
上期の決算が固まり、下期に向けて数字を見直す時期ではないでしょうか。決算書を見ながら、ふと「この会社の株を子どもに継がせるとき、いくらと評価されるのだろう」と気になった経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
事業承継の相談で最初につまずきやすいのが、実は自社株評価です。長年黒字を積み重ねてきた会社ほど、想定より高い評価額になり、贈与や相続のときに後継者が思わぬ税負担を背負うことがあります。
この記事は、子や親族へ会社を引き継ぐ親族内承継を考えている経営者・後継者に向けて、自社株評価の基本的な考え方を整理します。具体的な引き下げ手法や計算例の数値には触れず、まず「何のために、どんな方式が使われるのか」という土台を理解していただくことを目指します。
「うちはまだ承継の話は先だから」と感じている方ほど、実は評価の仕組みを知る意味があります。会社の業績が伸びている今のうちに大枠をつかんでおくことが、数年先の贈与や相続のときに役立ちます。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として法人支援150社以上に携わってきました。株式や税務の専門用語は難しく感じられがちですが、その経験をもとに、できるだけかみ砕いてお伝えします。
- 親族内承継で自社株の評価が気になる社長
- 後継者へ自社株の話をどう説明するか迷う方
- 税制優遇の検討を始める前に基礎を整理したい方
- 自社株評価を税理士任せにせず大枠を知りたい後継者
- 自社株評価が必要になる場面と、後回しにするリスク
- 類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式という3つの評価方式の考え方
- 評価の仕組みを理解した先に手に入る、承継準備の土台
- 自社だけで進める限界と、専門家に相談する意味
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事業承継で自社株評価を後回しにするとどうなるか

多くの中小企業では、創業から一度も自社株評価を確認したことがない、という会社が珍しくありません。株式の大半を社長一人が保有し、日常の経営には影響しないため、後回しにされやすいのです。
しかし親族内承継では、この自社株を子や配偶者などの後継者へ贈与または相続という形で移す場面が必ず訪れます。そのときになって初めて評価額が明らかになり、想定より高い評価額に驚くというケースが少なくありません。
非上場企業の株式は、証券取引所のように市場価格がありません。そのため国税庁の財産評価基本通達に基づき、会社の規模や利益、純資産の状況などから計算によって評価額を求める仕組みになっています。長年黒字を積み上げ、内部留保が厚くなった会社ほど、評価額は高くなりやすい傾向があります。
特例承継計画のような税制優遇の制度を検討する場合も、まず自社株がどう評価されるのかという土台が分かっていないと、制度を使うメリットの大きさそのものを判断できません。評価の理解は、税制優遇を検討するかどうかを考える前段階に位置づけられます。
評価の仕組みを知らないまま贈与や相続を進めると、次のような事態が起こり得ます。
- 想定していなかった贈与税・相続税の負担が発生する
- 後継者一人に株式が集中し、他の相続人との間で遺留分を巡る話し合いが必要になる
- 納税資金の準備が間に合わず、承継の計画そのものが遅れる
「まだ先の話」と思っているうちに、会社の業績が伸びるほど評価額も上がっていくという点が、自社株評価の見落としがちな怖さです。逆にいえば、評価の考え方を早めに理解しておくことは、贈与や相続のタイミングを含めた承継全体の計画づくりの土台になります。
株式が分散したまま時間だけが過ぎるケースもある
創業から年数がたった会社では、過去の増資や名義の都合で、株式が社長以外の親族にも少しずつ分散していることがあります。誰がどれだけ株式を持っているかを整理しないまま評価だけを進めると、いざ贈与や相続の場面で株主の特定や意思確認に想定以上の時間がかかることがあります。
