「塗装屋さんですよね」——その一言で話が終わってしまう。会社を譲る相談を始めた途端、自社が「よくある下請けの工事店」の一つとして扱われる。
職人を育て、雨漏りの相談に走り、施主から名前で呼ばれてきた。その積み重ねが、決算書の数枚には一行も現れない。もどかしさを感じてはいないでしょうか。
結論から申し上げます。営業力は、数字と事実に置き換えた分だけしか相手に伝わりません。
そのために使うのが事業の棚卸しです。何もしないまま交渉に入ると、評価は工事高と純資産の話だけで進みます。
- 塗装工事会社を継いだ後継者の方
- 下請けの評価から抜け出したい方
- 第三者への譲渡を考え始めた方
- 自社の強みを説明できない方
- 職人の技術の行き先が心配な方
- 塗装工事の事業承継で「下請けの工事店」と見られる理由
- 営業力を数字で示す4つの視点と、集めるべき数字
- 仕上がりの品質を数値で示すための代替指標の作り方
- 見積能力と元請ルートが企業価値の説明にどうつながるか
- 税理士・弁護士・行政書士との領域の切り分け方
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として、法人支援150社以上の実績で承継の全体設計に伴走してきました。
読み終えるころには、明日どの帳票を棚から出せばよいかが分かります。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現場の状況をそのままお聞かせください。
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塗装工事の事業承継で「下請けの工事店」と評価される理由

この記事が前提にするのは第三者承継(M&A)です。親族や社内に後を継ぐ人がいないため、外部の相手へ会社を引き継ぐ場面を想定しています。
結論を先に述べます。塗装工事会社が下請けの工事店とひとくくりにされるのは、営業力が資料の形になっていないからです。
技術が劣っているからではありません。相手が読める形に翻訳されていない、という一点に尽きます。
事業の棚卸しとは何か
事業の棚卸しとは、会社の事業そのものの中身を調べ、稼ぐ力がどこから生まれているのかを明らかにする調査のことです。会社の強みの洗い出し、と言い換えると分かりやすいかもしれません。
調べる相手は勘定科目ではありません。顧客・営業ルート・見積の仕組み・職人の技術・組織です。
言い換えれば、数字が生まれる前の「なぜ受注できているのか」を扱うのが事業の棚卸しです。
買い手が行う調査は、危ないところを探すためのものです。強みを示す資料は、売り手が自分で用意するしかありません。
決算書だけを見ると、塗装工事会社は同じ顔に見える
決算書に載るのは、完成工事高・完成工事原価・販管費・純資産です。どれも結果の数字です。
そこには「その工事高が、誰との関係で生まれたのか」が書かれていません。
元請から回ってきた仕事も、施主から直接受けた仕事も、同じ売上として1行に並びます。
結果として、買い手は「工事高の規模」と「利益率」だけで会社を比べることになります。これが下請け評価の入口です。
塗装・防水の会社が特に不利になりやすい3つの事情
塗装工事や防水工事には、評価が低く出やすい固有の事情があります。大きく3つです。
- 仕上がりの良し悪しが数値になりにくく、技術力を証明しづらい
- 見積が職人の経験に依存し、根拠が社内に残っていない
- 受注の入口が特定の元請や管理会社に偏り、依存構造に見える
1つ目が最も重い問題です。塗膜の厚み、下地処理の丁寧さ、養生の精度は、完成後の外観からは見えません。
2つ目は承継の場面で直接効いてきます。積算が社長の頭の中にあると、買い手は「この人が抜けたら赤字工事が出る」と読みます。
3つ目は、取引先の数だけの話ではありません。単価を決める権限がどちらにあるか、という話です。
可視化しないまま交渉に入ると何が起きるか
営業力を資料にしないまま話を進めると、交渉の材料が価格だけになります。
買い手は不確実さを値段で調整します。説明できない部分は、安全側に見積もられます。
放置したときに起きやすいこと
- 強みの話ができず、工事高と純資産の話だけで交渉が進む
- 「社長が辞めたら顧客も離れる」と見なされ、条件が下がる
- 見積の根拠を聞かれても答えられず、原価管理が甘いと判断される
- 職人の定着に不安を持たれ、引継ぎ期間の条件が厳しくなる
- 従業員の処遇の話が後回しになり、社内に不信が残る
さらに、時間そのものが失われます。資料を求められてから集め始めると、交渉が止まります。
