親族に継ぐ人はいない。それでも、この会社は残したい。
そう考えてM&Aや社内の役員への承継を調べ始めたところ、株主名簿を見て手が止まった——そんな状況ではないでしょうか。
先代のころに株を持ってもらった元役員。名前は知っているが、もう何年も会っていない親戚。少しずつ散らばった株が、そこに載っています。
結論から申し上げます。親族外承継では、買い手が現れる前に少数株主を整理しておくかどうかで結果が変わります。
買い手が決まってから慌てて集めようとすると、交渉の足元を見られます。株主が一人でも反対すれば、話がまとまらないこともあります。
- 親族に後継者がいない会社の社長の方
- M&Aや役員への承継を考え始めた方
- 株主名簿に他人の名前が並ぶ会社の方
- 自社株の買取資金に不安がある方
- 会社を引き継ぐ立場の役員の方
- 親族外承継で少数株主が障害になる理由と、買い手側の見方
- 事業の棚卸しや表明保証で株主構成がどこまで確認されるか
- 少数株主から自社株を集める4つの順番と、着手する時期
- 買取価格の考え方が、売り手と買い手でずれる理由
- 後継者個人・会社・金融機関を組み合わせた資金調達の形
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として、法人支援150社以上の実績で承継の全体設計に伴走してきました。
読み終えるころには、来週どの資料を机に出せばよいかが分かります。
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親族外承継で少数株主が残ると、買い手と金融機関はなぜ止まるのか

この記事で扱うのは親族外承継です。具体的には、社外の会社へ引き継ぐ第三者承継(M&A)と、社内の役員や従業員が引き継ぐMBOの二つを指します。
結論を先に述べます。親族外承継が止まる原因は、株の値段そのものではありません。
多くは、少数株主が残ったまま買い手のテーブルに着いてしまうことです。買い手も金融機関も、そこを最初に見ています。
親族外承継とは何か
親族外承継とは、経営者の子や配偶者などの親族ではない人へ、会社の経営と株式を引き継ぐことをいいます。
引き継ぐ相手が社外の会社であれば第三者承継、いわゆるM&Aです。相手が自社の役員や従業員であればMBO、日本語では役員・従業員承継と呼びます。
親族内承継との一番の違いは、株式が「相続や贈与で移る」のではなく「売買で移る」ことです。売買である以上、そこには買い手がいて、買い手の都合があります。
この「買い手の都合」が、少数株主の扱いを親族内承継とはまったく別の問題に変えます。
少数株主とは何か
少数株主とは、会社の株式のうち、経営を左右できるだけの割合を持たない株主のことをいいます。
中小企業では、次のような経緯で生まれていることが多くあります。
- 設立時に、発起人の頭数をそろえるために親族や知人へ株を持ってもらった
- 先代が功労者である元役員や番頭に、報酬の代わりとして株を渡した
- 株主だった人が亡くなり、相続によって配偶者や子へ株が分かれた
- 従業員持株会に入っていた人が、退職後もそのまま株を持ち続けている
一人あたりの持ち分は小さくても、集まれば無視できない議決権になります。そして人数が多いほど、全員から同意を取るのは難しくなります。
買い手は、株式のすべてを取得したがる
第三者承継(M&A)で株式を買う側は、原則として発行済株式のすべてを取得したいと考えます。理由は三つあります。
一つめは、経営の自由度です。買った後に工場を建て替える、人事制度を変える、グループの他社と合併する。こうした決定のたびに、面識のない株主の同意を確認するのは現実的ではありません。
二つめは、少数株主に認められた権利です。会社法上、少数株主にも帳簿の閲覧を求める権利や、株主総会の決議を争う権利などが認められています。
三つめは、将来の紛争リスクです。買った後に少数株主から「買い取ってほしい」と求められ、価格をめぐる争いになることがあります。
だから買い手は、株主が完全に一本化されていない会社を、値引きの材料か、見送りの理由として扱います。
