます。決算が債務超過であっても、企業評価書を用意すれば審査の土台を整えられます。
Q. 特定技能と技能実習(育成就労)のどちらを検討すればよいですか。
A. すでに就労経験のある人材を早期に戦力化したい場合は特定技能、自社で時間をかけて育成したい場合は技能実習(育成就労)が向いています。どちらを選ぶ場合でも、債務超過があるときの企業評価書の考え方は共通しています。自社の人員計画に合わせて選ぶことをおすすめします。
Q. 企業評価書の作成にどのくらいの期間がかかりますか。
A. 決算内容の整理状況によって前後しますが、ヒアリングから書面のとりまとめまで、一定の準備期間を見込んでおくと安心です。受入れ時期から逆算し、早めに相談を始めることをおすすめします。決算の整理が済んでいるほど、準備はスムーズに進みます。
Q. 企業評価書は中小企業診断士なら誰でも対応できますか。
A. 資格そのものは要件を満たしますが、外国人材の受入れ制度や造船・舶用工業分野の実務に詳しい診断士に依頼すると、記載内容の精度が上がりやすくなります。実績を確認したうえで依頼先を選ぶことをおすすめします。
Q. 赤字が数期続いていても企業評価書は作成できますか。
A. 単年度の赤字だけでなく、数期にわたって赤字が続いている場合でも、改善の見通しを具体的な根拠とともに示せれば、企業評価書として成立します。重要なのは赤字の期間の長さではなく、今後の改善計画に説得力があるかどうかです。
Q. 監理団体や監理支援機関も同じ書面が必要になりますか。
A. 監理団体(育成就労制度では監理支援機関)についても、財産的基礎の要件のなかで、直近期末に債務超過がある場合は同様の評価書面の提出が求められる場合があります。受入れ企業と監理団体の双方で、決算状況を早めに確認しておくと安心です。
まとめ|企業評価書は船体ブロック製造会社の受入れを支える鍵
最低賃金の改定による人件費増と、ドックやクレーンなどの設備更新負担が重なることは、船体ブロック製造会社にとって珍しいことではありません。決算が債務超過に陥ったとしても、それ自体が特定技能の受入れを閉ざすわけではありません。
大切なのは、決算内容を整理し、改善の見通しを言語化し、中小企業診断士による企業評価書という客観的な裏付けを用意することです。この3つの手順を踏めば、受入れ審査の土台は整います。
最低賃金の改定は今後も続きます。設備の維持更新も避けて通れません。だからこそ、赤字や債務超過を一時的な言い訳にせず、改善の見通しを客観的に示せる体制を、今のうちに整えておくことが、来期以降の経営を左右します。
人手不足に悩まされ続ける未来ではなく、必要な人材を確保しながら経営を立て直していく未来を、一緒に描いていきましょう。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
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