自社株評価は「今の株主構成のまま計算するといくらになるか」を確認する作業でもあります。評価の前提として、まず株主構成を正しく把握しておくことが欠かせません。
自社株評価の仕組みを理解する3つの評価方式

自社株評価の考え方を理解するための進め方は、次の3つのステップに整理できます。
- 直近の決算書をもとに、会社の規模(大会社・中会社・小会社)の目安を確認する
- 会社の規模に応じて、どの評価方式がどんな考え方で使われるかを把握する
- 専門家に依頼し、実際の評価額の算定と税負担の見通しを確認する
会社の規模は、従業員数・総資産価額・取引金額という3つの要素を組み合わせて判定されます。この規模の区分によって、次の3つの評価方式のうちどれをどんな割合で使うかが変わってくる仕組みです。
類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式
非上場企業の株式評価は、国税庁の財産評価基本通達(取引相場のない株式の評価)という一つの物差しに基づいて計算されます。この通達の中で、株主を大きく2つの立場に分けている点がポイントです。
会社の経営を実質的に支配する立場にある株主(同族株主等)には、原則的評価方式が使われます。一方、経営への影響力がほとんどない少数株主には、特例的な考え方である配当還元方式が使われます。親族内承継で経営権とともに株式を受け継ぐ後継者は、多くの場合、原則的評価方式の対象になります。
原則的評価方式は、さらに類似業種比準方式と純資産価額方式という2つの方式を組み合わせて算出します。会社の規模が大きいほど類似業種比準方式の割合が高く、規模が小さいほど純資産価額方式の割合が高くなる、という関係です。これは「規模が大きい会社ほど、上場企業に近い性質を持つとみなす」という考え方に基づいています。
この記事では、それぞれの評価方式が「どんな場面で」「どんな考え方で」使われるのかという土台の整理にとどめます。具体的な引き下げの手法や計算例の数値は、会社ごとの状況によって大きく異なるため、税理士など専門家との個別の確認が必要な領域です。
| 評価方式 | 主に使われる場面 | 評価の考え方 |
|---|---|---|
| 類似業種比準方式 | 会社の規模が大きいほど、適用される割合が高い | 事業内容が似た上場企業の株価をもとに、配当・利益・純資産の3要素で算出する |
| 純資産価額方式 | 会社の規模が小さいほど、適用される割合が高い | 会社の総資産から負債などを差し引いた純資産額をもとに算出する |
| 配当還元方式 | 経営に影響力を持たない少数株主が保有する株式 | 過去の配当実績を一定の利率で還元して算出する |
会社の規模は3つの要素で判定される
会社の規模(大会社・中会社・小会社)は、直近の決算をもとに「従業員数」「総資産価額」「取引金額(年間の売上高)」という3つの要素を組み合わせて判定します。業種によって基準となる金額や人数の目安が異なるため、製造業と卸売業、サービス業とでは同じ売上規模でも区分が変わることがあります。
この区分は毎期の決算で見直されるため、今期は中会社でも、来期は大会社に区分が変わる、といったこともあり得ます。区分が変われば、類似業種比準方式と純資産価額方式の割合も変わり、評価額の水準に影響します。だからこそ、一度確認して終わりではなく、定期的に見直す意識を持つことが望ましいといえます。
この3つの方式の関係を知っておくだけでも、「なぜうちの評価額はこの金額になるのか」を後継者に説明しやすくなります。数字の裏にある考え方が分かれば、税理士からの説明もぐっと理解しやすくなるはずです。承継全体の計画に落とし込む部分は、事業承継コンサルティングの中で一緒に整理していきます。詳しくは次のページでまとめています。
中小企業診断士 · 事業承継士 · 認定経営革新等支援機関 事業承継を何から始めるべきか、 一緒に整理しませんか。 株式・保険・後継者育成がバラバラのまま、時間だけが過ぎていませんか。 KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、経営全体を見ながら事業承継を一本化して伴走する専門...