事業の棚卸しと表明保証で、株主構成は必ず表に出る
事業の棚卸しとは、買い手が対象会社の事業の実態や強みと弱みを調べる作業のことをいいます。デューデリジェンス、つまり買収前の詳細な調査を意味します。
事業の棚卸しでは、商流や人員、設備、取引先との関係が調べられます。あわせて行われる法務の調査では、株主名簿と株式の移動の経緯が確認されます。
ここで確認されるのは、名簿に載っている名前だけではありません。次のような点が問われます。
| 確認される点 | 説明できないと起きること |
|---|---|
| 株主名簿が最新の状態か | 誰が本当の株主か確定できず、契約書が作れない |
| 過去の株式の移動に、譲渡承認などの手続の記録があるか | 移動そのものの有効性を疑われる |
| 相続で株主が増えていないか | 把握していない株主の存在が後から判明する |
| 株券発行会社かどうか、株券の所在 | 引渡しの方法が決まらず、実行日がずれる |
| 株主全員と連絡が取れるか | 同意の取り付けに要する期間が読めない |
そして株式譲渡契約では、売り手が「表明保証」を求められます。表明保証とは、契約の時点で一定の事実が真実であることを、売り手が買い手に対して表明し保証することです。
株主構成についても、名簿が正確であること、第三者の権利が付いていないことなどを保証させられます。
もし後から違う事実が出てくれば、売り手が補償を求められることもあります。売った後に金銭を返す事態は、社長にとって最も避けたい終わり方です。
MBOでは、金融機関の目線が加わる
役員や従業員が買い手になるMBOでは、買い手に潤沢な自己資金がないことがほとんどです。そこで資金調達の相談が金融機関へ持ち込まれます。
金融機関が見るのは、後継者が返済できるかだけではありません。買った後に、後継者が本当に会社を動かせるのかを見ます。
議決権が分散したままでは、後継者は役員の選任や決算の承認さえ自力で決められません。融資の判断が慎重になるのは当然のことです。
つまり、少数株主の整理は資金調達の前提条件でもあります。順番を逆にすると、話が進まなくなります。
放置すると、株主は増えていく
ここが一番お伝えしたい点です。少数株主の問題は、時間が経つほど解きにくくなります。
株主が亡くなれば、株式は相続によって配偶者や子へ分かれます。一人だった株主が三人になり、次の世代でさらに増えます。
その方々は、会社との縁がありません。先代への恩義もありません。そのため、話し合いの入口をつくること自体に時間がかかります。
先送りしている間に、相手の人数と距離だけが増えていきます。これが、放置したときに起きる一番現実的な変化です。
親族外承継で少数株主から自社株を集める4つの順番

結論を先に述べます。少数株主からの自社株の集約には、守るべき順番があります。
順番を守れば、無理のない形で議決権をまとめられます。逆に、順番さえ合っていれば時間は味方になります。
- 株主名簿を確定させ、議決権の現状を数える
- 集約の優先順位を決め、買い手が現れる前に動き出す
- 買取価格の考え方を、売り手と買い手の両側からそろえる
- 買取資金の出し手を、後継者個人・会社・金融機関で組み立てる
株主名簿を確定させ、議決権の現状を数える
最初にやることは、交渉ではありません。いま誰が何株持っているのかを、紙の上で確定させることです。
次の資料を集めて、突き合わせます。
- 現在の株主名簿
- 法人税申告書に付ける同族会社等の判定に関する明細書
- 設立時の定款と、その後の変更の記録
- 過去の株主総会と取締役会の議事録
- 株式の譲渡に関する承認の記録、譲渡契約書
ここで多いのが、資料どうしで株数が合わないという状態です。決算書に添付した書類だけが更新され、株主名簿が何年も止まっている会社は珍しくありません。
そのうえで、株主ごとに次の三点を書き出します。持ち株数、連絡が取れるかどうか、会社との関係の濃さです。
この一覧ができて初めて、誰から先に話をすべきかが見えます。順番を決める材料がないまま動くと、必ず後戻りします。
