
「生地や糸の仕入れ値が毎月のように上がるのに、縫い賃はここ数年ほとんど変わらない」。そう感じている縫製業の経営者は、決して少なくありません。円安と原材料高騰が重なり、下請け構造の中でコストを価格に転嫁できず、気づけば債務超過に陥っていた。そんな縫製業・繊維関連製造業の相談が、ここ数年で増えています。あなたの会社だけが特別に苦しいわけではありません。
受注は途切れないのに、原材料費と外注費を払うと手元にほとんど利益が残らない。決算書を見て初めて債務超過に気づき、慌てて銀行に相談したという声も珍しくありません。円安によって化学繊維や輸入生地の仕入れ値が上がり続ける一方、発注元との力関係から縫い賃の見直しは後回しにされがちです。あなたの会社だけが、経営判断を誤ったわけではありません。
一方で、縫製業を取り巻く環境には追い風もあります。2024年9月30日から、特定技能の対象分野に新しく「縫製」区分が加わりました。技能実習生に頼ってきた現場にとって、特定技能外国人という選択肢が広がったのです。ただし、これには2つの壁があります。ひとつは繊維業に特有の上乗せ要件、もうひとつは、直近期末が債務超過の場合に必要となる「企業評価書」です。結論から言えば、この2つの壁は正しい手順を踏めば越えられます。
この記事で分かること
- 縫製業が債務超過に陥る本質的な原因と、放置した場合に起きること
- 特定技能「縫製」区分に固有の4つの上乗せ要件
- 債務超過でも技能実習・特定技能の受入れ審査を通す企業評価書の実務手順
- 企業評価書を用意した先に手に入る、資金繰りと人材確保の未来
- 自社だけで進めるときの限界と、専門家に任せるべき理由
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状の決算内容をお聞かせください。
縫製業が債務超過に陥る構造と、放置したときに起きること

縫製業の赤字は、経営者の努力不足で起きているわけではありません。ここには3つの構造的な原因があります。原因を正しく分解できていないと、対策はいつまでも表面的なままになります。
原因1 原材料高騰を価格に転嫁できない下請け構造
生地・付属品の仕入れ価格が上がっても、発注元との取引条件上、縫い賃への転嫁交渉が難しい現場は多くあります。中小企業庁が公表する調査でも、価格転嫁の遅れは中小製造業に共通する課題として繰り返し指摘されています。取引先が1〜2社に集中している場合、値上げ交渉そのものが取引解消のリスクと隣り合わせになり、言い出せないまま時間だけが過ぎていく会社も少なくありません。転嫁できない分は、そのまま利益を圧迫します。
原因2 人手不足による生産効率の低下
縫製の現場は熟練した技術を持つ人材への依存度が高く、高齢化と採用難が同時に進んでいます。ミシンが空いていても縫う人がいなければ受注は捌けません。結果として、機会損失と残業代の増加が同時に起きます。若手の採用が進まないまま技術継承ができず、繁忙期には外注比率を上げざるを得ず、外注費の増加がさらに利益を圧迫するという悪循環に陥っている現場もあります。
原因3 単発の値上げ対応にとどまり、構造改善に踏み込めていない
値上げ交渉や経費削減など単発の対応はしていても、管理会計で利益構造そのものを見える化できていない会社が多いのが実情です。売上ではなく、案件ごとの利益が残っているかどうかを把握しないまま、忙しさだけが続いてしまいます。どの取引先の、どの品番が実際に利益を生んでいるのかが分からないまま、忙しい案件から順にこなしていく状態では、いくら受注が増えても資金繰りは改善しません。
この3つを放置した場合、悪化のシナリオは次のように進みます。
| 経過 | 起きること |
|---|---|
| 1年目 | 原材料高騰分を転嫁できず、粗利率が徐々に低下する |
| 2〜3年目 | 赤字が続き、現預金が減少。金融機関への返済負担が重くなる |
| 3年目以降 | 債務超過に至り、技能実習・特定技能の新規受入れ審査で企業評価書の提出を求められる |
| 対応が遅れた場合 | 受入れ手続きが止まり、繁忙期の人手不足がさらに深刻化する悪循環に陥る |
東京商工リサーチの調査でも、縫製業を含む繊維関連業種の倒産は、下請け体質からの脱却が進まない企業を中心に高止まりの傾向にあると報告されています。「まだ大丈夫」と先送りにしている間に、選べる選択肢は少しずつ減っていきます。
特に注意したいのは、債務超過そのものよりも「対応の遅さ」が受入れ計画に与える影響です。特定技能外国人の受入れには、就労開始までに一定の準備期間が必要です。企業評価書は債務超過が判明してから慌てて用意するものではなく、決算が確定した段階で早めに着手するほど、繁忙期に間に合わせやすくなります。逆に着手が遅れるほど、追加資料の要求や差し戻しへの対応で、想定していた受入れ時期がずれ込みやすくなります。
縫製業が特定技能を受入れるための4つの条件と企業評価書の実務手順

