子どもの数が減っている。書店の棚は年々狭くなり、新刊の初版部数も慎重にならざるを得ない。
それでも倉庫には、何度も版を重ねてきた絵本や学習教材が眠っている。「この会社を、息子や娘に渡していいのだろうか」——そんな迷いを抱えてはいないでしょうか。
結論から申し上げます。承継の話を進める前に、まず会社を磨くほうが先です。
いま持っている作品と読者との関係を整理しないまま株式だけを渡すと、後継者は縮む市場と在庫だけを受け取ることになります。
- 絵本や学習教材を出している出版社の経営者の方
- 子どもの数の減少に先の不安を感じる方
- 子や社員への引継ぎを考え始めた方
- 既刊をこれからも生かしたい編集者の方
- 会社の値打ちを説明しきれない社長の方
- 児童書出版社の事業承継が先送りされる本当の理由
- 少子化が絵本・学習教材の商売に効いてくる仕組み
- 承継の前にできる事業磨きの4つの選択肢
- 選ぶ前に事業の棚卸しで確かめること
- 中小企業診断士・税理士・弁護士の領域の切り分け
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士(認定経営革新等支援機関)として、法人支援150社以上の実績で承継の全体設計に伴走してきました。
読み終えるころには、次の代へ会社を渡す前に、どの棚から手をつければよいかが分かります。
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児童書出版社の事業承継が難しくなる理由と、少子化を放置したときに起きること

この記事が前提にするのは親族内承継です。子どもや親族へ会社を引き継ぐ場面を軸に置き、後半で第三者承継にも触れます。
結論を先に述べます。児童書出版社の事業承継が難しくなる原因は、市場そのものより会社の中身が見えていないことにあります。
どの本が、どの読者に、どういう理由で売れ続けているのか。そこが言葉になっていないと、渡す側も受け取る側も判断ができません。
事業承継とは何か
事業承継とは、会社の経営を次の世代へ引き継ぐことをいいます。引き継ぐ中身は、大きく3つに分かれます。
- 経営そのもの(経営者の座と、日々の意思決定)
- 資産(株式・不動産・設備、そして負債や個人保証)
- 知的資産(作品・版権・著者との関係・編集のノウハウ)
児童書の出版社で最も引き継ぎにくいのは、3つめの知的資産です。決算書にはほとんど現れず、社長と編集長の頭の中にしかない場合が少なくありません。
親族内承継とは、子どもや配偶者、兄弟姉妹など親族へ会社を引き継ぐ方法のことです。株式の移転と経営権の移転を、時間をかけて進められるのが特徴です。
少子化が児童書の出版に効いてくる仕組み
児童書は、読者が数年ごとに入れ替わる商売です。ある絵本を読んでいた子どもは、数年たてば読者ではなくなります。
つまり毎年、新しい読者が生まれ続けることを前提に成り立ってきました。子どもの数が減れば、その前提が細くなります。
効いてくるのは、次のような形です。
- 新刊の初版部数を抑えるようになる
- 一点あたりの製造原価が上がりやすくなる
- 書店の児童書コーナーの面積が減る
- 重版の判断が慎重になり、既刊が動きにくくなる
ここで見落としがちなのが4つめです。既刊が動かなくなると、会社の利益を支えていた土台が静かに痩せていきます。
新刊は目に見えて話題になるので、経営者も気づきます。ところが既刊の落ち込みは、決算書の上では「なんとなく売上が減った」としか見えません。
先送りされる3つの理由
児童書出版社の事業承継が先送りされるのには、共通した理由があります。
1つめは、渡すものが数字になっていないことです。編集の勘、著者との信頼、学校現場とのつながり。どれも大切ですが、引継ぎの資料には書きにくいものばかりです。
2つめは、市場の見通しへの不安です。「自分の代で畳んだほうが、子どものためではないか」と考える経営者は珍しくありません。
