
自宅を本店にして始めた顧問先を持つ税理士の先生と、その更新を受任する行政書士の先生に向けた記事です。
ある日、顧問先の外国人社長が、出入国在留管理庁(入管)が公表している改正の案内を印刷して持ってきます。印刷された部分を要約すると、おおむね次のとおりです。
「改正後の規模等に応じた経営活動を行うための事業所を確保する必要があることから、自宅を事業所と兼ねることは、原則として認められません。事業所の広さは一律にお答えすることは困難ですが、必要かつ十分な広さの事業所を確保する必要があります」
添えられた一言は「先生、うちの会社の住所は自宅のマンションです。次の更新までに引っ越さないといけませんか。どのくらいの広さを借りればいいですか」。経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)の顧問先で、自宅を本店にして小さく始めた会社から、この相談がよく届きます。
社長が最初に相談を持ち込むのは、本店の住所も家賃も把握している顧問税理士の先生です。申請を担当する行政書士の先生に同じ質問が向くこともあるでしょう。ただし、移転を含む計画が基準に届くかを確かめる評価書面(事業計画書の確認)は中小企業診断士などの領域で、先生ご自身が顧問先の評価者になるのは立場上むずかしい。周りに診断士の知り合いもいない。信頼できる診断士を探すなかで、当社KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)を見つけていただく。事務所の相談は、多くがこの道筋で当社に届きます。
結論はこうです。先生から顧問先に伝えたい一文は「自宅との兼用は原則として認められなくなりました。事業の規模に合った事務所を、いつ、いくらで確保するかを計画に書きましょう」です。先生が最初に確認するのは、賃貸借契約書の使用目的と契約者の名義、登記上の本店の所在地、決算書と事業計画に計上されている家賃と保証金の3点です。
この記事で確認できること
- 改正後の事務所要件の中身
- 賃貸借契約書で先生が見る箇所
- 家賃と保証金から計画を確かめる視点
改正後の事務所要件で変わったこと

2025年10月16日に施行された「経営・管理」の許可基準の改正では、資本金等3,000万円以上や常勤職員1名以上と並んで、事業所の考え方も見直されました。出入国在留管理庁の公表資料に書かれていることと、書かれていないことを分けて整理すると次のとおりです。
| 項目 | 公表資料の記載 | 先生の受け止め方 |
|---|---|---|
| 事業所の規模 | 改正後の規模等に応じた経営活動を行うための事業所が必要 | 事業計画の人員や業務と結び付けて説明 |
| 自宅との兼用 | 原則として認められない | 自宅が本店の顧問先は移転の検討が出発点 |
| 広さ | 一律の基準は示されていない。必要かつ十分な広さ | 面積の数字より、使い方の説明が要点 |
| バーチャルオフィス、シェアオフィスなど | 公表資料に記載がない | 断定せず、個別に確認 |
表の1行目にある「改正後の規模等」とは、資本金等3,000万円以上と常勤職員1名以上を備えた事業の規模を指すと読むのが自然です。常勤の職員が日々働き、3,000万円規模の事業を動かせる場所であるかが、事業所を考えるときの物差しになります。顧問先の社長には「社員が毎日通って仕事ができる事務所が必要になった、と考えてください」とかみ砕いて伝えると、イメージが共有しやすくなります。
経営管理ビザの要件全体と2025年改正の中身は、次の記事にまとめています。先生が顧問先・依頼者に制度の全体像を説明するときの土台としてお使いください。
「日本で会社を立ち上げて事業をしたい」「経営管理ビザを取りたいが、2025年から要件が厳しくなったと聞いた」。外国人が日本で経営者として活動するために欠かせないのが、在留資格「経営・管理」、いわゆる経営管理ビザです。2025年10月の制度改正で要件が大きく変わり、事業計画書に専門家の評価が求めら...
自宅兼用が原則不可になった意味

公表資料は、自宅を事業所と兼ねることを「原則として」認めないとしています。どのような場合に例外となるかの具体的な条件は、公表資料では示されていません。したがって、自宅の一室を区切って使っている、玄関を分けている、といった個別の事情が認められるかどうかを、先生が顧問先に断定することは避けたいところです。例外を前提にした計画ではなく、移転を前提にした計画で準備するのが安全です。
すでに日本で事業を営んでいる顧問先の更新には、経過措置があります。2028年10月16日までの更新では、改正後の基準に適合していなくても、経営状況や改正後の基準に適合する見込みを踏まえて判断されます。自宅兼用の顧問先であれば、事務所を確保する時期と費用を計画に書き、適合する見込みとして示すことが考えられます。一方、2028年10月16日を過ぎた後の更新では原則として改正後の基準が求められ、永住許可の申請には経過措置がありません。
更新の経過措置の全体像は、経営管理ビザ更新に3000万円は必要かの記事で整理しています。事務所の移転は資金と時間がかかるため、3,000万円や常勤職員の計画と同じ時間軸で考えておくと、計画全体の数字がそろいます。
広さに一律の基準がないときの考え方

