
「そろそろ会社を後継者に引き継ぎたい」「後継者が見つからず、廃業も頭をよぎる」「自社株の相続で、子どもに多額の税金がかかるのが心配だ」。中小企業の経営者にとって、事業承継は避けて通れない、そして一度きりの大きな経営課題です。準備には数年単位の時間がかかることも珍しくありません。
この記事は次のような方におすすめです
- 60代・70代を迎え、そろそろ後継者への引き継ぎを考え始めた経営者
- 子どもや従業員に継がせたいが、自社株の贈与税・相続税が心配な社長
- 後継者が見つからず、M&A(第三者承継)という選択肢も知っておきたい方
- 「事業承継税制」や「事業承継・M&A補助金」など、使える制度を整理したい経営者
事業承継とは、会社の経営を、現在の経営者から次の後継者へ引き継ぐことです。引き継ぐ方法には、親族内承継・従業員承継・M&A(第三者承継)の3つがあり、経営権だけでなく、自社株式などの資産や、技術・信用といった目に見えない資産もあわせて引き継ぎます。
本記事では、認定経営革新等支援機関であり、事業承継士の資格を持つ代表が率いるKICKコンサルティング株式会社(銀座本社)の視点から、事業承継の意味・方法・税制・補助金・進め方までを、中小企業庁の公表資料にもとづいて正確に解説します。結論から申し上げれば、事業承継は、経営者が元気なうちに、早めに準備を始めることが成功の最大の条件です。
タップできる目次
- 1 事業承継とは?意味と3つの類型(親族内・従業員・M&A)をわかりやすく解説
- 2 なぜ今、事業承継が重要なのか|後継者不足という中小企業の課題
- 3 事業承継で引き継ぐ3つの経営資源|人・資産・知的資産
- 4 事業承継の3つの方法とメリット・デメリットを比較
- 5 事業承継とM&Aの違い|第三者承継という選択肢
- 6 事業承継税制とは?贈与税・相続税の納税猶予をわかりやすく解説
- 7 事業承継の支援策|経営承継円滑化法・補助金・引継ぎ支援センター
- 8 事業承継の進め方・流れ|早期着手のための5ステップ
- 9 事業承継のデメリット・よくある失敗例と注意点
- 10 事業承継の相談先の選び方|専門家のチェックポイント
- 11 まとめ|事業承継は早期の準備が成功のカギ
- 12 事業承継に関するよくあるご質問(FAQ)
事業承継とは?意味と3つの類型(親族内・従業員・M&A)をわかりやすく解説

事業承継とは、会社の経営を現在の経営者から後継者へ引き継ぐ取り組みの総称です。中小企業庁の整理では、引き継ぎ先によって親族内承継・従業員承継・M&A(第三者承継)の3つの類型に分けられます。なお「事業承継」と「事業継承」は同じ意味で使われますが、公的資料や法律では「事業承継」が正式な表記です。
親族内承継
子どもや親族に会社を引き継ぐ、最も一般的だった方法です。関係者の理解を得やすく、準備期間を確保しやすい一方、自社株式の贈与税・相続税の負担が課題になりやすいのが特徴です。
従業員承継(社内承継)
役員や従業員など、社内の人材に引き継ぐ方法です。事業をよく理解した人に任せられる反面、後継者に自社株式を買い取る資金力があるか、金融機関からの個人保証を引き継げるかが論点になります。
M&A(第三者承継)
親族や社内に適任者がいない場合に、社外の第三者へ会社や事業を引き継ぐ方法です。後継者不足を背景に、近年は中小企業でもM&Aによる事業承継が大きく増えています。
どの類型を選ぶにせよ、共通して大切なのは、経営者が引退を意識してから慌てて動くのではなく、時間をかけて自社に合った方法を選び、計画的に準備を進めることです。方法によって、必要な手続きや税金、資金の準備がまったく異なるため、早い段階での見極めが後の負担を大きく左右します。
なぜ今、事業承継が重要なのか|後継者不足という中小企業の課題

