
愛知県は、産業廃棄物処理業の更新許可で続いてきた「経理的基礎の審査基準の特例(いわゆるコロナ特例)」を廃止し、令和9年4月1日から改正後の審査基準を適用します。特例のもとでは、直前3年平均も直前期も経常利益金額等(経常利益+減価償却費)がマイナスで、しかも債務超過という会社でも、経営診断書を添えて「悪化の原因は新型コロナ」と示せば更新の道がありました。改正後は、この組み合わせの法人は経営診断書を出しても不許可の対象になります。
年末が近づき、来期の見通しを立てる時期です。令和9年4月1日以降に更新申請を出す愛知県の収集運搬業者・処分業者の方は、直前期の決算をどう締めるかで結果が変わります。この記事では、愛知県が公表した改正後の審査基準(令和9年4月1日改正。同日から適用)と「経理的基礎に関する審査の考え方」の原文にもとづき、何が変わり、いつまでに何をすべきかを整理します。
この記事で分かること
- 改正後に経営診断書を出しても不許可になる組み合わせ
- 特例が廃止される時期と、対象が更新許可申請だけである理由
- 更新期限から逆算した準備スケジュールと、今の決算期に打てる手
- 収集運搬業(積替保管の有無)と処分業で、経営診断書が必要になる条件の違い
- 改正後の基準で使う「経常利益金額等」「直前3年の平均」「自己資本比率」の読み方
執筆は中小企業診断士の松本昌史(KICKコンサルティング株式会社)です。許可申請書類の作成と提出は提携する行政書士が担当し、当社は財務分析と経営診断書の作成、申請に向けた財務面のサポートを担います。
愛知県が「コロナ特例」を廃止する経緯と適用日

愛知県は、2026年9月18日更新のお知らせ「産業廃棄物処理業の『経理的基礎に関する審査基準』の特例を廃止します。(お知らせ)」を県のサイトに掲載しています。要点は次の3つです。
- 改正後の審査基準は令和9年4月1日から適用
- 特例は更新許可申請だけに適用されており、新規許可申請と変更許可申請の基準は変更なし
- 廃止の理由は、令和5年に新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行して3年が経過したこと
特例の中身は、改正前の審査基準(収集運搬業・積替保管を除く。令和3年9月6日改正)の「第4 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた特例」に書かれています。更新申請に限り、通常の基準のどれにも当てはまらない会社でも、収支計画に基づく経営診断書を添付し、「経営悪化の原因が新型コロナの直接または間接の影響であること」と「今後5年以内に健全な経営の軌道に乗ること」を証明できれば、経理的基礎があるものとして扱う、という内容でした。
つまり特例は、通常なら不許可になる会社に、経営診断書で更新を認める救済措置でした。この救済がなくなるのが今回の改正です。
改正後の審査基準で使われる3つの数字

愛知県の審査基準は、営業実績が3年以上ある法人について、次の3つの数字で判定します。資料名は愛知県「産業廃棄物収集運搬業(積替保管を除く。)の経理的基礎に関する審査基準(令和9年4月1日改正)」です。積替保管を含む収集運搬業と処分業にも、それぞれ同じ日付の審査基準があります。
| 数字 | 定義 | 見る場所 |
|---|---|---|
| 経常利益金額等 | 損益計算書の経常利益の金額に、同じ損益計算書の減価償却費の額を加えた額 | 直前3年の各事業年度の平均額と、直前事業年度の額 |
| 債務超過 | 貸借対照表で負債の総額が資産の総額を上回る状態 | 直前事業年度 |
| 自己資本比率 | 純資産合計を負債・純資産合計(総資産)で割った比率 | 直前事業年度。10%以上、0%以上10%未満、0%未満の3区分 |
経常利益に減価償却費を足し戻す点が、産廃業の実態に合っています。車両や処理施設の償却費が重く、損益計算書では赤字でも、現金ベースでは回っている会社が少なくないからです。償却費の大きい会社ほど、経常利益金額等はプラスに出やすくなります。
