
「法人で入っている保険と、個人で入っている保険。うちの場合、どちらが何のためのものか、正直あいまいだ」。親族内承継を控えた社長から、こうした声をよく聞きます。
結論から言うと、法人保険と個人保険は「誰の・何を守るためのものか」という物差しで役割を分けることができます。会社を守る保険と、家族の生活を守る保険は、本来別のものです。
この境目があいまいなまま承継のタイミングを迎えると、会社のための保障が薄いまま後継者が経営を引き継いだり、逆に家族の生活資金のはずが会社の資産に紛れてしまったりすることがあります。まずは3つの基準で整理してみましょう。
- 親族内承継を控え、保険の整理をしたい社長
- 法人保険と個人保険の違いがあいまいな方
- 後継者である子に何を残すべきか迷う方
- 先代から引き継いだ保険を見直したい後継者
- 法人保険と個人保険が混在すると起きる問題
- 役割を分ける3つの基準
- 整理した先に手に入る未来
- 自社だけで進める限界とKICKの支援
私たちは中小企業診断士・事業承継士として、法人支援実績150社以上の中で、法人保険と個人保険が入り組んだ状態を数多く整理してきました。読み終えるころには、自社の保険をどちらに仕分ければよいか、判断の軸が見えているはずです。
専門的な保険用語が分からなくても大丈夫です。まずは「誰のための保険か」という素朴な問いから始めていきましょう。何十年も前に加入した契約でも、今から目的を確認し直すことに遅すぎるということはありません。
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誰のための保険か曖昧なまま進む、親族内承継の落とし穴

事業承継には、子や親族へ引き継ぐ親族内承継、役員・従業員へ引き継ぐ役員・従業員承継(MBO・EBO)、社外の第三者へ譲渡する第三者承継(M&A)という3つの型があります。本記事は、このうち親族内承継を進める社長・後継者に向けた内容です。
親族内承継では、先代の代から続く保険契約がそのまま引き継がれることがよくあります。加入した当時の目的が記録に残っておらず、「なぜ入っているのか分からないが、とりあえず続けている」契約も少なくありません。
本業が忙しい中、保険の見直しはどうしても後回しになりがちです。しかし、承継のタイミングを逃すと、次に目的を確認する機会はさらに先延ばしになってしまいます。
こうした契約は、次のような問題を抱えていることがあります。
| 状態 | 起きうること |
|---|---|
| 会社が契約者・受取人の保険しかない | 社長に万一のことがあっても、家族の生活資金が別途必要になる |
| 個人契約に会社の資金が使われている | 会社の資産と個人の資産の境目が不明瞭になる |
| 被保険者が先代のまま更新されていない | 後継者に承継しても保障の実態が先代基準のまま |
特に「会社を守る保障」と「家族の生活を守る保障」が1つの契約に混ざっていると、承継の場面でどちらの目的も中途半端になりがちです。会社の資金繰りを守るための保険を家族の生活費に充ててしまえば、事業継続に影響が出かねません。
逆に、家族のために備えたはずの保障を会社の名義のままにしていると、相続や税務の扱いが複雑になることもあります。だからこそ、承継を機に「どちらのための保険か」を整理し直すことが大切です。
証券が引き出しの奥にしまわれている会社も多い
実際に整理を始めると、加入した経緯を誰も覚えていない証券が何枚も出てくることは珍しくありません。担当者の異動や、加入時の保険会社の担当者が代替わりしていることもあります。
先代が元気なうちであれば、当時の目的を直接確認できます。「あとで整理すればいい」と先送りするほど、加入の背景が分からなくなっていく点には注意が必要です。
特に、後継者が承継後にこの作業を一から行うのは大きな負担です。承継前の段階で、できるところから手をつけておくことをおすすめします。
会社の規模が小さいほど、境目は曖昧になりやすい
年商規模が小さい会社ほど、経理担当者が社長一人、あるいは家族だけということも多く、会社の口座と個人の財布の境目があいまいになりがちです。保険料の支払いも、その延長線上で決まっていることがあります。
顧問税理士や保険会社の担当者から「この契約、目的をもう一度確認しませんか」と指摘されて初めて気づく社長も少なくありません。指摘されるのを待つのではなく、承継を機に自ら点検しておく方が、後々の混乱を防げます。
だからといって、今から急いで整理する必要はありません。承継という節目は、こうした積み重なった曖昧さを整理する、ちょうどよいきっかけになります。
先送りにしてきたことを後ろめたく感じる必要はありません。多くの中小企業で、同じような状態のまま承継期を迎えています。大切なのは、気づいた今から手をつけることです。
親族内承継|法人保険と個人保険を分ける3つの基準