いま、多くの中小企業で経営者の高齢化と後継者不足が深刻な課題となっています。後継者が決まらないまま経営者が引退時期を迎えると、黒字であっても廃業を選ばざるを得ないケースがあります。長年培った技術や雇用、取引先とのつながりが失われるのは、社会全体にとっても大きな損失です。
だからこそ国は、事業承継・引継ぎ支援センターや事業承継税制、補助金など、さまざまな支援策を用意しています。後継者問題は、早く動くほど選べる選択肢が多く残されます。「まだ先のこと」と後回しにせず、経営者が元気なうちに準備を始めることが何より大切です。
特に、黒字なのに後継者がいないという理由だけで廃業してしまう「黒字廃業」は、なんとしても避けたい事態です。会社をたたむと、従業員は職を失い、長年の取引先は仕入れ先や販売先を失います。地域に根ざした技術やサービスが途絶えることもあります。事業承継は、経営者個人の問題にとどまらず、従業員の雇用と地域経済を守る取り組みでもあるのです。
事業承継で引き継ぐ3つの経営資源|人・資産・知的資産

事業承継は、単に社長の椅子を渡すことではありません。中小企業庁の事業承継ガイドラインでは、引き継ぐ経営資源を大きく3つに整理しています。この3つをバランスよく引き継いで初めて、会社は次の世代でも力を発揮できます。逆に、どれか一つでも欠けると、承継後に経営が揺らぐ原因になります。
人(経営)の承継
経営権、すなわち後継者そのものの承継です。後継者の選定と育成には時間がかかるため、5年から10年単位の準備期間を見込むのが理想とされます。
資産の承継
自社株式や事業用資産、資金など、目に見える財産の承継です。ここで贈与税・相続税や、株式の買い取り資金が課題になります。
知的資産の承継
経営理念、技術・ノウハウ、取引先や金融機関との信用、従業員の力といった、目に見えない資産の承継です。会社の本当の強みは、この知的資産にこそ宿っています。
事業承継の3つの方法とメリット・デメリットを比較

3つの承継方法には、それぞれ長所と短所があります。自社の状況に合った方法を選ぶことが、事業承継の第一歩です。
| 承継方法 | 主なメリット | 主な課題 |
|---|---|---|
| 親族内承継 | 関係者の理解を得やすい/準備期間を確保しやすい | 自社株の贈与税・相続税の負担 |
| 従業員承継 | 事業を理解した人に任せられる | 株式の買取資金/個人保証の引き継ぎ |
| M&A(第三者) | 後継者不在でも会社を残せる/創業者利益 | 相手探し・条件交渉に専門知識が必要 |
かつては親族内承継が中心でしたが、近年は後継者不在を背景にM&A(第三者承継)を選ぶ中小企業が増えています。どの方法にも一長一短があるため、早い段階で専門家に相談し、自社に合う道を見極めることが重要です。特例承継計画を活用した親族内承継の準備については、特例承継計画の作成サポートもご覧ください。
事業承継とM&Aの違い|第三者承継という選択肢

「事業承継」と「M&A」は混同されがちですが、両者の関係を整理すると分かりやすくなります。事業承継は会社を引き継ぐ取り組み全体を指し、M&Aはその方法の一つです。つまり、親族や社内に後継者がいない場合の第三者承継の手段が、M&Aにあたります。
中小企業のM&Aでは、主に株式譲渡と事業譲渡という手法が用いられます。株式譲渡は会社の株式ごと引き継ぐ方法で、取引先との契約や許認可をそのまま引き継ぎやすいのが特徴です。事業譲渡は、特定の事業や資産だけを切り出して引き継ぐ方法で、引き継ぐ範囲を柔軟に選べます。どちらが適しているかは、会社の状況や買い手のニーズによって変わります。
M&Aは、相手先探しから企業価値の評価、条件交渉、契約、そして引き継ぎ後の統合(PMI)まで多くの工程があり、専門的な知識が欠かせません。国は中小M&AガイドラインやM&A支援機関登録制度を整備し、中小企業が安心してM&Aに取り組める環境づくりを進めています。信頼できる専門家とともに進めることが、納得のいく第三者承継につながります。
事業承継税制とは?贈与税・相続税の納税猶予をわかりやすく解説