現場は動き続けています。繁忙期に資料集めが重なると、本業の品質にも影響します。
だからこそ、話が具体化する前に手をつける価値があります。
塗装工事会社の営業力を数字で示す4つの視点

結論を先に述べます。塗装工事会社の営業力は、次の4つの視点で測ると相手に伝わる形になります。
- 顧客の構成と継続率
- 見積と実行予算の精度
- 元請案件を取れる営業ルート
- 職人の技術と教育の仕組み
この4つは、どれも社内にある帳票から組み立てられます。新しく調査を始める必要はありません。
| 視点 | 答えるべき問い | 材料になる帳票 |
|---|---|---|
| 顧客の構成と継続率 | 誰から、どれだけ、何年続けて受けているか | 工事台帳・売掛金元帳・請求書控え |
| 見積と実行予算の精度 | 見積どおりの原価で完工できているか | 見積書・実行予算書・原価実績表 |
| 元請案件を取れる営業ルート | 問い合わせはどこから来て、どれだけ決まるか | 問い合わせ記録・見積提出簿・受注一覧 |
| 職人の技術と教育の仕組み | 品質が人に依らず保たれているか | 施工写真台帳・保証書控え・手直し記録 |
視点1 顧客の構成と継続率を数える
最初に手をつけるのは顧客です。工事台帳を3期分そろえ、得意先ごとに並べ直します。
ここで集める数字は次のとおりです。
- 得意先別の完成工事高と、その構成比
- 取引が続いている年数と、初回受注の時期
- 1社あたりの年間案件件数
- 新規客と既存客の内訳
- 元請として受けた工事と、下請けとして受けた工事の割合
- 公共工事と民間工事の割合
- 戸建・集合住宅・工場や倉庫といった物件種別の内訳
並べ終えると、自社の姿がはっきりします。上位数社に偏っているのか、広く薄く受けているのか。
偏っていること自体は欠点ではありません。長く続いている関係は、それ自体が説明のできる強みです。
大切なのは、続いている理由を言葉にすることです。工期を守るのか、急な補修に応じるのか、書類が整っているのか。
集合住宅の大規模修繕なら、修繕周期という事実も材料になります。次の周期に再び声がかかる関係かどうかを示せます。
視点2 見積と実行予算の精度を突き合わせる
見積能力とは、受注前の見積金額と、完工後の実際の原価とのズレを小さく保てる力のことです。
ここが塗装工事の事業承継で最も評価に効く部分です。原価を読み違えない会社は、買い手から見て安心できる会社だからです。
集める材料は次のとおりです。
- 工事ごとの見積書・実行予算書・原価実績の3点セット
- 工事別の粗利率と、そのばらつきの幅
- 予算を超えた工事の件数と、超えた原因の区分
- 追加工事が発生したときに、請求できているかどうか
- 歩掛(1人が1日にこなせる面積)の根拠となる記録
- 塗料の所要量、足場・高圧洗浄・下地補修の単価根拠
- 積算を担当している人の数と、その属人度
ここでは架空の数字を作らないでください。手元にある実績をそのまま並べることに意味があります。
ズレが大きい工事があっても構いません。原因を区分できていること自体が、管理できている証拠になります。
原因の区分は、たとえば「下地の想定外の傷み」「天候による工期延長」「仕様変更」「積算漏れ」といった形で十分です。
積算が社長一人に集中している場合も、隠さずに書きます。そのうえで、標準単価表や積算手順書をこれから整える計画を添えます。
こうした整理は、株式の扱いや従業員の処遇と切り離せません。全体像から設計する塗装工事会社の事業承継コンサルティングという選択肢もあります。
視点3 元請案件を取れる営業ルートを描く
元請とは、発注者と直接契約を結ぶ立場のことです。工事を請け負い、必要に応じて専門工事会社へ発注する側になります。
元請の比率が高いほど、単価を自社で決められる余地が広がります。買い手が知りたいのは、その入口が仕組みになっているかどうかです。
描くのは「受注に至るまでの経路」です。次の数字を経路別に数えます。
- 問い合わせの件数と、その入り口(紹介・自社サイト・看板・チラシ・OB客からの再依頼・管理会社経由・ゼネコンからの声かけ)
- 現地調査に進んだ件数
- 見積を提出した件数
- 受注できた件数と、その金額
- 失注した理由の区分(価格・工期・仕様・競合)
この4段階を並べると、営業の強い部分と弱い部分が分かれて見えます。問い合わせが少ないのか、提出後に決まらないのかで打ち手が違うからです。
あわせて、選ばれる理由を裏づける事実も集めます。建設業許可の業種、一級塗装技能士の在籍数、施工管理の有資格者、指定工法の登録などが該当します。