基準の構造は2段階です。まず第1の1として、次のどれか1つに当てはまれば、原則として経理的基礎があると扱われます。
- 直前事業年度の債務超過なし
- 直前事業年度の経常利益金額等が0以上
- 直前3年の各事業年度の経常利益金額等の平均額が0以上
次に第1の2として、上の条件に当てはまる会社でも、自己資本比率や赤字の組み合わせが一定の条件に当たる場合は、「収支計画に基づく経営診断書」を申請書に添付し、今後5年以内に健全な経営の軌道に乗ることを証明する必要があります。
収集運搬業(積替保管の有無)と処分業で違う判定表
愛知県は審査基準の条文とは別に、改正後の審査基準とあわせて「経理的基礎に関する審査の考え方」という判定表を公表しています。営業実績3年以上の法人について、自己資本比率、直前3年の経常利益金額等の平均、直前期の経常利益金額等の3つの組み合わせで、収集運搬業(積替保管なし・あり)と処分業それぞれの扱いを示したものです。要点を整理します。
| 直前期の自己資本比率 | 3年平均 | 直前期 | 収集運搬(積替保管なし) | 収集運搬(積替保管あり)・処分業 |
|---|---|---|---|---|
| 10%以上 | プラス | プラスまたはマイナス | 原則基礎認定 | 原則基礎認定 |
| 10%以上 | マイナス | プラス | 原則基礎認定 | 原則基礎認定 |
| 10%以上 | マイナス | マイナス | 必要時診断書(伸率で判定) | 必要時診断書(伸率で判定) |
| 0%以上10%未満 | プラス | プラス | 原則基礎認定 | 原則基礎認定 |
| 0%以上10%未満 | プラス | マイナス | 原則基礎認定 | 診断書 |
| 0%以上10%未満 | マイナス | プラス | 原則基礎認定 | 診断書 |
| 0%以上10%未満 | マイナス | マイナス | 診断書 | 診断書 |
| 0%未満(債務超過) | プラス | プラス | 必要時診断書(自己資本比率・流動比率で判定) | 診断書 |
| 0%未満(債務超過) | プラス | マイナス | 必要時診断書(4条件で判定) | 診断書 |
| 0%未満(債務超過) | マイナス | プラス | 診断書 | 診断書 |
| 0%未満(債務超過) | マイナス | マイナス | 不許可 | 不許可 |
表の「必要時診断書」は、別紙の条件に当たるときだけ診断書が必要になる区分です。条件は、直前々期がプラスで直前期がマイナスに転じ経常利益金額等の伸率がマイナス200パーセント未満であること、直前々期も直前期もマイナスで伸率が100パーセント超であること、直前期の自己資本比率がマイナス30%未満であること、直前期の流動比率(流動資産÷流動負債)が50%未満であることの4つで、区分ごとにどの条件を見るかが決まっています。
違いを一言でいえば、積替保管なしの収集運搬業は、債務超過でも3年平均がプラスなら、直前期の正負を問わず「必要時診断書」の区分になり、別紙の条件に当たらなければ診断書を省ける余地があります。積替保管ありと処分業は、債務超過なら診断書が前提(3年平均も直前期もマイナスなら不許可)です。筆者の見方ですが、処理施設を持つ事業ほど、破綻したときの地域への影響が大きいという考え方が背景にあると読めます。
改正後に経営診断書を出しても不許可になる組み合わせ

ここが今回の改正で最も重い点です。審査基準の第1の2は「前項(第1の1)に該当する者は」と書き出されています。つまり経営診断書を添えて審査を受けられるのは、第1の1のどれか1つには当てはまる会社に限られます。
直前期が債務超過で、直前3年の経常利益金額等の平均がマイナスで、直前期の経常利益金額等もマイナスという法人は、第1の1のどれにも当てはまらないため、審査の考え方の表でも「不許可」と明記されています。収集運搬業の積替保管の有無や処分業の区別はありません。
改正前の特例は、まさにこの層を対象にしていました。「第1の第1項各号のいずれにも該当しない者」に、コロナ起因の証明と5年計画付きの経営診断書で更新を認める仕組みだったからです。令和9年4月1日以降の更新申請では、この入り口が閉じます。