親族内承継で最も大きな壁になりやすいのが、自社株式にかかる贈与税・相続税です。この負担を大きく軽くできるのが、事業承継税制です。事業承継税制とは、後継者が自社株式などを先代から贈与・相続で取得した際、一定の要件のもとで贈与税・相続税の納税が猶予・免除される制度です。
制度には「一般措置」と「特例措置」の2つがあります。特例措置のほうが、納税猶予の対象となる株式の範囲や雇用要件の面で有利に設計されており、期限内に手続きを進められる企業にとってメリットの大きい仕組みです。特例措置の適用を受けるには、経営承継円滑化法にもとづく都道府県知事の認定が前提となり、その手前で特例承継計画の提出が必要です。一般措置にはこの計画提出や適用期限の定めがない代わりに、猶予割合などの条件が特例措置より抑えられています。
なお、法人ではなく個人事業主の方には、事業用資産を対象とした個人版事業承継税制が別に用意されています。土地・建物・機械などの事業用資産にかかる贈与税・相続税が、要件を満たせば猶予・免除の対象となります。自社が法人版・個人版のどちらに当てはまるか、また一般措置と特例措置のどちらが有利かは、株式の評価額や承継の時期によって変わるため、専門家と一緒に見極めることをおすすめします。
中小企業庁の公表資料によれば、特例措置の特例承継計画は、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けたうえで、令和9年(2027年)9月30日までに提出する必要があります。雇用に関する要件も特例措置では弾力化されています。ただし、期限や要件は改正されることがあるため、実際の適用にあたっては最新の情報を中小企業庁や専門家に確認してください。KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、認定経営革新等支援機関として特例承継計画の作成を支援しています。
「自社株の税金が心配」という方は、まず現状を無料でご相談ください。
事業承継の支援策|経営承継円滑化法・補助金・引継ぎ支援センター

事業承継を後押しする公的な支援策は、税制以外にも数多く用意されています。代表的なものを整理します。
経営承継円滑化法
中小企業の事業承継を総合的に支える法律です。事業承継税制の前提となる認定に加え、後継者が必要とする資金の金融支援(信用保証協会の別枠や日本政策金融公庫の特例)、遺留分に関する民法の特例、所在不明株主に関する会社法の特例といった支援が用意されています。
事業承継・M&A補助金
事業承継やM&Aに要する費用の一部を補助する制度です。専門家への費用や設備投資などが対象になり得ます。補助率や上限額、対象経費は公募回次によって変わるため、活用の際は最新の公募要領を必ずご確認ください。
事業承継・引継ぎ支援センター
全国に設置された公的な相談窓口です。後継者不在の企業と、事業を引き継ぎたい企業とのマッチングなど、第三者承継の相談に無料で対応しています。親族内承継から従業員承継、M&Aまで、幅広い相談を受け付けています。
これらの支援策は、それぞれ要件や申請の手続きが定められています。どの制度が自社に使えるかは、承継の方法や会社の状況によって変わるため、複数の制度を組み合わせて活用することも少なくありません。制度を最大限に活かすには、全体像を理解した専門家と一緒に計画を立てるのが近道です。
事業承継の進め方・流れ|早期着手のための5ステップ

事業承継は、思い立ってすぐ完了するものではありません。一般的には次の流れで進み、全体では数年単位の準備期間を見込みます。
- 現状の把握:会社の資産・負債、自社株の評価額、後継者候補の有無などを整理し、課題を洗い出します。
- 承継方法の決定:親族内・従業員・M&Aのどの方法が自社に合うかを、税負担や後継者の適性を踏まえて決めます。
- 事業承継計画の策定:いつ・誰に・何を引き継ぐかを時系列で計画にまとめます。特例承継計画の作成もこの段階です。
- 磨き上げ・実行:後継者の育成、財務の改善、株式の移転など、計画に沿って準備を進めます。会社の価値を高める「磨き上げ」が重要です。
- 承継後のフォロー:引き継ぎ後も、新経営者が軌道に乗るまで支援を続けます。M&Aの場合は統合(PMI)が成否を分けます。
後継者の選定・育成には5年から10年かかることもあるため、経営者が60代に入ったら準備を始めるのが理想です。早く動くほど、税負担の軽減策も打ちやすくなります。
特に見落とされがちなのが、4番目の「磨き上げ」です。財務体質を改善し、無駄な資産を整理し、収益力を高めておくことは、親族内承継では税負担の軽減につながり、M&Aでは会社の評価額を高めることにつながります。承継の前に会社の価値を高めておくことが、後継者にとっても買い手にとっても魅力ある会社を残す近道です。承継はゴールではなく、次の成長のスタートと捉えることが大切です。
事業承継のデメリット・よくある失敗例と注意点