法人保険と個人保険の役割を分けるときは、次の3つの基準で考えると整理しやすくなります。
基準1|保障の対象が「会社」か「家族」か
まず、その保険が守ろうとしているのは会社の資金繰りなのか、家族の生活なのかを確認します。自社株の買取資金や運転資金の確保が目的なら法人保険、配偶者や子の生活資金が目的なら個人保険という整理が基本です。
1つの契約で両方をまかなおうとすると、いざというときにどちらの目的にも金額が足りなくなりがちです。目的ごとに契約を分けておく方が、結果として分かりやすくなります。
基準2|契約者・受取人の名義が実態に合っているか
目的が「会社のため」であれば契約者・受取人は会社に、「家族のため」であれば個人にそろえます。目的と名義がずれている契約は、承継のタイミングで必ず点検が必要です。
先代が個人で契約したものの、保険料を会社の口座から支払い続けているようなケースもあります。この場合、名義と実態がずれたまま放置されていることになります。
基準3|家族のライフプランと重なっていないか
後継者やその配偶者が個人で加入している保険がある場合、法人保険と保障内容が重複していないかも確認します。同じ目的の保障が法人・個人の両方にあると、保険料の負担だけがかさんでしまいます。
特に、後継者が結婚や子の誕生といった人生の節目で新たに個人保険へ加入している場合、法人保険の保障内容と重ならないか一度並べて確認してみましょう。
| 基準 | 確認すること |
|---|---|
| 基準1|保障の対象 | 会社の資金繰りか、家族の生活か |
| 基準2|名義の整合 | 契約者・受取人が目的と一致しているか |
| 基準3|ライフプランとの重複 | 個人保険と保障内容が重なっていないか |
一覧表に入れておきたい項目
証券を集めたら、次のような項目で一覧表を作ると、3つの基準に照らして判断しやすくなります。
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 契約者・被保険者・受取人 | それぞれ誰の名義になっているか |
| 加入時期・目的 | いつ・何のために加入したか(分かる範囲で) |
| 保険金額・解約返戻金の水準 | 現時点でどの程度の規模の契約か |
| 保険料の支払元 | 会社の口座か、個人の口座か |
架空の数値を当てはめる必要はありません。まずは自社の実際の証券をもとに、この形で書き出してみることが第一歩です。
一覧表ができたら、3つの基準に照らして「このままでよいもの」「名義や保障額を見直すもの」「解約や統合を検討するもの」に仕分けていきます。一度にすべてを変える必要はありません。優先度の高いものから、順に手をつけていくのが現実的です。
この整理は、保険証券を1枚ずつ確認する地道な作業になります。詳しくは次のページにまとめています。
事業承継専属の保険代理店という考え方 中小企業の事業承継において、法人保険は長年にわたり「とりあえず加入してきたもの」になりがちです。創業期、成長期、拡大期と、その時々の経営判断の積み重ねで保険は増え、気づけば保険料負担が重くなっているケースも少なくありません。 一方で、「保険をやめ...
整理を終えると、どの契約が何のためにあるのかが一覧できるようになります。承継のタイミングは、この棚卸しをするための良い機会だと捉えてみてください。
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法人保険と個人保険を整理した先に、親族内承継で手に入る未来

1つ目|万一のときも会社と家族の両方が守られる状態
会社のための保障と家族のための保障がそれぞれ明確になっていれば、どちらか一方にしわ寄せがいくことがなくなります。社長に万一のことがあっても、会社の資金繰りと家族の生活の両方に、あらかじめ備えができている状態です。
2つ目|後継者が保険の全体像を把握できる安心
先代の代からの契約が整理されていれば、後継者は「何のための契約か分からないまま続ける」状態から抜け出せます。承継後、自分の代の目的に合わせて見直す土台ができます。
後継者にとって、証券の束を前に途方に暮れる時間がなくなることも、大きな安心につながります。経営に集中すべき時期に、保険の謎解きに時間を取られずに済みます。
3つ目|無駄な保険料負担からの解放
法人・個人で重複していた保障を整理できれば、必要な保障を必要な分だけ持つ状態に近づき、保険料の負担も適正化されます。
保険料の見直しは、会社と家族どちらのキャッシュフローにもゆとりを生みます。浮いた分を、後継者育成など他の承継準備に回すこともできます。
いずれも、契約を1枚ずつ丁寧に確認していけば、着実に手が届く未来です。会社の未来と、家族の暮らしの両方を、無理なく守れる体制を共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、事業承継士による伴走支援