3つめは、日々の刊行スケジュールです。次の企画と入稿に追われ、会社の先の話を考える時間が取れません。
放置したときに起きること
手をつけないまま数年が過ぎると、次のような形で表面化します。
まず、契約の所在が分からなくなります。著者との出版契約、翻訳作品の権利、イラストレーターとの取り決め。書面が残っていない、あるいは条件が古いまま更新されていない、という状態が起こります。
次に、後継者が判断材料を持てません。どの作品が利益を生み、どの作品が在庫負担になっているのか。区別できないまま経営を引き受けることになります。
そして、経営者の個人保証と株式の問題が残ります。相続が先に来てしまうと、株式が複数の相続人に分かれ、意思決定に人数が必要になります。
編集の現場では、担当者の退職とともにノウハウが消えます。長く付き合ってきた著者が、会社ではなく個人についていくこともあります。
よくある3つの誤解
ご相談の場でよく耳にする誤解を整理します。
誤解1「市場が縮むのだから、磨いても無駄だ」——市場全体の話と、自社の話は別です。読者層が細っても、支持され続ける作品と、そうでない作品に分かれます。
誤解2「承継は株式と税金の話だ」——株式と税務は承継の一部です。渡す会社そのものに稼ぐ力がなければ、株式を渡しても後継者は困ります。
誤解3「後継者が決まってから考えればよい」——順序が逆になりがちです。引き受けたいと思える会社の形が見えて初めて、後継者は腹を決められます。
児童書出版社が事業承継の前に取り組む、事業磨きの4つの選択肢

結論を先に述べます。少子化に備える事業磨きの選択肢は、大きく4つあります。
ただし4つのどれを選ぶかを決める前に、必ず自社の強みと収益構造を確かめます。順序を逆にすると、当たりの薄い施策に人と時間を使うことになります。
選ぶ前に事業の棚卸しで自社を確かめる
事業の棚卸しとは、会社の事業そのものの中身を調べ、稼ぐ力の源泉と将来性を明らかにする作業のことです。財務の数字だけでなく、作品・著者・販路といった中身まで確かめます。
事業磨きとは、承継の前に会社の稼ぐ力と説明できる強みを高めておく取り組みのことです。事業の棚卸しは、その出発点にあたります。
児童書の出版社であれば、まず次の5つを並べます。
- 3期分の売上を、新刊・既刊・非書籍に分けて並べる
- 作品ごとの粗利を、製造原価と返品まで含めて出す
- 販路ごと(書店・取次・直販・学校・図書館)の構成比を出す
- 著者・訳者・イラストレーターとの契約書の有無と期限を一覧にする
- 編集・営業の仕事のうち、属人化している工程を書き出す
この作業だけで、多くの会社に発見があります。「利益の大半を、思っていたのとは違う数点の既刊が支えていた」という結果はよくあります。
逆に、力を入れてきた新刊が、返品まで見ると赤字だったと分かることもあります。数字が並ぶと、次にどこへ資源を寄せるかを迷わず決められます。
この整理を承継の設計とひとつながりで進めたい場合は、児童書出版社の事業承継コンサルティングもご検討ください。
既刊を海外へ出す翻訳ライセンス
1つめは、既刊を海外の出版社へ翻訳ライセンスとして出す方向です。
翻訳ライセンスとは、自社の作品を海外の出版社が現地語へ翻訳して出版できるように、権利の一部を許諾する取り決めのことです。許諾の対価として、契約金や部数に応じた使用料を受け取ります。
絵本は言葉の量が少なく、絵が意味を運びます。国内で長く読まれてきた作品ほど、他の国の読者にも届く可能性があります。
取り組む順序は次のとおりです。
- 既刊のうち、権利関係が整理できているものを選ぶ
- 著者・イラストレーターと、海外での利用について合意を取る
- 作品の紹介資料を、絵の見本とあらすじを添えて用意する
- 版権の取引が行われる展示会や商談の場に、資料を持ち込む
- 条件が合った相手と、契約の内容を弁護士に確認してもらう
ここで最初の関門になるのが2つめです。古い契約書には、海外での利用について何も書かれていないことがあります。
