
跡を継ぐ子には、事業だけでなく、その株式にかかる相続税も一緒に背負わせてしまう。親族内承継を考え始めた社長の多くが、ここで手が止まります。
自社株の評価額が上がるほど、相続税額もそのまま膨らみます。納税資金の準備を後回しにしたまま相続が発生すると、後継者は自社株を手放すか、金融機関からの借入れに頼らざるを得なくなります。
自社株にかかる相続税の負担は、法人保険を使って計画的に備えることができます。ただし加入すれば安心というものではなく、承継のタイミングに合わせて契約の目的・名義・金額を設計し直す視点があれば、選べる道が広がります。
顧問税理士から「そろそろ自社株の評価を確認しましょう」と言われても、評価額と相続税額の関係が実感としてつかめず、話がそこで止まってしまう社長も少なくありません。中小企業診断士・事業承継士として法人支援150社以上に携わってきた経験から、親族内承継で相続税の納税資金に悩む社長・後継者に向けて、法人保険をどう役立てるかを整理します。
- 親族に自社株を継がせたい社長
- 後継者に納税資金の負担をかけたくない社長
- 法人保険の目的があいまいなまま放置している社長
- 相続税の準備をどこから始めるか迷う後継者
- 親族内承継で相続税の納税資金が不足しやすい理由
- 法人保険で納税資金を準備する3つのポイント
- 納税資金の不安が消えた先に手に入る未来
- 自社だけで進める限界とKICKの支援内容
読み終えれば、いまの法人保険が相続税の納税資金という目的に合っているかを、自分の言葉で説明できるようになります。
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親族内承継で自社株の相続税・納税資金が足りなくなる理由

事業承継で親族内承継を選ぶと、自社株は多くの場合、後継者である子に集中して渡されます。会社の経営を安定させるためには自然な判断ですが、その分だけ後継者一人が相続税を負担することになります。
自社株は現金化しにくい財産
自社株は、上場株式のように市場で売って現金に換えることができません。評価額は高くても、実際に手元にある現金とは別物だという点を見落としがちです。
相続税は、原則として相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に、現金で一括納付します。会社の利益が伸びて自社株の評価額が上がるほど、後継者が用意すべき現金との差は開いていきます。
業績が好調な会社ほど、この差は大きくなります。「会社は順調に成長しているのに、その分だけ後継者の納税負担も重くなっている」という状態に、社長自身が気づいていないことも珍しくありません。
親族内承継は後継者一人に集中しやすい
事業承継の型には、親族内承継・役員や従業員への承継(MBO・EBO)・第三者への承継(M&Aによる譲渡)の3つがあります。この記事で扱うのは、子や配偶者などの親族へ引き継ぐ親族内承継です。
役員・従業員承継や第三者承継では、株式の対価が譲渡側に現金として入るため、納税資金の性質が異なります。これに対して親族内承継では、後継者は自社株という財産だけを相続し、その評価額に応じた相続税を、別に現金で用意しなければなりません。
後継者が複数の兄弟姉妹の中の一人であっても、経営を安定させるために自社株を一人に集中させるのが一般的です。その結果、相続税の負担も後継者一人に集中しやすいという特徴があります。
準備をしないまま相続が発生した場合
後継者が納税資金を用意できないと、次のような選択を迫られます。
| 選択肢 | 起こりやすいこと |
|---|---|
| 自社株の一部を売却する | 議決権が分散し、経営の意思決定が不安定になる |
| 金融機関から借入れる | 事業承継直後から返済負担を抱え、資金繰りが窮屈になる |
| 延納・物納を選ぶ | 担保の提供や利子税など、別の負担が発生する |
どの選択肢も、後継者が経営に集中する前から重い荷物を背負う形になります。相続税の納税猶予制度(事業承継税制)を使う道もありますが、要件を満たし続ける必要があり、猶予が打ち切られれば利子税とあわせて納税義務が生じます。「使えば安心」と言い切れる制度ではありません。
金融機関からの借入れも、無条件で希望どおりの金額を貸してもらえるわけではありません。事業承継の直後は業績の見通しが読みにくいと判断されやすく、審査の場面で納税資金の分まで上乗せして借りることが難しいこともあります。
