
受注残高十分でも審査で止まる建設業の現実

「来月の現場にも、再来月の現場にも、すでに元請けから発注が入っている。受注残高は十分にある。それなのに、技能実習生や特定技能人材の受け入れ審査で足止めを食らう」。このような相談が、銀座の当事務所に相次いで寄せられています。
原因は、過去の赤字決算です。資材価格の高騰、2024年問題による外注費の増加、コロナ融資の返済負担。これらが重なり、直近の決算書が債務超過(純資産マイナス)を示すと、外国人技能実習機構(OTIT)や出入国在留管理庁の審査担当者は、貸借対照表の数字だけを見て、事業の継続性に疑義があると判断してしまいます。
受注残高がどれだけあっても、決算書に記載されない情報は審査官には伝わりません。帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年)」によれば、2025年の人手不足倒産は427件となり3年連続で過去最多を更新し、建設業は113件で初めて100件を超えました。仕事があるのに人が採れない、その一方で決算書の数字だけで採用の道が閉ざされる。この矛盾に、多くの建設業経営者が苦しんでいます。
国土交通省の資料によれば、建設業就業者数は1997年の685万人から2025年時点で約477万人まで減少し、2028年には約24万人の人材不足が見込まれています。特定技能1号「建設」の在留外国人は2024年12月末時点で38,365名に達しており、外国人材はもはや一部の企業だけの選択肢ではなく、業界全体の事業継続を左右する存在になっています。それにもかかわらず、決算書の見せ方一つで採用計画そのものが止まってしまう。この構造を理解しないまま申請を続けても、状況は変わりません。
結論から言えば、受注残高は見せ方次第で、事業継続性を裏づける最強の証拠になります。ただし、社長が自分の言葉で「うちは仕事がある」と主張するだけでは、審査官には響きません。次に紹介する5つの技術を使い、受注残高を客観的な事業継続性の証明へと変換する必要があります。
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受注残高が審査で評価されない構造的な理由

なぜ受注残高だけでは審査を通過できないのか。その理由は、OTITの技能実習計画認定申請に係る提出書類一覧・確認表(別紙②-1)の番号20に明記されています。
直近の事業年度で債務超過がある場合は、中小企業診断士、公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が改善の見通しについて評価を行った書類も提出してください(OTIT別紙②-1・番号20より)。
このルールが求めているのは、赤字や債務超過をなくすことではありません。改善の見通しを第三者が論理的に評価した書類です。つまり、受注残高という事実そのものより、その事実を第三者が審査基準に沿って解釈し、書面化しているかどうかが問われています。
技能実習の場合はこの別紙②-1・番号20が明確な根拠になりますが、特定技能の場合も考え方は同じです。特定技能には技能実習のような一律の様式はないものの、出入国在留管理庁の審査では受入れ機関の安定性・継続性が確認されます。債務超過という数字だけが独り歩きすれば、特定技能であっても不利に働きかねません。技能実習・特定技能のどちらを検討している場合でも、受注残高を根拠とした改善の見通しを準備しておくことが安全です。
なお、別紙②-1では、番号20の直近2事業年度の貸借対照表に加え、番号21で直近2事業年度の損益計算書の提出も求められています。貸借対照表だけでなく損益計算書とも整合した形で改善の見通しを説明する必要があるため、受注残高の資料は両方の書類と矛盾しないように整理しておくことが欠かせません。また、技能実習制度は2027年4月に向けて育成就労制度への移行が進んでいますが、債務超過時に第三者評価を求める基本的な考え方は、新制度に移行しても引き継がれる可能性が高いとみられます。今のうちに対応体制を整えておく意味は小さくありません。
受注残高は十分にあるのに、決算書だけを見ると赤字体質に映る。この数字のズレがどこから生まれるのか、主な要因を整理します。
| 要因 | 決算書に表れる数字 | 受注残高から見える実態 |
|---|---|---|
| 資材価格の高騰 | 原価率悪化・利益圧縮 | 受注単価の転嫁交渉が進行中 |
| コロナ融資の返済負担 | 借入金負担の増加 | 据置期間終了による一時的な圧迫 |