「何平方メートルあれば足りますか」という質問は、先生方がもっともよく受けるものの一つです。公表資料は広さを一律に示していないため、数字で答えることはできません。代わりに当社がおすすめしているのは、事業計画の中身から必要な広さを説明できるかを確かめる方法です。
- 来客や商談の有無
- 在庫や設備を置く場所
- 常勤職員と経営者の人数
- 職員が日々行う業務の内容
- 許認可の要件で求められる設備
たとえば、常勤職員1名と経営者が事務作業をする会社と、在庫を抱えて出荷する卸売業や調理場が要る飲食業とでは、必要な広さがまったく違います。事業に必要な許認可がある場合は、その取得状況を示す資料も求められます。事業計画に書いた人員と業務が、その事務所で実際に回るかを説明できることが、「必要かつ十分な広さ」に答える筋道になります。
このため、事務所の広さは事業計画と切り離して決めないことが大切です。計画では職員を3名に増やすと書いているのに、事務所は1人分の机しか置けない、といった食い違いがあると、計画そのものの信頼性が問われます。
先生が賃貸借契約書で確認すること

事業所の実態を示す基本の資料は、賃貸借契約書です。税理士の先生は家賃の支払いを帳簿で見ていても、契約書そのものに目を通す機会は少ないかもしれません。行政書士の先生と分担して、次の項目を確かめておくと安心です。
| 確認する項目 | 見る箇所 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 使用目的 | 契約書の使用目的、用途の欄 | 居住用のままでは自宅兼用と見られやすい |
| 契約者の名義 | 借主の欄 | 社長個人の名義なら、会社が使う根拠の説明 |
| 所在地 | 物件の表示 | 登記上の本店や申請書類の住所との一致 |
| 使える範囲 | 貸室の表示、共用部分の定め | 専用の区画があるか |
| 期間と費用 | 契約期間、賃料、保証金や敷金 | 帳簿の金額や事業計画との一致 |
とくに見落としやすいのが、使用目的と名義の組み合わせです。社長個人の名義で、使用目的が居住用の契約は、実態が事務所であっても書面の上では自宅と区別がつきません。新たに事務所を借りる顧問先には、契約の前に使用目的と名義を先生に見せてもらうよう案内しておくと、契約し直す手間を防げます。
顧問先に資料を頼むときは「賃貸借契約書の全ページの写しと、事務所の中の様子が分かる写真をお願いします」と伝えると、行政書士の先生が申請書類を作るときにも使える形でそろいます。
登記上の本店と実際の事務所の関係

自宅で創業した会社は、登記上の本店が自宅の住所になっていることが多くあります。事務所を借りても本店を移さないままにしておくと、登記事項証明書、申請書類、賃貸借契約書で住所がばらばらになり、どこが事業所なのかが書類から読み取りにくくなります。
本店を移すかどうか、移す時期をいつにするかは、顧問先の事情によります。本店移転の登記は司法書士の先生、税務署や都道府県、市区町村への異動の届出は税理士の先生の領域です。行政書士の先生は、申請書類に記載する事業所の住所と、登記や契約書の住所との関係を説明できるように整えます。事業所の移転を計画に入れる場合は、3人の先生方の段取りを最初にそろえておくと、手続きの抜けを防げます。
事業計画の家賃と保証金から確認すること

事務所の要件は、数字の面からも確かめる必要があります。税理士の先生がもっとも力を発揮できるのが、この部分です。
家賃は利益で払い続けられるか
自宅兼用から事務所に移ると、毎月の家賃が新たな固定費として加わります。直近2期の粗利と販管費を見て、家賃が増えても赤字にならないか、常勤職員の人件費と合わせて払い続けられるかを試算します。家賃を足した結果、欠損金や債務超過が見込まれるなら、移転の時期や物件の条件を見直す必要があります。
保証金と内装費は3,000万円に足せない
法人の場合、3,000万円の判定に使われるのは払込済資本金の額か出資の総額で、事務所の維持費を合算することはできません。保証金や内装の費用は資本金の使い道であって、資本金に上乗せして数えるものではありません。一方、個人事業主の場合は資本金ではなく、事業所の確保費用、職員の給与1年分、設備投資など事業に投下された総額で見ます。法人と個人事業主で、事務所の費用の位置づけが違う点は、先生方の間でも取り違えが起きやすいところです。
移転の初期費用と資金繰り
保証金、仲介の手数料、内装や什器の費用は、移転の月にまとめて出ていきます。月次の資金繰り表に移転の月を書き込み、手元資金が不足しないかを確かめます。資本金の使途の示し方は経営管理ビザの事業計画書の例で記載例を紹介しています。
バーチャルオフィスやシェアオフィスの扱い