官公庁の入札に参加しているなら、参加資格や等級も事実として書けます。
許認可の申請そのものは行政書士の領域です。ここでは「今どの許可を持っているか」を事実として整理するにとどめます。
営業担当が社長一人であっても、それが弱みで終わるとは限りません。誰が引き継ぐと関係が保てるのかを書ければ、引継ぎ計画の材料になります。
視点4 職人の技術と教育の仕組みを代替指標で示す
塗装・防水は、仕上がりの品質を直接の数値にしにくい工事です。だからこそ、代わりになる指標を用意します。
品質そのものを測れないなら、品質が保たれている結果として現れる数字を示すという考え方です。
| 代替指標 | 何を示せるか | 集め方 |
|---|---|---|
| 保証書の発行率と保証年数 | 施工品質に責任を負う体制があること | 保証書の控えを工事件数と突き合わせる |
| 是正工事(手直し)の発生率 | やり直しの少なさ=下地処理と管理の精度 | 手直し記録を件数と原因で分類する |
| リピート率・再依頼率 | 施主や元請が繰り返し選んでいること | 工事台帳から2回目以降の受注を数える |
| クレーム件数と解決までの日数 | 不具合が起きた後の対応の速さ | 受付簿・報告書を時系列で整理する |
| 工期の遵守状況 | 段取り力と職人の手配力 | 予定工期と実績工期を工事別に比べる |
| 技能士・施工管理者の人数と年齢構成 | 技術が組織に分散しているか | 資格者名簿と年齢を一覧にする |
| 教育・記録の仕組み | 品質が人に依らず再現できること | 施工要領書・写真台帳・膜厚の測定記録 |
是正工事の発生率は、少なければよいという単純な話ではありません。記録が残っていること自体に価値があります。
記録がなければ「起きていない」のか「数えていない」のかを区別できません。買い手は後者を疑います。
写真台帳も強い材料です。下地の状態、ケレンの程度、下塗り・中塗り・上塗りの工程写真は、見えない部分の仕事を証明します。
職人の年齢構成は、正直に書くべき項目です。高齢に偏っているなら、育成の計画とセットで示します。
教育の仕組みがある会社は、承継後も品質が続くと判断されます。ここが技術力の説明の中心になります。
4つの視点をまとめる順番
手をつける順番に迷ったら、視点1から始めてください。工事台帳は必ず社内にあるからです。
次に視点2、視点3と進み、最後に視点4を厚くします。視点4は記録を掘り起こす作業になり、時間がかかるためです。
できあがった資料は、そのまま譲渡の場面の説明材料になります。相手の質問に、事実で答えられる状態になります。
資料が途中でも、まったく手つかずでも構いません。ご相談の場で契約をお勧めすることはありません。断りにくい空気を作ることもありません。今ある帳票の話からで大丈夫です。
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営業力を数字で示せた塗装工事会社に手に入る3つの未来

4つの視点で棚卸しを終えると、会社の見え方が変わります。手に入るものは大きく3つです。
説明できる企業価値が手に入る
企業価値とは、その会社が将来生み出す価値を、買い手の側から見積もった評価のことです。
評価の方法は複数あり、どの方法を採るかで見え方も変わります。個別の算定は、公認会計士や税理士など評価の専門家が担う領域です。
ただし、どの方法を採るにしても、将来の利益の見通しが土台になります。その見通しを支えるのが事業の棚卸しの資料です。
顧客が続く理由、見積が外れない理由、元請案件が入ってくる理由。この3つを事実で示せれば、将来の話が具体的になります。
価格が必ず上がると申し上げるつもりはありません。ただ、説明できない不確実さを減らせば、条件の話は前へ進みます。
承継の後も回る現場が手に入る
2つ目は社内に残るものです。積算の根拠、施工要領、保証の運用が文書になります。
これは譲渡の相手のためだけの作業ではありません。日々の現場が楽になります。
見積を出せる人が増えれば、社長が現場と事務所を往復する時間が減ります。若い職人が手順書を読めるようになれば、教育の負担も分散します。
買い手から見ても、引継ぎ期間を短くできる会社は魅力的です。前の社長に長く残ってもらう前提の条件は、双方にとって重いからです。
決断の自由が手に入る
3つ目は選択肢です。資料が整うと、譲る以外の道も見えるようになります。
元請比率を高める、物件種別を広げる、職人を採用して規模を保つ。どれも自社の数字を見たうえでの判断になります。