その場合は、あらためて著者側と話し合う必要があります。長く付き合ってきた相手であっても、書面にしておくことが後の代を守ります。
なお、海外へ出せば必ず成果が出るという話ではありません。相手国の読者の好み、宗教や生活習慣、教育制度によって、受け入れられる作品は変わります。
だからこそ、いきなり全点を並べるのではなく、権利が整い、国内で支持の厚い数点から試すのが現実的です。
対象年齢と新ジャンルの広げ方
2つめは、いま持っている編集の力を、新ジャンルや別の年齢層へ広げる方向です。
子どもの数が減っても、一人の子どもにかける時間と費用は減るとは限りません。読者一人あたりに何を届けられるかを考え直す余地があります。
広げ方には、大きく3つの型があります。
| 広げ方 | 中身 | 生かせる自社の強み |
|---|---|---|
| 上の年齢へ | 絵本の読者が育った先の読み物・図鑑・入門書へつなぐ | 既存の読者・保護者との関係 |
| 下の年齢へ | 就学前や乳幼児向けの短い本・布や厚紙の本へ広げる | 絵と言葉を削る編集力 |
| 横の新ジャンルへ | 学習教材・ワーク・保護者向けの解説書・教具へ広げる | 学校現場や専門家とのつながり |
大切なのは、思いつきで新ジャンルへ出ないことです。事業の棚卸しで見えた強みの延長線上に置くのが基本になります。
たとえば、学習教材で学校現場との関係が厚いなら、保護者向けの解説書へ広げる筋が通ります。逆に、その関係がないまま同じことをすれば、実質的な新規事業になります。
広げるときは、既刊の作りかたを流用できるかどうかも見ます。判型・用紙・印刷部数の刻みがそろえば、原価と在庫の負担を抑えられます。
学校・図書館・教育事業との連携
3つめは、書店以外の販路と、本以外の収益をつくる方向です。
学校・図書館・保育の現場は、子どもの数が減っても一定の需要が続きます。加えて、書店の店頭と違い、選ぶ人と読む人が分かれているのが特徴です。
連携の形は、たとえば次のようなものです。
- 学校図書館・公共図書館向けのセット販売と、選書の提案
- 読み聞かせや作家の講演といった、催しの企画と運営
- 教員・保育者向けの手引きや、指導の補助資料の制作
- 自治体や教育団体からの、制作物の受託
- デジタル教材や音声での読み聞かせなど、紙以外の形での提供
この方向の利点は、返品のない売上と、継続的な取引が生まれることです。
出版の商売は、返品の可能性を抱えたまま売上が立ちます。返品のない収益が一定割合を占めると、資金繰りの見通しが立てやすくなります。
後継者にとっても意味があります。既刊の売上だけの会社より、複数の柱を持つ会社のほうが、引き受けやすいからです。
第三者承継で作品を残す
4つめは、親族や社内に引き継ぐ相手がいない場合に、会社や事業を外部へ引き継ぐ方向です。
第三者承継とは、親族や社内の従業員ではなく、外部の企業や個人へ会社・事業を引き継ぐ方法のことです。株式の譲渡による会社ごとの引継ぎのほか、特定の事業や版権だけを譲る形もあります。
児童書の世界では、この選択肢に独特の意味があります。会社をたたむと、絶版になった作品はそのまま読者の手に届かなくなるからです。
第三者承継であれば、作品を出し続ける相手に託せる可能性が残ります。会社を残すためではなく、作品を残すための選択肢として考えられます。
相手として想定されるのは、同じ児童書の分野の出版社、別ジャンルで児童書へ広げたい出版社、教育や玩具の事業者などです。
この道を選ぶ場合も、出発点は同じです。作品ごとの収益と権利関係が整理されていなければ、相手は評価のしようがありません。
4つの選択肢の比べ方
4つを並べて比べると、選び方の見当がつきます。
| 選択肢 | 向いている会社 | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 既刊の翻訳ライセンス | 長く読まれる既刊があり、権利が整理できる会社 | 著者との契約に海外利用の定めがあるか |