| 2024年問題への対応 | 外注費・人件費の増加 | 内製化投資による将来の収益改善余地 |
| 材料の前払い | 流動資産の圧迫 | 受注残高に対応した正常な資金の動き |
放置すると起こる3つの連鎖
このズレを放置すると、次の3つが連鎖的に起こります。
- 認定申請が差し戻され、数か月単位のタイムロスが発生する
- 予定していた技能実習生・特定技能人材が確保できず、現場の人手不足がさらに深刻化する
- 監理団体や技能実習生本人からの信頼を失い、次回以降の受け入れにも悪影響が及ぶ
国土交通省の資料によれば、建設業就業者は55歳以上が36.6%を占める一方、29歳までの若手層は11.6%にとどまります。若手の国内人材確保が構造的に難しい中、外国人材の受け入れが遅れることは、現場の存続そのものに直結する問題です。私たちが向き合うべき共通の敵は、赤字そのものではなく、赤字の「見せ方」を放置してきた過去です。
審査官が本当に見極めたいのは、御社の赤字が「一時的な赤字」なのか、それとも「構造的な窮迫」なのかという一点です。受注残高が積み上がっているのに赤字決算になっている場合、多くは前者にあたります。しかし、受注残高という材料を第三者が整理し、論理的に説明しない限り、審査官は数字だけを見て後者と誤解してしまいます。この誤解を解くための材料こそが、次に紹介する5つの技術です。
審査の差し戻しは、現場の人手不足をさらに悪化させます。無理な勧誘や契約の義務は一切ありません。まずは状況を整理するところから始めましょう。
受注残高を証拠に変える5つの技術

審査官が知りたいのは、今、仕事があるかではなく、向こう1年、2年、事業を継続できるかです。次の5つを組み合わせることで、受注残高という事実を、審査基準に沿った継続性の証明へと変換できます。
契約済み工事一覧のリスト化と添付
工事名、発注者名、契約金額、工期、進捗状況を一覧化した書類を作成します。口頭説明ではなく、契約書や注文書の写しと突き合わせられる形で整理することが重要です。バラバラに保管された契約書を1枚の一覧表にまとめるだけで、審査官が受注残高を客観的に把握できる書類に変わります。
実務上は、契約日・着工予定日・完工予定日・請負金額・入金予定時期を横並びにした一覧表を作成し、契約書や注文書のコピーを番号で紐づけておくと、審査官が事実確認をしやすくなります。すでに完工した工事と、これから着手する工事を分けて記載することで、受注残高の中身がより明確に伝わります。
過去数年の元請けからの継続受注実績の提示
同一の元請けから複数年にわたり継続して発注を受けている実績を、時系列で示します。単発の大型受注より、継続性のある取引関係の方が、審査官には事業基盤の安定として伝わりやすくなります。特定の元請けとの取引年数、年間の受注件数の推移を数字で示すことが有効です。
直営施工比率が高い元請けからの継続発注は、下請け構造の中でも特に評価されやすい材料です。過去3期分の元請け別売上構成比を一覧化し、上位数社との取引が何年続いているかを添えるだけで、「一時的な取引ではなく、恒常的な事業基盤である」という説明に説得力が生まれます。
受注残高ベースでの向こう1年の売上・利益予測
実行予算に基づき、受注残高から向こう1年の売上・粗利を積み上げ計算します。標準労務費や材工分離の考え方を踏まえ、感覚値ではなく積算根拠のある数字で示すことが求められます。この予測数値が、改善の見通しを裏づける中核データになります。
建設工事費デフレーターの動向を踏まえた原価上昇分の織り込みや、外注比率の見直しによる利益率改善の試算まで盛り込めば、単なる希望的観測ではなく、実行可能性のある改善計画として評価されます。予測は月次ベースで作成し、資金繰り表と連動させておくと、審査官だけでなく金融機関への説明資料としても活用できます。
「仕事はあるが人がいないだけ」という機会損失の証明
受注しているのに施工体制が組めず、外注比率が上がっている、あるいは工期が延びている実態を数値化します。人手不足による機会損失を明示することで、外国人材の受け入れが事業継続に不可欠であるという論理が成立します。断る受注、遅延している工事があれば、その件数や金額も具体的な根拠になります。
直近1年間で「人手が足りず辞退した見積り依頼」「工期を延長せざるを得なかった現場」を件数と概算金額で洗い出すと、機会損失の規模が可視化されます。この数値は、外国人材の受け入れが単なる希望ではなく、事業存続に直結する経営課題であることを審査官に伝える最も強い材料になります。
診断士による客観的な「事業継続性の評価」の付与