だからこそ、猶予に頼り切るのではなく、早い段階から納税資金そのものを用意しておくという選択をする経営者が増えています。事業承継は、自社株の評価と納税資金の準備を、切り離さずに考える必要があるテーマです。
評価額が固まってから慌てて対策を考えるのではなく、評価額が動く前提で複数年かけて備える。この時間の使い方の違いが、後継者の負担を大きく左右します。
相続税の納税資金を法人保険で準備する進め方

法人保険は、相続税の納税資金という目的に対して、現金を計画的に積み上げていく手段の一つになります。ここでは、契約を組む・見直すときに押さえておきたい3つのポイントを整理します。
契約の目的を一本化する
法人保険は、役員退職慰労金の準備、自社株の買取資金、納税資金の確保など、複数の目的を兼ねて契約されていることがあります。目的があいまいなまま放置すると、いざというときに必要な金額に届きません。
まず「この契約は何のためか」を一つずつ言葉にして棚卸しすることが、進め方の起点になります。加入した時期の異なる契約が複数あると、それぞれの目的が積み重なって、いつの間にか誰も全体を把握していない状態になりがちです。まずは契約証券を並べて、目的が重複していないか、逆に抜け落ちている目的がないかを確認するところから始めます。
名義と保障額を承継フェーズに合わせる
契約者・被保険者・受取人の名義が、先代社長のまま据え置かれているケースは珍しくありません。被保険者が現経営者のままだと、後継者が相続税を負担するタイミングで保険金を受け取れない、という食い違いが起きます。
保障額についても、想定される相続税額の目安と、現預金・不動産など他の準備手段とのバランスを見ながら、過不足を確認します。保障額を決めるときは、会社の資金繰りへの影響も無視できません。保険料の負担が重すぎれば、事業そのものの運転資金を圧迫してしまいます。「削りすぎず、増やしすぎず」という両面のバランスを意識することが欠かせません。
節目ごとに見直すタイミングを決める
自社株の評価額は、業績や資産の状況で毎年変わります。後継者が決まったとき、株価評価が大きく動いたとき、というように、見直すタイミングをあらかじめ決めておくと、契約を「入れっぱなし」にせずに済みます。
後継者が経営者本人ではなく、まだ入社したばかりの若い世代であることも珍しくありません。見直しの時期をあらかじめカレンダー化しておけば、後継者の知識や経験に左右されず、契約が放置される事態を防げます。
決算のタイミングに合わせて年に一度、契約内容を確認する習慣をつくっておくのも一つの方法です。特別な作業に見えても、実際には既存の証券を見返して目的とのずれを確認するだけの、短時間で終わる作業です。
この3つのポイントを検討するときに、次のような項目を一覧にして整理すると、社内の合意形成もしやすくなります。
| 検討する項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 契約の目的 | 納税資金なのか、自社株の買取資金と兼ねるのか |
| 契約者・被保険者・受取人 | 名義がいまの承継フェーズと合っているか |
| 保障額の考え方 | 想定される相続税額と、他の準備手段とのバランス |
| 資金の使いみち | 納税資金に充てるのか、遺留分侵害額請求への備えも兼ねるのか |
| 見直しの時期 | 株価評価が変わったとき、後継者が決まったときに再点検する |
あわせて押さえておきたいのが、税務上の取扱いです。法人向け生命保険の保険料は、2019年(令和元年)の法人税基本通達改正により、契約ごとの最高解約返戻率に応じて損金に算入できる割合の区分が変わりました。以前のように保険料を一律に損金算入できるわけではなく、契約内容によって取扱いが分かれる点には注意が必要です。
どの区分に当てはまるか、加入済みの契約がどう扱われるかは契約ごとに異なります。具体的な損金算入割合の判断や申告は税理士の領域であり、KICKが代わって判断するものではありません。顧問税理士と連携しながら進めることをおすすめします。
保険は、承継フェーズに合わせて役割を再設計するものであり、削りすぎれば万一のときの事業継続や家族の生活に影響が出ます。商品ありきで増やす・減らすのではなく、事業承継計画との整合性を優先して考える順序が大切です。詳しくは次のページでまとめています。
事業承継専属の保険代理店という考え方 中小企業の事業承継において、法人保険は長年にわたり「とりあえず加入してきたもの」になりがちです。創業期、成長期、拡大期と、その時々の経営判断の積み重ねで保険は増え、気づけば保険料負担が重くなっているケースも少なくありません。 一方で、「保険をやめ...
