
この記事は、顧問先や依頼者が新しく経営管理ビザを申請する場面に立ち会う税理士・行政書士の先生に向けています。
ある日、顧問先の外国人社長が、行政書士の先生から受け取った申請書類の一覧を持ってきます。その中に、おおむね次の1行があります。
「事業計画書(中小企業診断士、公認会計士または税理士の確認を受けたもの)」
社長が一緒に差し出すのは、A4で1枚の計画書と「先生、事業計画書の例はありませんか。ネットで探しても項目名だけの雛形しか出てこないのです」という質問です。2025年10月16日の改正で、経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)の新規申請時の事業計画書には専門家の確認が義務付けられ、「それらしい書類」では通らなくなりました。
日本語の書式に不慣れな社長がまず相談するのは、開業の数字を一緒に見てきた顧問税理士の先生です。申請を担当する行政書士の先生が窓口になることもあります。ところが、事業計画書の確認は中小企業診断士や公認会計士など企業評価の資格を持つ第三者が担うもので、計画づくりを手伝った先生ご自身が確認者になることには迷いが生じます。周りに診断士の知り合いもいない。信頼できる確認者を探した先で、当社KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)にご相談いただく。新規申請の事業計画書のご相談は、多くがこうして始まります。
先生から顧問先・依頼者にお伝えいただきたい一文は、「事業計画書に決まった様式はない。見られるのは計画の具体性、合理性、実現可能性の3点」です。したがって探すべき「例」は、書式の見本ではなく、この3点を満たす数字の組み方の例です。先生が計画書を受け取ったら、まず売上の内訳、費用の欄、資本金の使途の3つが数字で書かれているかを確認してください。この記事では、飲食店を仮のモデルにして、売上、人員と資本金3,000万円の使途、12か月の損益という3つの記載例を、確認する側の中小企業診断士の目線で示します。数字はすべて説明のための仮の値です。
この記事でお伝えすること
- 入管が示す3つの評価軸と記載例の対応
- 売上・人員・資本金の使途・12か月の損益の記載例
- 先生が計画書を受け取ったときに最初に見る3つの欄
事業計画書の例を探す前に先生が押さえる前提

出入国在留管理庁の公表資料では、在留資格を決定するときに提出する事業計画書について、計画に具体性と合理性が認められ、かつ実現可能なものであることを評価するものとして、経営の専門的な知識を有する者の確認が義務付けられています。施行日時点でその確認者に該当するのは、日本の中小企業診断士、公認会計士、税理士の3資格です。海外の同種の資格は該当せず、申請者の会社の役員や従業員も客観性の観点から確認者になれません。外部顧問の公認会計士や税理士は差し支えないとされています。つまり顧問税理士の先生は、資格の上では確認者になれる立場にあります。
もう1つの前提は、事業計画書と専門家の確認が主に必要になるのは、提出書類のカテゴリー3と4に当たる会社だという点です。設立直後の会社はほぼこの区分に入ります。更新のときは、新規の確認書面ではなく、直近2期の決算で事業の継続性が判断されます。顧問先がどの区分に当たるかは、申請を担当する行政書士の先生と最初にすり合わせておくと、準備の範囲がはっきりします。事業計画書の位置づけの全体像は、経営管理ビザの事業計画書って何?の記事で整理しています。
そして公表資料には、見落とされがちな注意書きがあります。弁護士と行政書士以外の者が、官公署に提出する申請書類の作成を報酬を得て業として行うと、行政書士法に違反するおそれがあるという記載です。専門家の「確認」と、申請書類の「作成」は別の業務です。税理士の先生や中小企業診断士が担えるのは計画の中身を整える支援と確認までで、申請書類の作成と申請取次は行政書士または弁護士の先生の業務になります。当社もこの線引きに沿って連携しています。
入管が示す3つの評価軸と記載例の対応