集約の優先順位を決め、買い手が現れる前に動き出す
二番目は、話しかける順番を決めることです。ここが親族外承継に固有の、最も大事な工夫になります。
株式の集約は、買い手が現れる前に始めてください。理由は三つあります。
一つめは、価格の前提が変わってしまうからです。M&Aの話が動いていると分かった途端、株の意味合いが変わります。
二つめは、情報が漏れる点です。少数株主の中には、取引先や同業者とつながりのある方もいます。承継の検討中であることが外に出れば、取引にも人にも影響が及びます。
三つめは、時間です。買い手との交渉には期限があります。締切に追われながらの交渉では、相手の条件をのむしかなくなります。
優先順位のつけ方は、次の考え方が実務的です。
| 株主の状態 | 着手の目安 |
|---|---|
| 高齢で、相続によって株が分かれる可能性が高い | 最優先。人数が増える前に話を始める |
| 持ち株数が多く、議決権への影響が大きい | 優先。ここが決まらないと全体が決まらない |
| 連絡先が不明、または長く音信がない | 早期着手。所在の確認だけで時間がかかる |
| 会社との関係が良好で、話が通じやすい | 中位。実績づくりとして早めに進めてもよい |
| 過去に感情的な行き違いがある | 慎重に。第三者を交えた設計を先に固める |
話しかけ方にも順番があります。いきなり買取の話を切り出すのではなく、まず会社の近況を伝え、承継を考えている段階であることを共有します。
多くの少数株主は、株を持ち続けたいわけではありません。換金する機会がなかっただけということが、話してみると分かります。
なお、応じてもらえない株主に対して株式併合などの手法で強制的に整理する道もあります。ただしこれは、弁護士や税理士と一緒に慎重に設計する領域です。記事で手順をお伝えできる話ではありません。
まずは、話し合いで解ける相手から解いていく。それが遠回りに見えて、最も確実な道です。株主の整理から資金の組み立てまでを一続きで考える親族外承継の株主整理と事業承継コンサルティングという枠組みを、ここで用意しておくと迷いが減ります。
買取価格の考え方を、売り手と買い手の両側からそろえる
三番目が価格です。ここでつまずく会社が最も多くあります。
つまずく理由は単純です。売り手である少数株主と、買い手である会社や後継者とで、価格の前提がそもそも違うからです。
少数株主の側は、会社の規模や利益から「自分の持ち分はこれくらいの価値があるはずだ」と考えます。話題になったM&Aの金額を引き合いに出されることもあります。
一方、買い手の側から見ると、支配権を伴わない少数の株式は、経営に口を出せない株式です。配当がなければ、手元にお金が入ってくることもありません。
さらに、税務上の評価という三つめの物差しがあります。取引の当事者どうしの関係や、売り手と買い手が個人か法人かによって、税務上どう扱われるかが変わります。
この税務上の評価と課税関係の判断は、税理士の領域です。KICKが税額を計算したり、申告を代わりに行ったりすることはありません。
私たちがご一緒するのは、その手前です。三つの物差しがあることを整理し、どの順番で誰に確認するかを決めます。
実務では、次の進め方が現実的です。
- 顧問税理士に、税務上の評価の考え方と課税関係を確認する
- 会社として説明できる価格の考え方を、文章にして固める
- その考え方を、株主全員に同じ説明で伝える
大切なのは、金額そのものより説明が一貫していることです。人によって説明が違えば、後から必ず不信を招きます。
買取資金の出し手を、後継者個人・会社・金融機関で組み立てる
四番目が資金調達です。価格が決まっても、お金がなければ株は動きません。
買取資金の出し手は、大きく三つあります。それぞれに向き不向きがあります。
| 出し手 | 考え方と留意点 |
|---|---|
| 後継者個人 | 自己資金と個人の借入で買う。議決権が後継者に集まる形になるが、個人の返済負担が重くなりやすい |
| 会社(自己株式の取得) | 会社が自らの株式を買い取る。手元資金を使えるが、財源の制約があり、手続にも決まりがある |
