
タップできる目次
ゼロゼロ融資の返済がホテルの人材確保を止めている理由

帝国データバンクの調査では、2020年度から実施された新型コロナウイルス関連の実質無利子・無担保融資、いわゆるゼロゼロ融資について、返済が本格化した宿泊業の資金繰りに関する厳しい実態が繰り返し報告されています。宿泊需要はインバウンド回復とともに戻りつつあるものの、コロナ禍で積み上がった借入金の返済が始まり、決算書の純資産がマイナス、つまり債務超過のまま経営を続けているホテル・旅館が少なくありません。
特に地方の中規模ホテルでは、客室稼働率が回復基調にあっても、設備投資や雇用維持のために積み増した借入金の元本返済が重くのしかかり、当期純利益が黒字であっても純資産の毀損を短期間で解消できないケースが目立ちます。日本政策金融公庫が公表する中小企業の財務指標などを見ても、宿泊業は自己資本比率の回復に他業種より時間を要する傾向があるとされています。
そこに追い打ちをかけるのが人手不足です。フロント、清掃、調理補助といった現場は慢性的な人材難に陥っており、多くの経営者様が技能実習や特定技能といった外国人材の受け入れに活路を見出そうとしています。しかし、いざ外国人技能実習機構(OTIT)へ申請しようとした段階で、決算書の債務超過が審査の壁として立ちはだかるケースが相次いでいます。国籍を問わず優秀な人材を確保できるかどうかが、繁忙期の売上上限そのものを左右する時代になっているにもかかわらず、財務諸表の一行が採用計画全体を止めてしまうのです。
敵は人手不足そのものではありません。ゼロゼロ融資の返済負担と、それを引き金にした債務超過という「数字上の弱点」が、採用計画そのものを止めてしまっているのです。この構造を正しく理解し、正面から対策を講じることさえできれば、債務超過は決して人材確保の絶対的な障壁にはなりません。
相談だけで契約を迫ることは一切ございません。義務は生じません。
結論、4つの実務ポイントを押さえれば審査は突破できる
先に結論をお伝えします。ゼロゼロ融資の返済で債務超過に陥っているホテルであっても、技能実習計画の認定申請、あるいは特定技能の受入れに関する審査を通す道筋は存在します。ポイントは次の4点に集約されます。
- 借入金返済と営業キャッシュフローのバランスを客観的に証明すること
- インバウンド回復による売上増加を根拠あるデータで予測すること
- 人件費と客室稼働率の相関関係を数値で明示すること
- 中小企業診断士など公的資格者による説得力のある事業改善計画を用意すること
これら4点はどれか一つだけを満たせばよいというものではなく、財務データと定性的な改善策を組み合わせて、審査官に「この事業者であれば返済も雇用継続も両立できる」と納得してもらうための一連のストーリーとして構築する必要があります。それぞれがなぜ重要なのか、そして具体的にどう実務へ落とし込むのかを、この後順を追って解説してまいります。
債務超過ホテルが直面する審査の壁の正体

「うちのホテルは黒字なのに、なぜ審査で引っかかるのか」という疑問をお持ちの経営者様も多いと思います。損益計算書が黒字であっても、貸借対照表の純資産がマイナスであれば、審査上は債務超過として扱われます。単年度の利益ではなく、過去からの累積損失や借入金の残高全体を見て評価される仕組みだからです。この違いを正確に理解しないまま申請準備を進めてしまうと、直前になって書類不足を指摘され、スケジュールが大きく崩れる原因になります。
OTIT別紙②-1番号20が求める第三者評価書
外国人技能実習機構が公表している「技能実習計画認定申請に係る提出書類一覧・確認表」(別紙②-1)の番号20には、次の趣旨の記載があります。申請者が法人である場合、直近事業年度の貸借対照表の写しを提出する必要があり、その直近事業年度において債務超過がある場合には、中小企業診断士や公認会計士など、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が、改善の見通しについて評価を行った書類もあわせて提出しなければならないとされています。
つまり、決算書に純資産マイナスの数字が出ている時点で、社内の担当者がどれほど丁寧に事業計画を書いたとしても、それだけでは提出書類として認められません。ここで税理士に相談される経営者様も多いのですが、OTITが定める要件上、この評価書を作成できるのは中小企業診断士または公認会計士に限られており、税理士はこの要件を満たす資格には該当しません。この一点を知らずに時間を浪費してしまう相談が、実際に少なくないのです。