事業承継には多くのメリットがある一方、準備を誤ると思わぬ問題が生じます。あらかじめ知っておきたい注意点は、株式が分散して後継者の経営権が不安定になること、税負担の準備不足、後継者の育成不足などです。ここでは、つまずきやすい失敗例を4つ紹介します。
失敗例1 準備開始が遅れる
「まだ元気だから」と先延ばしにするうちに、経営者が体調を崩し、準備不足のまま相続が発生してしまうケースです。事業承継は早期着手が鉄則です。
失敗例2 自社株の評価と納税資金を見誤る
業績の良い会社ほど自社株の評価額は高くなり、想定外の相続税が発生することがあります。株価対策と納税資金の準備を早めに進めることが欠かせません。
失敗例3 後継者・親族間の合意形成を怠る
後継者以外の相続人への配慮を欠くと、遺留分をめぐる争いに発展しかねません。関係者との話し合いを丁寧に重ねる必要があります。
失敗例4 後継者の育成が不十分
株式だけを引き継いでも、経営のノウハウや取引先の信用が伴わなければ会社は続きません。時間をかけた後継者育成が不可欠です。自社株の評価が高く納税資金が課題となる場合は、生命保険を活用した納税資金の準備も選択肢となります。詳しくは事業承継専門の保険代理店のサービスもご覧ください。
事業承継の相談先の選び方|専門家のチェックポイント

事業承継は、税務・法務・財務・人事が複雑に絡み合う分野です。顧問税理士だけ、金融機関だけ、といった単独の窓口では、承継全体を見渡した提案が受けにくいこともあります。相談先を選ぶ際は、次の点を確認してください。
- 認定経営革新等支援機関か。事業承継税制や補助金の申請には、認定支援機関の関与が求められる場面があります。
- 事業承継の実績が豊富か。親族内承継からM&Aまで、幅広い選択肢を提案できるか。
- 税・法務・保険まで横断的に対応できるか。窓口が分かれると、経営者の負担が増えます。
- 経営者と後継者、双方の想いに寄り添えるか。事業承継は数字だけでは割り切れません。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、認定経営革新等支援機関として、これまで150社以上の経営支援に伴走してまいりました。代表は中小企業診断士に加え、事業承継士の資格を保有し、事業承継の計画づくりから税制・M&A・保険までワンストップで支援します。銀座の本社を拠点に、経営者お一人おひとりの事情に合わせて、最初の相談から承継後のフォローまで伴走します。
まとめ|事業承継は早期の準備が成功のカギ

事業承継について、重要な要点を3つに集約します。
- 承継の方法は親族内・従業員・M&A(第三者)の3類型。後継者不在でもM&Aで会社を残せます。
- 自社株の税負担は事業承継税制で軽減できる。特例措置の特例承継計画は令和9年(2027年)9月30日までの提出が必要です。
- 成否を分けるのは早期の着手と、専門家への相談。経営者が元気なうちに準備を始めましょう。
会社と従業員、そして経営者ご自身の想いを次の世代へつなぐために、いまできる一歩から始めてみませんか。
「何から始めればいいか分からない」という段階でも大丈夫です。
事業承継に関するよくあるご質問(FAQ)

Q. 「事業承継」と「事業継承」は何が違いますか。
A. ほぼ同じ意味で使われますが、公的資料や法律では「事業承継」が正式な表記です。会社の経営を後継者へ引き継ぐことを指します。
Q. 後継者がいなくても事業承継はできますか。
A. できます。親族や社内に後継者がいない場合は、M&A(第三者承継)という方法があります。全国の事業承継・引継ぎ支援センターでも、引き継ぎ先とのマッチング相談に対応しています。
Q. 事業承継税制を使うと税金はどうなりますか。
A. 一定の要件を満たすと、後継者が取得した自社株式などにかかる贈与税・相続税の納税が猶予・免除されます。特例措置の適用には、令和9年(2027年)9月30日までの特例承継計画の提出など、期限と要件があります。
Q. 事業承継の準備はいつから始めるべきですか。
A. 早いほど有利です。後継者の選定・育成には5年から10年かかることもあり、税負担の軽減策も早く動くほど選択肢が広がります。経営者が60代に入ったら準備を始めるのが理想です。
Q. 事業承継の相談は誰にすればよいですか。
A. 税務・法務・財務が絡むため、事業承継の実績がある認定経営革新等支援機関への相談がおすすめです。KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)も認定支援機関で、事業承継士が対応します。









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