| 金融機関からの借入 | 後継者個人への融資、または会社や持株会社への融資。事業計画と返済原資の説明が前提になる |
会社が自己株式を取得する方法には、注意すべき点が二つあります。
一つは財源の制約です。会社法上、自己株式の取得に使える金額には限りがあります。手元に現金があっても、そのまま使えるとは限りません。
もう一つは手続です。特定の株主からだけ買い取る場合は、株主総会の特別決議が必要になります。加えて、他の株主から「自分も売りたい」と申し出る機会が与えられる仕組みがあります。
つまり、一人の株主とだけ静かに話をまとめる、という進め方ができない場合があります。ここは会社の状況によって扱いが変わるため、弁護士と税理士を交えて設計します。
資金の準備という点では、法人保険が役割を持つこともあります。役員退職慰労金の準備とあわせて、株式の買取資金の一部を確保しておくという考え方です。
ただし、保険に入れば解決するという話ではありません。いま加入している契約の目的と保険金額、受取人が、これから進める承継の形と合っているかを点検する価値があります。
削ることを目的にした見直しは勧めません。削りすぎれば、万一のときに事業の継続や家族の生活が揺らぎます。守るための再設計として考えてください。
お話をうかがっても、売り込みは一切ありません。その場で契約を迫ることも、後から営業の電話をかけることもありません。順番だけ確かめたい、という段階のご相談で構いません。
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少数株主を整理し議決権をまとめた会社が手に入れる3つの未来

株主の整理を先に終えた会社には、はっきりとした変化が起きます。三つの軸でお伝えします。
交渉のテーブルで、条件を守れる
一つめは、交渉での立ち位置です。
株主が一本化された会社は、買い手から見て「そのまま買える会社」になります。事業の棚卸しで株主構成の指摘を受けることもありません。
表明保証の場面でも、社長は自信を持って名簿の正確さを説明できます。後から補償を求められる不安を抱えたまま調印する必要がなくなります。
その結果、値引きの材料が一つ減ります。交渉で守りたい条件を、守れる可能性が高まります。
MBOの場合も同じです。買うべき株数と相手が確定していれば、金融機関に示す資金計画の輪郭がはっきりします。
後継者が、決めるべきことを決められる
二つめは、承継した後の経営です。
議決権がまとまっていれば、後継者は役員の選任も、設備投資の決議も自分の判断で進められます。誰かの顔色をうかがう必要がありません。
これは、社内の役員が引き継ぐMBOでは特に大きな意味を持ちます。番頭として現場を仕切ってきた人が、経営者として一歩を踏み出せるかどうかを左右します。
株主の整理は、後継者への贈り物でもあります。散らばった株を集めてから渡すことが、現経営者にしかできない仕事です。
社長自身が、次の人生の予定を立てられる
三つめは、社長ご自身の時間です。
株主の整理が終わっていない会社では、承継の話がいつまでも「検討中」のまま止まります。買い手が現れても、進むかどうか分かりません。
整理が終わっていれば、承継を実行する時期を自分で決められます。引退の時期も、その後の暮らしも、予定として組み立てられます。
従業員に対しても、いつ何を伝えるかを計画できます。突然の発表で現場が動揺する事態を避けられます。
会社が続き、従業員の雇用が続き、社長には次の時間が残る。この三つを、共に手に入れましょう。
自社だけで株式の買取と資金調達を進める限界と、KICKの支援

ここまでの手順を読んで、自社でも進められそうだと感じた方もいると思います。実際、名簿の整理までは社内でできます。
けれども、次の三つの壁で止まる会社が多くあります。
社長が交渉の当事者になってしまう
一つめは、社長本人が交渉に出ざるを得ないことです。
相手は、先代の代からの知り合いや親戚です。長い付き合いの中で、言いにくいことが積み重なっています。
そこへ社長が一人で出向けば、話は感情の領域に入ります。金額の話をした途端に、昔の出来事が持ち出されることもあります。