個人事業者も同じ構造です。直前期に資産が負債を下回り、直前3年のどの年も所得税を納付していない(納税すべき額が0円の年も「納付していない」に当たる)場合は不許可です。
反対に、3つのうち1つでも外せれば審査の土俵に残れます。たとえば直前期の経常利益金額等を0以上にできれば、債務超過で3年平均がマイナスでも「診断書」の区分です。直前期の1年分の数字で、不許可と診断書の区分が分かれます。だから決算を締める前の対策が重要になります。
改正後も続く経営診断書の要件
経営診断書そのものの要件は、改正の前後で変わっていません。審査基準には次のように定義されています。
愛知県の審査基準が定める「収支計画に基づく経営診断書」
- 今後5年間の事業に係る収支計画に基づいて作成されたもの
- 中小企業診断士または公認会計士が作成したもの
- 申請書に添付し、今後5年以内に健全な経営の軌道に乗ることが証明できること
「審査の考え方」の注記には、診断書の内容だけで経理的基礎の有無を判断するものではないこと、不許可となった場合でも申請手数料や診断書の費用は申請者の負担であること、事業年度は6か月以上あるものを1期とみなすことが書かれています。
作成者の資格にも注意が要ります。愛知県の審査基準で経営診断書を作成できるのは中小企業診断士または公認会計士で、税理士は含まれていません。東京都の「経理的基礎を有することの説明書」は税理士も作成できますが、県ごとに違います。顧問税理士に頼めると思っていると、申請直前に作り直しになります。
また、営業実績が3年未満の法人と個人は、財務の状態にかかわらず収支計画に基づく経営診断書の添付が必要です(審査基準の第3)。
更新期限から逆算した準備スケジュール

産業廃棄物処理業の許可の有効期間は原則5年で、更新は期限前に申請します。改正基準は令和9年4月1日から適用されるため、同日以降に更新申請を出す会社は、審査で見られる「直前事業年度」がどの期になるかをまず確定させます。たとえば3月決算の会社が令和9年秋に更新申請するなら、直前期は令和9年3月期で、今期の数字がそのまま審査対象になります。一方、決算が確定する前に申請する場合は、直前期が1期前の確定済みの決算になります。どの期が見られるかは所管窓口に確認してください。
| 時期 | やること | 見るもの |
|---|---|---|
| 今(決算期の途中) | 直近の試算表で、経常利益金額等(経常利益+減価償却費)と純資産の着地を見立てる | 月次試算表、償却費の年間見込み |
| 決算月まで | 直前期の経常利益金額等を0以上にする打ち手と、債務超過を解消または縮める打ち手を実行する | 単価、車両稼働、固定費、役員借入金の扱い |
| 決算確定後 | 3つの数字を判定表に当て、原則認定・診断書・不許可のどれに入るかを確認する | 確定した決算書3期分 |
| 申請3か月前 | 診断書が必要な区分なら中小企業診断士へ依頼し、5年間の収支計画を固める | 借入金一覧、返済予定表、受注見込み |
| 申請 | 行政書士が申請書類を作成し、経営診断書を添付して提出する | 県の手引の添付書類一覧 |
債務超過を縮める手としては、役員からの借入金を資本に振り替える、役員が借入金の一部を放棄するといった方法が一般に使われます。ただし税務上の扱いは会社の状況で変わるため、実行前に税理士に確認してください。当社は財務面の設計と経営診断書の作成を担い、税務の結論は出しません。
経営診断書の作成には、資料がそろってから3週間前後は見ておきたいところです。更新の受付開始時期は自治体で異なります(東京都の収集運搬業の手引では有効期限の4か月前から、千葉県は3か月前の月から。愛知県は県の手引で確認してください)。決算確定の直後に判定表を確認し、すぐ動けば申請の時期に間に合わせやすくなります。
今の決算期に打てる手の整理
経常利益金額等と純資産の両方に効く手を、現場で検討しやすい順に並べます。どれも「産廃業らしい」改善策で、収支計画に書くときも説明がつきます。
- 処分費・燃料費の上昇分の見積単価への反映と、契約改定の前倒し