譲渡を見送る決断をしても、作った資料は残ります。経営の地図として使い続けられます。
逆に、進めると決めたときには、相手の質問に即答できる状態から始められます。
説明できる企業価値と、承継の後も回る現場と、決断の自由。この3つを共に手に入れましょう。
塗装工事会社が自社だけで棚卸しを進める限界と、KICKの支援

ここまでの手順は、自社だけでも着手できます。ただし、最後まで一人でやり切るには壁があります。
自社だけで進めるときの3つの壁
実務で行き詰まりやすいのは、次の3点です。
- 現場が忙しく、資料の整理がいつも後回しになる
- 身内の目で見るため、強みも弱みも評価が偏る
- どこまで書けば買い手が納得するのか、基準が分からない
2つ目が特にやっかいです。毎日見ている光景は、当たり前になって強みに見えません。
逆に、社内で長く気にしてきた弱点を過大に見てしまうこともあります。第三者の目が入ると、この歪みが直ります。
誰が何を担うのかを整理する
事業承継には複数の専門領域が関わります。混ぜて進めると、判断が止まります。
| 領域 | 担う専門家 |
|---|---|
| 個別の税務判断・税務申告・税額の計算 | 税理士 |
| 契約書の作成・法律判断・紛争の対応 | 弁護士 |
| 会社の登記に関する手続き | 司法書士 |
| 建設業許可などの許認可申請 | 行政書士 |
| 事業の棚卸しと承継全体の設計・伴走 | 中小企業診断士・事業承継士 |
それぞれが専門家として必要です。問題は、担い手が分かれたまま話がつながらないことです。
共通の敵は人ではありません。関係者の話がバラバラのまま、時間だけが過ぎていく状況です。
KICKの立ち位置と支援の内容
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として、承継の全体設計と伴走を担います。認定経営革新等支援機関です。
塗装工事会社で事業の棚卸しを行う際は、次の役割で関わります。
- 工事台帳・見積書・原価実績から、4つの視点の資料を組み立てる
- 是正工事やリピートの記録を、代替指標として整理する
- 営業ルートを図にして、引継ぎ可能な部分と属人的な部分を分ける
- 税理士・弁護士との橋渡しをし、判断の順番を決める
- 従業員への伝え方と時期を、社長と一緒に設計する
あわせて、事業承継専属の保険代理店として、法人保険の役割の点検も行います。
ここでの目的は、減らすための見直しではありません。守るための再設計です。契約の目的・保険金額・受取人が、今の承継の計画と合っているかを確かめます。
削りすぎれば、万一のときに事業の継続や家族の生活に影響が出ます。過剰と不足の両方を可視化することが出発点です。
なお、法人向け保険の保険料の取扱いは、2019年(令和元年)の法人税基本通達の改正により、最高解約返戻率に応じて区分されるようになりました。契約の時期によっても扱いが異なります。
個別の税務の判断は税理士の領域です。KICKは、承継の計画と保険の役割が噛み合っているかという観点から整理をお手伝いします。
相談してから決めていただいて構いません
初回のご相談で、方針を決めていただく必要はありません。今の状況を伺い、何から手をつけるかを一緒に整理するところまでです。
資料が何もそろっていない状態でも構いません。むしろ、そこから始まる会社がほとんどです。
その場で契約をお願いすることはありません。後日の売り込みの電話もありません。合わないと感じたら、そこで終わりにしていただけます。
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塗装工事会社の事業承継でよくある質問

ご相談の場で実際に多いご質問をまとめました。
Q. 事業の棚卸しと財務の調査は何が違いますか
A. 調べる対象が違います。事業の棚卸しは、顧客・営業ルート・見積の仕組み・職人の技術という「利益が生まれる元」を調べる作業です。
財務の調査は実態の利益や負債の中身を見る調査、法務の調査は契約や紛争の有無を見る調査で、目的が異なります。
まずは自社の資料が、この3つのどれに当たるのかを仕分けるところから始めてください。
Q. 事業の棚卸しにはどのくらいの期間がかかりますか
A. 資料の残り方によって大きく変わります。工事台帳と見積書がそろっていれば、比較的短く進みます。
時間がかかるのは、視点4の代替指標です。手直しやクレームの記録が散らばっていると、掘り起こしに手間がかかるためです。
