「経営管理ビザの更新が近いのに、決算が赤字だった」「入管から資料提出通知書が届き、知らない書類を求められている」「手数料が上がったと聞いたが、いくらかかるのか分からない」。在留資格「経営・管理」の更新期を迎えた外国人経営者と、その顧問税理士の先生から、当社にはこうしたご相談が寄せられます。
結論から申し上げると、経営管理ビザの更新は申請の時期、提出書類、直近2期の決算内容の3点でほぼ決まります。とくに直近の決算が債務超過になっている会社は、通常の書類に加えて、中小企業診断士などの第三者による「改善見通しの評価書面」を求められます。この記事では、出入国在留管理庁の公表資料をもとに、更新の流れと備え方を整理します。
数字で見る経営管理ビザの現状
まず、更新を取り巻く環境を数字で確認します。報道によれば、経営管理ビザの在留者は2025年末時点で4万6,781人と、2020年末の約1.7倍に増えました。一方で、2025年10月16日の要件厳格化のあと、2026年上半期の新規入国者は635人と前年同期比で80.9%減り、再入国手続きをせずに出国した経営管理ビザの保有者は、2025年上半期の246人から2026年同期の953人へ約3.9倍に増えています。
新規の入口が狭まる一方で、すでに日本で事業を営む約4.7万人の経営者にとっては、「更新を確実に通すこと」の重みが増しているのが現状です。
経営管理ビザ更新の基本ルール
申請できる時期
出入国在留管理庁によると、在留期間更新許可申請は在留期間の満了日までに行い、6か月以上の在留期間を持つ人は満了日の3か月前から申請できます。提出先は住居地を管轄する地方出入国在留管理官署で、オンライン申請も利用できます。
審査中に在留期限を迎えた場合(特例期間)
満了日までに申請が受理されていれば、審査結果が出るまで、または満了日から2か月が経過するまでのいずれか早いときまで、引き続き適法に在留できます。裏を返せば、満了日から2か月を過ぎても処分が出なければ在留できなくなるため、追加資料を求められたら速やかに提出する必要があります。
2026年10月からの手数料
2026年10月1日以降に受け付けた申請から、在留期間更新の手数料は許可される在留期間に応じて変わりました。オンライン申請の場合、出入国在留管理庁が示す金額は次のとおりです(決済手数料を含む支払額)。
| 許可される在留期間 | 手数料 | 支払額合計 |
|---|---|---|
| 6月超1年未満 | 21,000円 | 21,330円 |
| 1年 | 27,000円 | 27,330円 |
| 1年超3年未満 | 42,000円 | 42,330円 |
| 3年以上5年未満 | 56,000円 | 56,550円 |
| 5年以上 | 65,000円 | 65,550円 |
改定前のオンライン申請は一律5,500円でしたので、許可期間が1年の場合でも約5倍の負担です。2026年9月30日までに受け付けた申請は、許可が10月以降でも改定前の手数料が適用されます。
更新審査で見られる4つのポイント
出入国在留管理庁のガイドラインと行政書士の解説を整理すると、更新審査で確認される点は次の4つに集約できます。
| 審査のポイント | 確認される内容 |
|---|---|
| 事業の継続性 | 直近2期の決算(売上総利益、剰余金・欠損金、債務超過の有無) |
| 公的義務の履行 | 法人税・住民税などの納付、労働保険・社会保険の加入と納付 |
| 経営への実質的な関与 | 重要事項の決定や業務執行に携わっているか、在留期間中の活動内容 |
| 事業所の実態 | 法人名義で事業用として借りた事業所があるか |
ガイドラインでは、高額・長期の税の未納は消極的な要素とされ、重加算税の賦課決定を受けた機関の経営者は、とくに消極的な要素として評価されると明記されています。また、行政書士法人の解説によれば、2025年7月10日から、更新・変更申請で直近の在留期間における活動内容を説明する文書の提出が求められるようになりました。決算書の数字だけでなく、「この3年間、経営者として何をしてきたか」を言葉で示す準備も欠かせません。
決算状況で変わる提出書類
事業の継続性について、ガイドラインは単年度の決算ではなく、貸借状況を含めて総合的に判断するとし、直近2期の決算で取扱いを分けています。
| 直近2期の決算 | 入管の取扱い | 追加で求められる書類 |
|---|---|---|
| 剰余金あり、または欠損金なし | 継続性に問題なし | なし |
| 欠損金あり(債務超過ではない) | 原則として継続性あり | 今後1年間の事業計画書と予想収益の資料 |
| 直近期末のみ債務超過 | 1年以内の改善見通しが前提 | 第三者による改善見通しの評価書面 |
| 2期連続で債務超過 | 原則として継続性なし | 設立5年以内の新興企業のみ、評価書面と資金調達・顧客拡大の取組資料で柔軟に判断 |
| 2期連続で売上総利益なし | 原則として継続性なし | 新興企業のみ、上記と同様の書類で柔軟に判断 |
赤字(当期純損失)と債務超過は別の概念です。債務超過は、貸借対照表の負債の合計が資産の合計を上回った状態を指します。今期が黒字でも、過去の累積損失で債務超過のままの会社は少なくありません。決算が確定したら、まず純資産の部がマイナスになっていないかを確認してください。
債務超過のときに必要な「評価書面」
直近期末が債務超過で、その前の期末は債務超過でない場合、入管は「中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者」が、1年以内に債務超過でなくなる見通しを含む改善見通しについて評価した書面を求めます。評価の根拠となる理由が書かれていることが条件です。
当社が作成する評価書面では、次の3点から事業計画を検証し、所見とその根拠を記載します。
- 具体性 売上や利益の計画が、単価・数量・取引先などの数字で裏付けられているか