- 車両別の稼働率と採算の把握、低稼働車両の処分や台数の見直し
- 外注費、リース料、保険料など固定費の契約条件の見直し
- 金融機関との返済条件の変更(リスケジュール)の協議
- 役員借入金の資本振替や一部放棄による純資産の積み増し(税務は税理士に確認)
更新が通らなければ、許可区域での営業そのものができなくなります。決算が確定してからでは直前期の数字は動かせません。一番引っかかっているのは、数字の見立てでしょうか、改善策の選び方でしょうか。どちらであっても、試算表を見ながら一緒に整理できます。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
\無料相談(30秒で予約)/
経営診断書の基本から確認したい方へ
よくある質問
Q. 令和9年3月までに更新申請すれば、特例はまだ使えますか
A. 愛知県のお知らせでは、改正後の審査基準は令和9年4月1日から適用とされています。それまでは改正前の審査基準(令和3年9月6日改正)が適用され、更新申請に限った特例も続きます。令和9年4月1日より前に出した更新申請がどちらの基準で審査されるかは、県の資料に明記がありません。受付の運用は所管の窓口で確認してください。期限が迫っている会社ほど、早めの相談が安全です。
Q. 新規許可や変更許可にも影響しますか
A. 愛知県は、特例は更新許可申請のみに適用されており、新規許可申請と変更許可申請の基準は変更がないと説明しています。新規や変更の基準はこれまでどおりです。
Q. 経常利益は赤字ですが、減価償却費を足すとプラスになります。大丈夫でしょうか
A. 愛知県の基準で見るのは「経常利益金額等」、つまり経常利益に減価償却費を加えた額です。これが0以上なら、第1の1の条件の1つを満たします。ただし自己資本比率が10%未満や債務超過の場合は、組み合わせによって経営診断書が必要になることがあります。
Q. 税理士に経営診断書を書いてもらえますか
A. 愛知県の審査基準では、経営診断書の作成者は中小企業診断士または公認会計士です。税理士は含まれていません。東京都など、税理士も作成できる自治体とは扱いが異なります。
まとめ
愛知県の産廃許可は、令和9年4月1日から更新許可の「コロナ特例」がなくなります。審査で使う数字は、経常利益金額等(経常利益+減価償却費)の直前3年平均と直前期、債務超過の有無、自己資本比率の3つです。
直前期が債務超過で、3年平均も直前期も経常利益金額等がマイナスという法人は、改正後は経営診断書を添えても不許可になります。逆に、3つのうち1つでも外せれば、経営診断書で審査を受ける道が残ります。分かれ目になるのは、これから締める直前期の決算です。
何がクリアなら決断できますか。数字の見立てが欲しいのか、改善策を一緒に選びたいのか、診断書の作成を任せたいのか。どの段階でも、試算表と決算書3期分があれば具体的な話ができます。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
\無料相談(30秒で予約)/
債務超過の解消策をもっと知りたい方へ
この記事を書いた人
執筆・監修 松本昌史(中小企業診断士・経済産業大臣登録)
KICKコンサルティング株式会社 代表取締役(東京都中央区銀座)。認定経営革新等支援機関、事業再生マネージャー、事業承継士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、MBA(法政大学経営大学院)。前職は大手生命保険代理店に8年勤務。製造業・建設業・卸売業・小売業・サービス業を中心に支援実績150社以上。
債務超過の会社の「改善見通しに関する評価書面」(外国人技能実習・育成就労・特定技能向けの企業評価書)の作成支援や、年商約2億円・4期連続営業赤字の建設関連会社の経営改善計画策定支援(実態B/Sの作成、KPI設定、返済条件変更の承諾まで)に携わってきました。
許可申請書類の作成と提出は提携する行政書士が担当し、税務の判断は税理士の業務です。当社は財務の分析と経営診断書の作成、申請に向けた財務面のサポートを担います。