ご相談いただいても、加入を前提にした話は一切しません。いまの契約を点検した結果、変更の必要がないと分かることもあります。まずは契約の中身をお聞かせください。
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納税資金の不安がなくなった先に手に入る未来

相続税の納税資金という一点が整うだけで、親族内承継の景色は大きく変わります。3つの軸で具体的に見ていきます。
資金の軸|自社株を手放さずに済む
納税資金が確保できていれば、相続が発生しても自社株を売却したり、慌てて借入れを起こしたりする必要がなくなります。経営権を分散させずに、後継者が経営に専念できる状態を保てます。
取引先や金融機関から見ても、相続のたびに株主構成が揺れる会社より、経営権が安定している会社の方が信頼を寄せやすいものです。納税資金の備えは、後継者個人の安心だけでなく、会社の対外的な信用にもつながります。
従業員から見ても、社長の交代の際に会社の先行きが不安定に見えないことは、日々の仕事への安心感につながります。株主構成が揺れないという事実は、社内外の信頼を静かに支えています。
時間の軸|相続発生前に落ち着いて話し合える
納税資金の見通しが立っていれば、相続が起きてから10か月という限られた時間の中で慌てて対応する必要がありません。株価が高いうちに準備を始めれば、後継者や家族と落ち着いて話し合う時間を確保できます。
相続が起きてから制度や資金を調べ始めると、判断材料が足りないまま期限に追われることになります。時間の余裕があるうちに選択肢を並べて検討できることは、それ自体が大きな価値です。
関係性の軸|後継者以外の家族にも配慮できる
自社株を後継者に集中させる一方で、他の相続人には現金で報いたいと考える社長は少なくありません。法人保険で用意した資金の一部を、遺留分への配慮に充てる余地が生まれれば、家族間の関係を保ちながら承継を進められます。
「跡を継がなかった兄弟姉妹に申し訳ない」という気持ちを抱えたまま経営を続ける後継者は少なくありません。現金で配慮できる余地があるという事実だけでも、後継者の心理的な負担は軽くなります。
資金・時間・関係性のいずれも、相続が起きてからでは取り戻せません。順調ないまのうちに手を打っておくことが、結果として一番負担の軽い進め方になります。
資金・時間・関係性という3つの軸が整えば、後継者は経営そのものに集中できます。納税資金の不安が消えた先にある落ち着いた事業承継を、共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、事業承継士による法人保険の伴走支援

相続税の納税資金という課題は、税理士・保険の担当者・後継者それぞれの話がかみ合わないまま、時間だけが過ぎてしまいやすいテーマです。
専門性が分かれていることの難しさ
自社株の評価は税理士、保険の設計は保険の担当者、経営の判断は社長というように、専門性がそれぞれ分かれています。誰か一人が全体を見て設計する役割を担わないと、目的があいまいな契約がそのまま残りがちです。
税理士も保険の担当者も、それぞれの立場で誠実に助言していても、承継全体を見渡す視点がなければ、契約の目的と承継の計画がずれたままになります。専門家を否定するのではなく、その間をつなぐ役割が必要だということです。
社長自身がすべての専門分野を学び直すのは現実的ではありません。時間をかけて自己流で調べるうちに、後継者への引き継ぎがさらに先延ばしになるという本末転倒も起こりがちです。
KICKコンサルティングの立ち位置
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として承継全体の設計と伴走を行うと同時に、事業承継専属の保険代理店として法人保険の再設計を支援しています。
契約目的・保険金額・受取人・財務への影響・承継時の役割を洗い出し、過剰になっている保障と、不足している保障の両方を可視化することが、私たちの役割です。個別の税務判断や申告は税理士の領域であり、その点は顧問税理士と連携しながら進めます。
登記が必要な場面では司法書士、許認可に関わる場面では行政書士というように、それぞれの専門家と役割を分けながら、承継全体の設計図を描く立場として伴走します。誰か一人に丸投げするのではなく、関わる専門家全員の話がかみ合う状態をつくることが、私たちの目指すところです。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。いまの契約と承継の状況をお聞かせください。