顧問先から「バーチャルオフィスやシェアオフィス、レンタルオフィスでもよいか」と聞かれることがあります。この点について、出入国在留管理庁の公表資料には記載がありません。公表資料に記載がないため、個別に確認するというのが、先生が顧問先に返せる正確な答えです。
そのうえで考え方の手がかりになるのは、先に触れた「改正後の規模等に応じた経営活動を行うための事業所」という表現です。常勤職員が日々働き、事業計画に書いた業務が回る場所として説明できるかどうか。この問いに答えられない形態であれば、計画を見直す必要があると考えておくのが安全です。個別の判断は、申請を担当する行政書士の先生にお願いしてください。
当社の支援範囲と行政書士との役割分担

KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、経済産業大臣登録の中小企業診断士として、事務所の確保や雇用を含む事業計画書の確認、経過措置期間中の更新で求められることがある評価書面の作成、家賃や人件費を数字に落とす事業計画づくりの申請サポートを行っています。在留資格の申請書類の作成と申請取次は行政書士または弁護士の業務であり、当社は行いません。事業所の要件に関する個別の判断や入管とのやり取りも、申請を担当する行政書士の先生にお願いしています。
先生方との連携の進め方は税理士向けの協業のご案内にまとめています。評価書面の作成は全国オンラインで対応しています。料金は改定することがあるため、最新の内容はサービスページでご確認ください。顧問先・依頼者にそのままお伝えいただけるページとして、経営管理ビザの評価書面作成サービスと、外国人の方向けのご案内もご用意しています。
事務所の移転を控えた顧問先を持つ先生との協業

家賃と保証金の計上、移転後の損益と資金繰り、異動の届出は、税理士の先生がもっとも早く正確に確かめられる部分です。行政書士の先生は、賃貸借契約書の内容の確認、申請書類に記載する事業所の説明、個別の扱いの確認を担います。当社は、その間をつなぐ移転と雇用の計画を数字で組み立て、事業所の広さと使い方を計画と結び付けて説明する役割を担います。
決算と税務は税理士の先生、計画の確認と評価書面は中小企業診断士、申請は行政書士の先生という分担で、顧問関係や依頼関係を保ったまま進めます。
自宅兼用の顧問先・依頼者がいる先生へ
決算と税務は先生、計画の確認と評価書面は中小企業診断士、申請は行政書士。事務所の確保を含む計画を数字で組み立てる協業のかたちをご案内しています。
顧問先・依頼者にそのまま案内できるページ
事務所の確保と雇用の計画を数字で確かめ、根拠を添えた評価書面にまとめます。全国オンライン対応。最新の料金はサービスページに掲載しています。
先生が顧問先から受ける事務所要件のよくある質問

Q. 自宅の一室を事務所専用にすれば認められるか、と聞かれました
公表資料では、自宅を事業所と兼ねることは原則として認められないとされ、例外の具体的な条件は示されていません。個別の事情で判断が変わるかは、申請を担当する行政書士の先生に確認してください。
Q. 事務所は何平方メートル必要か、と聞かれました
一律の基準は示されていません。改正後の規模等に応じた経営活動に必要かつ十分な広さとされています。事業計画の人員と業務から広さを説明できるかを確かめるよう案内してください。
Q. バーチャルオフィスでもよいか、と聞かれました
公表資料に記載がないため、個別に確認する必要があります。常勤職員が働き、計画した業務が回る場所として説明できるかが考え方の手がかりです。
Q. 次の更新までに移転が間に合わないときはどうすればよいですか
2028年10月16日までの更新では、改正後の基準に適合していなくても、経営状況や適合する見込みを踏まえて判断されます。事務所を確保する時期と費用を計画に書き、見込みとして示すことが考えられます。
Q. 保証金や内装費を3,000万円に含めてよいか、と聞かれました
法人は払込済資本金の額か出資の総額で判定され、事務所の維持費などを合算することはできません。個人事業主は、事業所の確保費用などを含む事業に投下された総額で見ます。
まとめ
経営管理ビザの改正で、事業所は改正後の規模等に応じたものが必要になり、自宅との兼用は原則として認められなくなりました。広さに一律の基準はなく、事業計画の人員と業務から必要かつ十分な広さを説明できるかが要点です。先生が確認するのは、賃貸借契約書の使用目的と名義、登記上の本店との関係、家賃と保証金が計画と帳簿でそろっているかです。バーチャルオフィスなど公表資料に記載がない形態は、断定せず個別に確認してください。
先生が顧問先に伝える一文は、「事務所は、社員が毎日働ける場所かどうかで考えます。借りる前に契約書を見せてください」です。その確認と計画づくりを、税理士の先生、行政書士の先生、中小企業診断士の分担で進めていきましょう。
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執筆・監修|KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)代表 松本昌史
中小企業診断士(経済産業大臣登録)、MBA(経営管理修士)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、事業承継士、事業再生マネージャー。認定経営革新等支援機関、M&A支援機関登録。法人の支援実績は150社以上。在留資格の申請書類の作成と申請取次は行いません。
参考資料:出入国在留管理庁「『経営・管理』の許可基準の改正等について(令和7年10月16日施行)」、同「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」(Q&A)、同「『経営・管理』の在留資格の明確化等について」、同 在留資格「経営・管理」案内ページ








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