| 対象年齢・新ジャンル | 編集の力が特定の領域で厚い会社 | その強みの延長線上に置けるか |
| 学校・図書館・教育事業 | 現場とのつながりや実績のある会社 | 編集の人手を割けるか |
| 第三者承継 | 引き継ぐ相手が身近にいない会社 | 作品ごとの収益と権利が示せるか |
4つは、どれか1つを選ぶという性質のものではありません。親族内承継を進めながら、翻訳ライセンスと教育事業を同時に育てる会社もあります。
順序として大切なのは、事業の棚卸しで自社の強みと収益構造を確かめてから選ぶことです。ここを飛ばした施策は、続きません。
初回のご相談で、契約をお願いすることはありません。まだどの選択肢とも決めていない段階で構いません。手元の数字がそろっていなくても大丈夫です。
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事業磨きをやり切った児童書出版社が手に入れる3つの未来

結論を先に述べます。事業磨きをやり切ると、承継の場面で3つのものが手に入ります。
いずれも、株式の移転の手続きだけでは手に入らないものです。
後継者が「引き受けたい」と言える会社になる
1つめは、後継者の気持ちの変化です。
子どもが会社を継ぐことをためらう理由の多くは、先が見えないことにあります。縮む市場の話だけを聞かされて、腹を決められる人はいません。
ところが、作品ごとの収益が見え、海外や教育の芽が動き始めていれば、話は変わります。後継者は、守る仕事ではなく、育てる仕事として受け取れます。
実務の場面でも違いが出ます。取引先や金融機関へ挨拶に回るとき、後継者が自分の言葉で会社を説明できるからです。
部数の増減に耐えられる収益の形になる
2つめは、経営の安定です。
新刊の売れ行きだけに収益を預けている状態は、天候に賭けているようなものです。当たれば大きい代わりに、外れた年の落ち込みも大きくなります。
翻訳ライセンスの使用料、学校や図書館への販売、受託の制作費。性質の違う収益が加わると、年ごとの振れ幅が小さくなります。
振れ幅が小さくなると、金融機関との対話も変わります。返済の見通しを説明しやすくなり、次の投資の相談もしやすくなります。
作品が読み継がれる道が残る
3つめは、作品そのものの未来です。
権利関係が整理され、作品ごとの価値が言葉になっていれば、道は複数残ります。親族内承継で子どもが続ける道、社内の編集者へ渡す道、第三者承継で別の出版社に託す道。
逆に、整理されていない状態では、選べる道は「続けるか、やめるか」の2つに縮みます。
整理しておくことは、どの道を選ぶかを先延ばしにできる、ということでもあります。急いで決めなくてよい状態そのものが、経営者にとっての余裕になります。
後継者が引き受けたいと思える会社、部数に揺さぶられない収益、作品が読み継がれる道。この3つを共に手に入れましょう。
自社だけで児童書出版社の事業承継を進める限界と、KICKの支援

結論を先に述べます。事業磨きも承継も自社だけで着手できますが、途中で3つの壁に当たります。
壁の正体を知っておくと、どこまで自力で進め、どこから人を入れるかを決められます。
編集の力は、社内では当たり前に見える
1つめの壁は、社内の常識です。長年やってきたことは、価値として認識されません。
「作家と20年付き合っている」「学校の先生から直接相談が来る」「絵の直しを何度でも重ねる」。社内では当然でも、外から見れば十分な強みです。
この差を埋めるには、外部の目が要ります。第三者に「それは普通ではありません」と言われて初めて気づく、という場面がよくあります。
契約と版権の棚卸しは、日常業務の外にある
2つめは、資料の整理です。作品ごとの契約書は、日々の刊行業務では取り出しません。
そのため、どこに何があるかを知っているのが1人だけ、という会社が多くあります。その1人が退職すると、権利の状態を確かめる手立てがなくなります。
