
「そろそろ会社を譲る話を進めたいが、法人保険をどうすればいいのか分からない」——そう感じている経営者の方は少なくありません。承継の準備を進めるなかで、自社株や後継者育成の話は前に進んでも、法人保険だけは加入した当時のまま何年も放置されているケースが多く見られます。
特に会社を第三者へ譲る第三者承継(M&A)では、法人保険の契約内容が整理されていないと、譲渡交渉の途中で相手側から契約者や保険金の扱いを確認され、思わぬ足止めになることがあります。保険を「入りっぱなし」のまま交渉の場に立つのはリスクです。
この記事では、中小企業診断士・事業承継士として法人支援を行うKICKコンサルティング株式会社(銀座本社)が、第三者承継を見据えたときに法人保険をどう点検し、整理すればよいかを3つのチェック項目に沿って解説します。保険を減らすことが目的ではなく、承継のフェーズに合わせて役割を再設計することが目的です。削りすぎれば、万一のときの事業継続や家族の生活に影響が出ることもあるため、両面から考えていきます。
- 会社の譲渡(第三者承継)を検討している経営者の方
- 法人保険の目的があいまいになっている経営者の方
- M&Aの交渉を控え、契約の整理を急いでいる方
- 保険の解約・見直しの判断に迷っている方
- 第三者承継で法人保険を放置すると起きる問題
- 法人保険を点検する3つのチェック項目
- 保険を整理した先に手に入る安心
- 税務の判断で押さえておきたい役割分担
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事業承継の第三者承継で、法人保険を放置すると起きる問題

会社を譲渡する第三者承継では、譲渡先の企業や仲介会社が財務内容だけでなく、契約関係も含めて確認します。法人保険もそのひとつです。契約者・被保険者・受取人が誰になっているか、解約返戻金がいくらあるかは、譲渡条件の話し合いの材料になり得ます。
保険の契約が創業者個人に紐づいたまま残っている
役員退職慰労金の準備として加入した法人保険の多くは、被保険者を現経営者にしたままになっています。経営者が退任した後も契約者・被保険者を変更していないと、誰のための保険なのかが不明確なまま譲渡交渉に入ってしまうことになります。
財務諸表に保険の資産価値が正しく反映されていない
法人保険の解約返戻金は、会社の資産としての側面を持ちます。しかし決算書の勘定科目だけでは、その保険がどのフェーズで、何のために積み立てられたものかが読み取れません。譲渡先から見れば、目的の分からない資産は評価しにくく、話し合いが長引く一因になります。
法人保険は毎月の保険料が家賃や人件費と同じように口座から引き落とされ続けるため、目的を見失ったまま「払い続けている契約」になりやすい傾向があります。まずは自社にどれだけの契約があるかを洗い出すことが、点検の出発点です。
個人保証や退職金規程など、周辺の整理も後回しになりやすい
法人保険だけでなく、経営者の個人保証や役員退職慰労金規程の整備も、承継の準備が進むほど後回しにされがちです。保険は退職慰労金の原資として使われることが多いため、規程が整っていないと、保険を解約しても何を根拠に支給額を決めたのかを説明できません。保険・規程・株式の整理はどれか一つだけでは完結しない点に注意が必要です。
放置したままにしておくと、譲渡交渉の終盤になって保険の整理を急がされ、十分な検討時間が取れないまま契約者変更や解約を決めることになりかねません。相手側から見ても、直前になって出てくる契約は「まだ他にも整理されていないものがあるのでは」という不安につながります。
企業価値の磨き上げというと、設備や人材、取引先との関係に目が向きがちですが、契約関係を整理し、説明できる状態にしておくことも磨き上げの一部です。法人保険は金額が大きくなりやすい契約だからこそ、後回しにするほど整理の負担が増えます。
相手に説明できる状態にしておくことの意味
会社を長く経営してきた社長ほど、保険の契約数が多くなりがちです。第三者承継の交渉では、譲渡側が財務資料や契約関係の資料を相手に開示する段階があります。このとき、法人保険について「なぜこの契約に入っているのか」「いつ資金化できるのか」を経営者自身が説明できると、話し合いがスムーズに進みます。反対に、担当者に聞かないと分からない、契約書を探さないと分からないという状態だと、相手側に「経営全体の管理が甘いのでは」という印象を与えかねません。自社株の評価や個人保証の整理と同じく、法人保険も「見える化」しておくことが、譲渡交渉を前に進める土台になります。