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自社株評価を理解した先に手に入る未来

自社株評価の考え方を理解しておくことは、単なる知識ではありません。親族内承継の計画を前に進めるための、具体的な土台になります。3つの軸で、手に入る未来を見ていきましょう。
想定外の税負担に慌てなくなる
評価額のおおまかな水準と、その算定の考え方を知っておけば、贈与や相続が発生したときに「想定の範囲内」として受け止められます。慌てて資金をかき集める、金融機関に急いで相談する、といった事態を避けやすくなります。
特に、業績が上向いている会社ほど純資産や利益が積み上がり、評価額は年々上がっていく傾向があります。今のうちに水準感をつかんでおけば、来期以降も落ち着いて数字の変化を見守ることができます。
後継者に自信を持って説明できる
「なぜこの評価額になるのか」を自分の言葉で説明できると、後継者も納得感を持って株式を受け継ぐことができます。承継は株式の移転であると同時に、経営への理解を引き継ぐ機会でもあります。
逆に、評価の仕組みを誰も説明できないまま株式だけが移転すると、後継者は「なぜこの金額の税金を払うのか」が腑に落ちないまま手続きだけが進んでしまいます。仕組みを共有しておくことは、後継者の納得感にも直結します。
承継の次の一手を計画的に選べる
評価の仕組みが分かれば、贈与のタイミングや、税制優遇の検討を含めた次の一手を、慌てず計画的に選べるようになります。会社の状況に合わせて、いつ、どのように株式を動かすかを検討する余裕が生まれます。
納税資金の準備や遺留分への配慮など、親族内承継で並行して考えるべき課題も、評価額の水準が見えてはじめて具体的な検討に進めます。評価の仕組みを知ることは、承継計画全体の出発点になります。
自社株評価という土台を整えることは、遺留分への配慮や納税資金の準備、後継者教育といった親族内承継のほかの課題にも良い影響を与えます。まずはこの土台を、経営者と後継者が共に手に入れましょう。
自社だけで事業承継を進める限界と、事業承継士による伴走

自社株評価の考え方を理解しても、実際の計算や、承継全体の計画への落とし込みには専門知識が必要です。評価額の算定や税額の計算、申告そのものは税理士の領域であり、KICKが税務代理を行うことはありません。
一方で、多くの経営者が抱える悩みは「税理士には税務のことを相談できるが、後継者育成や自社株の移転タイミング、金融機関との関係まで含めた承継全体の設計を誰に相談すればいいか分からない」というものです。税理士・金融機関・後継者、それぞれの話がかみ合わないまま、時間だけが過ぎてしまうケースも見てきました。
特に親族内承継では、税務の話と、家族間の感情や遺留分への配慮が絡み合います。数字の話だけでも、家族の話だけでも進まないという難しさがあり、両方を俯瞰できる立場が不在のまま計画が止まってしまう会社を、これまで数多く見てきました。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として、認定経営革新等支援機関の立場から、自社株評価の基本整理から承継計画の設計まで、経営者と後継者に伴走します。税理士や金融機関を否定するのではなく、それぞれの専門性をつなぎ、承継の全体像を一つに整理することがKICKの役割です。
具体的には、現状の株主構成と自社株評価の水準感を整理したうえで、贈与や相続のタイミング、後継者教育、金融機関との関係づくりまでを含めた承継計画のロードマップをご一緒に描きます。評価額そのものの計算は税理士に依頼していただく前提で、その前後の全体設計を担うのがKICKの立ち位置です。
また、KICKは事業承継専属の保険代理店でもあります。将来の納税資金の準備という目的で法人保険や個人の生命保険を活用できないか検討したい場合も、承継計画と整合させながら、無理のない範囲でご相談いただけます。特定の保険商品ありきでご提案することはありません。
具体的な伴走の進め方は、次のような流れになります。
- 現状の株主構成と、自社株評価のおおまかな水準感を整理する
- 贈与・相続・株式の買取など、想定される承継の形を後継者と一緒に確認する
- 税理士など他の専門家と連携しながら、承継計画のロードマップに落とし込む
いきなり大きな決断を迫ることはありません。まず現状を整理するところから始められるのが、事業承継士による伴走支援の特徴です。
ご相談いただいても、しつこい営業や無理な契約のお願いは一切いたしません。お断りいただいても構いませんので、まずは現状の株式の状況をお聞かせください。
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自社株評価と事業承継のよくある質問

Q. 自社株評価はいつ必要になりますか?
A. 生前贈与や相続、株式を後継者や会社が買い取る場面などで必要になります。特に親族内承継では、贈与や相続のタイミングで評価額が税負担に直接影響するため、早い段階で自社の評価の考え方を知っておくことが大切です。金融機関から株式の状況を尋ねられて初めて意識する経営者も少なくありません。