1から4で整理した情報を、中小企業診断士がSWOT分析や財務指標と組み合わせ、第三者評価としてまとめます。これにより、社長の主観的な説明が、公的資格者による客観的な評価書に変わります。評価書の様式や記載内容の詳細は、企業評価書作成サポートで確認できます。
中小企業診断士は、受注残高の一覧表や継続取引の実績、機会損失の数値を、財務指標(自己資本比率・流動比率・借入依存度など)と突き合わせながら、改善の見通しを一つの論理として組み立てます。バラバラだった1から4の資料が、この工程を経て初めて「審査基準に適合した企業評価書」という一つの完成された書類になります。
この5番目の技術こそが、1から4の情報を審査基準に適合させる要となります。どれだけ受注残高の資料を整えても、それを審査基準に沿って評価する第三者がいなければ、書類は単なる社内資料のままです。
自社対応の限界とプロに任せる理由

1から4の整理は、自社でも取り組めます。しかし、5の第三者評価だけは、社長自身では作成できません。OTIT別紙②-1・番号20が定める公的資格を有する第三者に、税理士は含まれません。決算書を毎年作成している顧問税理士に依頼しても、審査を通過する企業評価書にはならない点に注意が必要です。
また、受注残高の情報を審査基準に沿った書式・論理構成に落とし込むには、OTITや出入国在留管理庁の審査実務への理解が欠かせません。自己流で作成した書類は、記載不備や論理の飛躍を指摘され、再提出を求められるケースが少なくありません。時間をかけて資料を整えたのに差し戻しになれば、現場の人手不足はさらに深刻化します。
さらに、建設業特有の受注構造を理解していない専門家に依頼すると、実行予算や標準労務費、材工分離といった業界特有の考え方が評価書に反映されず、審査官にとって説得力の薄い書類になってしまうこともあります。建設業の評価書作成には、一般的な財務分析の知識に加えて、業界慣行への理解が求められます。
こうした理由から、受注残高の証明を専門家に任せる建設業経営者が増えています。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)では、経済産業大臣登録の中小企業診断士である代表・松本昌史が、決算書とヒアリング内容をもとに、受注残高を含めた事業継続性の評価を直接作成します。MBA(経営管理修士)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、中小企業事業再生マネージャー、事業承継士としての知見を組み合わせ、150社以上の法人支援で培った実務ノウハウを反映します。全国オンライン完結で対応しており、最短3〜5営業日での納品も可能です。
対応の流れはシンプルです。まずWebフォームや電話で申し込み、決算書を提出します。次にオンラインヒアリングで事業概要と受注状況を確認します。そのヒアリング内容をもとに松本が評価書を作成し、最短1営業日から納品します。経営者様に求められる作業は、決算書の提出とヒアリングへの参加だけです。認定経営革新等支援機関として、書類の形式面だけでなく、実態に即した改善計画になっているかという中身にもこだわって作成しています。
| 項目 | 自社のみで対応 | 中小企業診断士に依頼 |
|---|---|---|
| OTITの資格要件 | 満たせない | 公的資格者として満たせる |
| 経営陣の作業負担 | 手探りで重い | 決算書提出とヒアリングのみ |
| 審査通過の確実性 | 審査基準の理解不足で低下しやすい | 審査実務に沿った書面設計 |
受注残高があるのに評価されない状態を放置すれば、契約済みの工事にすら人を配置できなくなります。逆に、受注残高を正しい形で証明できれば、御社は「仕事はあるが人がいないだけ」という機会損失から抜け出し、契約済みの工事を計画どおりに完工できる体制と、外国人材からも監理団体からも信頼される採用基盤を共に手に入れましょう。
ご相談いただいても、契約や申し込みの義務は一切ありません。決算書の状況を確認したうえで、そもそも第三者評価が必要かどうかの見極めからサポートします。
大至急の対応が必要な場合も、毎月先着3社限定でオンライン相談を受付中です。
受注残高と企業評価書に関するよくある質問

- 受注残高が十分にあれば、債務超過でも技能実習の審査は通りますか