さらに注意が必要なのは、過去3年以内に他の技能実習計画で同じ書類を提出していても、事業年度が変わっていれば最新の決算書と評価書の提出が必要になるという運用です。一度審査を通過した経験があるからといって、次の申請でも同じ書類が使い回せるわけではありません。毎年の決算内容に応じて、その都度、改善見通しを更新し続ける必要があるという点が、多くの経営者様にとって見落とされがちなポイントです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠書類 | 別紙②-1 番号20(直近2事業年度の貸借対照表の写し) |
| 発生条件 | 直近事業年度で債務超過がある場合 |
| 評価書作成の資格要件 | 中小企業診断士、公認会計士等の公的資格者 |
| 税理士による作成 | 要件を満たさないため不可 |
対応を先延ばしにした場合に起こる3段階の悪化
この壁を放置すると、事態は段階的に悪化していきます。第一段階として、必要書類が整わないまま申請すれば審査が長期化し、最悪の場合は不認定となって、申請のやり直しに数週間から数か月を要します。第二段階として、その間も現場は深刻な人手不足のまま営業を続けることになり、繁忙期のシフトが組めない、既存スタッフの残業が常態化して離職が加速するといった二次被害が発生します。人が減れば残ったスタッフの負担がさらに増すという悪循環が、閑散期を挟んで翌シーズンにまで持ち越されることも珍しくありません。第三段階として、監理団体や、受け入れを予定していた技能実習生からの信頼を損ない、次回以降の採用活動全体に悪影響が及びます。一度「準備不足の企業」という印象を持たれてしまうと、その後の求人や紹介にも影響が及びかねません。ホテル業は繁忙期と閑散期の差が大きい業態だからこそ、この遅延の代償は数字以上に重く経営を圧迫します。
ご相談いただいたからといって、契約を強くお勧めすることはございません。
審査を通すための4つの実務ポイント

秘策1、借入金返済と営業キャッシュフローのバランスを証明する
債務超過という数字だけを見れば、審査側は不安を感じます。しかし重要なのは、返済原資となる営業キャッシュフローが着実に確保できているかどうかです。ゼロゼロ融資の返済スケジュールと、直近の営業キャッシュフローを月次ベースで並べ、返済負担が事業継続を脅かすものではないことをグラフや表で可視化します。
具体的には、営業キャッシュフローを年間返済額で割った返済余力の指標を算出し、数値が1を上回っている、あるいは今後1を上回る見込みであることを示します。あわせて、リスケジュール中であればその条件、据置期間の有無、今後の返済負担のピークがいつ訪れるのかを時系列で整理し、返済計画そのものに無理がないことを説明資料に落とし込みます。数字が独立して存在するのではなく、返済計画と収益計画が連動していることを示すことが、審査官に安心感を与える第一歩になります。
秘策2、インバウンド回復による売上増加を根拠あるデータで示す
観光庁が公表する訪日外国人消費動向調査などの公的統計を踏まえ、自社の商圏や客室単価帯における需要回復の見通しを、感覚ではなく数値で提示します。前年同月比の客室稼働率、ADR(平均客室単価)、RevPAR(客室あたり収益)の推移を時系列で並べることで、単なる希望的観測ではない、根拠のある改善シナリオとして評価書に落とし込むことができます。
あわせて、自社の立地における交通アクセスの変化、周辺の観光資源の集客動向、直近の予約チャネルごとの送客比率といった一次情報を組み合わせることで、地域特性を反映した独自の需要予測になります。全国平均の数値をそのまま転記するのではなく、自社固有の強みを数値の裏付けとともに語ることが、審査書類の説得力を大きく左右します。
秘策3、人件費と客室稼働率の相関関係を数値で明示する
外国人材を受け入れることが、単なるコスト増ではなく、稼働率向上による収益改善に直結することを示す視点も欠かせません。稼働率が一定水準を超えると人件費率がどう変化するのか、繁忙期の機会損失をどれだけ回避できるのかを試算し、採用が財務改善に寄与する構造そのものを可視化します。
例えば、人手不足によって満室にできず稼働率を意図的に抑えている期間があるホテルでは、その期間の潜在的な販売可能室数と平均単価を掛け合わせることで、機会損失額を金額で示すことができます。この機会損失額と、外国人材の受け入れにかかる年間の人件費を比較することで、採用が投資として合理的であることを財務の言葉で説明できるようになります。これにより、審査書類は単なる説明資料ではなく、経営改善のロードマップとしての説得力を持つようになります。
秘策4、中小企業診断士による説得力のある事業改善計画を用意する