具体性、合理性、実現可能性という3つの言葉は、確認する側にとっては別々の問いです。それぞれに対応する記載例の要素を整理すると次のようになります。
| 評価軸 | 確認者が問うこと | 計画書に入れる要素 |
|---|---|---|
| 具体性 | 誰に、何を、いくらで、どれだけ売るのか | 商品と単価、客層、客数、営業日数、取引先の名前と条件 |
| 合理性 | その数字の根拠は何か。実績か仮説か | 同業の相場、見積書、立地の通行量、本国での実績など根拠の出所 |
| 実現可能性 | 人、資金、許認可がそろい、行動に落ちているか | 常勤職員の採用計画、資本金3,000万円の使途、許認可の取得予定、月別の行動 |
雛形の項目名を埋めるだけの計画書は、具体性の欄に文章があっても、合理性と実現可能性の欄が空のままになりがちです。確認者が所見を書けないのは、まさにこの空欄の部分です。顧問先の社長には「誰に何をいくらで売るか、その数字はどこから来たか、人とお金は足りるか。この3つに答える書類です」と伝えると、かみ砕いた形で伝わります。
記載例 売上計画を客数と単価に分ける

最初の記載例は売上です。「年商3,600万円を目指す」という1行では、確認者は何も評価できません。売上を「客数×客単価×営業日数」に分け、変数ごとに実績か仮説かを書きます。仮に、席数20席のアジア料理店を想定すると、次のような表になります。
| 変数 | 値(仮の例) | 区分 | 根拠と検証方法 |
|---|---|---|---|
| 昼の客数 | 1日25人 | 仮説 | 席数20席、回転1.25回。開業3か月のレジ記録で検証 |
| 昼の客単価 | 1,100円 | 仮説 | 近隣3店の価格帯を調査。メニュー表を添付 |
| 夜の客数 | 1日15人 | 仮説 | 立地の夜間通行量と同業の実績から推定 |
| 夜の客単価 | 3,200円 | 実績 | 本国で経営した店舗の実績値を為替換算 |
| 営業日数 | 月25日 | 実績 | 賃貸契約と定休日の設定 |
| 月間売上 | 約189万円 | 計算値 | (25人×1,100円+15人×3,200円)×25日 |
この形にすると、確認者は「昼の回転1.25回は席数と営業時間から見て無理がないか」「夜の客単価は本国の実績をそのまま使えるか」と、変数ごとに評価できます。当たる数字を書くことより、外れたときにどの変数を直せばよいかが分かる構造にしておくことが、合理性の中身です。開業後の月次でこの表を更新すれば、更新のときの事業の説明にもそのまま使えます。
税理士の先生にとっては、この表が開業後の月次試算表の売上と突き合わせられる形になっている点が大切です。計画の変数と記帳の区分をそろえておけば、計画と実績の差を毎月同じ物差しで説明できます。顧問先の勘定科目や補助科目を決める段階で、昼と夜、卸と小売といった計画の区分を反映しておくと、後の作業が軽くなります。
記載例 常勤職員1名と資本金3,000万円の使途

2つ目の記載例は、人と資金です。改正後は資本金等3,000万円以上と常勤職員1名以上の両方が求められ、計画書の人員計画と資金計画はこの2つの要件と整合していなければなりません。
常勤職員は、日本人、特別永住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者のいずれかで、年間217日以上かつ週30時間以上の勤務、雇用保険の加入などの基準で常勤かどうかが判断されます。計画書には、採用の時期、職務、月給、法定福利費を含む人件費を書き、その人件費が売上計画から払えることを示します。仮に月給26万円の調理スタッフを1名雇う場合、法定福利費を含めた会社負担は月30万円前後、年間で約360万円になります。前の表の月間売上約189万円に対して、原価率35%を見込むと粗利益は約123万円ですから、人件費30万円は粗利益の約4分の1に収まる、という確認の仕方になります。法定福利費の見積もりは、給与計算を見ている先生なら短時間で精度を上げられる部分です。
資本金3,000万円については、「資本金として積んである」だけでは実現可能性の説明になりません。法人の場合、判定に使われるのは払込済みの資本金の額または出資の総額で、資本準備金や剰余金は含まれません。先生は登記事項証明書と設立時の払込みの記録で、資本金の額を確かめてください。計画書では、その資金を事業のどこに投下するのかを表にします。
| 使途 | 金額(仮の例) | 根拠資料 |
|---|---|---|
| 店舗の保証金と内装工事 | 約900万円 | 賃貸借契約書、内装の見積書 |
| 厨房設備と備品 | 約500万円 | 設備業者の見積書 |
| 常勤職員1名の人件費12か月分 | 約360万円 | 雇用条件の案、求人票 |
| 開業時の仕入と広告 | 約240万円 | 仕入先の見積、広告の媒体資料 |
| 運転資金(家賃・光熱費など12か月分の予備) | 約1,000万円 | 月次の資金計画表 |
| 合計 | 約3,000万円 | 払込済み資本金と一致 |
使途の合計が資本金と一致し、各行に根拠資料が付いていれば、「資本金の額だけ合わせた計画」とは見え方がまったく違います。事業所についても、自宅との兼用は原則として認められないため、店舗や事務所の契約を資金計画に組み込んでおく必要があります。賃貸借契約や許認可の段取りは、行政書士の先生が依頼者と早めに確認しておきたい項目です。
記載例 12か月の損益と資金の見通し