- 受注残高の証明だけでは不十分です。OTIT別紙②-1・番号20は、直近事業年度に債務超過がある場合、中小企業診断士等の公的資格者による第三者評価書の提出を求めています。受注残高の資料は、その評価書の中で改善の見通しを裏づける根拠として活用しますが、資料単体を提出しても要件を満たしたことにはなりません。あくまで公的資格者が評価した書面とセットで提出する必要があります。
- 企業評価書は顧問税理士に依頼できますか
- OTITが定める資格要件に税理士は含まれていません。税理士が作成した書面はOTITに認められない可能性があり、再提出や審査遅延のリスクがあります。中小企業診断士または公認会計士に依頼することを推奨します。特定技能の審査においても、税理士資格のみでは第三者評価としての説得力に欠けると判断されるケースがあります。
- 受注残高があるのに債務超過になっている理由を、審査官にどう説明すればよいですか
- 感覚的な説明ではなく、資材価格の高騰や2024年問題への対応など、赤字の要因を事実として整理し、受注残高に基づく改善見通しと結びつけて説明することが重要です。この結びつけの作業こそ、中小企業診断士が担う役割です。
- 受注残高の証明として、具体的に何を用意すればいいですか
- 契約済み工事の一覧、注文書や契約書の写し、元請けごとの継続取引年数がわかる資料、受注残高に基づく向こう1年の売上・利益予測が中心になります。これらをもとに、中小企業診断士が第三者評価としてまとめます。
- 特定技能でも同じ書類が必要ですか
- 特定技能の場合、OTIT別紙②-1のような一律の様式はありませんが、出入国在留管理庁の審査で受入れ機関の安定性・継続性が確認されます。債務超過がある場合は、技能実習と同様に第三者評価を準備しておくことが安全です。すでに技能実習生を受け入れている企業が特定技能へ移行する場合も、同じ考え方で準備しておくと審査がスムーズに進みます。
- 企業評価書の作成にはどのくらいの期間がかかりますか
- ヒアリングと決算書の分析内容によって異なりますが、大至急の場合は最短1営業日からの納品にも対応しています。通常はオンラインヒアリングを実施したうえで、数営業日以内に納品します。OTITから追加提出を急に求められた場合でも、まずはご相談ください。
- 受注残高を実態より多く見せることはできますか
- できません。契約書や注文書と一致しない受注残高を記載すれば、審査で不整合を指摘され、かえって信頼を失います。企業評価書は事実に基づく改善の見通しを示すものであり、数字を誇張する書類ではありません。
- 過去に他の専門家から対応を断られた場合でも相談できますか
- 建設業特有の受注構造や実行予算の考え方を踏まえた評価書作成には、専門的な経験が求められます。他の専門家では対応が難しかった案件についても、まずは決算書とヒアリング内容を確認したうえで判断します。
- 企業評価書はどのくらいの頻度で必要になりますか
- 過去3年以内に提出済みの書類であっても、年度が変わり最新の決算が確定した場合は、改めて最新の評価書が必要です。債務超過が続く間は、毎年度の対応体制を整えておく必要があります。
- 費用はどのくらいかかりますか
- 企業規模や決算内容、対応スピードによって変動するため、この場ではお伝えできません。まずは無料相談で決算書の状況をお伺いしたうえで、個別にご案内します。
- 相談だけでも申し込めますか
- 問題ございません。決算書を拝見したうえで、そもそも第三者評価が必要かどうかの見極めから対応します。売り込みや契約の強要は一切行いません。
相談しても売り込みは一切ありません。義務も一切発生しません。受注残高はあるのに審査が止まっている状態を、これ以上長引かせる必要はありません。
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受注残高は、放置すれば単なる社内の数字で終わります。しかし、契約済み工事の一覧化、継続受注の実績提示、向こう1年の予測、機会損失の証明、そして中小企業診断士による第三者評価。この5つを組み合わせれば、受注残高は事業継続性を裏づける最も説得力のある証拠に変わります。過去の赤字決算に採用計画を止めさせるかどうかは、その受注残高をどう見せるかにかかっています。
仕事があるのに人が採れないという状態は、御社だけの問題ではありません。しかし、審査官に伝わる形で受注残高を示せるかどうかは、御社の準備次第で結果が変わります。契約済みの工事を計画どおりに完工させるためにも、受注残高という手元にある材料を、今のうちに正しい形へ整えておくことをお勧めします。
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