ここまでの3つの視点をどれほど自社で積み上げても、OTITの要件を満たす評価書として認められるのは、公的資格を有する第三者が作成した書類に限られます。財務諸表の読み解き方、改善計画のロジック構築、審査基準に沿った書式まで、専門知識を持つ第三者が関わることで、初めて審査を通過できる水準の書類に仕上がります。中小企業診断士は経済産業大臣の登録を受けた国家資格であり、財務分析だけでなく経営改善計画の策定そのものを専門領域としているため、単に数字を並べるだけでなく、審査官が知りたい「なぜ改善できると言えるのか」という論理の骨格まで組み立てることができます。中小企業診断士による企業評価書作成支援を活用することで、経営者様ご自身が財務分析や書式作成に時間を割く必要がなく、決算書の提出とヒアリングへの対応だけで、審査基準に適合した書類を整えることが可能になります。
審査突破の先にある未来と、自社対応の限界

人材を確保した後のホテル経営の具体像
審査を通過し、技能実習生や特定技能人材を迎え入れた後、現場では次のような変化が具体的に起こります。
財務の軸では、繁忙期に人手不足を理由に販売を絞っていた客室が満室に近づき、ADRとRevPARの両方が押し上げられます。稼働率の底上げが積み重なることで、ゼロゼロ融資の返済原資となる営業キャッシュフローそのものが厚くなり、翌年度の決算では純資産の毀損幅が縮小していきます。
現場運営の軸では、フロント・清掃・調理補助の人員が安定することで、既存の日本人スタッフに集中していた残業や休日出勤が減少します。人員体制に余裕が生まれることで、既存スタッフの離職率が改善し、採用と教育にかかる年間コストそのものが下がっていきます。
顧客体験の軸では、多言語対応が可能なスタッフが増えることで、訪日外国人宿泊客への接客品質が向上します。口コミサイトの評価点が上がれば、それが新規予約の増加という形で、財務の軸に再び循環していきます。数字の改善が採用の成果として積み上がっていく、この好循環を共に手に入れましょう。
自社だけで対応することが難しい3つの理由
ここまでお読みいただいた経営者様の多くが、「理屈は分かったが、自社だけで評価書を作成するのは現実的だろうか」と感じられるはずです。理由は大きく3つあります。第一に、OTITの審査基準は毎年のように運用の細部が更新されており、最新の要件を正確に把握し続けること自体に専門知識と時間を要します。第二に、財務諸表を審査官に響く形で言語化するには、中小企業診断士としての分析経験が不可欠であり、社内の経理担当者だけでは書式や論理構成でつまずくケースが目立ちます。第三に、申請時期を誤ると技能実習生の来日スケジュールそのものが後ろ倒しになり、繁忙期の人員計画が崩れるという時間的リスクがあります。
| 比較項目 | 自社で作成する場合 | 専門家に依頼する場合 |
|---|---|---|
| OTIT要件への適合 | 公的資格者でないため要件を満たせない | 中小企業診断士が作成するため要件を満たす |
| 経営者様の作業負担 | 財務分析から書式作成まで手探りで対応 | 決算書提出とヒアリング対応が中心 |
| 審査通過の確実性 | 審査基準の理解不足で差し戻しのリスク | 審査基準に沿った実務経験にもとづき対応 |
| 対応スピード | 数週間から数か月を要することが多い | 最短1営業日からの対応が可能な場合がある |
だからこそ、この分野に特化した専門家へ相談する経営者様が増えているのです。
KICKコンサルティング株式会社の支援内容とよくある質問

ここまでご説明してきた4つの秘策は、いずれも財務データの分析力と、OTITの審査運用に対する実務的な理解の両方が求められるものです。ホテル・旅館業を含む宿泊業の支援実績を積み重ねてきた専門家に相談することで、経営者様は本業である現場運営に集中しながら、審査に適合した書類整備を進めることができます。
相談から納品までの流れ
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)では、経済産業大臣登録の中小企業診断士である代表松本昌史が直接ヒアリングを担当し、決算書とオンライン面談の情報をもとに、OTITの審査基準に適合した企業評価書を作成いたします。
お申込みはWebフォーム、公式LINE、お電話のいずれからも可能です。お申込み後、決算書をご提出いただき、Zoom等を用いたオンラインヒアリングで事業概要、現状の課題、改善策の方向性をお伺いします。そのヒアリング内容をもとに、企業の強みと改善策を明確化した企業評価書を作成し、納品いたします。オンライン完結型のヒアリングのため、全国のホテル・旅館事業者様に対応しております。