縫製業が外国人材の受入れを進めるには、実務レベルで押さえるべきことが2段階あります。ひとつは繊維業に特有の上乗せ要件、もうひとつは債務超過企業に共通する企業評価書の準備です。この2つを個別に進めようとすると、担当者ごとに情報が分断され、結果的に手戻りが発生しやすくなります。ここを手順化して初めて、審査を通る受入れ計画になります。
条件1 国際的な人権基準の遵守
技能実習制度で指摘されてきた人権上の課題を踏まえ、繊維業(紡織製品製造区分・縫製区分)では、国際的な人権基準に沿った事業運営が求められます。労働時間・安全衛生・ハラスメント防止などの体制を、書面で説明できる状態にしておく必要があります。就業規則やハラスメント相談窓口の有無を、この機会に棚卸ししておくと審査対応がスムーズになります。
条件2 勤怠管理の電子化
紙のタイムカードや手書きの出勤簿では不十分とされ、勤怠管理を電子化していることが要件になります。導入していない場合は、受入れ計画と並行してシステム選定を進める必要があります。クラウド型の勤怠管理サービスは比較的低コストで導入できるものも多く、労務管理の効率化にもつながります。
条件3 パートナーシップ構築宣言の実施
発注元・仕入先との望ましい取引慣行に取り組む姿勢を示す「パートナーシップ構築宣言」の実施が求められます。これは、原材料高騰を適正に価格転嫁していく姿勢を対外的に示すことにもつながります。宣言を行うこと自体が目的ではなく、実際に取引条件の見直しに着手する契機として活用することが重要です。
条件4 特定技能外国人の月給制
時給制や日給制ではなく、特定技能外国人に対して月給制で給与を支払う体制が必要です。就業規則・給与規程の見直しが前提になります。日本人従業員との待遇バランスも合わせて点検しておくと、受入れ後のトラブルを防ぎやすくなります。
この4つの条件は、経済産業省 製造産業局生活製品課が公表する繊維業の上乗せ要件に基づくものです。ここまでは業界共通の要件ですが、直近期末が債務超過の会社は、これに加えてもう1つ、企業評価書という関門を越える必要があります。
企業評価書の作成手順は、次のように進みます。
- 直近3期分の決算書と試算表を整理し、債務超過に至った経緯を数値で把握する
- 原材料費・人件費・外注費など、利益を圧迫している要因を管理会計の視点で分解する
- 価格転嫁・生産効率化・取引先の見直しなど、実行可能な改善策を具体的な計画に落とし込む
- 債務超過を何年で解消できるかの見通しを、根拠となる数値とともに整理する
- 中小企業診断士が第三者の立場で評価し、書面としてまとめる
企業評価書には、単に「頑張ります」という決意表明を書くのではなく、原価率の改善目標、価格転嫁による粗利率の回復シナリオ、外注比率の見直しなど、根拠のある数値計画を記載する必要があります。審査を行う側は、この計画に実現可能性があるかどうかを見ています。抽象的な計画では、追加の資料提出を求められ、受入れ時期が延びる原因になります。
この一連の作業を自社の顧問税理士に依頼できるかというと、そうではありません。企業評価書を作成できるのは中小企業診断士または公認会計士に限られ、税理士は対象に含まれていません。制度上の要件を誤解したまま準備を進めると、提出直前になって書類が受理されないという事態にもなりかねません。
この専門性が問われる工程を任せられるのが、縫製業向け企業評価書の作成支援です。財務分析から改善計画の策定、書面化までを一気通貫で進めます。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。決算の状況を整理するだけでも構いません。
企業評価書を整えた先に手に入る未来

企業評価書は、単に審査を通すための書類ではありません。作成の過程そのものが、会社の利益構造を見直す機会になります。手に入る未来は、大きく3つの軸で描けます。
1つ目は、数字の軸です。債務超過に至った原因を分解し、案件ごとの利益を管理会計で把握できるようになると、値上げ交渉や取引先選定の判断が数字に基づいて行えるようになります。「忙しいのに儲からない」状態から、利益が残る受注だけを選べる状態へ変わります。
2つ目は、時間の軸です。債務超過解消の見通しを数値化しておくことで、金融機関や発注元への説明にかかる時間が大きく短縮されます。その都度、資料を作り直す必要がなくなり、経営者は現場と営業に時間を使えるようになります。
3つ目は、関係性の軸です。パートナーシップ構築宣言や価格転嫁への取り組みを対外的に示すことで、発注元との関係が「言われた通りに作る下請け」から「適正な対価で発注される協力工場」へと変わっていきます。特定技能外国人の受入れも進み、繁忙期に受注を断らずに済む体制が整います。
特定技能外国人が加わることで、繁忙期のたびに受注を断っていた状態からも抜け出せます。人手不足を理由に断ってきた案件を受けられるようになれば、売上そのものも底上げされていきます。若手の技術継承という観点でも、外国人材が加わることで現場の年齢構成が変わり、ベテランの技術を次の世代へ引き継ぐ時間的な余裕が生まれます。数字が整理され、時間の余裕が生まれ、取引先との関係も変わる。この3つを、共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、KICKコンサルティングの支援