Q. 類似業種比準方式と純資産価額方式は、どちらが使われますか?
A. 会社の規模によって使う割合が変わります。従業員数や総資産価額、取引金額などから会社の規模を区分し、規模が大きいほど類似業種比準方式の割合が高く、規模が小さいほど純資産価額方式の割合が高くなります。多くの中小企業は中会社・小会社に区分され、純資産価額方式の影響を受けやすい傾向にあります。
Q. 配当還元方式が使えるのは、どんな株主ですか?
A. 経営への影響力が小さい少数株主が対象です。過去の配当実績をもとに算出するため、利益を積み上げてきた会社でも、少数株主が保有する株式は比較的低い評価になりやすい仕組みです。誰が同族株主で誰が少数株主にあたるかは、議決権の割合をもとに判定されます。
Q. 評価額は毎年同じですか?
A. いいえ。決算のたびに利益や純資産の額が変わるため、評価額も変動します。上期の決算が固まるこの時期に、現状の評価の考え方を確認しておくと、下期以降の贈与や相続のタイミングを考えるうえでの準備がしやすくなります。
Q. 評価額を自社で計算することはできますか?
A. おおまかな仕組みを理解することはできますが、実際の計算や申告は税理士の領域です。KICKは事業承継全体の設計と伴走を行い、税務の個別判断や申告が必要な場面では提携の税理士と連携して進めます。自己流の計算をそのまま贈与・相続に使うことはおすすめしません。
Q. 評価額が想定より高いと分かった場合、どう対応すればよいですか?
A. 評価の仕組みを理解したうえで、贈与のタイミングや進め方を含めて承継全体の計画を見直すことが考えられます。個別の対応策は会社の業績や株主構成によって異なるため、断定的な結論を急がず、専門家に相談しながら検討することをおすすめします。
Q. 従業員承継や第三者承継でも自社株評価は関係しますか?
A. はい。役員や従業員が株式を買い取る場合の資金計画や、社外への譲渡価格の目安を考える際にも、自社株評価の考え方は土台になります。承継の形が親族内から役員・従業員、第三者へと変わっても、自社の株式がどう評価されるかを知っておく意味は変わりません。
Q. 税制優遇の制度とは、どう関係しますか?
A. 評価の仕組みを理解することは、税制優遇の活用を検討する前提になります。制度の要件や期限は個別の状況や改正によって変わるため、詳しい内容は別途専門家と確認しながら進めることをおすすめします。安易に「必ず使える」と決めつけないことも大切です。
Q. 相談すると、どのようなことをしてもらえますか?
A. 現状の株主構成や承継の希望を伺ったうえで、自社株評価の考え方を整理し、事業承継全体の進め方をご提案します。税務の個別判断が必要な場面では、提携の税理士とも連携して伴走します。その場でのご契約を迫ることはありません。
Q. 兄弟姉妹がいる場合、自社株評価はどう関わりますか?
A. 後継者以外の子にも財産を分ける必要がある場合、自社株の評価額が遺留分の計算の土台になります。評価額が高いほど、後継者に集中させる株式と、他の相続人に渡す財産のバランスをどう取るかという課題が大きくなります。早めに評価の考え方を共有しておくことで、家族内の話し合いを進めやすくなります。
まとめ|自社株評価を知ることが親族内承継の最初の一歩
非上場企業の株式は、証券取引所のような市場価格がない特有の性質を持ち、独自の計算の仕組みで評価額が求められます。類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式という3つの評価方式の考え方を知っておくだけでも、想定外の税負担に慌てず、後継者にも自信を持って説明できるようになります。
大切なのは、評価額そのものの数字ではなく、「なぜその評価額になるのか」という仕組みを理解し、承継全体の計画に落とし込むことです。具体的な計算や税務の個別判断は税理士の領域ですが、承継全体の設計と伴走は、中小企業診断士・事業承継士であるKICKの役割です。
親族内承継は、株式という資産の移転であると同時に、経営者としての考え方や覚悟を次の世代に引き継ぐ機会でもあります。自社株評価という一見数字だけの話に見えるテーマも、その入り口として捉えていただければと思います。
上期の数字が固まったこの時期に、まずは自社の株式がどう評価されているのか、現状を整理するところから始めてみませんか。決算という節目は、自社の数字を見直す自然なきっかけになります。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いませんので、まずはお気軽にお声がけください。
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