なお、当社が提供するのは企業評価書の作成および財務分析にもとづく申請サポートであり、技能実習計画そのものの申請支援は行いますが、行政書士が担う出入国関連の手続きそのものの代行は業務範囲に含まれません。この役割分担を明確にした上で、経営者様の意思決定に必要な書類整備を専門的にお手伝いいたします。
代表の松本昌史は、経済産業大臣登録の中小企業診断士に加え、MBA(経営管理修士)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、事業承継士、一般社団法人金融検定協会認定の中小企業事業再生マネージャーの資格を保有しております。財務分析と事業再生の両面から中小企業を支援してきた経験を活かし、150社以上の法人支援実績のなかで、宿泊業を含む幅広い業種の債務超過企業に対する改善計画の策定に携わってまいりました。認定経営革新等支援機関としての立場から、決算数値の裏付けと現場の実態を両立させた評価書を作成いたします。
よくある質問
- Q1 債務超過でも技能実習生の受け入れは可能ですか
- 可能です。ただし直近事業年度で債務超過がある場合、中小企業診断士等の公的資格者による改善見通しの評価書をあわせて提出する必要があります。決算書の数字だけで一律に不認定となるわけではなく、改善の見通しを説得力ある形で示せるかどうかが焦点になります。
- Q2 税理士に評価書の作成を依頼することはできますか
- できません。OTITの基準上、評価書を作成できるのは中小企業診断士または公認会計士等、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格者に限られ、税理士はこの要件に該当しません。顧問税理士に相談される前に、この資格要件を確認しておくことをおすすめいたします。
- Q3 評価書の作成にはどれくらいの期間がかかりますか
- 案件の緊急度により異なりますが、決算書の提出とヒアリングが完了してから、最短1営業日からの対応が可能な場合があります。技能実習生の来日スケジュールが迫っている場合は、お申込み時にその旨をお伝えいただくと優先度を判断しやすくなります。
- Q4 特定技能の場合も同様の評価書が必要ですか
- 特定技能の在留資格審査においても、財務状況の安定性を示す資料の提出を求められる場合があり、債務超過企業では同様の説明資料が有効です。技能実習と特定技能では審査の根拠法令や様式が異なるため、個別の状況にあわせた確認が必要です。
- Q5 相談だけでも対応してもらえますか
- 可能です。相談の段階で契約を前提とすることはなく、まずは現状の決算内容をもとに審査上の課題を整理いたします。相談の結果、自社の状況ではまだ準備が整っていないと判断される場合には、その旨を率直にお伝えいたします。
- Q6 ゼロゼロ融資の返済中でも改善計画は作成できますか
- 作成できます。返済スケジュールと営業キャッシュフローの整合性を示すことが、改善計画の中心的な論点になります。リスケジュールを実施している場合は、その条件も含めて計画に反映します。
- Q7 育成就労制度に移行しても評価書は必要ですか
- 育成就労制度は2024年成立の関連法にもとづき今後段階的に運用が移行される見込みで、現時点では詳細な運用の全貌が確定していない部分があります。制度移行期であっても、財務状況の健全性を示す資料の重要性そのものは変わらないと考えられます。最新の公表情報をもとに個別にご確認ください。
- Q8 決算書は何期分用意すればよいですか
- 直近2事業年度の貸借対照表および損益計算書の写しが基本的な提出対象となります。事業年度が変わった場合は、過去に提出済みであっても最新の決算書の提出が必要になる点にご注意ください。
- Q9 全国どこからでも相談できますか
- オンラインでのヒアリングに対応しているため、全国のホテル・旅館事業者様からのご相談を承っております。銀座本社への来訪が難しい地方の事業者様からのご相談も多くいただいております。
- Q10 相談から評価書提出まで自社の作業負担はどの程度ですか
- 決算書のご提出とオンラインヒアリングへのご協力が中心となり、書類作成そのものの作業負担は最小限に抑えられます。財務分析や書式の作成は専門家が担当いたします。
ご相談は無料です。しつこい売り込みは一切ございません。今月のご相談枠は3社限定でのご案内です。
ゼロゼロ融資の返済と債務超過という数字は、正しい手順を踏めば、人材確保を止める理由にはなりません。審査を止めているのは、御社の経営そのものではなく、要件を満たす評価書がまだ整っていないという一点だけかもしれません。決算書をお手元にご用意いただき、まずは現状の課題を整理するところから始めてみませんか。









コメント