次の章では、こうした事態を避けるために、譲渡前に点検しておきたい3つの視点を整理します。
会社を譲渡する前に法人保険を点検する3つの視点

法人保険の点検は、契約を解約するかどうかをその場で決めることではありません。今の承継フェーズに、その保険の目的が合っているかを確かめる作業です。何十年も前に加入した契約が複数残っている企業も珍しくなく、まずは会社にある契約を洗い出すところから始めます。ポイントは次の3つです。
チェック①契約者・被保険者・受取人の名義を確認する
まず確認したいのは、誰が契約者で、誰が被保険者で、誰が保険金の受取人になっているかです。経営者の交代が進んでいるのに名義が変わっていない契約は、譲渡や引継ぎの前に整理が必要です。特に法人契約と経営者個人の契約が混在している場合、どちらが会社の資産で、どちらが個人の資産かを区別しておかないと、譲渡の対象範囲があいまいになります。
チェック②解約返戻金・積立金を資産として整理する
次に、それぞれの契約にどれくらいの解約返戻金や積立金があるかを一覧にします。保険の中身が見える化されると、譲渡先との話し合いでも説明がしやすくなります。数字を丸めず、契約ごとに把握しておくことが大切です。あわせて、解約した場合にいつ資金化できるか(据置期間や解約手続きにかかる時間)も確認しておくと、資金計画を立てるときに慌てずに済みます。
チェック③保険の目的が承継フェーズに合っているか確認する
役員退職慰労金の準備なのか、自社株の買取資金なのか、相続税の納税資金なのか。加入時の目的が、今の承継の進み方と合っているかを見直します。加入した当時は現経営者の勇退時を想定していた契約でも、第三者承継が決まった今では目的が変わっていることがあります。目的が変わっているなら、契約を移すのか、解約するのか、そのまま残すのかを、税理士や保険の担当者と一緒に判断します。
法人保険は「解約するか、続けるか」の二択で考えがちですが、まずは契約ごとに①名義②中身③目的を書き出すところから始めると、判断に迷いにくくなります。
| チェック項目 | 点検する内容 | 見落としたときの影響 |
|---|---|---|
| ①契約の名義 | 契約者・被保険者・受取人が今の経営体制と合っているか | 誰のための保険か説明できず、話し合いが止まる |
| ②資産としての中身 | 解約返戻金・積立金の金額と時期を契約ごとに一覧化する | 財務内容の説明に時間がかかる |
| ③保険の目的 | 退職金・買取資金・納税資金など、当初の目的と現状の一致 | 不要な契約を残したまま資金繰りを圧迫する |
この3つを点検したうえで、事業承継専属の保険代理店による法人保険の見直しを活用すると、契約の整理と承継の進め方を切り離さずに検討できます。KICKは特定の保険会社の立場ではなく、事業承継計画との整合性を優先して整理をお手伝いします。
ご相談時に、保険の乗り換えを一方的にお勧めすることはありません。加入している契約を否定せず、今の目的に合っているかを一緒に確認するだけです。ご契約中の保険会社名も伺いません。
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法人保険を整理した先に、事業承継で手に入る未来

交渉の面|保険が理由で話し合いが止まらなくなる
契約の名義と中身が整理されていれば、譲渡先から保険について質問されても、その場で経緯を説明できます。そのたびに保険の資料を探し回る必要がなくなり、他の論点に時間を使えるようになります。財務資料の一部として保険の一覧を示せること自体が、経営を整理して引き継ぐ姿勢の表れにもなります。
資金の面|退職金や納税資金の原資がはっきりする
解約返戻金や積立金の中身が見えていれば、勇退時の退職慰労金や相続税の納税資金として、どの契約をいつ資金化できるかが分かります。資金の見通しが立つと、譲渡後の生活設計や次の事業への準備にも余裕が生まれます。逆に整理されていないと、退職のタイミングになって初めて資金が足りないことに気づく、という事態も起こり得ます。
関係性の面|後継者や譲渡先に安心して引き継げる
会社を引き継ぐ相手は、株式や事業だけでなく、経営に関わる契約関係もまとめて受け取ることになります。整理された契約は、後継者や譲渡先の企業にとっても分かりやすい資産です。「何のための保険か」を説明できる状態にしておくことが、譲渡後の関係を良好に保つ土台になります。従業員承継(MBO・EBO)で会社を引き継ぐ役員・幹部社員にとっても同じで、保険の中身が見える状態は、引き継いだ後の安心につながります。