第三者が間に入るだけで、話は事務的に進みます。会社としての方針を、会社の外の人間が説明する形にすると、相手も応じやすくなります。
専門家がそれぞれの持ち場でしか動けない
二つめは、相談先が分かれてしまうことです。
税務の判断は税理士、株式の移動に関する法律の判断や契約書は弁護士、登記は司法書士の領域です。それぞれが正しく仕事をしていても、全体の順番を決める人がいません。
税理士に価格の考え方を聞き、弁護士に手続を聞き、金融機関に資金を相談する。それぞれの話が噛み合わないまま、時間だけが過ぎていきます。
共通の敵は、専門家ではありません。バラバラのまま止まっている状況そのものです。
資金の全体像が最後まで見えない
三つめは、資金調達の全体像です。
株式の買取資金だけを見ていると、承継の実行時に必要な他の資金が抜け落ちます。役員退職慰労金、納税資金、承継後の運転資金。これらは同じ時期に重なります。
一つずつ順に手当てしようとすると、後半で足りなくなります。全体を一枚の表にしてから配分を決めれば、無理のない形に収まります。
KICKが担う役割
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として、承継全体の設計と伴走を担います。認定経営革新等支援機関でもあります。
具体的には、次のことをご一緒します。
- 株主名簿と関連資料の突き合わせ、議決権の現状の可視化
- 誰から、どの順番で話を進めるかという集約計画づくり
- 価格の考え方について、税理士へ確認すべき論点の整理
- 後継者個人・会社・金融機関を組み合わせた資金調達の設計
- 事業の棚卸しで問われる論点の先回りと、資料の整え方
- 事業承継専属の保険代理店として、法人保険の役割の再設計
税務の申告、法律上の判断、登記そのものは、それぞれの専門家が行います。私たちはその全体をつなぎ、順番を決める役を担います。
いま何も決まっていなくて構いません。「株主名簿を見たら知らない名前があった」という段階のご相談が、いちばん多いご相談です。
初回のご相談で、費用のお話はいたしません。売り込みも、しつこい営業もありません。合わないと感じられたら、そこで終わりにしていただいて構いません。
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親族外承継と少数株主の株式買取についてよくある質問

Q. 少数株主が一人でもいると、M&Aはできないのでしょうか
A. できないわけではありません。ただし、買い手が株式のすべての取得を条件にすることは多くあります。
買い手にとっては、経営の自由度と将来の紛争リスクの問題だからです。株主が残る前提なら、その分を価格や契約条件で調整しようとします。
まずは、御社の株主が何人で、それぞれ何株持っているかを確定させてください。そこから、集約が必要な範囲が見えてきます。
Q. 株式の買取は、いつから始めればよいですか
A. 買い手を探し始める前です。目安として、承継を実行したい時期の二年から三年前には着手してください。
理由は、相手の人数が増える前に手を打つ必要があるからです。株主が高齢であれば、相続によって関係者が増えます。
また、M&Aの話が動いていると分かると、価格の前提が変わります。静かなうちに進めるほど、話はまとまりやすくなります。
Q. 連絡が取れない株主がいる場合はどうしますか
A. まずは、所在を確認するところから始めます。名簿の住所が古いままであれば、そこから調べ直すことになります。
相続が起きていれば、相続人が誰かを確認する作業も必要です。ここは時間がかかるため、早めに着手してください。
所在が分からない株主への対応には、法律上の手続が用意されている場合もあります。その判断と手続は弁護士の領域です。
Q. 買取価格はどうやって決めるのですか
A. まず、税務上どう扱われるかを顧問税理士に確認します。当事者の関係や、売り手と買い手が個人か法人かで扱いが変わるためです。
そのうえで、会社として説明できる考え方を文章にまとめます。金額そのものより、説明が一貫していることが大切です。