- 合理性 債務超過に至った原因の分析と、解消までの道筋に無理がないか
- 実現可能性 1年以内に純資産をプラスに戻す見通しが、事業の実態に即しているか
会社の役員や従業員は評価者になれません。顧問税理士も資格の上では評価者になれますが、決算を作成した立場で評価することへのためらいから、外部の中小企業診断士に依頼されるケースが多くあります。
資料提出通知書が届いたときの動き方
当社に届くご相談で多いのが、更新申請のあとに入管から「資料提出通知書」が届き、その中で評価書を求められるケースです。ある関東の外国人経営者の事例では、通知書の日付から提出期限まで15日しかなく、しかも2回目の通知でした。通知書には、期限までに出さなければ、すでに提出された資料だけで許否を決めると書かれています。
通知書が届いたら、次の順で動くことをおすすめします。
- 期限日と、求められている書類の一覧を確認
- 顧問税理士に直近2期の決算書と試算表の準備を依頼
- 評価書面が必要なら、その日のうちに中小企業診断士へ相談
- 行政書士に申請を依頼している場合は、提出方法と日程を共有
期限が短いほど、改善計画を数字で組み立てる時間が足りなくなります。通知書が届いた当日に動けるかどうかが、間に合うかどうかの分かれ目です。
経過措置と2028年10月16日
2025年10月16日の改正で、新規取得の要件は資本金等3,000万円以上、常勤職員1名以上などに引き上げられました。すでに経営管理ビザで在留している人の更新には、2028年10月16日までの経過措置があり、この期間は新基準を満たしていなくても、経営状況などを踏まえて判断されます。
ただし、経過措置は債務超過の取扱いを緩めるものではありません。経過措置の期間中でも、直近期末が債務超過であれば評価書面は求められます。2028年10月16日以降の更新を見据えるなら、今の更新を通すことと、新基準に向けて財務体質を整えることを同時に進める必要があります。
中小企業診断士から見た更新準備のコツ
当社は、外国人技能実習・特定技能の受入れ審査で求められる企業評価書を数多く作成してきました。その経験から言えるのは、審査で問われるのは「今の数字が良いか悪いか」より、「なぜこの数字になり、次の1年でどう変わるのか」を説明できるかだという点です。
たとえば、設立初期の設備投資や開業準備で費用がかさんだ、主要取引先の発注が一時的に止まった、といった原因が特定できていれば、改善の道筋も描けます。逆に、事業計画が「頑張って売上を伸ばす」といった文章だけで、数字の裏付けがない場合は、評価書面で肯定的な所見を示すことができません。決算が確定した時点で、月次の損益計画と債務超過の解消シミュレーションを用意しておくと、更新の準備が格段に楽になります。
経営管理ビザ更新のよくある質問
Q. 赤字決算でも更新できますか
赤字決算でも更新できる可能性はあります。剰余金が残っていれば継続性に問題はないとされ、欠損金があっても債務超過でなければ、今後1年間の事業計画書と予想収益の資料で判断されます。
Q. 債務超過だと必ず不許可になりますか
直近期末のみの債務超過であれば、第三者の評価書面で1年以内の改善見通しを示すことで、継続性が認められる余地があります。2期連続の債務超過は原則として継続性が認められず、例外は設立5年以内の新興企業に限られます。
Q. 評価書面は自分で書けますか
書けません。役員や従業員は評価者になれず、中小企業診断士や公認会計士などの公的資格を持つ第三者が作成する必要があります。
Q. 評価書面の作成にはどれくらいかかりますか
当社の場合、資料の受領とヒアリングのあと、3日〜1週間程度で納品します。料金は98,000円〜(税抜)です。
まとめ
経営管理ビザの更新は、満了日の3か月前から申請でき、2026年10月からは許可期間に応じて手数料が2万円台から6万円台に上がりました。審査では事業の継続性、公的義務の履行、経営への関与、事業所の実態が確認され、直近期末が債務超過であれば、中小企業診断士などの第三者による改善見通しの評価書面が必要です。決算が確定した段階で純資産を確認し、債務超過であれば早めに改善計画を数字で組み立てておくことが、更新を確実に通すいちばんの近道です。
経営管理ビザの更新を控えている方へ
更新申請の前に、審査で見られるポイントと、不許可につながりやすい落とし穴を確認しておきましょう。
経営管理ビザ更新が不許可になる5つの理由|債務超過・納税・事業実態の落とし穴と対策
債務超過の決算、税・社会保険の未納、事業実態、事業所、追加資料の期限切れという5つの落とし穴と備え方
税理士・公認会計士の先生へ
顧問先の外国人経営者に、入管から「評価書」を求める資料提出通知書が届いていませんか。顧問先の評価を先生ご自身が書くと、第三者性が問われるおそれがあります。
決算と税務は先生、評価書面は中小企業診断士。顧問関係はそのままに、期限内の提出を後押しする協業のかたちをご案内しています。
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執筆・監修|KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)代表 松本昌史
中小企業診断士(経済産業大臣登録)、MBA(法政大学経営大学院)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、事業承継士、事業再生マネージャー。認定経営革新等支援機関/M&A支援機関登録。法人の支援実績は150社以上。
参考資料:出入国在留管理庁「『経営・管理』の在留資格の明確化等について」「在留期間更新許可申請」「オンライン申請における手数料額及び手数料納付方法について(2026年10月1日以降の申請分のみに適用)」、共同通信配信記事(2026年10月15日・16日)
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