ここまでの内容を読んで、「自社の経理担当でもできそうだ」と感じた方もいるかもしれません。ただし、企業評価書の作成には3つの壁があります。
専門性の壁として、企業評価書は中小企業診断士または公認会計士という限られた資格保有者にしか作成できません。時間コストの壁として、決算書の分析から改善計画の策定まで、通常の決算業務と並行して行うには相応の工数がかかります。判断ミスのリスクとして、債務超過解消の見通しに根拠が乏しいと、審査担当者から追加の説明を求められ、受入れ時期が後ろ倒しになることもあります。だからこそ、この分野を専門とする中小企業診断士に任せる経営者が増えています。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、法人支援実績150社以上、認定経営革新等支援機関(中小企業庁)として、経営改善計画の策定から企業評価書の作成まで一気通貫で支援しています。代表の松本昌史は、MBA(経営管理修士)・中小企業診断士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)として、財務の見える化と実行可能な改善計画の策定を専門にしています。
「申請サポートだけでなく、その先の資金繰りまで見てもらえるのか」という声を多くいただきます。KICKコンサルティングでは、企業評価書の作成にとどまらず、管理会計を活用した伴走支援によって、利益が残る構造そのものへの転換を支援しています。具体的には、決算書の分析による原因の特定、案件別・取引先別の収益性の見える化、価格転嫁を進めるための交渉材料づくり、そして企業評価書に記載する改善計画の策定までを、中小企業診断士が一貫して担当します。
縫製業は、下請け構造の中で「価格は発注元が決めるもの」という前提が根強い業界です。しかし、原材料高騰という外部環境の変化は、価格交渉の材料としても使えます。数字の裏付けを持って交渉に臨む会社と、感覚だけで交渉する会社とでは、結果が大きく変わります。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいても費用は一切かかりません。まずは現状をお聞かせください。
よくある質問

Q. 特定技能「縫製」区分はいつから受入れが始まりましたか。
A. 2024年9月30日から、工業製品製造業分野の一区分として受入れ手続きが始まりました。技能実習からの移行者だけでなく、新規の受入れも対象になります。
Q. 繊維業の上乗せ要件は縫製業だけが対象ですか。
A. 紡織製品製造区分と縫製区分の両方が対象です。国際的な人権基準の遵守、勤怠管理の電子化、パートナーシップ構築宣言の実施、月給制の4つが共通して求められます。
Q. 企業評価書は債務超過でなくても必要ですか。
A. 直近期末が債務超過でない場合、企業評価書の提出は不要です。ただし、赤字が続いている会社は今後の決算次第で必要になる可能性があるため、早めに財務状況を把握しておくことをお勧めします。
Q. 顧問税理士に企業評価書を頼むことはできますか。
A. できません。企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格として、対象になるのは中小企業診断士または公認会計士に限られます。
Q. 企業評価書の作成にはどのくらいの期間がかかりますか。
A. 決算書の整理状況や改善計画の複雑さによって異なりますが、直近の決算資料が整っていれば、財務分析から書面化まで一定の期間で進められます。受入れ時期から逆算して、余裕を持って相談を始めることが、想定どおりのスケジュールで進めるための鍵になります。まずは決算の状況をご相談ください。
Q. 育成就労制度になると企業評価書の扱いは変わりますか。
A. 育成就労制度は2027年4月に施行が予定されています。制度移行後も、債務超過企業に対する評価書面の考え方は技能実習制度から引き継がれる方向で整理が進められています。最新の運用は制度施行に合わせて確認が必要です。
Q. 値上げ交渉が進まない場合、まず何から着手すべきですか。
A. 感覚的な値上げ要請ではなく、案件ごとの原価と利益を管理会計で見える化したうえで、根拠のある数値を示すことが交渉の第一歩になります。
Q. 技能実習からの移行者と、新規で特定技能外国人を採用する場合で対応は変わりますか。
A. どちらの場合も、繊維業の4つの上乗せ要件と、債務超過であれば企業評価書の準備が必要になる点は共通します。移行者の場合は在留資格変更の手続きが加わるため、余裕を持ったスケジュールで進めることをお勧めします。
Q. 相談したら、その場で契約を迫られませんか。
A. そのようなことはありません。まずは現状の決算内容や受入れ計画をお聞きし、必要な対応を一緒に整理するところから始めます。
まとめ

生地や糸の高騰、下請け構造の中での価格転嫁の遅れ。縫製業が抱える悩みは、経営者一人の努力だけでは解決できない構造的な課題です。一方で、特定技能「縫製」区分の新設は、人手不足に悩む現場にとって大きな追い風でもあります。越えるべき壁は、繊維業の4つの上乗せ要件と、債務超過企業に求められる企業評価書の2つだけです。
この2つは、正しい手順を踏めば越えられます。決算書を整理し、利益構造を見える化し、改善の見通しを数値で示す。それができれば、外国人材の受入れも、資金繰りの改善も、同時に前へ進みます。原材料高騰は業界全体が直面している環境変化であり、それを理由に受入れを諦める必要はありません。むしろ、企業評価書の作成を通じて自社の利益構造を見直す機会として捉えることで、債務超過からの脱却と人材確保を同時に実現できます。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
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