大切なのは、保険を削ることではなく、承継のフェーズに合わせて役割を再設計することです。必要な保障まで減らしてしまうと、万一の際に事業の継続や家族の生活に影響が出るおそれがあります。守るべきものは守りながら、不要な部分だけを整理する——そのバランスを一緒に見極めていきます。焦って一度に全てを決める必要はなく、契約ごとに時間をかけて確認していくことができます。
保険を整理することは、単なる事務処理ではありません。交渉での安心・資金の見通し・引継ぎ後の信頼を共に手に入れましょう。
法人保険の整理を自社だけで進める限界と、事業承継士による伴走支援

法人保険の点検には、保険の知識だけでなく、事業承継全体の進み方や税務の考え方も関わってきます。保険の担当者、税理士、譲渡先の窓口がそれぞれ違う立場で話をすると、情報が食い違ったまま時間だけが過ぎてしまうことがあります。経営者一人で全ての窓口を調整しようとすると、本来注力すべき交渉や引継ぎの準備に十分な時間を割けなくなってしまいます。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士(認定経営革新等支援機関)として、株式の整理・後継者育成・法人保険までを一体で見る立場から、承継計画と保険の整合性を確認します。あわせて事業承継専属の保険代理店として、契約の点検・整理をご案内します。個別の税務判断や申告は、顧問税理士と連携しながら進めます。
法人保険だけを単独で見直しても、自社株の評価や個人保証の整理と噛み合っていなければ、承継全体としては前に進みません。KICKでは、法人保険の点検を、株式・後継者育成・資金計画といった他の論点と切り離さず、承継計画全体の中での位置づけとして確認する点を大切にしています。
これまでの法人支援実績150社以上の中で、保険の契約だけを切り離してご相談される企業様も多くいらっしゃいました。しかし保険は承継計画の一部として位置づけたほうが、結果として整理がしやすくなります。税理士・保険の担当者・後継者の話が噛み合わない状態を、KICKが全体設計としてつなぎます。
具体的には、次の順番でご案内しています。
- 現状把握:加入している法人保険を契約者・被保険者・受取人・解約返戻金の観点で一覧化する
- 整合性の確認:承継計画(誰に、何を、いつ引き継ぐか)と保険の目的を照らし合わせる
- 専門家との連携:税務判断が必要な部分は顧問税理士と、登記や許認可が関わる部分は司法書士・行政書士と連携する
登記は司法書士、許認可は行政書士の領域であり、KICKがこれらを代わって行うことはありません。KICKの立ち位置は、株式・後継者育成・法人保険という複数の論点を全体として設計し、必要な専門家へつなぐ伴走役です。
売り込みを目的としたご案内はいたしません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。まずは今の契約状況をお聞かせいただくだけで構いません。
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事業承継と法人保険のよくある質問

Q. 法人保険の保険料は全額損金にできますか?
A. 一律に全額損金にできるわけではありません。2019年(令和元年)の法人税基本通達の改正により、法人向けの定期保険等は、最高解約返戻率に応じて損金算入できる割合が区分されるようになりました。保険期間が短いものや保障が小さいものなど、一部の契約に限って全額に近い損金算入が認められる形です。「以前入った保険だから全額損金のはず」と思い込んだままにせず、契約ごとの取扱いを確認することが大切です。具体的な区分や割合は加入時期・保険の種類によって異なるため、顧問税理士に確認することをおすすめします。
Q. 古い契約と新しい契約で、税務上の扱いは違いますか?
A. 違います。法人向け定期保険は2019年7月8日以降に契約したもの、第三分野の保険は2019年10月8日以降に契約したものから、新しい通達のルールが適用されます。それより前に加入した契約は当時のルールのまま扱われることがあるため、契約日を確認したうえで税理士に相談してください。何十年も前から続いている契約と、ここ数年で加入した契約が同じ会社に混在していることも珍しくなく、点検の際は契約ごとに加入時期を確認する作業が欠かせません。