棚卸しは地味ですが、翻訳ライセンスにも第三者承継にも、この一覧が土台になります。作品名・著者・契約日・期間・許諾範囲を、表の形にしておいてください。
刊行スケジュールと並行して進められない
3つめは時間です。経営者は次の企画と入稿を回しながら、この作業をすることになります。
結果として、着手はしたものの半年動かない、という状態に陥りがちです。承継は相手のある話でもあり、機を逃すこともあります。
自力で進めるなら、期限を先に決めることです。「今月は既刊の粗利まで」と区切ると、日常業務の合間でも形になります。
中小企業診断士・税理士・弁護士の領域の切り分け
誰に何を頼むのかを整理しておくと、無駄な費用と時間を減らせます。
| 担い手 | 担当する領域 |
|---|---|
| 中小企業診断士(KICK) | 事業の棚卸しと事業磨きの設計、承継全体の設計と伴走 |
| 税理士 | 個別の税務判断・税務申告・税額計算・自社株評価の実務 |
| 弁護士 | 出版契約や版権の契約書の作成・法律判断・紛争への対応 |
| 司法書士 | 登記の手続き |
| 行政書士 | 許認可に関する手続き |
KICKは中小企業診断士・事業承継士(認定経営革新等支援機関)として、事業磨きと承継全体の設計を担います。税務の個別判断は税理士、契約の作成と法律判断は弁護士の領域です。
この線引きが曖昧なまま話が進むと、税理士・顧問弁護士・後継者の認識がずれます。全体の設計図を持つ人が真ん中にいると、この食い違いは起きにくくなります。
KICKは事業承継専属の保険代理店でもあります。承継の場面では、法人保険がいまの目的に合っているかを点検する価値があります。
ただし削ることが目的ではありません。減らしすぎれば、万一のときに事業の継続や家族の生活に影響します。守るための再設計として扱います。
ご相談の場で、他の専門家を替えるようお勧めすることはありません。いまの顧問の方々と並んで、全体の設計だけをお手伝いします。売り込みもお断りの気まずさもありません。
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児童書出版社の事業承継でよくある質問

ご相談の場でよく聞かれる質問をまとめました。
Q. 児童書出版社の事業承継は、いつから準備すればよいですか
A. 引き継ぐ相手が決まっていなくても、いまから始められます。会社の強みと収益構造を洗い出す作業は、後継者が誰であっても無駄になりません。
親族内承継の場合、株式の移転には数年かける会社が多くあります。逆算すると、経営者が60代に入るころには着手しておきたいところです。
まずは3期分の売上を、新刊・既刊・非書籍に分けて並べてみてください。それだけでも見えてくるものがあります。
Q. 事業承継の支援費用はいくらかかりますか
A. 会社の規模と、どこまで整理するかで変わるため、一律の金額はありません。作品数と契約書の整い具合で作業量が大きく変わります。
費用の話をする前に、何をどこまでやるかを決める必要があります。無料相談で範囲の目安をお伝えしますので、そこでご判断ください。
Q. 翻訳ライセンスは、小さな出版社でも取り組めますか
A. 取り組めます。規模より、権利が整理されているかどうかが問われます。
ただし、成果が出るかどうかは作品と相手国の事情によります。成功する前提で資金計画を立てるのは避けてください。
最初は、国内で長く読まれ、権利の確認が済んでいる数点に絞るのが現実的です。契約の条件は弁護士に確認してもらってください。
Q. 子どもが継ぐ意思を示しません。どうすればよいですか
A. 継ぐかどうかを先に問わず、会社の中身を見せることから始めてください。判断材料がないままでは、誰でも答えを出せません。
事業の棚卸しの資料は、そのまま説明の道具になります。どの作品が支えているか、どこに芽があるかを共有してください。