まずは3期分の工事台帳を出せるかどうかを確かめてください。そこで見通しが立ちます。
Q. 事業の棚卸しの費用はいくらかかりますか
A. 対象とする範囲と、資料の整い方によって変わるため、一律の金額はお示ししていません。
調べる期間を3期にするか5期にするか、代替指標をどこまで作り込むかで作業量が変わるからです。
無料相談で範囲を決めてから、お見積りをお出しします。範囲を決める段階で費用は発生しません。
Q. 元請の取引が少なくても評価されますか
A. 評価されます。下請けであることが弱みだと決まっているわけではありません。
大切なのは、その元請から選ばれ続けている理由を示せるかどうかです。工期の順守、書類の整い方、急な補修への対応などが根拠になります。
あわせて、元請案件を増やすための入口があるかも整理してください。今後の見通しの材料になります。
Q. 見積が社長の頭の中にしかありません。何から始めればよいですか
A. 直近の工事を数件選び、見積書と実際の原価を突き合わせるところから始めてください。
その差が出た理由を書き出すと、社長が何を判断材料にしていたのかが表に出てきます。それが標準単価表の下書きになります。
全部の工事をさかのぼる必要はありません。代表的な工事から着手すれば十分です。
Q. 職人が高齢でも第三者承継はできますか
A. 年齢構成だけで結論が決まることはありません。ただし、正直に開示することが前提になります。
買い手が知りたいのは、技術が特定の一人に集中しているかどうかです。手順書や写真台帳があれば、再現できる技術だと示せます。
採用と育成の計画を一枚にまとめて添えてください。不安を減らす材料になります。
Q. 決算書の数字が良くない年があります。不利になりますか
A. 良くない年があること自体より、その理由を説明できないことのほうが不利に働きます。
塗装工事は天候や大型工事の有無で、期ごとの振れが出やすい業種です。工事別の粗利を並べれば、振れの中身を説明できます。
実態の利益の把握は財務の調査の領域です。税理士と連携しながら進めてください。
Q. 事業の棚卸しの資料は買い手にすべて見せるのですか
A. 段階に応じて、見せる範囲を分けるのが実務です。最初から全部を開示するわけではありません。
初期は会社名を伏せた概要、関心が具体化してから詳細へと進みます。開示の条件は秘密保持契約で定めます。
契約書の内容そのものの判断は弁護士の領域です。整理した資料をどの段階で出すかは、専門家と相談して決めてください。
Q. 従業員に承継の話はいつ伝えればよいですか
A. 時期に決まった正解はありませんが、伝える順番と内容を先に決めておくことが大切です。
職人にとっての関心は、雇用と処遇と現場の続き方です。この3点に答えられる状態を作ってから伝えると、動揺が小さくなります。
事業の棚卸しの資料は、この説明にもそのまま使えます。伝え方の設計から一緒に考えます。
Q. 事業承継の相談は誰にすればよいですか
A. 論点によって相手が変わります。税務は税理士、法律判断は弁護士、登記は司法書士、許認可は行政書士です。
一方で、どの順番で何を決めるかという全体の設計は、いずれの領域にも収まりません。ここを担うのが中小企業診断士・事業承継士です。
まずは全体像を描き、必要な場面で各専門家につなぐ形が進めやすい方法です。
まとめ

塗装工事会社が「下請けの工事店」という評価から抜け出す方法は、営業力を数字と事実に置き換えることです。
そのための調査が事業の棚卸しでした。視点は4つです。
- 顧客の構成と継続率を、工事台帳から数える
- 見積と実行予算の精度を、原価実績と突き合わせる
- 元請案件を取れる営業ルートを、経路別の件数で描く
- 職人の技術と教育の仕組みを、代替指標で示す
塗装・防水は仕上がりを数値にしにくい工事です。だからこそ、保証体制・是正工事の発生率・リピート率といった代替指標が効きます。
ここで大切なのは、都合のよい数字を作らないことです。手元にある記録をそのまま並べることが、いちばん強い説明になります。
第三者承継(M&A)の場面では、この資料が企業価値を説明する材料になります。譲らない決断をしても、経営の地図として社内に残ります。
まず動かすなら、工事台帳の3期分です。得意先別に並べ替えるだけで、見えてくるものがあります。
ご相談の場で、売り込みは一切いたしません。その場でのご契約も、後日のしつこい連絡もありません。途中でお断りいただいて構いません。会社の現状をそのままお聞かせください。
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