Q. 保険を解約すると、税金はどうなりますか?
A. 解約返戻金を受け取るタイミングや使いみちによって、法人税の扱いが変わります。個別の税額計算や申告は税理士の領域になりますので、KICKでは保険の目的と承継計画の整合性を整理したうえで、税理士との連携をご案内しています。
Q. 被保険者が退任した後も、契約はそのままで問題ありませんか?
A. 目的によります。退任後も契約を続ける理由(死亡退職金の準備など)があるなら、その理由を明文化しておくことが大切です。死亡退職金や弔慰金には一定の非課税枠があり、法人保険はその支給原資を準備する手段のひとつとして使われます。ただし非課税枠の具体的な金額や適用条件は個社の状況によって異なるため、規程の整備とあわせて税理士に確認しながら進めることをおすすめします。理由があいまいなまま残っている契約は、譲渡や引継ぎの前に見直しの対象になります。
Q. 保険の解約返戻金は、会社の譲渡価格に影響しますか?
A. 影響する可能性はあります。解約返戻金は会社の資産としての側面を持つため、譲渡先が財務内容を確認する際の材料になります。ただし具体的な評価の仕方は案件ごとに異なり、保険以外の資産や負債とあわせて総合的に判断されるため、断定的な数値でお答えすることはできません。まずは契約ごとの中身を整理し、説明できる状態にしておくことが準備の第一歩です。
Q. どの保険会社の商品に入り直せばいいですか?
A. KICKでは特定の保険会社や商品名を挙げてのご案内はしていません。商品ありきで考えるのではなく、承継計画のどの目的(退職金・買取資金・納税資金など)に保険を使うのかを先に整理し、そのうえで契約の見直しを検討する順番を大切にしています。
Q. 従業員承継(MBO・EBO)の場合も、同じように保険を点検しますか?
A. はい。役員や幹部社員が引き継ぐ従業員承継でも、契約者・被保険者の名義や退職慰労金の準備状況を点検する考え方は同じです。加えて、後継者となる役員・幹部社員が株式の買取資金をどう確保するかという論点が関わってくる点が、社外へ譲渡する第三者承継とは異なります。
Q. 相談すると、その場で保険の乗り換えを勧められますか?
A. いいえ。ご相談はあくまで現状の点検が目的で、その場でのご契約や乗り換えのご案内はいたしません。お断りいただいても問題ありません。
Q. 保険を整理すると、今の保障が減って不安です。
A. ご心配はもっともです。KICKが目指しているのは「減らすための見直し」ではなく「守るための再設計」です。目的の分からなくなった契約を整理する一方で、必要な保障まで削ってしまうと、万一のときに事業継続や家族の生活に影響が出ます。何を残し、何を整理するかは、承継計画全体を見ながら一緒に判断します。
Q. 無料相談は何回まで利用できますか?
A. 現状整理を中心とした無料相談を実施しています。回数による制限は設けていませんが、1社ごとに時間をかけて対応するため、月あたりのご相談枠には限りがあります。詳しい内容はお問い合わせ時にご案内します。
まとめ

会社を第三者へ譲る前の法人保険は、解約するかどうかの二択ではなく、契約者・被保険者・受取人の名義、解約返戻金の中身、保険の目的の3つを点検することから始まります。放置したままでは、譲渡交渉の終盤で慌てて判断することになりかねません。
点検の結果、そのまま続ける契約もあれば、目的が変わって整理が必要な契約も出てきます。どちらであっても、根拠を持って説明できる状態にしておくことが、譲渡交渉を安心して進めるための土台になります。承継の形が親族内承継や従業員承継であっても、この3つの視点は同じように使えます。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として、株式・後継者育成・法人保険を切り離さずに整理する立場から、承継の進め方に合わせたご相談を承っています。個別の税務判断は顧問税理士の領域として尊重しながら、承継計画全体との整合性という視点で伴走します。親族内承継・従業員承継・第三者承継のどの形であっても、法人保険を承継のフェーズに合わせて整理するという考え方は変わりません。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。今の契約状況を整理するところから、一緒に始めましょう。
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