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事業承継のよくある質問|相続税と法人保険の疑問を解消

Q. 相続税の納税資金として法人保険を使うとは、具体的にどういうことですか。
A. 会社が保険料を負担し、経営者に万一のことがあったときに保険金を受け取り、その資金を役員退職慰労金や納税資金の原資に充てる仕組みです。契約の目的を納税資金に定めたうえで、名義や保障額を設計します。役員退職慰労金として後継者やその家族に渡った資金を、相続税の納税に充てるという流れが一般的です。
Q. 死亡退職金には非課税の枠があると聞きました。
A. 相続税法上、死亡退職金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が設けられています。ただし適用の可否や具体的な金額の計算は個々の事情によって変わるため、税理士に確認したうえで規程を整えることをおすすめします。
Q. 法人保険の保険料は全額を損金にできますか。
A. できません。2019年の通達改正以降、契約ごとの最高解約返戻率に応じて損金算入できる割合が区分されています。全額を損金にできるのは、条件を満たす限られた契約に限られます。契約時期によっても扱いが分かれるため、古い契約と新しい契約を同じ前提で語らないことが大切です。契約ごとの具体的な取扱いは税理士に確認してください。
Q. 納税資金の準備はいつから始めるべきですか。
A. 自社株の評価額は業績によって変わり続けるため、早いほど選べる手段は広がります。後継者を決める前の段階から、現状の契約を点検しておくことをおすすめします。
Q. 相続税の納税猶予制度を使えば、保険による準備は不要になりますか。
A. 猶予制度は要件を満たし続けなければ打ち切られ、その時点で納税義務が生じます。猶予に頼り切るのではなく、納税資金そのものを用意しておく備えを併せて検討する経営者が増えています。
Q. 法人保険に入っていれば、納税資金は必ず足りますか。
A. 保障額の設計や資産の状況によって過不足が生じます。保険だけに頼らず、現預金や不動産など他の資産とのバランスで納税資金全体を組み立てる視点が欠かせません。
Q. どの保険会社・どの商品を選べばよいですか。
A. 私たちは特定の保険会社・商品を前提にご案内することはしません。承継の計画に対して、契約の目的・名義・保障額がどう組み立てられているかを一緒に整理することを大切にしています。
Q. 後継者以外の家族への配慮は、どう考えればよいですか。
A. 自社株を後継者に集中させる場合、他の相続人が遺留分侵害額請求をする可能性があります。法人保険で準備した資金の一部を、その配慮に充てる設計にしておくと、家族間の関係を保ちやすくなります。
Q. 法人保険と個人の保険は、どちらで準備すべきですか。
A. 法人保険は会社を守るための契約、個人の保険は家族の生活を直接守るための契約という役割の違いがあります。承継後にどちらが何を担うのか、名義とあわせて整理しておくことが大切です。
Q. 承継の準備は、何から手をつければよいですか。
A. まずは自社株の評価額の現状を把握し、あわせて既存の法人保険の契約内容を棚卸しするところから始めます。評価額と現状の保障額を並べて見るだけでも、納税資金がどの程度不足しそうかが見えてきます。
Q. 相談すると、その場で保険への加入を勧められますか。
A. 勧めません。まずは現状の契約と承継の計画をお聞きし、目的と設計が合っているかを一緒に点検するところから始めます。契約の変更が必要ないという結論になることもあります。
まとめ
親族内承継で自社株を後継者に集中させるほど、相続税の納税資金という課題は避けて通れません。準備を先送りするほど、後継者が経営に専念できる時間は削られていきます。
法人保険は、その納税資金を計画的に用意する手段の一つです。契約の目的を一本化し、名義と保障額を承継フェーズに合わせ、節目ごとに見直す。この3つのポイントを押さえれば、いまの契約が承継の役に立っているかを判断できるようになります。
個別の税務判断は税理士の領域ですが、承継全体を見渡して契約を設計し直す役割は、中小企業診断士・事業承継士であるKICKコンサルティングが担います。自社株の評価、法人保険の設計、後継者の育成という別々に見えるテーマを一つの計画としてつなぎ直すことが、遠回りに見えて、実は納税資金の不安を解く一番の近道です。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは、いまの契約と承継の状況をお聞かせください。
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