3つ目の記載例は、売上と人件費と使途をつないだ12か月の損益と資金の表です。ここで大切なのは、開業初月から満席になる計画を書かないことです。前の表の月間売上約189万円を「軌道に乗った状態」と置き、開業から3か月は6割、4か月目から6か月目は8割、7か月目以降に10割とするなど、立ち上がりの期間を数字で表現します。
このとき確認者が見るのは、立ち上がりの赤字で現預金が尽きないか、という点です。仮に月の固定費が家賃30万円、人件費30万円、代表の役員報酬30万円、その他20万円で合計110万円なら、売上6割の時期は粗利益約74万円で月約36万円の赤字になります。運転資金約1,000万円があれば、この赤字が1年続いても資金は尽きない計算です。このように「最悪の場合でも資金が続く」ことを数字で示すのが、実現可能性の記載例です。役員報酬の水準は税務の観点からも先生の助言が要る項目ですから、計画の段階で顧問先と決めておくと、開業後の数字とずれません。
当社の確認では、この表に加えて、計画どおりに進まなかったときに何を変えるかという行動も書くようお願いしています。昼の客数が計画の7割にとどまったら、テイクアウトを始める、近隣オフィスに配布する、価格帯を見直すといった対策を、いつ判断するかの時期と合わせて書きます。計画は目標の数字ではなく、そこへ至る行動の束であり、確認者が実現可能だと所見を書けるのは、この行動が具体的なときです。
先生が計画書を受け取ったときに見る不備

これまでの確認で、当社が修正をお願いすることが多い不備は次のとおりです。顧問先や依頼者から計画書を受け取ったら、先生の側でまずこの6点を見ていただくと、確認に回す前の手戻りを減らせます。
- 費用の欄がない計画
- 人件費と採用時期の記載がない計画
- 売上が年額1行だけで内訳がない計画
- 開業初月から満席や満稼働を前提にしている計画
- すべての数字が仮説なのに根拠の出所がない計画
- 資本金3,000万円の使途が書かれていない計画
いずれも、事業に実体がないから起きる不備ではありません。頭の中にある事業を、第三者が読める数字の形にする作業が抜けているだけです。顧問先には「事業がだめなのではなく、数字への書き直しが足りないだけです」と伝えると、前向きに修正に取り組んでもらいやすくなります。
税理士・行政書士の先生と中小企業診断士の分担

税理士の先生は資格の上では確認者に該当します。ただ、顧問先の計画を自ら確認することには、第三者性への懸念や、売上計画の妥当性を短期間で評価する負担から、ためらいを感じる先生が少なくありません。一方で、先生がお持ちの設立時の資本金の情報や月次の試算表は、計画の合理性を確認するうえで欠かせない材料です。確認者を引き受けるかどうかにかかわらず、数字の提供者としての先生の役割は大きいといえます。
行政書士の先生は、カテゴリーの判断、提出書類の整理、申請書類の作成と申請取次、入管への問い合わせを担います。依頼者から計画書を受け取る最初の窓口になることも多く、計画の中身が薄いと気づいたときに、確認者へつなぐ判断をする立場です。決算と税務は税理士の先生、計画の確認は中小企業診断士、申請は行政書士の先生という分担にすると、それぞれが本来の業務に集中でき、顧問先・依頼者への説明も一本になります。
顧問先・依頼者から計画書を預かった先生へ
決算と税務は先生、事業計画書の確認と評価書面は中小企業診断士、申請は行政書士。顧問関係・依頼関係を保ったまま連携する協業のかたちをご案内しています。
当社の支援範囲と行政書士との連携

KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、経済産業大臣登録の中小企業診断士として、事業計画書の確認、計画を数字に落とす事業計画づくりの申請サポート、更新時に債務超過となった場合の改善見通しに関する評価書面の作成を行っています。在留資格の申請書類の作成と申請取次は行政書士または弁護士の業務であり、当社は行いません。すでに行政書士の先生に依頼されている場合は、その先生と役割を分けて進めます。
確認と評価書面の作成は全国オンラインで対応しています。料金は改定することがあるため、最新の内容はサービスページでご確認ください。顧問先・依頼者に直接ご案内いただく場合は、経営管理ビザの評価書面作成サービスのページをそのままお伝えください。社長ご本人向けの支援全体は外国人の方向けのご案内にまとめています。
顧問先・依頼者にそのまま案内できるページ
売上の分解、人件費と資本金の使途、12か月の損益を中小企業診断士が一緒に整え、確認の書面を作成します。全国オンライン対応。最新の料金はサービスページに掲載しています。
先生が受ける経営管理ビザの事業計画書の例の質問

Q. 顧問先から「決まった様式やページ数はあるか」と聞かれました。どう答えればよいですか
出入国在留管理庁が定めた様式はありません。分量より、具体性、合理性、実現可能性を第三者が確認できる内容になっているかが見られます。当社が確認した計画書は、表を含めて10ページから20ページ程度が多いですが、業種や事業の規模で変わります。
Q. 依頼者が英語や中国語で計画書を作ってきました。そのままでよいですか
確認者が内容を評価し、審査する側が読むものですから、日本語で作成するか日本語訳を添えることをおすすめします。言語の扱いを含む提出方法の詳細は、申請を担当する行政書士の先生の判断で依頼者に案内してください。
Q. この記事の記載例の数字を、顧問先の計画にそのまま使ってもよいですか
この記事の数字は説明のための仮の値です。そのまま使うと、根拠のない仮説の計画になります。顧問先の立地、価格帯、取引先の見込みに置き換え、変数ごとに根拠を書くよう促してください。
Q. 顧問税理士として確認を引き受けるべきか迷っています
外部顧問の税理士は確認者として差し支えないとされています。一方で、顧問先の計画を評価することへの第三者性の懸念から、外部の中小企業診断士に依頼されるケースも多くあります。先生が数字の提供と税務を担い、確認は外部に任せる形も選べますので、顧問先と相談のうえ決めてください。
Q. 確認を受けた計画書は、顧問先の更新のときにも使えますか
更新時には新規の確認書面ではなく、直近2期の決算で事業の継続性が判断されます。ただし、計画と実績の差を説明できる状態にしておくことは更新の準備になりますので、開業後は月次で計画表を更新しておくよう顧問先に案内してください。
まとめ
経営管理ビザの事業計画書に決まった様式はなく、専門家が確認するのは計画の具体性、合理性、実現可能性です。先生が顧問先・依頼者に示したい記載例は、売上を客数と単価と営業日数に分けて実績と仮説を区別すること、常勤職員1名の人件費と資本金3,000万円の使途を根拠資料付きで一致させること、立ち上がりの赤字でも資金が続くことを12か月の損益で示すことの3点です。事業の中身を数字に翻訳する作業は、確認者である中小企業診断士と一緒に進めるのが近道です。決算と税務は税理士の先生、申請書類の作成と申請取次は行政書士の先生の業務ですので、役割を分けて顧問先・依頼者の申請を支えていきましょう。
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執筆・監修|KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)代表 松本昌史
中小企業診断士(経済産業大臣登録)、MBA(経営管理修士)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、事業承継士、事業再生マネージャー。認定経営革新等支援機関、M&A支援機関登録。法人の支援実績は150社以上。在留資格の申請書類の作成と申請取次は行いません。
参考資料:出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」(Q&A、2026年6月26日更新)、同「『経営・管理』の許可基準の改正等について(令和7年10月16日施行)」、同「在留資格『経営・管理』」案内ページ(提出書類一覧)









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