具体的な金額の算定と課税関係の判断は税理士が行います。私たちは、どの論点を誰に確認するかの整理をご一緒します。
Q. 会社のお金で自社株を買い取ることはできますか
A. 会社が自己株式を取得する方法はあります。ただし、二つの制約に注意が必要です。
一つは財源の制約です。会社法上、取得に使える金額には限りがあります。手元に現金があっても、そのまま使えるとは限りません。
もう一つは手続です。特定の株主からだけ買い取る場合は、株主総会の特別決議が必要になります。他の株主にも売却を申し出る機会が与えられる仕組みがあるため、事前の設計が欠かせません。
Q. 買取に応じてもらえないときは、どうなりますか
A. まずは、応じられない理由を聞くところからです。金額の問題なのか、会社への感情なのかで、打つ手が変わります。
反対する株主が残ったままでも、承継の形を工夫できる場合があります。買い手と相談しながら、条件を組み替えていきます。
株式併合などによって強制的に整理する手法もありますが、これは弁護士や税理士と慎重に設計する領域です。安易に選ぶ道ではありません。
Q. 事業の棚卸しでは、株主のことをどこまで見られますか
A. 株主名簿の正確さ、過去の株式移動の記録、相続の有無、株券の所在まで確認されます。
あわせて、株式に担保などの権利が付いていないかも見られます。説明できない点が残ると、契約の条件に響きます。
先回りして資料をそろえておけば、調査は短く済みます。売り手側で整えておくほど、交渉は有利に進みます。
Q. 買取資金が用意できないときは、どんな方法がありますか
A. 出し手を組み合わせて考えます。後継者個人の資金、会社による自己株式の取得、金融機関からの借入の三つが柱です。
MBOでは、後継者が設立した会社を通じて株式を買い取る形をとることもあります。返済の原資を事業計画で説明できるかが鍵になります。
まずは、必要な金額の総額を出してください。株式の買取だけでなく、役員退職慰労金や運転資金も同じ時期に重なります。
Q. 相談するのは税理士と診断士のどちらが先ですか
A. どちらが正しいという決まりはありません。ただ、税務の確認だけを先にしても、集約の順番と資金の話は残ります。
全体の順序を決めてから各専門家へ依頼すると、手戻りが減ります。私たちは、その順序づくりからご一緒します。
顧問税理士との関係を壊すことはしません。役割を分けて、同じ計画を共有するだけです。
Q. 株主の整理には、どのくらい時間がかかりますか
A. 株主の人数と関係の状態によって大きく変わります。数か月で終わる会社もあれば、二年以上かかる会社もあります。
時間がかかる主な要因は、所在の確認と、相続によって増えた相続人との話し合いです。交渉そのものより、前段の作業に日数を要します。
まずは現状の一覧をつくり、必要な期間の見当をつけてください。そこから、承継を実行する時期を逆算します。
まとめ

親族外承継、つまりM&Aや役員・従業員承継では、株式が売買によって移ります。買い手がいる以上、買い手の都合が前提になります。
買い手は株式のすべての取得を求め、事業の棚卸しと表明保証で株主構成を確認します。少数株主が残っていれば、値引きの材料か見送りの理由になります。
だからこそ、順番があります。まず株主名簿を確定させ、議決権の現状を数えること。
次に集約の優先順位を決め、買い手が現れる前に動き出すこと。買取価格の考え方を、売り手と買い手の両側からそろえること。
そして、後継者個人・会社・金融機関を組み合わせて資金調達を組み立てること。この四つです。
株主の整理は、買い手が現れてからでは間に合わないことがあります。逆に、早く動けば選べる道が残ります。
税務の判断は税理士、法律上の判断と契約は弁護士、登記は司法書士の領域です。私たちは中小企業診断士・事業承継士として、その全体をつなぐ役を担います。
株主名簿を一度机に出してみてください。そこから、次にやるべきことが見えてきます。
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