保険証券には専門用語が多く、契約者・被保険者・受取人の関係を読み解くだけでも時間がかかります。何十枚もの証券を前に、どこから手を付ければよいか分からなくなる社長も少なくありません。
また、個別の税務上の扱いは税理士の領域であり、相続財産としての評価が必要な場面もあります。誰にどこまで相談すればよいか、自社だけで判断するのは簡単ではありません。
私たちKICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として、認定経営革新等支援機関の立場から、法人保険と個人保険の役割整理を含めた承継全体の伴走支援を行っています。事業承継専属の保険代理店として、契約内容の洗い出しから、税理士との連携までをつなぐ役割を担います。
本業を抱えながら、証券を1枚ずつ読み解き、目的を仕分け、専門家と連携する。この一連の作業を社長一人で進めるのは、想像以上に時間がかかります。
具体的には、証券の一覧化、目的ごとの仕分け、名義と実態のずれの確認、後継者体制に合わせた見直し計画づくりを、社長・後継者と一緒に進めます。会社の財務・組織全体を見ながら判断できる点が、中小企業診断士としての強みです。
税理士との違い
「保険のことは税理士に相談すればいい」と考える社長も多いですが、税理士の役割は主に税務の計算・申告です。契約の目的そのものを整理し、家族全体のライフプランと会社の状況を突き合わせる作業は、税理士業務の枠を超えます。
私たちは、この整理と伴走を専門に担い、必要な場面で税理士と連携する役割を果たします。保険担当者・税理士・社長の間で情報がバラバラに伝わっている状態を、一つの計画としてまとめ直すことが私たちの役割です。
他の専門家の判断を否定することはありません。共通の敵は、保険の目的があいまいなまま時間だけが過ぎていく状況です。だからこそ、プロに全体の整理を任せる経営者が増えています。
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親族内承継のよくある質問|法人保険と個人保険の疑問を解消

Q. まず何から手を付ければいいですか?
A. 会社と個人、それぞれで加入しているすべての保険証券を集め、契約者・被保険者・受取人・保険金額を一覧表にすることから始めます。全体像が見えないと、整理の判断ができません。証券が見つからない場合は、保険会社に契約内容の照会をかけることもできます。
Q. 法人保険の保険料は全額が経費になりますか?
A. 契約の内容によって扱いが変わります。2019年の税務上のルール改正以降、最高解約返戻率に応じて経費にできる割合が区分されるようになりました。「全額経費になる」と一律には言えないため、契約ごとの確認が必要です。古い契約と新しい契約でも扱いが異なるため、加入時期も合わせて確認しておきましょう。
Q. 後継者に保険を引き継ぐタイミングはいつがいいですか?
A. 経営権の承継と合わせて見直すのが基本です。契約者・被保険者を後継者中心の体制に合わせて更新するタイミングを、承継計画全体の中に組み込んでおくとよいでしょう。承継の数年前から段階的に整理を始める社長も多く見られます。
Q. 個人保険はどのタイミングで見直せばいいですか?
A. 後継者やその家族のライフステージが変わるタイミング(結婚、子の誕生など)に合わせて見直すのが一般的です。承継のタイミングは、そのきっかけの一つになります。法人保険の整理と時期を合わせておくと、二度手間になりません。
Q. 保険を減らしすぎるとどうなりますか?
A. 保障を削りすぎると、万一のときに事業継続や家族の生活に影響が出るおそれがあります。整理は「減らすこと」が目的ではなく、目的に合った形に「組み直すこと」が目的です。解約する前に、本当に不要な保障かどうかを見極めましょう。
Q. 契約者を法人から個人に変更することはできますか?
A. 手続き自体は可能ですが、税務上の取り扱いが発生する場合があります。個別の判断は税理士に確認しながら進める必要があります。変更前と変更後で保障内容が変わらないかも合わせて確認しておきましょう。
Q. 死亡退職金や弔慰金の非課税枠はこの整理と関係しますか?
A. 関係します。会社が受取人になっている契約は、死亡退職金や弔慰金の原資として使われることが多く、非課税枠の考え方と合わせて設計しておくと安心です。非課税枠は法定相続人の数などによって変わるため、家族構成の確認も欠かせません。
Q. 相続税の納税資金の準備とは別に考えるべきですか?
A. 目的が異なるため、別の契約として整理するのが基本です。同じ契約で両方をまかなおうとすると、いざというときに金額が不足することがあります。納税資金は別途、目的を絞った契約で備えるのが望ましい形です。
Q. 先代が亡くなった後に整理することもできますか?
A. できますが、契約内容の背景(なぜ加入したか)が分からなくなり、判断が難しくなります。先代が元気なうちに整理しておく方が、承継はスムーズに進みます。生前に一度、家族で話す機会を持つことをおすすめします。
Q. 事業承継コンサルにはいつ相談すればいいですか?
A. 「保険を見直そうと思っている」段階からで構いません。契約を集めて一覧にする作業から一緒に進められます。後継者が決まっているかどうかにかかわらず、早いほど選べる選択肢は広がります。
まとめ
親族内承継における法人保険と個人保険の役割分担は、保障の対象・名義の整合・家族のライフプランとの重複という3つの基準で整理すると見通しが立ちます。
先代の代から続く契約を一つずつ確認し、会社と家族の両方を無理なく守れる形に組み直していきましょう。誰かに相談する前に、まずは証券を集めて一覧にしてみることから始めても構いません。
早い段階から一緒に整理していきます。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
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