それでも意思が固まらない場合は、社内の従業員への承継や第三者承継も並べて検討します。選択肢を残したまま準備を進められます。
Q. 事業承継税制(特例措置)は使えますか
A. 使える場合がありますが、要件を満たすかどうかは個別の判断になります。適用の可否と税額の計算は税理士の領域です。
期限には注意が必要です。法人版の特例承継計画の提出期限は令和9年(2027年)9月30日です。
一方で、贈与や相続を実際に行う期限は令和9年(2027年)12月31日であり、こちらは延長されない見込みです。
計画の提出期限が延びたからといって、余裕があるとは限りません。また、この制度は納税を猶予するものであり、要件を満たさなくなれば猶予が打ち切られます。早めに税理士へご相談ください。
Q. 在庫の絵本が大量にあります。承継の前に処分すべきですか
A. 処分の前に、作品ごとに動きを確かめてください。年に少しずつでも売れ続けている本と、まったく動かない本は扱いが違います。
在庫は財務上の資産ですが、動かなければ倉庫代と管理の手間がかかります。数字を並べたうえで、残す・減らす・電子で残す、といった判断をします。
在庫の評価や税務上の取扱いについては、税理士に確認してください。
Q. 第三者承継を選ぶと、作品はどうなりますか
A. 引き継ぐ相手と条件次第です。会社ごと引き継ぐ場合は、契約関係もそのまま移るのが基本になります。
作品を出し続けてもらえるかどうかは、交渉の中で確認すべき事項です。相手を選ぶ段階から、作品の扱いを条件に入れておいてください。
この点は契約書の書き方に関わります。弁護士に入ってもらったうえで、条項を確かめることをお勧めします。
Q. 事業磨きと事業承継は、どちらを先にやるべきですか
A. 同時に進めるのが現実的です。ただし、事業の棚卸しだけは最初に置いてください。
会社の中身が見えないまま株式の話だけを進めると、渡す側も受け取る側も判断ができません。棚卸しの結果は、株式の話にも税務の相談にも使えます。
Q. 少子化のなかで、児童書の出版を続ける意味はありますか
A. 判断はご自身のものですが、市場全体の縮小と個別の会社の行方は別のものです。
読者が細っても、支持される作品と、そうでない作品に分かれます。海外・年齢層・教育の現場と、届け先を広げる余地も残っています。
続ける場合も、たたむ場合も、まず数字と権利を整理してください。整理した情報は、どちらの判断にも役立ちます。
Q. 相談する前に、社内で用意しておくものはありますか
A. 直近3期分の決算書と、作品ごとの売上が分かる資料があれば十分です。細かく整っていなくても構いません。
契約書の一覧があれば、話が早く進みます。無い場合は、その状態からご相談ください。どこから手をつけるかを一緒に決めます。
まとめ

子どもの数が減るなかで、児童書出版社の事業承継を進めるには、渡す前に会社を磨いておくことが要になります。
少子化に備える事業磨きの選択肢は、4つでした。
- 既刊の海外向け翻訳ライセンス
- 対象年齢とジャンルの広げ方
- 学校・図書館・教育事業との連携
- 第三者承継で作品を残す
どれを選ぶにしても、順序は変わりません。事業の棚卸しで自社の強みと収益構造を確かめてから選ぶことです。
棚卸しを済ませておけば、親族内承継で子どもへ渡す道も、社内の編集者へ渡す道も、第三者承継で作品を託す道も残ります。
税務の個別判断は税理士、契約の作成と法律判断は弁護士の領域です。KICKは中小企業診断士・事業承継士として、その全体をつなぐ設計を担います。
手をつける順番に迷ったら、まず3期分の売上を新刊・既刊・非書籍に分けて並べてみてください。会社の本当の姿が見えてきます。
ご相談の場で、契約をお勧めすることはありません。整理の途中でも、まだ何もしていなくても構いません。後継者が決まっていない段階のご相談も歓迎します。今の状況をそのままお聞かせください。
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